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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
*現パロ注意です

















10本の細長い指がキーボードの上をしなやかに踊る。
そのたびに整った爪がぱちぱちと、真剣な顔でモニターを睨む彼女のまなざしとそのコミカルな音は不似合いだった。
音を立てないよう、そっとソーサーを狭いテーブルの端に置く。
音を立てようが立てまいが、彼女の視界に入ってしまえば気付かれることはわかっていたがそれでもいらぬ気遣いとばかりに丁重な仕草で腕を動かした。
ぱっと顔を上げたナミさんは、近くのモニターを見ていたせいか少し焦点の合わない顔でおれを見上げた。
あぁ、というふうなため息をついてコーヒーカップに目を落とす。


「ありがとう」
「すっげ集中してたね。忙しい?」
「うん、年度末だし。でもサンジ君も」
「おれぁ年度末とか関係ねェけどよ」


ざわめく店内はいつもに増して人の出入りが多い。
近くでなにかコンサートイベントが行われているらしく、その待ち合わせをする客や終わった後の一服をする客で店は朝からはやっていた。
ナミさんは仕事の書類を雑な手つきでテーブルの片隅に寄せ、コーヒーカップに手を伸ばす。
中身に少し目を落とし、口をつける。
眉間のあたりから上唇までカップが落とした影を見るのがおれは好きだった。
カップから口を離したナミさんが中身を検分するように覗き見て、おれを見上げる。


「キャラメルマキアート?」
「ご名答。煮詰まってんじゃねぇかなって」


常連と言うべき頻度で来てくれる彼女に給仕するものは、その日のおすすめ。
それがいつのころからか、おれが彼女を見てその気分を憶測し、勝手にメニューを決めるようになった。
ナミさんは文句を言うどころか、それを楽しんでいてくれる。
暑い日差しの日にはさっぱりとしたオレンジソーダ。
肌寒い秋の夕暮れには温かいミルクたっぷりのチャイにシナモンを散らして。
そして時折ここで仕事を片づけるナミさんの表情が穏やかでなくなってきたなら、心ほぐすような甘いモカコーヒーにクッキーなんかを付けて。
ナミさんはもう一口カップを傾けて、息をついた。


「──おいし」
「そりゃよかった。腹減ってねェ?」
「うん。それよりサンジ君、いい加減戻らないと」


ナミさんがおれの肩越しにデシャップの方を見遣る。
きっとカウンターやパーテーションの向こう側でパティやカルネが、殺人犯の目をしておれを睨んでいるのだろう。
ひょいと肩をすくめて「そうだな」と言ってから、思い出したような口ぶりで──それを装って、「そういえばナミさん」と口を開いた。


「明日も仕事なんだっけ?」
「うん」
「忙しそうだけど、帰りは遅ェの?」
「んー、残業すれば20時は回るけど……だらだら仕事してるの好きじゃないから、何もなければいつもどおり18時には帰るんじゃないかな。なんで?」


意図するもののない素朴な疑問が、最後にくっついてくるだろうことは予測済みだった。
「いんや」と軽い口調で首を振って笑う。


「日が落ちるの遅くなってきたとはいえ、忙しくて残業が多いんじゃ夜道帰るのあぶねぇんじゃねぇかなって思って」


サンジ! とついに爆発した声が鋭くおれを呼んだ。
おれは振り向くのも億劫でハイハイと手を振り、あらためてナミさんに向き直る。


「ゆっくりしてって」
「ん、ありがと」


名残惜しく彼女を最後まで視界の中にとどめておいてから、おれは足早にホールを横切って戦場のようなデシャップに滑り込んだ。


──明日、明日。
彼女に食ってほしいショコラとオレンジのケーキはうまい具合に焼き上がった。
丁寧に箱に詰め、想いを込めたカードも差し、ふたをする。
彼女の家は共通の友人に教えてもらった。
ストーカーにでもなるんじゃないかと気味悪がるそいつを宥めるのにひと手間あったが、あのとき聞いておいて本当に良かった。
彼女の家へ行く途中にたしかちいさな花屋があったはずだ。そこで何か彼女に似合う花を買おう。そんで贈ろう。
おれにとっての彼女はただの常連客の一人からさっさとランクアップして、いまや世界にただ一人おれのために現れたレディとしか考えられないが、はたして彼女にとってのおれはいかに。
ただのよく行く店の店員から、なんらかのランクアップははたしているだろうか。
そのあたりのことは何ひとつわからないが、ただひとつ言えるのは、明日──それはおれの誕生日であったりもするのだが──彼女に思いを伝えたい。

わざわざ自分の誕生日にしゃちほこばって告白しに行くなど格好悪いことこの上ないが、その日が誕生日だったことなんて後から気付いた。
たまたまその前日が普段の定休日だったのに、結婚式の二次会の貸切予約があったため営業することになって、代わりに次の日を休みに──ということはせず、閉店を早めることとなった。
ナミさんの都合はいま聞いた。
店を閉めてから急げば、彼女の帰宅に合わせて家の前で待つことができるはずだ。
勝率は正直さっぱりわからん。
なにしろおれは彼女と店以外でほとんどあったことがないのだ。
当たって砕けろと叫ぶおれと同時に、いや砕けてたまるかと足を突っ張るおれがいる。
なんにせよどうなることか予測がつかない賭けみたいな告白に、気持ちが昂ぶって前日眠れないことは請け合いだった。





片手にぶら下げた紙袋を見下ろして、早まったかなあと何度も立ち止まりかけ、そのたびにもう買っちゃったんだから、と自分を鼓舞して足を進めた。

定時を過ぎ、だらだらと残業に突入する同僚や上司に「お先っ」と声をかけ、要らない仕事を持ち込まれる前にさっさと退社した。
会社から家まで徒歩20分ほどの道のり、その道中によく行くカフェレストランがある。
最近はやりのお洒落な店内、どこの国のものかわからない音楽に、無秩序な植物が並べられているようなよくあるカフェとは違って、きちんとした服を着ていきたくなるような小奇麗な店だ。
店内には控えめなジャズピアノが流れ、昼時はコーヒーの香りが店の外にまでほろほろとこぼれ出ている。
こんなお店あったんだ、と初めて立ち寄ってからすっかりお馴染みになってしまった。
コーヒーが美味しいのはもちろんのこと、料理もはやりのカフェごはんとはちがって味がぼんやりしていない。
素材の味がしっかりと個性を主張しながらも、作った人の技量が感じられる繊細な味つけは私をぞっこんにした。
そしてその店にいるひとりの店員。
私が来店するたびに目を細めて笑うその穏やかな雰囲気は、いつしか行くたびに目で探すようになった。
気まぐれで「おすすめは?」と尋ねた日から、ドリンクのオーダーは彼に任せている。
気持ちにぴったり寄り添った飲み物が出てくるときもあれば、うーんイマイチというときもあり、どちらにせよそれが面白くてたのしかった。
何度か行くうちに私たちに共通の友人がいることが分かり、先日その友人から彼の誕生日を聞いた。
何の話の流れだったのか思い出せないが、ふーんと気のない相槌を打ちながらもその日付はしっかり私の脳裏に刻みこまれていた。

そして今日も帰り道に彼の店の前を通り過ぎる。
広いガラス窓から中の様子が見えた。
そろそろディナーメニューが始まる時間だが、いつもより客が少ないように見える。
少し閑散とした店内をスーツ姿が一瞬横切り、彼だと分かった。
彼の店を通り過ぎ、誕生日だという友人の声が耳の奥で控えめに響く。
顔見知りだもん、ちょっとした誕生日プレゼントくらい、渡してもいいはずだ。
帰り道に小さな紳士服のセレクトショップがあり、心当たりのままにふらっと入店。
そのままなんとなくネクタイを買った。
「贈り物ですか?」と訊かれてはいと答えれば、「メッセージカードを付けましょうか」と言われたので提示されるがまま、ハッピーバースデーのカードを入れてもらった。

そして今、彼の店まで徒歩3分ほどのところを歩いている。
店に入ってコーヒーでも飲みながら、仕事終わりをまとうか。
それともさっさと渡して帰ってきた方が迷惑にならないだろうか。
でも仕事中にこんなものを押し付けたらどちらにせよ困らせるのかもしれない。
彼のことだ、きっと喜んで受け取ってくれるだろうけど、もしそれがサービス精神から来るものだったりしたら──

考えているうちに店の前についてしまった。
まだちらほら客の姿は見えるが、やっぱりその数は落ち着いている。
とりあえず店の横の壁に背を向ける形で立って、しばらく様子を見ることにした。
ちらりと店内を覗くが、彼の姿はない。
厨房に引っ込んでしまったのかな、と考えて、腕時計に目を落とす。
18時少し前。
閉店する時間まではとても待っていられないけれど、もう少し店が混んでくる時間になったら、他の客に紛れて入ってさっさと渡して帰ればいい。
迷惑だとかは考えてもきりがないので、このさい考えないことにした。
3月とはいえ初旬の夜はまだまだ冬だ。
冷え込んできた夜の空気に首をすくめたまま、早く次の客がこないかなあとぼんやり行きかう人の姿を眺めていた。




17時半にラストオーダーを聞いて、closeの看板をかかげた。
18時まで最後のお客には店内で過ごしてもらえるが、おれは早々と引っ込んで慌ただしく片付けに入る。
「やけに急いでんじゃねェか」と不良コックどもが野次を飛ばすがかまっていられない。
誕生日なんて生易しい理由で手を抜くことの許されない仕事場だ。わかっているけどどうしても急ぐ手が雑になる。
余った食材の保存を済ませると、おれは逃げるように裏へと引っ込んだ。
後は頼むという無言のメッセージを残したが、訊いてもらえるかどうかはわからない。
きっと明日中チクチク嫌味を言われるに違いない。
だがそんなことはどうでもよかった。
なんとしてでもナミさんの帰宅に合わせて、待ち伏せといえば聞こえが悪いがとにかく彼女を待ちたい。
まな板に載せられた活きエビのように飛び跳ねながらスーツを脱ぎ、乱暴にロッカーに押し込んで私服を身に付ける。
手で皺を伸ばし、埃を払い、財布やらなんやらをポケットに突っ込んで裏口から飛び出した。
時計に目を走らせると、17時半を10分ほど過ぎたばかり。
もう慌てなくてもよさそうだと、おれは足を緩めて、それでも気が急いて早足で彼女の家へと向かった。
手には店の冷蔵庫から出してきたケーキの箱を持っていることだし、慎重に歩くことも忘れず、途中で予定通り小さな花屋に立ち寄る。
黒髪が魅力的なレディが花を選んでくれた。
オレンジ色の細かい花弁がナミさんによく似合う。
花束を作りながら、花屋の店主らしい彼女がおれの意気込みを知ってか知らずか「うまくいくといいわね」と背中を押してくれた。
そこから歩いてさらに10分。
小さなアパートに彼女は一人暮らしだ。
時計を見ると18時少し前、多分まだ彼女は帰っていない、はずだ。たぶん。
帰っていたらどうしようと、とたんに落ち着かない気持ちになって意味もなく辺りを見渡した。
彼女の部屋番号までは知らない、ここで待ち伏せする以外おれになすすべはない。
仕方なく、近くの植え込みを囲う石段の上に腰を下ろして彼女を待つことにした。
きっと大丈夫だ、彼女は今帰り道を歩いている頃だろう。
店に来てくれる彼女の退社時間を考えれば、それが妥当だ。

思えばおれはナミさんの電話番号も、メールアドレスも知らない。
本当はこんな強行突破に出る前にデートに誘いたかったが、土日が休みの彼女を誘うにはおれの都合がつかなかった。
急な告白に彼女は戸惑うだろう。いきなりOKをもらえるとは思っていない。
でも彼女が少しでもおれを憎からず思っていてくれるなら、きちんとデートの約束を取り付けて、そこからゆっくり仲を深めて行けるはずだ。
3階建てのアパートを見上げ、彼女の部屋はどれだろうと考えても仕方ない思いを巡らす。
ここで寝起きをし、飯を食い、毎日懸命に会社に勤める彼女の小さな背中を思うだけで思わず顔をしかめてしまうほど甘酸っぱい何かが喉元までせり上がる。
我ながらアホらしいと思うが、仕方がない。これが恋と言うやつだ。
聡明な彼女は、ここで待つおれを簡単に家に上げたりしないだろう。
おれだって一人暮らしのレディの家にそうやすやすとお邪魔すべきではないと心得ている。
心得ているが、入りたい。
よかったら夕飯作ろうか、なんて。
狭い2コンロのキッチンでおれがフライパンをふるい、わずか数畳の部屋でナミさんがお腹を減らして待っている。
温まった食べ物のにおいが部屋に充満し、ナミさんが「できた?」と嬉しそうに様子を見に来る。
2枚の皿に料理を盛り付け、それをテーブルまで運んで、おれたちは同時に箸をつける。
「やっぱりサンジ君のごはんはおいしいわね」なんつって──

夢いっぱいの妄想から目が覚めたとき、時計を確かめたら18時半を回っていた。
いつのまにかずいぶん時間が経っている。そして彼女の帰りが遅い。
薄い彼女の髪色に染まっていた空は、いつの間にか暖色の気配すらなくとっぷりと闇にのみこまれている。
アパート前の街灯がちらちらと明滅する。
もしかしたら残業することになったのかもしれない。
何時になったっていい、彼女が帰ってくるまで待つ腹積もりだ。
ナミさんのことを考えていれば、時間なんてあっという間に過ぎていく。
おれはコートのチャックを一番上まで引き上げ、ポケットに手を突っ込んで再び空想の世界へと飛び込んだ。







店の中から伸びていた光が、瞬きした次の瞬間には掻き消えていた。
驚いて店を振り返ると、店内はすっかり照明を落とされて中で数人が動いている気配があるだけだ。
どういうことかさっぱりわからず店の前で立ち尽くす私は、そこにcloseの看板が下げられているのが薄暗がりの中目に留まった。
腕時計を確認するが、まだ18時を過ぎたばかりだ。
なんで、どうして閉まっちゃってるの。
道理で随分客が少ないはずだ。今日は臨時営業か何かだったのかもしれない。


「そんな……」


情けない声がぽとんと落ちた。
急に恥ずかしさに似た感情がこみあげてきて、唇を引き結ぶ。
──私、ばかみたい。

でも、サンジ君、仕事が終わったらもうすぐ帰るんじゃない?
もう少し待っていたら、出てくるかもしれない。
それでも店の玄関はふつうスタッフの出入りに使わない。裏口から帰ってしまうだろう。
どうしよう、入ってみようか。
立ち尽くした私を訝しんだ店員の一人が、中から歩み寄ってきた。
私が気付くよりも早く扉をあけられてしまう。
カフェレストランの店員というからにはサンジ君のような若い人なのかと思いきや、出て来たのがひげの青いおじさんだったので目を丸くしてしまった。


「やーすいません、昨日臨時営業したもんでね、今日は早く閉まるんです」
「あ、あの、サンジ君は?」
「サンジ?」


コック服の彼は少し身を引いて、私の全身を眺めてからなぜかゴホンと咳ばらいをした。


「サンジのお知り合いかなにかかな?」
「えぇ、まあ」
「アイツはラストオーダー終わった途端すっとんで帰っちまいやがったんですわ」
「あ、そう……」


悪いねと何度も頭を下げて、強面だけど愛想のいいその人は店の中へと引っ込んでいった。
いつも温かい光の洩れる店の入り口は、今日はうそみたいにそら寒い。
踵を返して家路をたどると、足元をすくうみたいに冷たい風が吹いた。

誕生日だものね、と自分自身に頷いた。
急いでいたなら、何か約束があったのだろう。
誕生日だもん、とまた言い聞かせる。
仕事のバッグとは逆の手に提げた紙袋の中を、からからとネクタイの箱が転がる。
これ、どうしよう。
明日にでも「そういえば誕生日だったんだって?」みたいなふうにして渡そうか。
それにしてはネクタイって、手軽に用意したにしては随分カタイ贈り物じゃないだろうか。
なんでこんなもの買っちゃったんだろう。

大通りの角を曲がり、住宅の並ぶ横道に入る。
街灯があかるくて、健全な雰囲気がよくてこの場所を選んだ。
それにしても私は、彼にどんな顔で誕生日プレゼントを渡すつもりだったのか、今考えると自分がまったく考えなしだったことに思い当りお腹のあたりがすっと冷えた。
思いつきで、ただサンジ君が誕生日なら私も何か贈りたいと、ただそれだけで動いていたのだ。
──失敗してよかったのかも。
胸のうちで呟いて、それが空しく自分を慰めるだけのことばだということが痛いくらいに沁みた。

本当は会いたかった。
会って、プレゼントを渡して、驚いたり喜んだりする顔が見たかった。

アパートの駐車場を照らす街灯が、ぱちぱちと光ったり消えたりを繰り返しているのが遠目に見えた。
今から一人夕飯の支度をすることを思うとたまらなく億劫だ。
やっぱりどこかで食べてこればよかった。
そう考えると頭の中は最近食べた美味しいものの記憶をさらいだしてきて、それらはあますことなくサンジ君とつながってますますげんなりした。
追い打ちを立てるように胃がくるくると動き、私にしか聞こえない音で呻く。

オートロックの玄関が見えてきて、カバンから小さなキーホルダーがついた鍵を指先に引っかけて取り出した。
鍵がぶつかりあって奏でるちゃらちゃらとした軽率な音に歩幅を合わせて歩いてみると、重たい足が少し楽になる気がする。
カコンとネクタイの箱が紙袋の中で音を立てたとき、すぐ横の植え込みに座り込んでいた人がすっくと立ち上がり、まったく意識の範疇になかったその動きに私は飛び上がるほどびっくりしてしまった。


「ナミさん」





シャンッと軽い金属の音がめくるめくふたりの世界からおれを引き戻した。
顔を上げたその目の前を、待ちに待った彼女がいままさに通り過ぎていく。
頭よりも心よりも、身体が一番速かった。
突然立ち上がったおれに、ナミさんがびくっと身をすくめて素早くこちらを振り返る。
名前を呼ぶと、いつも以上に丸くなった目がすっとおれを捉え、「あ」の形に口が開く。

さあ、言え、彼女に考える隙を与えるな。


「ナミさんおれ」


きみが好きだ。
どんっと胸にこぶしが刺さって「うっ」と情けない呻き声が漏れたことによって、その言葉は途中で掻き消えた。
同時にぽすんと何か軽いものがこぶしの下に当たる。


「え?」


俯く彼女の顔は見えないが、何か差し出されている。
真下を覗くと、紙袋の中にころんと小さな箱が見えた。


「おめでとう」
「え?」
「誕生日」


ナミさんはもう一度押し付けるように、紙袋を持ったこぶしでおれの胸をとんと叩く。


「──早く受け取りなさいよ」
「えっ、あ、ありがと」


両手で紙袋を持ち上げると、ナミさんは逃げるようにさっと一歩後ろに下がって少し顔を上げた。
怒ってるみたいに口を引き結んでいる。
寒いのか、街灯に照らされた鼻が少し赤い。
こころなしか耳も。


「おなかすいた」


怒ってるみたいな口もとのまま、ナミさんがつぶやく。


「え、あ、じゃあ、ごはん作ろうか」
「うん」


口から滑り出たことばに、ナミさんが驚くほどの素直さで頷いた。
そのまま早足でアパートまで歩いていく彼女の背中を一瞬遅れて追いかける。

──そんなことよりおれの告白聞こえてた?
食事のあとそう尋ねたら、ナミさんは「聞いてない」と不自然に目を逸らした。




15/03/02 Sanji Happy Birthday!!

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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一声いただければ喜んで遊びに行きます。

足りん
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