OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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サッチとの買い物は楽しかった。
車で15分ほど走ったところにある何だかお洒落な建物。
レトロっていうのかな、こういうのって。
一歩入ってビックリした。
知らない野菜とか、見たことない色の果物とか、
普段のスーパーとはちょっと違う。
何か外国みたいだ。
そう言うとサッチはそうだろうそうだろう、と満足げに笑う。
輸入食品を沢山置いているその店はサッチのお気に入りだという。
「すっごいね、こんなとこでいつも買い物してんの?」
「いんや、普段使いにゃ向かねェっしょ、このテの店は」
んじゃ何で、と言う顔をアンはして、
「楽しいだろ?」
ん?と聞かれてアンはコクリと素直に頭を振る。
よしよし、
「んじゃ買うぞー!今日はもう何でも買ってよし!お菓子も解禁!
「マジで!?3個でもいいの!?」
ズコッと入れた気合が空回りとなったサッチは、
「あ、いや、だってマルコがいっつも2個までって怒る」
・・・どこのお母さんか。
「・・・まぁ、好きに」
「でも、いいや、うん、今日は居ないもんね。よーっし!」
アンはふるふると頭を左右に振って、パッと笑った。
「怒られた時にはサッチがいいって言ったって言おう」
うん、と頷く小娘はすでに菓子売り場へ向かおうとしている。
いやいやそれはちょっと勘弁と思いつつ、
*
「サッチすごい、天才、カッコいい、最高」
「おお、もっと褒めて褒めて」
ダイニングのテーブルでひと匙すくって口に入れたアンは、
スープをすすりながらのアンを微笑ましく見ながら、
作りながら食わせながら、たまに自分もつまみながら、
行儀は悪いかもしれないが、楽しいのは断然こっちのほうである。
「それ食ったらお前はプチトマトのヘタを取れ」
「はーい」
イモの皮剥きはどうやらなくなったらしい。
アンは上がり込んだサッチの家、テーブルの椅子へ座りつつ、
じゃんじゃん出される料理を着々と食べ、
家に入ってすぐにキッチン以外の場所はいろいろまずいもんがいっ
とウィンク付きで言われたが、
誰もいい歳こいたオッサンの部屋を漁りたくはない。
けれど珍しいには違いないのでくるくるとあちこち見回して、
「・・・意外に片付いてて綺麗だね」
素直に口に出すと後頭部をぽすんとはたかれ、
もちろんふざけているに決まっている。
「はいはい、
サッチはアンの視界からパタンとベッドのある部屋の扉を閉じて、
そうして今に至るのだが、
独り暮らし(・・・だと思う)にしてはキッチンが大きくて、
サッチの担当している雑誌にはグルメなんとかとか美味しいレシピ
このレイアウトには大層説得力がある。
単なるお料理好きのおっさんではないということだ。
ジュワーッという食欲をそそる音がしてきた。
同時にものすごくいい匂い。
二口のコンロの片方では何かが炒められ、
何だろうとアンがキッチンへ意識をやる。
「油跳ねっからこっち来んなよー」
「うん、何揚げてるの?」
「カエル」
「!?」
アンはさっきの店の冷凍コーナーで見かけたラベルのラインナップ
さすが輸入系、
「うそうそ、ワニもスズメもカエルも買ってませんって」
「買う奴いんのかな・・・サッチ食ったことある?」
「おー、あんぜ」
「ど、どう?」
「ま、普通?」
「ふ、普通?」
「俺は鶏のが好きってくらいかな、へいおまち」
ぎゃー!唐揚げだ!唐揚げって考えた奴天才!いただきます!
とアンは一気にしゃべって箸で塊を掴むと口へ放り込んだ。
「おわ!お前揚げたて」
熱っの声とともにピクピクと痙攣する小娘一名。
だから言わんこっちゃない、とサッチはコンロの火を止め、
冷凍庫を開けてアンに氷の塊を差し出した。
四角くない、酒とかに入れるようなごつごつした透明の塊。
舐めとけ、と言いつつアンの口には少々大きかった事を悟り、
押し当てる為のタオルを取りに一度キッチンを離れた。
すると玄関から微かにダースベイダーのテーマが聞こえる。
気持ちが沈む着メロはマルコの設定で、同時に思い出す。
そういえば帰宅した際、
サッチはとりあえずアンにタオルを渡すのが先だと脱衣所へ行き、
案の定溶けた水滴をどうしたらいいかわからず氷を握りしめたアン
その姿に苦笑して悪い悪いとタオルを投げ、
アンを迎えに行ってから2時間程。
(さすがお姫様盗られりゃ死ぬ気で仕事もするか)
サッチはマルコの仕事がやたら増えた事に気付いていた。
あの選好みの激しいオッサンに何があったのかは知らないが、
・・・というのは嘘で、当然最近の封筒攻撃の結果だろう。
マルコの腹は決まったというわけだ。
まぁ、もともとの仲介はあそこの出版社との話だったようだから、
義理欠くとあとあと面倒になる業界なのも織り込み済みなので、
アンの部屋に置き忘れを装ってまで追加で投入したものも、
そして、アンの元気の無い理由はこのあたりにあるのでは、
(にしても、やりゃァできる癖によ)
サッチはちょくちょく締め切りに無理を言うマルコの言い分を、
次からは絶対に聞かないと心に決めた。
そして原稿欲しい時にはアンの連れ出しに限るな、とも。
そもそもそんな理由など抜きでサッチはアンを構いたいのだが、
マルコへのいい建前だ。
まぁ、封じられそうではあるが。
「へいへい、今出るって」
扉を一つ開けると、遮られていた音量が玄関でこだましている。
下駄箱の上で主張する暗黒卿のテーマは正直テンションあがらない
設定対象とすばらしくマッチングしていると思うので長い事そのま
電話はこちらに向かう車内からなのかもしれない。
追加で買うモンあるかよぃ、とかまぁそんなとこだろう。
サッチは呑気に通話のボタンを押そうとしたが、
タッチの差で切れてしまう。
「ありゃ」
すぐさま着信アリの表示を押して、
何気なく履歴を見て、思わず唸った。
(・・・冗談)
性別が女だったら、間違いなく通報レベルのこの着信の数。
携帯放置かつキッチンでの作業音でまったく気付けなかったとはい
この数はなんだ。
男でもこれは怖ぇよ、と突っ込んだところでハタと思った。
そういえば、机の上に出しっ放しで飯を食ってたアンの携帯は、
一度だって鳴ったか?
背筋にじわりと嫌な気配を感じた瞬間、
再びサッチの手の中で、
ハナノリさんのあとがき
→
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また雨だ・・・。
アンはどんより気分に輪を駆けるニュースを眺めながら、
テレビに背を向けるようにして転がる。
昨日までは雨で、今日は一日降りそうで降らなくて、
そして天気予報が外れないなら、
土曜日のバイトはシフトの調整で丸々休み。
日曜日はもともと休み。
ので、2日連続の休みと言う非常に素敵な具合なのに・・・
アンは床に寝そべったまま適当に手を伸ばして、
何度もやるのにちっとも手が届かない。
横着をしただけ損だったことにより一層苛立ち、
それに包まって丸くなった。
心臓がじくじくする。
お腹の辺りもモヤモヤする。
滅多に調子を崩すことなんてないのが売りの自分だったはずなのに
一体どうしたっていうんだろう。
アンはマルコの部屋で夕飯を食べて、
このところマルコは異常に忙しそうなのだ。
(この辺、重い)
アンは繭の中で体を一層縮めながら胸のあたりを抱きしめるように
最近、ちょくちょく感じるこの重さ。
最初に感じたのはいつだろう。
ああ、あれだ、
マルコに好きだと言われる前、
この部屋に、あたしが来る前に住んでいた人の事を聞いた時、
それがマルコの彼女だと知った時。
勘違いだと分かって、
それからもうひと月近く経つのに・・・・
アンがずっとずっと気付いていて、
そして気付かないフリをしていることがひとつ。
あの紅茶のティーバックは相変わらずマルコのキッチンのところに
紅茶全般が嫌いになってしまいそうなそれ。
中身がどれだけあるのかもしれない、ただの小さな紙の箱。
たとえマルコが清算済みの関係だと整理をつけていても、
過去ここに誰か別の女の人が、
(あれ、もう、・・・・見たくない)
捨ててしまおうかと思った。
マルコはコーヒーしか飲まないのだから、
別段これが無くなったとして何も困らないだろう。
けれど、どうしてもできなかった。
マルコがどういう意図でそれを残しているのかが分からない以上、
アンには迂闊に手が出せない。
(
手を出して、捨ててしまえば、
その行動自体が些細な嫉妬か子供っぽい駄々だと思われそうで。
このひと月、嬉しい事がいっぱいあった。
落ち着かなくて、でも顔がにやけるようなこともあった。
得意じゃないけど、でも嫌じゃない。そんなことが沢山。
けれどそれ以上に面倒で、
紅茶の事だけじゃない。
ふとした瞬間、アンはマルコの昔の彼女の影を見る。
それは完全に妄想で、マルコには恐らく何も見えていない影。
同じ部屋に住み、同じように暮していれば、
同じシチュエーションが前にもあったんだろうか。
その時もやっぱりマルコは今みたいに笑ったり、
その人の頭を撫でたり、
ご飯を食べたりしていたんだろうか。
この部屋で。
そんなことを一度考えれば、
その日はもう止められなくなる。
マルコはよくアンを丸めこもうとするけれど、
正面からの告白と、
そして半年以上も前に終わって未練のみの字も無いと言ったことは
それを疑うのはマルコに酷い。
そのくらいアンだってちゃんとわかっている。
だから、勝手に見える彼女の影が嫌だなんて、
・・・・・マルコには言えない。
「でも、・・・・ヤなんだよ」
頭を撫でてもらうのも、
ご飯を食べるのも、
低く笑ってしょーがねぇよぃって言われるのも、
抱きしめられるのも、キスをされるのも、
この部屋とマルコの部屋でされること全て、
前例があるのかもしれないとそう思う環境が嫌で、
そう思ってしまう自分がもっと嫌で、
ここに引っ越さなければマルコと会えてもいないのに、
アンは最近ここから別のどこかへ逃げてしまいたい気持ちになって
てってれれー、と携帯がアンの気持ちとは裏腹に、
この音は・・・・
(サッチからのメールだ)
アンは相手ごとに音を変えるなんて機能は使った事も無い。
が、以前サッチが遊びに来ていた時に勝手に設定をしていった。
それ以来サッチからのメールと電話だけは確認しなくてもすぐわか
案外この機能は便利なものだ。
というわけでアンはマルコではなくサッチだけは識別可能仕様とい
世間的に見ればいささか不思議な携帯を丸くなった中から探し当て
ローテーブルの上に置いてあったので、
パチンと開くと、新着メールのマーク。
開けばそこにはまるでいつもの調子でしゃべってるかのようなサッ
絵文字や顔文字がたくさんで、
アンは少し気持ちが和んだものの、
面倒になってサッチの番号へ電話を掛けると、
『アンちゃーん、たまにはメールで返事ちょーだい。
「打つの面倒なんだもん」
「どっかのオッサンみたいなこと言わないの」
似て来たとかやめてー、
アンはこっちだって願い下げ、
『どしたのアンちゃん、何か声こもってねぇ?』
「あー、うん、いま布団の中だから」
『・・・ってことはこれはピロートークか!?』
「何それ」
『ああ、いや、うん、まぁいいや』
サッチは適当に誤魔化して、
アンはサッチへの来訪お料理リクエストには答えずに、
「あのさ・・・」
『?』
「サッチ、明日マルコに用事ある?」
『あー、まぁあるとすりゃ原稿早く寄越せって言う程度?ま、
だからアンちゃんにメールしたんですよー?とサッチは笑う。
アンはサッチのこういう気の遣わせない上手なところがとても好き
ホッとして、何でも話してしまいたくなる。
「だったらさ、あたしがサッチの家、行っちゃ・・・」
駄目かな?
うっわ!何この破壊力、そんな可愛いおねだり、
しかも無自覚で!なんて恐ろしい子!
サッチは一瞬ウェルカム万歳を叫びそうになり、
そしてマルコにお宅のお姫様もうちょっとちゃんと教育しなさいよ
無自覚で男のお家に行きたい発言とか安易にするのは駄目だろう。
相手俺だからこれ穏便に済むのよ?
なんて危なっかしいのを抱えたんだかザマ―ミロ、
さらにアンには、そういう技はマルコにだけ使いなさい、
てかそれは死ぬほど羨ましいじゃねぇかマルコのド畜生、とも・・
さて、
しかし今までにこんなことを言いだした事の無いアンには何か理由
声に元気がないのだってそのせいなんだろう。
サッチは電話口でふっと笑うと、聞いた。
『マルコ忙しくて構ってくんねぇの?』
「そんなんじゃ・・・ない」
ふむ、とサッチは見えるはずはないが片眉を上げる。
『じゃ喧嘩したんか?』
「うぅん」
おや、外れた。
いよいよこれは何だろうとサッチが首を捻っていると、
アンからポツリと呟きが返る。
「・・・この部屋、ちょっと離れたい」
それっきりアンは黙ってしまった。
要するに、どっかへ行きたいと。
可愛い妹のようなアンが言うのなら、
『よっしゃ!んじゃ明日昼前に迎えに行っちゃる!
死ぬほど食わせてやるから覚悟しろ?何て素敵な雨のお休み遊び!
アンは美味しいもの三昧の予定よりも、
何より出かけられるその事にホッと息をつく。
「ありがとサッチ」
『礼はいいから明日ものすごい気合で芋の皮を剥け』
謎の指令をして、あ、
アンはその付け足しには曖昧に返事をして同じく通話のボタンを切
何で芋?とアンは少しだけおかしくなって笑った。
点けっぱなしになっていたテレビの左上隅には、
けれど明日を示す傘マークを、
**
ガチャ、バタン、という重たいドアの開閉音。
聞こえたそれに、
マルコは時間の感覚が昨夜からおかしいよぃ、と時計を見る。
深夜まで書いて、少し寝て、なぜかすぐに目が覚めて、
筆が乗る時にはそれを止めないというよりは止まらないのがモノ書
夜・・じゃねェ・・・飯、より眠ぃ
そうぼやけた頭の隅で思い、そういえばチャイムが鳴らねぇな、
買いだしなり、様子見なり、
それは少し異質なことだった。
凝り固まった体を机から引き剥がしてドアを押せば、
むわっとする湿気は当然雨が降り出したからで、
そしてビクリと驚いたようにマルコを見るアンの態度にも眉根は寄
「・・・どっか出んのかよぃ」
「あ、うん」
こっちの都合を考えずにどこかへ引っ張り出そうとやってきたのか
アンの身体は階段の方へ流れかけている。
「サッチと買い出し行って飯作る」
その名前に階下を見下ろせば、見慣れた車が雨の中停車していた。
そんな予定は聞いてねェ、
マルコはそうかよぃ、と頷いた。
ヤツは何だかんだとアンを構うが、
そもそも厭わしいというのは今に始まった事ではない。
「・・・俺ァ仕事が詰まってて」
「わかってる、眠くて死にそうって顔してるもん」
アンはピッとマルコの鼻先に指を示すと少し笑った。
とりあえず死なない程度に頑張ってね、
ひらひらと手を振ると階段を下りていく。
その何とも色気のない励ましに、よいと適当に相槌を打ちながら、
機嫌を損ねた、というわけでもない。
至っていつも通りの、普通のアンだ。
昨日飯を食ってる時も別に普通、
だったはず。
玄関まで見送った際に交すやりとりやらあれやこれやも別に普通、
だったはず。
別れ際にちょっかい掛けんな、といちいち照れて噛みつくのも、
最後だから構うのが普通だろぃ、と笑ってやれば、
第三者が傍で見ていれば大層げんなりするに違いないやりとりも、
もはやここひと月での立派な『普通の日常』だ。
なのに、今のアンは・・・どこか
(俺がおかしいのかねぃ)
決してスッキリしているとは言い難い脳みそなので、
マルコはふ、
他の男と二人っきりでどこかにやるというのは、
非常に面白くない。
が、
数を増やした仕事は予想以上に面倒で、
(ま、買い出しじゃすぐに戻ってくんだろぃ)
隣の部屋でぎゃーぎゃーと賑やかに昼飯を作られるまえに、
マルコはあと少し筆を進めるかと部屋へ戻る。
車が走り去った後姿は最後まで確認しなかった。
そして1時間経っても二人は戻らなかった。
アンの携帯は繋がらない。
(・・・電波の届かない買い出し先ってのはどこだよぃ)
フランスパンは呼び出し音は鳴るくせに、一向に出る気配がない。
マルコの原稿が全く進まなかったのは言うまでも無かった。
ハナノリさんのあとがき
→
【ハロー隣のクラッシャー】続編オマケとして、ハナノリさまにいただきましたよ!
ウェルカム恋のファンタジスタ
郵便受けにしろ表札にしろそれらは家屋に比例しての付属品だから
当然このアパートの物も例にもれず申し訳なさ程度のブツ。
仕事上大判の郵便物が多いので大抵がドアの下、
よって鍵を開けてまずする事は狭い玄関に落ちている届け物を拾う
よっぽど大事なものは手渡しされるので、別段困る事もない。
全くもって困ることはなかった。
・・・・・・ほんの一週間ほど前までは、だ。
*
(いよいよ嫌がらせじゃねェか)
マルコはサンダルと靴とが窮屈そうに並んだ玄関の上、
いくつも散らばる封筒を鬱陶しそうに回収した。
宛名は見なくても分かる。
出版社は一目でわかる様に封筒の色に違いをつけている事が多い。
薄いグリーンの封筒と、同じく薄い水色の封筒。
こんなことをするのはあいつんとことあいつんとこくらいだ。
大事な仕事の書類をこんな風に投げ込む事はありえないので、
マルコは開封しなくともその中身を悟る。
グリーンの方があの女編集者で、水色の方はフランスパン頭。
二人がその場に居たら、
うっかり幻聴でその音が聞こえそうになり、
女編集者の方は現場(というほど大層なものでもないが)
別にナニをしていたところを目撃されたわけじゃなし、
いくらでも訂正はできたが言い募ればそれだけ不利な要素を与える
ムキになっていると思われたくもないので適当な時間を空けて、
握りつぶして多少不格好になった契約破棄の書類を返送し終える。
と、入れ違いで新たな書類攻撃が始まった。
最初は何かと思い開封した。
出て来たのは不動産情報。
仕事部屋と、寝室、リビング、キッチン
どう考えても一人で暮らすには設備が整い過ぎてやしないか?
その意図くらい聞かなくても分かる。
分かるがこれ幸いと乗り換えるほど単純な作りはしていないつもり
この手のことは無視するに限るが、
水色の封筒と違って、
マルコは最初の封筒の中身を確認してすぐに編集者の番号を呼び出
『はい、お疲れ様です』
「どういうつもりだよぃ」
『届きました?あ、
「だったら」
『何か問題ありました?』
「
電話口の向こうでは、
『空気読んでそういう条件の物件にしたつもりですけど?』
「・・・いらねェ世話だよぃ」
『マルコさんのとこ行くの結構遠くて面倒なんです』
編集者が足の苦労をサラッと仕事相手に愚痴るなと内心で突っ込ん
じゃぁもういいと手を切るほどマルコも生活にゆとりがあるわけで
「家賃だけで原稿何回分が飛ぶか、
それとも何か、
マルコの嫌味にも電話口の声は押されなかった。
むしろいい笑顔をしていると声だけで分かる位の音が返ってくる。
『ええ、通りましたよ』
「・・・は?」
『とりあえず今抱えてるコーナーが好評なので、
「おい」
『あとは新しく創刊する雑誌があるのでそっちで一本。
で、あと新しい試みで対談形式の依頼がいくつか、で・・・
はい退路断ちました、
この沈黙がどんな表情の元繰り出されているのかは、
それだけのものを新たに抱えれば、
当然それは別の出版社のものでしかないので、
「・・・即断できる話じゃねェよぃ」
『そうですね』
「また電話する」
お待ちしてます、
*
引っ越し、ねェ・・・
一度はするつもりだった。
極論住んでいる場所はどこだってかまわないし、
女と別れてからでも別にそこに面影の何やらを見るわけじゃなし、
住み続けるのに何ら不都合は無かった。
ただ仕事の資料で手狭になって来た気はして、
たったそれだけの理由で転居を決めていたのに。
隣に越してきた馬鹿はそんな計画を見事にブチ壊した。
・・・まぁ、本人には壊した気はないのだろうが、
結果として見事に綺麗サッパリの大破だ。
マルコは靴を脱ぐのに邪魔だ、ということと、
とりあえず薄いグリーンの封筒は回収する。
チャイムの音と名前を呼ぶ声とノブを回して鍵が空いてれば突撃突
水色封筒の方は放置しようかと思ったが、
ばさりとまとめてベッドの上に放る。
(物件の条件変えたって、
腕時計を外し、机に置いたついでに煙草を取る。
火をつけ、深く吸い込むと長く吐いた。
何を思ったのかは知らないが、
たかだかそんな時間経過で一体何の決断をしろと?
マルコは内心でアホらしいと吐きながら、
頭の一方ではいつからの関係なのか向こうは知る由もないのだから
だから許容できる、とはならないが。
カラカラ、と安いサッシの音をさせながら窓を開ければ、
(飯、どうすっかねぃ)
そんな事を考えていたときに、外から何故か声がする。
「マルコ飯!」
白い衝立の向こうでサンダルをつっかけたような音がしたので、
「俺はお前ェの飯じゃねェよぃ」
人を丼物のように呼ぶな、とマルコはいい、
げらげらと笑う声とすげー不味そう、絶対ェ食べないという声。
「ね、そっち行っていい?一緒に飯食お?」
「・・・って何食うってんだよぃ」
「職場の人からおすそ分け貰ったんだ」
「?」
「何かお祝いでちらし寿司たくさん作ったんだって」
ていうか顔見ずに話すのって変だな、
そして10秒もしない内にアンの部屋の玄関扉が開閉する音が聞こ
続いてマルコの玄関ノブが回りかけて、そして途中で止まる。
そして何故かまたアンの玄関がガチャ、バタンと開く音がして、
マルコは何やってんだと首を捻りつつ、
そうこうしているうちにアンが色々抱えてやって来た。
テーブルの上に頂き物の折り詰めを大事そうに置くと、(
脇に挟んだ水色の封筒をアンはマルコへ渡す。
「はいコレ」
「・・・何だよぃ」
「知らない、サッチが何か忘れてったみたい」
宛名にマルコって書いてあるからマルコにだよね、
今までに封筒に名前を書かれたことなど一度もない事実をアンに言
マルコがフランスパンへの報復をどうするか考えているとも知らず
ストンとローテブルにスタンバイしたアンは、
あ、お茶お茶、
「・・・あれ?マルコ、あたしのマグはー?」
「昨日部屋戻る時に一緒に引き上げてったんじゃねェのかよぃ」
「げ、そうだっけ?」
「つーかお前ェは自分のモンをこっちに置き過ぎなんだよぃ」
「いいじゃんマルコのとこのキッチン殆ど使わないんだし」
サラッとアンはマルコの苦言を聞き流し、
「?マルコのもないよ?机?」
コーヒーをいれっぱなしで机に放置ということはよくあるのでアン
「いや?・・・あー・・・そういやこの2,3日見てないねぃ」
紛失する類の物でもないので、
「お前んとこで飯食った時に、
カチカチカチ、
とりあえず見てくると言ってその場に立ちあがった。
「それにしてもさァ」
ああもう、と何故かアンは投げやりな雰囲気だ。
壁越しに自室のキッチン辺りを見やって、
「いちいち靴履いて玄関回って取りに行くとかすげー面倒!
そう思わねェ?
「ベランダの衝立無くしても、結局サンダル履かなきゃだし」
やっぱ部屋が繋がるのがベストだよなぁ、
「じゃちょっと見てくる」
そう言ってバタンとマルコのドアは閉まった。
「部屋が繋がる・・・ねェ」
隣人からクラスチェンジした後に、
本人から脱隣人を所望されるとはなかなか喜ばしいが、
単に面倒が減るだけという非常に合理的な理由だろう。
その下地にしょっちゅうこの部屋に来ることがあり、
来たいと言う気持ちがあるのはわかってはいるが。
さて、とマルコは棚に突っ込んだ封筒の数々を一瞥する。
そこにアンから渡された水色も追加で突っ込もうとして・・・・・
ハナノリさんのあとがき
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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