OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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この船に乗って、わかったことがたくさんある。
人と人の肌が触れ合う喜び。
視線を合わせて微笑むときの暖かさ。
名前を呼ばれて振り向けば、誰もが笑っているなんて、そんなこと。
(一年前の私は知らなかったわ)
昼下がりのベゴニア
「ロービーン!!」
「呼んだ?」
「おうっ!なあアレ見てみろ!」
「? キッチン、でしょう」
そう言うと、まるでだめだなぁというようにルフィは首を振った。
「誰もいない」
「そうね」
「つまり?」
珍しく遠まわしなことを言う船長に、私は少し考えて、思いついたことを口にした。
「盗み食いし放題?」
「しししっ!やっぱお前賢ェな!」
「で、それが何か?またコックさんに怒られるわ」
「うむ、そこで君に相談がある」
「?」
「オレが盗むのを手伝ってくれ!」
どーん、とそれはもう効果音がつきそうなほど胸を張って彼はそう言った。
私は苦笑を零すばかり。
「どうすれば?」
「あのな・・・」
結果としてことに及ばなかったのは、作戦会議中にコックさんのかかとがルフィの頭上に落ちたから。
「テメェロビンちゃんに片棒担がせていいご身分じゃねぇか、アァン!?」
「いひゃい。はんじ、いひゃいでふ」
「ごめんなロビンちゃん、」
コックさんはぐるりと巻いた眉を少し下げて、申し訳なさそうに私を見やる。
「いいのよ」
「ひょら見ろ!ほびんはやひゃひーんだ!(ほら見ろ!ロビンは優しいんだ!)」
「黙れクソゴム」
ばちんとルフィの頬が跳ねたところで後ろからナミの声が私を呼んだ。
「ロビン、ちょっといいかしら?」
「ええ、どうかした?」
「ここなんだけど、少し古い本だから表記がわからなくて・・・」
「ああ、これはこの字と同じ意味よ」
「へぇ!ありがと、ロビン!あんたが書いてくれたこの言語の解読表のおかげでぐっと読みやすくなったわ!」
「ふふ、よかった」
彼女の大好きなみかんと同じ色の髪を揺らし、ナミは太陽のように笑う。
釣られるようにして私も微笑むと、チョッパーの焦ったような声が私を呼んだ。
「・・・うっ、うっ・・・ロビン・・・失敗した・・・」
「あらあら、泡だらけね、」
「突然爆発したんだ。劇薬じゃなくてよかった・・・」
「何を作ろうとしていたの?」
「あのな、ほら、このページなんだけど。この植物で日焼け止めができるんだ。ナミとロビン、気にするだろ?」
「あら、嬉しいわね」
「・・・失敗しちゃったけど」
「ふふっ、私も見ていていいかしら?」
「うんっ!あ、オレが間違えそうだったら止めてくれ!この植物とこっちの植物、見分けにくいんだ」
「ええ」
忙しく動くチョッパーの手をじっと眺めてしばらく経つと、それは綺麗な琥珀色の液体が出来上がった。
「・・・できた・・・!」
「すごいわ、ありがとう」
「ううん、ロビンがいてくれたからよかったんだ。間違いかけたしな、オレ!」
ふふっとふたりで笑みを零すと、じんわりと私たちを包む空気があったまった気がした。
「あ、そういえば朝からウソップとフランキーが呼んでたよ」
「あら、行ってみるわ」
二人の工房に足を踏み入れると、相変わらずな鉄の匂いと火薬の香。
「私のことを探していたと聞いて」
「ああ!そうだお前、ちょいとスーパーな頼みがある」
「いや、別に全然スーパーじゃねぇけどな?ほら、ここ。この隙間に機材が落ちちまったんだ。俺らの指じゃ太くて入らねぇから、ロビンのハナの手で取ってもらえねぇか?」
「お安い御用よ」
ふわりと機械にハナの手を咲かせ、狭い隙間にもぐりこみ、目当てのものを手探りで探し当てた。
「どうぞ」
「おっ!助かったぜ!サンキュー!」
「まったく、フランキーの奴が落としちまってよ。船大工のくせにしょうがねぇぜ」
「んだと長ッ鼻ぁ!もとはといえばテメェがだなぁ、」
やけに楽しそうに言い合いを続けるふたりを尻目にそばにあったミニメリー号の模型を撫でていると、外から私を呼ぶ声が。
「呼ばれてるみたい」
「ああっ、ロビンちゃん!探してたぜぇ!頼みがあるんだけどいいかな?」
「えぇ」
「あの棚の奥にルフィの奴がジャム隠してやがったんだけど、あいつゴムで伸びて置いたから取れねぇんだ。ロビンちゃんのハナの手でとってくんねぇかなぁ?」
「ふふっ。大変ね」
ハナの手で持ち上げた瓶は予想以上に軽くて、アラ、と声が漏れた。
「・・・空になってるわ」
「あんにゃろう」
ぴきりと青筋を立てた彼は、少し表情を緩めて、こちらに向き直った。
「ありがとうロビンちゃん。もうすぐおやつにするから、マリモの野郎起こしてきてくんねぇかな?」
「了解」
ゾロはいつも日の光が半分あたる芝生の上で寝ているはず。
そう思いキッチンのドアをあけたところで、目に入ったのはこの眩しい太陽とはあまり縁のなさそうな彼。
「ヨホホホホ!ロビンさん、今日はお忙しそうですね!」
「そうかしら。もうすぐおやつだそうよ」
「おやっ!それは嬉しいですね!サンジさんのおやつは絶品ですからね!・・・ところでパ」
「お断りするわ」
「手厳しいっ!!」
ヨホホホホ!と外見とは似ても似つかない朗らかな笑い声を上げたブルックは、どこからともなくバイオリンを取り出した。
「ロビンさんを見てそのお美しさで曲を思いつきました!」
「あら、嬉しいこと言うわね」
ゆったりとした旋律で奏でられるそれを目を閉じて聞き入っていたが、すぐに私はゾロを起こさなければならなかったのだと思い出す。
「ごめんなさい、ブルック。私ゾロを起こしてこなければ」
「いやいや引き止めてしまってすいません。どうぞ」
紳士的な手つきで先を促されて、ありがとうと言ってから甲板を見渡した。
いつもの場所で大いびきをかく彼を見つけ、ふっと笑みを零す。
「・・・ゾロ、ゾロ。起きて頂戴。おやつだそうよ」
おやつ、と聞いて飛び起きる人とは違うとわかっているけれど。
しかし彼はうっすらと目を開けた。
「・・・ん?あぁ、やけに静かな声だと思ったらテメェか」
「ふふっ、おはよう。キッチンでおやつが待ってるわ」
くああああ、と大口を開けて欠伸をする彼はまだまだ眠たそうで、思わず、起こしてごめんなさいと口をついていた。
しかしゾロは訝しげに目を細めたあと、いや、と微かに首を振る。
「クソコックにたたき起こされるよりテメェに起こされるほうが寝起きの気分がいい」
がしがしと芝生と似た色の頭をかきむしりながら、ゾロはキッチンへと歩き出す。
ちょうどいいタイミングで、キッチンの窓からコックさんの元気な声が飛び出してきた。
それと共に、絶叫とも取れるような歓声。
その声の主と格闘するコックさんの怒号。
知らず知らずのうちに、私は天を仰いでいた。
(あぁ、)
私が必要だ、と言葉にして伝える人は誰もいないけれど。
ここにいるだけでそれが全身に伝わってくる。
それがこんなにも嬉しいなんて。
「ナミすぁーん!ロビンちゅぁーん!!レディたちの分のおやつはちゃんと確保してあるからねー!!」
その言葉に、私は小さな笑いを零してキッチンへと一歩を踏み出した。
────…あのね、私今日誕生日なの。
そう伝えたら、あなたちはどんな顔を見せてくれるのかしら。
遅ればせながらロビンちゃん誕生日おめでとう!
(ベゴニア:幸福の日々)
人と人の肌が触れ合う喜び。
視線を合わせて微笑むときの暖かさ。
名前を呼ばれて振り向けば、誰もが笑っているなんて、そんなこと。
(一年前の私は知らなかったわ)
昼下がりのベゴニア
「ロービーン!!」
「呼んだ?」
「おうっ!なあアレ見てみろ!」
「? キッチン、でしょう」
そう言うと、まるでだめだなぁというようにルフィは首を振った。
「誰もいない」
「そうね」
「つまり?」
珍しく遠まわしなことを言う船長に、私は少し考えて、思いついたことを口にした。
「盗み食いし放題?」
「しししっ!やっぱお前賢ェな!」
「で、それが何か?またコックさんに怒られるわ」
「うむ、そこで君に相談がある」
「?」
「オレが盗むのを手伝ってくれ!」
どーん、とそれはもう効果音がつきそうなほど胸を張って彼はそう言った。
私は苦笑を零すばかり。
「どうすれば?」
「あのな・・・」
結果としてことに及ばなかったのは、作戦会議中にコックさんのかかとがルフィの頭上に落ちたから。
「テメェロビンちゃんに片棒担がせていいご身分じゃねぇか、アァン!?」
「いひゃい。はんじ、いひゃいでふ」
「ごめんなロビンちゃん、」
コックさんはぐるりと巻いた眉を少し下げて、申し訳なさそうに私を見やる。
「いいのよ」
「ひょら見ろ!ほびんはやひゃひーんだ!(ほら見ろ!ロビンは優しいんだ!)」
「黙れクソゴム」
ばちんとルフィの頬が跳ねたところで後ろからナミの声が私を呼んだ。
「ロビン、ちょっといいかしら?」
「ええ、どうかした?」
「ここなんだけど、少し古い本だから表記がわからなくて・・・」
「ああ、これはこの字と同じ意味よ」
「へぇ!ありがと、ロビン!あんたが書いてくれたこの言語の解読表のおかげでぐっと読みやすくなったわ!」
「ふふ、よかった」
彼女の大好きなみかんと同じ色の髪を揺らし、ナミは太陽のように笑う。
釣られるようにして私も微笑むと、チョッパーの焦ったような声が私を呼んだ。
「・・・うっ、うっ・・・ロビン・・・失敗した・・・」
「あらあら、泡だらけね、」
「突然爆発したんだ。劇薬じゃなくてよかった・・・」
「何を作ろうとしていたの?」
「あのな、ほら、このページなんだけど。この植物で日焼け止めができるんだ。ナミとロビン、気にするだろ?」
「あら、嬉しいわね」
「・・・失敗しちゃったけど」
「ふふっ、私も見ていていいかしら?」
「うんっ!あ、オレが間違えそうだったら止めてくれ!この植物とこっちの植物、見分けにくいんだ」
「ええ」
忙しく動くチョッパーの手をじっと眺めてしばらく経つと、それは綺麗な琥珀色の液体が出来上がった。
「・・・できた・・・!」
「すごいわ、ありがとう」
「ううん、ロビンがいてくれたからよかったんだ。間違いかけたしな、オレ!」
ふふっとふたりで笑みを零すと、じんわりと私たちを包む空気があったまった気がした。
「あ、そういえば朝からウソップとフランキーが呼んでたよ」
「あら、行ってみるわ」
二人の工房に足を踏み入れると、相変わらずな鉄の匂いと火薬の香。
「私のことを探していたと聞いて」
「ああ!そうだお前、ちょいとスーパーな頼みがある」
「いや、別に全然スーパーじゃねぇけどな?ほら、ここ。この隙間に機材が落ちちまったんだ。俺らの指じゃ太くて入らねぇから、ロビンのハナの手で取ってもらえねぇか?」
「お安い御用よ」
ふわりと機械にハナの手を咲かせ、狭い隙間にもぐりこみ、目当てのものを手探りで探し当てた。
「どうぞ」
「おっ!助かったぜ!サンキュー!」
「まったく、フランキーの奴が落としちまってよ。船大工のくせにしょうがねぇぜ」
「んだと長ッ鼻ぁ!もとはといえばテメェがだなぁ、」
やけに楽しそうに言い合いを続けるふたりを尻目にそばにあったミニメリー号の模型を撫でていると、外から私を呼ぶ声が。
「呼ばれてるみたい」
「ああっ、ロビンちゃん!探してたぜぇ!頼みがあるんだけどいいかな?」
「えぇ」
「あの棚の奥にルフィの奴がジャム隠してやがったんだけど、あいつゴムで伸びて置いたから取れねぇんだ。ロビンちゃんのハナの手でとってくんねぇかなぁ?」
「ふふっ。大変ね」
ハナの手で持ち上げた瓶は予想以上に軽くて、アラ、と声が漏れた。
「・・・空になってるわ」
「あんにゃろう」
ぴきりと青筋を立てた彼は、少し表情を緩めて、こちらに向き直った。
「ありがとうロビンちゃん。もうすぐおやつにするから、マリモの野郎起こしてきてくんねぇかな?」
「了解」
ゾロはいつも日の光が半分あたる芝生の上で寝ているはず。
そう思いキッチンのドアをあけたところで、目に入ったのはこの眩しい太陽とはあまり縁のなさそうな彼。
「ヨホホホホ!ロビンさん、今日はお忙しそうですね!」
「そうかしら。もうすぐおやつだそうよ」
「おやっ!それは嬉しいですね!サンジさんのおやつは絶品ですからね!・・・ところでパ」
「お断りするわ」
「手厳しいっ!!」
ヨホホホホ!と外見とは似ても似つかない朗らかな笑い声を上げたブルックは、どこからともなくバイオリンを取り出した。
「ロビンさんを見てそのお美しさで曲を思いつきました!」
「あら、嬉しいこと言うわね」
ゆったりとした旋律で奏でられるそれを目を閉じて聞き入っていたが、すぐに私はゾロを起こさなければならなかったのだと思い出す。
「ごめんなさい、ブルック。私ゾロを起こしてこなければ」
「いやいや引き止めてしまってすいません。どうぞ」
紳士的な手つきで先を促されて、ありがとうと言ってから甲板を見渡した。
いつもの場所で大いびきをかく彼を見つけ、ふっと笑みを零す。
「・・・ゾロ、ゾロ。起きて頂戴。おやつだそうよ」
おやつ、と聞いて飛び起きる人とは違うとわかっているけれど。
しかし彼はうっすらと目を開けた。
「・・・ん?あぁ、やけに静かな声だと思ったらテメェか」
「ふふっ、おはよう。キッチンでおやつが待ってるわ」
くああああ、と大口を開けて欠伸をする彼はまだまだ眠たそうで、思わず、起こしてごめんなさいと口をついていた。
しかしゾロは訝しげに目を細めたあと、いや、と微かに首を振る。
「クソコックにたたき起こされるよりテメェに起こされるほうが寝起きの気分がいい」
がしがしと芝生と似た色の頭をかきむしりながら、ゾロはキッチンへと歩き出す。
ちょうどいいタイミングで、キッチンの窓からコックさんの元気な声が飛び出してきた。
それと共に、絶叫とも取れるような歓声。
その声の主と格闘するコックさんの怒号。
知らず知らずのうちに、私は天を仰いでいた。
(あぁ、)
私が必要だ、と言葉にして伝える人は誰もいないけれど。
ここにいるだけでそれが全身に伝わってくる。
それがこんなにも嬉しいなんて。
「ナミすぁーん!ロビンちゅぁーん!!レディたちの分のおやつはちゃんと確保してあるからねー!!」
その言葉に、私は小さな笑いを零してキッチンへと一歩を踏み出した。
────…あのね、私今日誕生日なの。
そう伝えたら、あなたちはどんな顔を見せてくれるのかしら。
遅ればせながらロビンちゃん誕生日おめでとう!
(ベゴニア:幸福の日々)
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がしゃんとあちこちでジョッキがぶつかる。約1600人に9人加わったところでたいした変わりはないのだが、まだ日も暮れきっていないというのに盛り上がりは常にピークのままだ。
エースとルフィは肩を組んだまま、多くの白ひげクルーに囲まれたまま昔話に勤しんでいた。
「でよぉ、ルフィお前オレが狩った猪一人で食っちまって」
「でもあんときゃエースが」
「「ぐぅ」」
「寝るんかいっ!!」
寝たり食ったりと忙しい兄弟を半ば呆れながらも眺める白ひげクルーたち。
そんな様子を遠くで見遣りながら、ナミとロビンは頬を緩めた。
「あれがルフィのお兄さん?そっくりね」
「でしょ」
くすくすと肩を揺らしていると、その肩を無骨な掌に包まれた。
「おじょーちゃんたち女の子同士で飲んでねぇでオレらの相手しましょー」
「…誰?」
ふふんと笑った男はリーゼントを揺らし、何故か得意げな顔をした。
「オレは4番隊隊長サッチ兄さんだよーっ。ちっこい海賊団のくせにかわいこちゃんばっかり連れちゃって、あんたのキャプテンもやるね」
「そりゃどーも」
べたべたと肩やら腰やらに触れてくるしつこさに辟易しつつ、酒のせいか振り払う気にもならないナミは軽くあしらう。横目でロビンを見ると、ロビンはなんともおかしな服装の綺麗な男に声をかけられていた。
隣に腰掛けた男はジョッキを傾けにまりと笑う。
「ナースのねぇちゃんとはまた一味違うあんたみたいなのも、いいなあ、若いし」
「ふふ、とかいって色気たっぷりのナースに毎日引っ掛かってんでしょ」
「よくおわかりで」
くっと笑いあっていたとき、だだだだだっと物凄い足音がしたかと思うと、ひゅっと風の音ともにサッチが飛んでいった。酒樽に突っ込んだサッチは蹴られた背中をさすりながら身をおこす。
「って~、テメェ、」
「ナミさんに気安く触んじゃねぇ」
料理中だったのか腕まくりもそのままのサンジは、驚きに目を丸めるナミの腰を引き寄せた。
へぇ、とサッチは目を細める。
「あんたの女か」
「そうだ」
「ちょっ…!」
慌ててサンジを見上げたが、腰を締め付ける力が強まるだけだった。
「手ェだしてんじゃねぇよ、おっさん」
「かっちーん!ちょっとかわいこちゃん手に入れたからって調子乗ってんじゃねぇぞ、ガキ」
「んだとォ、古風な髪型しやがって」
「そっちこそ器用に眉毛なんて巻いてんじゃねぇ」
ぐるると唸りあう二人は頭を付き合わせ睨みあう。めんどくさくなったナミはサンジに抱え込まれたまま酒に口をつけた。
「…あんた、コックか」
「そうだ文句あっかクソリーゼント」
「…ここァ正々堂々料理勝負で手を打とうじゃねぇか」
「…なんの勝負だよ…だがその話、乗った」
「行くぜ!」
一睨みを最後にそれぞれのキッチンへと二人は駆け込んだ。サンジのほうは、もちろんナミに断りを入れ額にキスも忘れない。
「…なんなのよ、もう…」
「あんたみたいなのもいるんだな」
いまいちこの騒がしさに馴染まない男が、ロビンの隣に腰を下ろした。
「ここは興味が尽きなくていいわ」
ふふと肩を揺らすと、イゾウは口端を上げながら猪口に口をつけた。
「あんたニコ・ロビンだろ」
突然の名指しに思わず顔を向けると、イゾウは少しだけ目を合わせた。
「別にたいして知ってるわけじゃねぇよ。ただオレも歴史好きなもんでね」
「…そう」
「騒々しいのは、好きじゃないかい?」
ロビンは少し考え、首を横に振った。
「似合わないとは言われるけど」
「はっ、オレもだ」
少しの間があって、くっと二人から笑いが漏れる。ふわりと酒が香った。
「…で、あのたぬきはペットか」
「いいえ、船医さんよ。それにたぬきじゃなくてトナカイ」
「…へぇ、世の中わかんないね」
そういうチョッパーはというと、白ひげに付いていたナースたちに触られ抱きしめられ、されたい放題で目を回している。男達に羨ましげな目を向けられたことは言うまでもない。
甲板の先ではオーケストラが始まった。白ひげ海賊団の音楽家たちとブルックの共演に、宴のボルテージは天井を知らず上がり続ける。
ウソップとフランキーは白ひげ海賊団員と飲み比べ中らしいが、ウソップのほうはすでにへたっている。その傍でエースがウソップの火薬に火を付け暴発。悲痛な叫びとともに、フランキーの髪が焦げた。
グララララ、と豪快な笑い声が波の音と喧騒を掻き混ぜた。
「あんたがこの船の二番かい」
声に引かれてゾロが視線だけを送った先には、昼間ルフィが捕まえた鳥…いや、人間。
「はっ、さあな」
どす、と腰を下ろしたマルコはゾロの空いたグラスに酒を注いだ。わりぃな、とゾロが嬉しげに片眉を上げた。
「あんたもガキのくせによく飲むねい。…まぁあのねーちゃんも相当ザルだが」
そう言いマルコが目をやったのは、先程からサッチとサンジの料理対決に付き合わされてたまらないといったふうに酒を飲み続けるナミの姿。
「はっ、違いねぇ」
思わず笑いを漏らすと、ふっとマルコの眼光も柔らかくなる。二人でグラスを傾けぶつけると、かちんと軽い音がした。
「お隣りよろしいかな?」
コック二人の意味のない小競り合いに閉口していたナミに、男が丁寧に声をかけた。
「へ?あ、どーぞ」
その男ビスタは、ワインを注がれたグラスをナミに差し出した。それに口をつけると、甘露が口内に広がり思わず目元が綻ぶ。
「…ねぇ、この船の男って、みんなこんなふうなの?」
「というと?」
「ほら、女の子に優しいっていうか、甲斐性無しっていうか」
「いや、皆が皆といいわけではない。…まあ男所帯ゆえ、飢えてはいるが」
半ば苦笑しつつそう答えると、そうみたい、とナミも笑みを返した。
ところで、とビスタが甲板の中央を指差す。
「あれは放っておいていいのか?」
目をやった先には、ハート型の煙を吹きながらナースに言い寄るサンジの姿。
「ああ、いいのよいつもだから」
そう言い目を逸らすと、隣からふっと小さな笑いが漏れた。思わず顔をしかめる。
「…なによ」
「…男の嫉妬は醜いが、女性のそれはまた違う」
「…別に、」
「男というのは妬いてほしいものだ。なあサッチ?」
「ごもっとも」
突然後ろから聞こえた声にナミが振り向くと、サッチがにまりと口角を上げ立っている。
「選手交代だな」
そう言うとビスタは腰をあげ、マルコたちのほうへと歩いていった。ビスタがいた場所にサッチが腰を下ろす。
「…で、なんの話だっけ」
「もう終わったわ」
「はっ、冷たいのねおじょーちゃん」
サッチはちろりとサンジとナースに目をやると、にやりと笑みを浮かべた。
「…何笑ってるの、おじさん」
「ちょっ…!あのね、オレってば敏感なお年頃なんだからそういうこと言っちゃダメなんです!」
へーそう、と軽くあしらうナミにサッチは口をとがらしたが、すぐに口端を上げた。
「…おっさんを怒らせると怖いんだぜ」
ぐっとサッチの顔、というよりリーゼントが迫ってきたかと思うと、鎖骨のあたりに柔らかな感触。首元に酒臭さが漂った。
「ひゃっ…!」
何すんのよとげんこつを振り上げた瞬間、再び突風とともにサッチが姿を消した。否、飛んでいった。
座るナミの視界には、細く長い黒の足。
「テンメェ…!なんだ今のナミさんのやらしい声は!ナミさん!あの変態に何されたんだ!?」
「…何って」
がくがくと肩を揺すられ、サンジの額に薄く滲んだ汗を眺めた。
吹き飛んだサッチはなんとも不敵な笑みを浮かべ立ち上がる。
「へっ、自分はナースの姉ちゃん口説いてたくせに」
「んなっ、あれは」
「あれは?」
返事を待つナミを決まり悪そうに見て、くしゃりと頭を掻いた。
「…ナミさんが、見てたから」
「はあ?」
「…いい、恰好ワリィから。ごめんなさいオレが悪いです」
その場に足を折り、サンジはぺこりと頭を下げた。
「…なによ」
そうは言うものの、サンジが言わんとすることなどナミにも分かっている。
「…馬鹿ね」
「おっさん怒らせると怖いっつっただろ?」
いつの間にか二人の前に立っていたサッチは、くしゃりと両手で二人の髪を撫でた。
「ほんとね」
「けっ、男に撫でられるなんて気色ワリィ」
「まったくいいねぇ若いコは。いいもんみたぜこりゃ」
そう言いひらひらと手を降りながらその場を後にするサッチの背中を見送っていると、つと鎖骨に違和感。細く硬い指がそこを這っていた。
「…キス、された?」
「…そんなんじゃないわよ」
「…まったくあんたは」
次の瞬間には肩を掴まれがぶりとそこを噛まれた。
「ちょ」
「黙って」
ちくりと小さな痛みを感じ、最後にぺろりとひと舐めして顔が離れる。
「馬鹿!痕付けてどうすんのよ!」
「消毒、とマーキング」
へへ、と目を垂らすサンジに呆れた顔を見せると次は口を塞がれた。
遠くからの冷やかしといいなあ若いってなどという声を聞きながら、不承不承ながらナミは目を閉じる。酒の甘さとタバコの苦さが心地よかった。
真っ黒の海に月だけが浮かび、酔い潰れた男たちのいびきの大合唱が鳴り響く。
そんな中、ルフィがぱちりと目を覚ました。
「…肉…」
隣で口を開けて眠る兄を跨いでぺたぺたと甲板をさ迷っていると、向こうに大きな背中が見えた。
足音に気付いた白ひげは顔を向けた。
「おう、エースの弟。起きてたのか」
「…にく」
「グララララ、まだ喰う気かァ」
少し抑えた笑い声を上げると、肉探しを諦めたのか眠気に負けたのか、へたりとその場に座りこみこくりこくりと舟を漕ぐ。
「…エースの弟…」
「…んぅー?」
「…ガキのワリにゃあ、いいクルーじゃねェか」
「…ああー?当たり前だろ…オレの仲間だ…」
かくっと落ちるルフィの首を横目にグララと笑い、しばらく揺れる波間を眺める。
「…エースを、頼むぜ」
「…あー?…エースはおっさんの…仲間だ…ろ」
「…あァ…オレの、息子だ…」
「…?…」
次の拍子にがくりと頭が落ちたので、とんと肩を付いてやるとルフィは背中から甲板に倒れ込みそのままいびきをかきだした。
誰もが宴の熱に酔い、頬を赤らめ夢を見る。
その姿を、月だけが見ていた。
エースとルフィは肩を組んだまま、多くの白ひげクルーに囲まれたまま昔話に勤しんでいた。
「でよぉ、ルフィお前オレが狩った猪一人で食っちまって」
「でもあんときゃエースが」
「「ぐぅ」」
「寝るんかいっ!!」
寝たり食ったりと忙しい兄弟を半ば呆れながらも眺める白ひげクルーたち。
そんな様子を遠くで見遣りながら、ナミとロビンは頬を緩めた。
「あれがルフィのお兄さん?そっくりね」
「でしょ」
くすくすと肩を揺らしていると、その肩を無骨な掌に包まれた。
「おじょーちゃんたち女の子同士で飲んでねぇでオレらの相手しましょー」
「…誰?」
ふふんと笑った男はリーゼントを揺らし、何故か得意げな顔をした。
「オレは4番隊隊長サッチ兄さんだよーっ。ちっこい海賊団のくせにかわいこちゃんばっかり連れちゃって、あんたのキャプテンもやるね」
「そりゃどーも」
べたべたと肩やら腰やらに触れてくるしつこさに辟易しつつ、酒のせいか振り払う気にもならないナミは軽くあしらう。横目でロビンを見ると、ロビンはなんともおかしな服装の綺麗な男に声をかけられていた。
隣に腰掛けた男はジョッキを傾けにまりと笑う。
「ナースのねぇちゃんとはまた一味違うあんたみたいなのも、いいなあ、若いし」
「ふふ、とかいって色気たっぷりのナースに毎日引っ掛かってんでしょ」
「よくおわかりで」
くっと笑いあっていたとき、だだだだだっと物凄い足音がしたかと思うと、ひゅっと風の音ともにサッチが飛んでいった。酒樽に突っ込んだサッチは蹴られた背中をさすりながら身をおこす。
「って~、テメェ、」
「ナミさんに気安く触んじゃねぇ」
料理中だったのか腕まくりもそのままのサンジは、驚きに目を丸めるナミの腰を引き寄せた。
へぇ、とサッチは目を細める。
「あんたの女か」
「そうだ」
「ちょっ…!」
慌ててサンジを見上げたが、腰を締め付ける力が強まるだけだった。
「手ェだしてんじゃねぇよ、おっさん」
「かっちーん!ちょっとかわいこちゃん手に入れたからって調子乗ってんじゃねぇぞ、ガキ」
「んだとォ、古風な髪型しやがって」
「そっちこそ器用に眉毛なんて巻いてんじゃねぇ」
ぐるると唸りあう二人は頭を付き合わせ睨みあう。めんどくさくなったナミはサンジに抱え込まれたまま酒に口をつけた。
「…あんた、コックか」
「そうだ文句あっかクソリーゼント」
「…ここァ正々堂々料理勝負で手を打とうじゃねぇか」
「…なんの勝負だよ…だがその話、乗った」
「行くぜ!」
一睨みを最後にそれぞれのキッチンへと二人は駆け込んだ。サンジのほうは、もちろんナミに断りを入れ額にキスも忘れない。
「…なんなのよ、もう…」
「あんたみたいなのもいるんだな」
いまいちこの騒がしさに馴染まない男が、ロビンの隣に腰を下ろした。
「ここは興味が尽きなくていいわ」
ふふと肩を揺らすと、イゾウは口端を上げながら猪口に口をつけた。
「あんたニコ・ロビンだろ」
突然の名指しに思わず顔を向けると、イゾウは少しだけ目を合わせた。
「別にたいして知ってるわけじゃねぇよ。ただオレも歴史好きなもんでね」
「…そう」
「騒々しいのは、好きじゃないかい?」
ロビンは少し考え、首を横に振った。
「似合わないとは言われるけど」
「はっ、オレもだ」
少しの間があって、くっと二人から笑いが漏れる。ふわりと酒が香った。
「…で、あのたぬきはペットか」
「いいえ、船医さんよ。それにたぬきじゃなくてトナカイ」
「…へぇ、世の中わかんないね」
そういうチョッパーはというと、白ひげに付いていたナースたちに触られ抱きしめられ、されたい放題で目を回している。男達に羨ましげな目を向けられたことは言うまでもない。
甲板の先ではオーケストラが始まった。白ひげ海賊団の音楽家たちとブルックの共演に、宴のボルテージは天井を知らず上がり続ける。
ウソップとフランキーは白ひげ海賊団員と飲み比べ中らしいが、ウソップのほうはすでにへたっている。その傍でエースがウソップの火薬に火を付け暴発。悲痛な叫びとともに、フランキーの髪が焦げた。
グララララ、と豪快な笑い声が波の音と喧騒を掻き混ぜた。
「あんたがこの船の二番かい」
声に引かれてゾロが視線だけを送った先には、昼間ルフィが捕まえた鳥…いや、人間。
「はっ、さあな」
どす、と腰を下ろしたマルコはゾロの空いたグラスに酒を注いだ。わりぃな、とゾロが嬉しげに片眉を上げた。
「あんたもガキのくせによく飲むねい。…まぁあのねーちゃんも相当ザルだが」
そう言いマルコが目をやったのは、先程からサッチとサンジの料理対決に付き合わされてたまらないといったふうに酒を飲み続けるナミの姿。
「はっ、違いねぇ」
思わず笑いを漏らすと、ふっとマルコの眼光も柔らかくなる。二人でグラスを傾けぶつけると、かちんと軽い音がした。
「お隣りよろしいかな?」
コック二人の意味のない小競り合いに閉口していたナミに、男が丁寧に声をかけた。
「へ?あ、どーぞ」
その男ビスタは、ワインを注がれたグラスをナミに差し出した。それに口をつけると、甘露が口内に広がり思わず目元が綻ぶ。
「…ねぇ、この船の男って、みんなこんなふうなの?」
「というと?」
「ほら、女の子に優しいっていうか、甲斐性無しっていうか」
「いや、皆が皆といいわけではない。…まあ男所帯ゆえ、飢えてはいるが」
半ば苦笑しつつそう答えると、そうみたい、とナミも笑みを返した。
ところで、とビスタが甲板の中央を指差す。
「あれは放っておいていいのか?」
目をやった先には、ハート型の煙を吹きながらナースに言い寄るサンジの姿。
「ああ、いいのよいつもだから」
そう言い目を逸らすと、隣からふっと小さな笑いが漏れた。思わず顔をしかめる。
「…なによ」
「…男の嫉妬は醜いが、女性のそれはまた違う」
「…別に、」
「男というのは妬いてほしいものだ。なあサッチ?」
「ごもっとも」
突然後ろから聞こえた声にナミが振り向くと、サッチがにまりと口角を上げ立っている。
「選手交代だな」
そう言うとビスタは腰をあげ、マルコたちのほうへと歩いていった。ビスタがいた場所にサッチが腰を下ろす。
「…で、なんの話だっけ」
「もう終わったわ」
「はっ、冷たいのねおじょーちゃん」
サッチはちろりとサンジとナースに目をやると、にやりと笑みを浮かべた。
「…何笑ってるの、おじさん」
「ちょっ…!あのね、オレってば敏感なお年頃なんだからそういうこと言っちゃダメなんです!」
へーそう、と軽くあしらうナミにサッチは口をとがらしたが、すぐに口端を上げた。
「…おっさんを怒らせると怖いんだぜ」
ぐっとサッチの顔、というよりリーゼントが迫ってきたかと思うと、鎖骨のあたりに柔らかな感触。首元に酒臭さが漂った。
「ひゃっ…!」
何すんのよとげんこつを振り上げた瞬間、再び突風とともにサッチが姿を消した。否、飛んでいった。
座るナミの視界には、細く長い黒の足。
「テンメェ…!なんだ今のナミさんのやらしい声は!ナミさん!あの変態に何されたんだ!?」
「…何って」
がくがくと肩を揺すられ、サンジの額に薄く滲んだ汗を眺めた。
吹き飛んだサッチはなんとも不敵な笑みを浮かべ立ち上がる。
「へっ、自分はナースの姉ちゃん口説いてたくせに」
「んなっ、あれは」
「あれは?」
返事を待つナミを決まり悪そうに見て、くしゃりと頭を掻いた。
「…ナミさんが、見てたから」
「はあ?」
「…いい、恰好ワリィから。ごめんなさいオレが悪いです」
その場に足を折り、サンジはぺこりと頭を下げた。
「…なによ」
そうは言うものの、サンジが言わんとすることなどナミにも分かっている。
「…馬鹿ね」
「おっさん怒らせると怖いっつっただろ?」
いつの間にか二人の前に立っていたサッチは、くしゃりと両手で二人の髪を撫でた。
「ほんとね」
「けっ、男に撫でられるなんて気色ワリィ」
「まったくいいねぇ若いコは。いいもんみたぜこりゃ」
そう言いひらひらと手を降りながらその場を後にするサッチの背中を見送っていると、つと鎖骨に違和感。細く硬い指がそこを這っていた。
「…キス、された?」
「…そんなんじゃないわよ」
「…まったくあんたは」
次の瞬間には肩を掴まれがぶりとそこを噛まれた。
「ちょ」
「黙って」
ちくりと小さな痛みを感じ、最後にぺろりとひと舐めして顔が離れる。
「馬鹿!痕付けてどうすんのよ!」
「消毒、とマーキング」
へへ、と目を垂らすサンジに呆れた顔を見せると次は口を塞がれた。
遠くからの冷やかしといいなあ若いってなどという声を聞きながら、不承不承ながらナミは目を閉じる。酒の甘さとタバコの苦さが心地よかった。
真っ黒の海に月だけが浮かび、酔い潰れた男たちのいびきの大合唱が鳴り響く。
そんな中、ルフィがぱちりと目を覚ました。
「…肉…」
隣で口を開けて眠る兄を跨いでぺたぺたと甲板をさ迷っていると、向こうに大きな背中が見えた。
足音に気付いた白ひげは顔を向けた。
「おう、エースの弟。起きてたのか」
「…にく」
「グララララ、まだ喰う気かァ」
少し抑えた笑い声を上げると、肉探しを諦めたのか眠気に負けたのか、へたりとその場に座りこみこくりこくりと舟を漕ぐ。
「…エースの弟…」
「…んぅー?」
「…ガキのワリにゃあ、いいクルーじゃねェか」
「…ああー?当たり前だろ…オレの仲間だ…」
かくっと落ちるルフィの首を横目にグララと笑い、しばらく揺れる波間を眺める。
「…エースを、頼むぜ」
「…あー?…エースはおっさんの…仲間だ…ろ」
「…あァ…オレの、息子だ…」
「…?…」
次の拍子にがくりと頭が落ちたので、とんと肩を付いてやるとルフィは背中から甲板に倒れ込みそのままいびきをかきだした。
誰もが宴の熱に酔い、頬を赤らめ夢を見る。
その姿を、月だけが見ていた。
新世界のどこかの海で、麦わら海賊団と白ひげ海賊団がお目見えです。
本誌設定どこ吹く風で、エースはモビーにいます。そしてティーチはいません。いるかもしれませんが出しません。もちろんサッチは御存命です。
そんな無茶苦茶設定が許せる方のみどうぞ↓
「んぅ!いい日だわー!」
サニー号の甲板、芝生の上で目一杯伸びをしたナミは、その勢いのまま空を仰いだ。
「天候、気圧ともに安定。怖いくらい航海日和ね!」
ロビンはそんなナミを横目に、それはよかったわと頬を緩ませた。
空を割る宴
「うぉーっ!!!ウソップーー!!なんかでっっけぇの釣れたーっ」
「ぎゃーっ!!なんだそりゃーっ!!もはや魚じゃねェー!」
「ルフィすげぇーっ!」
少し離れたところでは子供組が釣りに勤しんでいる。どうも好調らしく、アクアリウムバーの水槽は様々な魚達で溢れていた。
「でかしたルフィ!今夜はその魚で宴だぜ」
サンジはゆるりと紫煙をくゆらせながら品定めるように魚の鱗を撫でた。
「ヨホホホホホ!では景気付けに一曲!」
そうブルックがバイオリンを掲げたとき、低く通る声が船じゅうに響き渡った。それはマストに設置されたスピーカーから。
「でけェ変な鳥が飛んでるぜ」
ゾロは眠そうにあくびを噛み殺し、少し遠くを旋回するような青い鳥を見上げ、そう告げた。
「うわ、おっきい鳥!」
「綺麗ね」
「青い鳥とは縁起がいいじゃねぇか!」
「食おう!あの鳥!ゴムゴムのー…」
一方、ここは世界一の海賊とその海賊船、モビーディック号。
「じゃあオヤジ、行ってくるよい」
「あァ、任せた」
とんと床を蹴ったのは一番隊隊長マルコ。
ぶわりと炎を纏う身体は颯爽と空へと駆け登る。
午後3時のこの時間、いつもの見回りだ。
(…いつもながら、なんにもないねい。)
広くどこまでも続く海を眼下にそろそろ戻ろうかと踵を返しかけたとき、ほんの小さなかけらがマルコの視界に留まった。
(…船、か)
高度を高く保ちながら近付くと、ずんと船は大きくなる。小型ではあるが…そこそこ立派な作りだ。
しかし何より重用なのは、そのメインマストで風にはためくジョリーロジャー。
(海賊船かい…)
面倒なことにならねばいいがと内心舌打ちし、少し高度を下げた。
麦藁帽子にドクロというこの出で立ち、見たことはないがどこかひっかかる。まあルーキーにはかわりないだろうが…麦わらに、海賊…麦わら帽子に、海賊…どこかで聞いた気が…
ぐるぐると思案していると、突如物凄いスピードで伸びてきた何か。
(しまっ…!)
後悔も遅く、ぐっと羽根を掴まれたマルコはその手らしきものが引き寄せるがまま、船へと堕ちていった。
「ルフィてめぇ今日冴えすぎだぜ畜生!あんなでけぇ鳥、丸焼きもいいが…小骨を取り除き弱火でトロトロになるまで赤ワインで煮込むっつーのもこれまた…」
「しししっ!美味そうだ!」
全員が上空を見上げ、落ちてくる鳥を見上げた。
「…え?」
「あ?」
「お?」
「…ひ、ひとーー!?」
どずんっと鈍い音で落ちて来た物体は、どう見ても、男、だった。
ぱちんっとルフィの腕が戻ると同時に体制を立て直した男はゆるりと立ち上がった。
「…やってくれるねい」
マルコは首筋を摩りながら船を見渡した。
(ガキばっかじゃねぇか)
「…てめぇどっかで見たことがあるな」
フランキーが考えあぐねるよう顎に手をやった。
「…不死鳥の、マルコ」
ロビンがぽつりと呟いた言葉に、皆が一様に首を傾げた。
「以前寄った島で手配書を見たわ。この人は…」
「じゃあてめぇっ、海賊かっ!?」
きんと一瞬にして空気が尖る。見張り台から降りて来たゾロが刀を鳴らし、サンジはタバコをくわえなおした。
その男、マルコは悠々と今後のことを考えていた。
(ここでやりあってもいいが…こいつらの発する空気、ただのルーキーってわけでも…ここァ一応報告に言ったほうがいいかねい)
「パイナップルのおっさん!」
「パッ…」
「あんたなんで鳥になれるんだ!?それとも今人間なだけなのか!?」
なんとも間の抜ける質問に、全員が肩の力を抜いた。
ルフィは目を輝かせ、なおもなあなあと話し掛ける。
「あのねぇ、あんた…」
(…ん、この感じ…なんかどこかで…)
そこまで考え、マルコの脳内で散乱していた考えが一気に集結してひとつになった。
この輝かんばかりの瞳、人懐っこい笑い方、そして麦わら帽子。間違いない。
「…おめぇさん…麦わらのルフィかい?エースの弟の」
「エースを知ってんのか!?」
「…オレァ白ひげ海賊団隊長、マルコだよい」
「おぉ!オレは麦わら海賊団船長、ルフィだ!」
つられるようにして自己紹介したルフィの後ろで、ナミとウソップが絶叫した。
「しししし白ひげーーっ!?」
「そういやエースのやつ、そんなこと言ってたなあ」
ルフィはぽんと手を打ってから、再びマルコに向き直った。
「パイナップルのおっさん!」
「その呼び方やめろい」
「エースいるんだろ!?会わせてくれよ!」
「待てルフィ」
ゾロはルフィの首根っこを引っつかみ下がらせる。
「その前に、俺達ァ海賊だ。そっちに戦意はあるのか、ないのか」
「はんっ、戦意剥き出しの目でそりゃあないよい。まぁやってもいいが…あんたらの船が沈んでもいいならねい」
「…ああん?」
鋭い眼光がぶつかり、空気がぱちりと爆ぜる。チョッパーは肩をすぼめたが、ルフィは目を輝かせてマルコに向き直った。
「おっさん!オレら今日宴なんだよ!エース連れて来て、みんなでやろうぜ!」
「ちょっ…ルフィ!」
ナミが慌ててルフィの耳を極限まで伸ばす。
「あんったねぇ、勝手なことばっかり言って!うちの食費が持たないでしょ!」
その会話に、マルコはくっと笑いを漏らした。
「あー、まあ、この緑剣士以外は戦意がないのはよくわかったよい。とりあえずオレは船に戻る。今後のことは船長に相談だよい。…まああんたのことを喋っちゃ、あいつが黙ってねぇだろうがな」
あとあんた、とマルコはナミに視線をあわした。びくりとナミの肩が揺れ、慌ててルフィの背後に身を隠す。
「うちは1600人の大所帯なんでねい。しかもみんな宴好きときた。こっちのぶんはこっちで用意させるよい」
そう言い、ふっと鼻から息を抜くよう笑うと、マルコは再び身体を炎に包ませる。ルフィたちから歓声があがった。
「じゃ、船に戻るよい」
飛び上がった大きな鳥はふわりと数枚の燃える羽根を残して颯爽と、空へと舞い上った。その幻想的な様に全員がほうと息をつく。
「…いい男じゃない」
「んナミさんっ!?」
ナミがぽつりと零した言葉にサンジが涙を散らす。そんなやりとりを掻き消すように、ルフィが叫んだ。
「エースに、会えるーっ!!!!」
船に帰って一番に会ったのは、あろうことか渦中の人物、エースだった。また盗み食いでもして怒られたのか、頬は真っ赤に腫れ上がりエースの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。おそらくサッチの覇気入り愛の拳が炸裂したんだろう。
「あ、マルコおかえり」
「あ~あぁ、よい」
「?なんかあったか?」
おめぇの弟に会ったんだよい、なんて言ったらこいつは騒いで行くと言って聞かないはず。まずはオヤジへの報告が先だ。
そう結論付け、なんでもねぇとだけ言って船長室へと足を向けた。
オヤジに報告中、オヤジは至極楽しげに話を聞いていたが、『麦わらのルフィ』とそう口にした途端、ばたんと荒々しく戸が開いた。
「げっ」
「…ルフィが、いるのか」
エースは真摯な顔付きでマルコを見つめる。ああと頷くと、次の瞬間にはエースの瞳に輝きが増した。
(この顔、さっき見たよい…)
エースはぴょいっとオヤジの膝に乗り、その身体にしがみついた。
「オヤジ!お願いだ!ルフィに会わせてくれぇぇぇ」
「グララララ、おめぇの頼みと言われちゃあ、黙ってらんねぇなァ」
「じゃあオヤジ、船を寄せるのかよい」
「…そうだな、マルコ、準備頼む」
「…了解」
内心やっぱりと思いつつ、オレは各隊長を召集するために踵を返した。後ろではエースの叫びとオヤジの笑い事が重なり、船を揺らした。
「ルフィに、会えるーっ!!!!」
ずんずんと近付く船の頭には、白い鯨があしらわれたモチーフ。
「…うぉ、やっぱ、でけぇな…」
ついに、サニー号に寄り添うように止められた船を見上げ、ウソップは感嘆の声をあげた。
ゾウとアリ、とまでは言わないが、相当の大きさのモビーディックは圧巻だ。
そのモビーディックから、ひょっこりとオレンジのテンガロンハットが覗いた。
「ルフィッ!」
「!エースッ!エースエースッ!!」
迷う事なくモビーディックに手を伸ばしゴムの反動で自らを飛ばす。ごぃんと音を立て、ルフィとエースの頭がぶつかった。しかし当人たちはそんなこと気にも留めず、再会の抱擁にあけくれていた。
「エーースーー!!」
「ルフィーーー!!」
頬を寄せ合い喜びを噛み締める兄弟の姿に、白ひげ海賊団の男たちは呆気にくれる。
(…これが、エースの、弟…)
「元気だったか、ルフィ!」
「あったりまえだろ!エースはなんで頬っぺた腫れてんだ?」
「…ああ、これは名誉の負傷だ」
「なんか知らねぇけどカッコイイな!エースは!」
弟の手間見栄を張ったエースに突っ込むのは酷な気がしてクルー達が黙っていると、ずんと大きな足音とともに船が揺れた。
「オヤジ!」
「グララララ、てめぇがエースの弟か…話は聞いてるぜェ」
「うほー、おっさんなんでそんなにでっけぇんだ?」
「すげぇだろ!オヤジはでかいんだ、なにもかも!」
「グララララ、テメェの船はオレにゃ小さすぎる。テメェの仲間とやらもこっちに連れてこねぇか」
いいのか!?と意気込むルフィにオヤジが頷くと、ルフィは呼んでくる!とサニー号へと戻っていった。
白ひげは今だ頬を緩めたままのエースを見下ろしその髪をぐしゃりと撫でると、クルーたちに向き直り、声を張り上げた。
「息子どもォ!!」
宴だ!!!
後編へ
本誌設定どこ吹く風で、エースはモビーにいます。そしてティーチはいません。いるかもしれませんが出しません。もちろんサッチは御存命です。
そんな無茶苦茶設定が許せる方のみどうぞ↓
「んぅ!いい日だわー!」
サニー号の甲板、芝生の上で目一杯伸びをしたナミは、その勢いのまま空を仰いだ。
「天候、気圧ともに安定。怖いくらい航海日和ね!」
ロビンはそんなナミを横目に、それはよかったわと頬を緩ませた。
空を割る宴
「うぉーっ!!!ウソップーー!!なんかでっっけぇの釣れたーっ」
「ぎゃーっ!!なんだそりゃーっ!!もはや魚じゃねェー!」
「ルフィすげぇーっ!」
少し離れたところでは子供組が釣りに勤しんでいる。どうも好調らしく、アクアリウムバーの水槽は様々な魚達で溢れていた。
「でかしたルフィ!今夜はその魚で宴だぜ」
サンジはゆるりと紫煙をくゆらせながら品定めるように魚の鱗を撫でた。
「ヨホホホホホ!では景気付けに一曲!」
そうブルックがバイオリンを掲げたとき、低く通る声が船じゅうに響き渡った。それはマストに設置されたスピーカーから。
「でけェ変な鳥が飛んでるぜ」
ゾロは眠そうにあくびを噛み殺し、少し遠くを旋回するような青い鳥を見上げ、そう告げた。
「うわ、おっきい鳥!」
「綺麗ね」
「青い鳥とは縁起がいいじゃねぇか!」
「食おう!あの鳥!ゴムゴムのー…」
一方、ここは世界一の海賊とその海賊船、モビーディック号。
「じゃあオヤジ、行ってくるよい」
「あァ、任せた」
とんと床を蹴ったのは一番隊隊長マルコ。
ぶわりと炎を纏う身体は颯爽と空へと駆け登る。
午後3時のこの時間、いつもの見回りだ。
(…いつもながら、なんにもないねい。)
広くどこまでも続く海を眼下にそろそろ戻ろうかと踵を返しかけたとき、ほんの小さなかけらがマルコの視界に留まった。
(…船、か)
高度を高く保ちながら近付くと、ずんと船は大きくなる。小型ではあるが…そこそこ立派な作りだ。
しかし何より重用なのは、そのメインマストで風にはためくジョリーロジャー。
(海賊船かい…)
面倒なことにならねばいいがと内心舌打ちし、少し高度を下げた。
麦藁帽子にドクロというこの出で立ち、見たことはないがどこかひっかかる。まあルーキーにはかわりないだろうが…麦わらに、海賊…麦わら帽子に、海賊…どこかで聞いた気が…
ぐるぐると思案していると、突如物凄いスピードで伸びてきた何か。
(しまっ…!)
後悔も遅く、ぐっと羽根を掴まれたマルコはその手らしきものが引き寄せるがまま、船へと堕ちていった。
「ルフィてめぇ今日冴えすぎだぜ畜生!あんなでけぇ鳥、丸焼きもいいが…小骨を取り除き弱火でトロトロになるまで赤ワインで煮込むっつーのもこれまた…」
「しししっ!美味そうだ!」
全員が上空を見上げ、落ちてくる鳥を見上げた。
「…え?」
「あ?」
「お?」
「…ひ、ひとーー!?」
どずんっと鈍い音で落ちて来た物体は、どう見ても、男、だった。
ぱちんっとルフィの腕が戻ると同時に体制を立て直した男はゆるりと立ち上がった。
「…やってくれるねい」
マルコは首筋を摩りながら船を見渡した。
(ガキばっかじゃねぇか)
「…てめぇどっかで見たことがあるな」
フランキーが考えあぐねるよう顎に手をやった。
「…不死鳥の、マルコ」
ロビンがぽつりと呟いた言葉に、皆が一様に首を傾げた。
「以前寄った島で手配書を見たわ。この人は…」
「じゃあてめぇっ、海賊かっ!?」
きんと一瞬にして空気が尖る。見張り台から降りて来たゾロが刀を鳴らし、サンジはタバコをくわえなおした。
その男、マルコは悠々と今後のことを考えていた。
(ここでやりあってもいいが…こいつらの発する空気、ただのルーキーってわけでも…ここァ一応報告に言ったほうがいいかねい)
「パイナップルのおっさん!」
「パッ…」
「あんたなんで鳥になれるんだ!?それとも今人間なだけなのか!?」
なんとも間の抜ける質問に、全員が肩の力を抜いた。
ルフィは目を輝かせ、なおもなあなあと話し掛ける。
「あのねぇ、あんた…」
(…ん、この感じ…なんかどこかで…)
そこまで考え、マルコの脳内で散乱していた考えが一気に集結してひとつになった。
この輝かんばかりの瞳、人懐っこい笑い方、そして麦わら帽子。間違いない。
「…おめぇさん…麦わらのルフィかい?エースの弟の」
「エースを知ってんのか!?」
「…オレァ白ひげ海賊団隊長、マルコだよい」
「おぉ!オレは麦わら海賊団船長、ルフィだ!」
つられるようにして自己紹介したルフィの後ろで、ナミとウソップが絶叫した。
「しししし白ひげーーっ!?」
「そういやエースのやつ、そんなこと言ってたなあ」
ルフィはぽんと手を打ってから、再びマルコに向き直った。
「パイナップルのおっさん!」
「その呼び方やめろい」
「エースいるんだろ!?会わせてくれよ!」
「待てルフィ」
ゾロはルフィの首根っこを引っつかみ下がらせる。
「その前に、俺達ァ海賊だ。そっちに戦意はあるのか、ないのか」
「はんっ、戦意剥き出しの目でそりゃあないよい。まぁやってもいいが…あんたらの船が沈んでもいいならねい」
「…ああん?」
鋭い眼光がぶつかり、空気がぱちりと爆ぜる。チョッパーは肩をすぼめたが、ルフィは目を輝かせてマルコに向き直った。
「おっさん!オレら今日宴なんだよ!エース連れて来て、みんなでやろうぜ!」
「ちょっ…ルフィ!」
ナミが慌ててルフィの耳を極限まで伸ばす。
「あんったねぇ、勝手なことばっかり言って!うちの食費が持たないでしょ!」
その会話に、マルコはくっと笑いを漏らした。
「あー、まあ、この緑剣士以外は戦意がないのはよくわかったよい。とりあえずオレは船に戻る。今後のことは船長に相談だよい。…まああんたのことを喋っちゃ、あいつが黙ってねぇだろうがな」
あとあんた、とマルコはナミに視線をあわした。びくりとナミの肩が揺れ、慌ててルフィの背後に身を隠す。
「うちは1600人の大所帯なんでねい。しかもみんな宴好きときた。こっちのぶんはこっちで用意させるよい」
そう言い、ふっと鼻から息を抜くよう笑うと、マルコは再び身体を炎に包ませる。ルフィたちから歓声があがった。
「じゃ、船に戻るよい」
飛び上がった大きな鳥はふわりと数枚の燃える羽根を残して颯爽と、空へと舞い上った。その幻想的な様に全員がほうと息をつく。
「…いい男じゃない」
「んナミさんっ!?」
ナミがぽつりと零した言葉にサンジが涙を散らす。そんなやりとりを掻き消すように、ルフィが叫んだ。
「エースに、会えるーっ!!!!」
船に帰って一番に会ったのは、あろうことか渦中の人物、エースだった。また盗み食いでもして怒られたのか、頬は真っ赤に腫れ上がりエースの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。おそらくサッチの覇気入り愛の拳が炸裂したんだろう。
「あ、マルコおかえり」
「あ~あぁ、よい」
「?なんかあったか?」
おめぇの弟に会ったんだよい、なんて言ったらこいつは騒いで行くと言って聞かないはず。まずはオヤジへの報告が先だ。
そう結論付け、なんでもねぇとだけ言って船長室へと足を向けた。
オヤジに報告中、オヤジは至極楽しげに話を聞いていたが、『麦わらのルフィ』とそう口にした途端、ばたんと荒々しく戸が開いた。
「げっ」
「…ルフィが、いるのか」
エースは真摯な顔付きでマルコを見つめる。ああと頷くと、次の瞬間にはエースの瞳に輝きが増した。
(この顔、さっき見たよい…)
エースはぴょいっとオヤジの膝に乗り、その身体にしがみついた。
「オヤジ!お願いだ!ルフィに会わせてくれぇぇぇ」
「グララララ、おめぇの頼みと言われちゃあ、黙ってらんねぇなァ」
「じゃあオヤジ、船を寄せるのかよい」
「…そうだな、マルコ、準備頼む」
「…了解」
内心やっぱりと思いつつ、オレは各隊長を召集するために踵を返した。後ろではエースの叫びとオヤジの笑い事が重なり、船を揺らした。
「ルフィに、会えるーっ!!!!」
ずんずんと近付く船の頭には、白い鯨があしらわれたモチーフ。
「…うぉ、やっぱ、でけぇな…」
ついに、サニー号に寄り添うように止められた船を見上げ、ウソップは感嘆の声をあげた。
ゾウとアリ、とまでは言わないが、相当の大きさのモビーディックは圧巻だ。
そのモビーディックから、ひょっこりとオレンジのテンガロンハットが覗いた。
「ルフィッ!」
「!エースッ!エースエースッ!!」
迷う事なくモビーディックに手を伸ばしゴムの反動で自らを飛ばす。ごぃんと音を立て、ルフィとエースの頭がぶつかった。しかし当人たちはそんなこと気にも留めず、再会の抱擁にあけくれていた。
「エーースーー!!」
「ルフィーーー!!」
頬を寄せ合い喜びを噛み締める兄弟の姿に、白ひげ海賊団の男たちは呆気にくれる。
(…これが、エースの、弟…)
「元気だったか、ルフィ!」
「あったりまえだろ!エースはなんで頬っぺた腫れてんだ?」
「…ああ、これは名誉の負傷だ」
「なんか知らねぇけどカッコイイな!エースは!」
弟の手間見栄を張ったエースに突っ込むのは酷な気がしてクルー達が黙っていると、ずんと大きな足音とともに船が揺れた。
「オヤジ!」
「グララララ、てめぇがエースの弟か…話は聞いてるぜェ」
「うほー、おっさんなんでそんなにでっけぇんだ?」
「すげぇだろ!オヤジはでかいんだ、なにもかも!」
「グララララ、テメェの船はオレにゃ小さすぎる。テメェの仲間とやらもこっちに連れてこねぇか」
いいのか!?と意気込むルフィにオヤジが頷くと、ルフィは呼んでくる!とサニー号へと戻っていった。
白ひげは今だ頬を緩めたままのエースを見下ろしその髪をぐしゃりと撫でると、クルーたちに向き直り、声を張り上げた。
「息子どもォ!!」
宴だ!!!
後編へ
ロビンが、珍しい話をしてくれた。
「ある冬島ではね。明日、12月24日はクリスマスイブというの」
「クリス・・・って、なんだそりゃ?」
「昔から伝わるお祭りのようよ。25日がクリスマス。で、前日がクリスマスイブ」
どうかいつまでも清らかに
夜ご飯を食べながらのことだった。
オレは今日のシチューがいつもより美味しい気がして、サンジのところにおかわりを貰いにいっているときだったから、ロビンの話を聞き逃さないように慌てて席へと戻る。
「この日はね、聖なる日と言われていて、大切な人に愛を語らう日なのよ」
「へぇ、ロマンチック」
「でしょう」
ふふ、とナミとロビンが顔を見合わせて笑いあう。こういうときのふたりは綺麗で可愛くて、好きだ。
サンジが少しそわそわしてるのは気のせいじゃないと思う。
「それだけではなくてね、クリスマスには子供たちの元に素敵なプレゼントがやってくるのよ」
「ぷれぜんとぉ?」
「そう。サンタクロースといってね、私も本の挿絵で見ただけなのだけど。赤い服を着て白いひげを生やしたおじいさんなの。そりにたくさんのプレゼントを積んでね、そう、そのそりはトナカイさんが引くのよ」
「えっ、オレ!?」
「あんたじゃないでしょ」
トナカイがそんな役を引き受けていたとは。オレも鼻が高い。
「なんだその、サンタクロースって奴は慈善事業でもしてるのか」
「そうね、よくはわからないけど・・・夜子供たちの枕元に吊るされた靴下の中にプレゼントを入れていってくれるんですって」
「なんだサンタ・・・って、めっちゃいい奴じゃねえか!!!」
ルフィはそう器用に叫び、口の中のものをごきゅんと呑み込んだ。
「サンター!!オレにもプレゼントをくれー!!肉がいいぞー!!」
「オレは追加用の火薬が欲しいぜ!」
「オレァ新しいフライ返しが欲しい。焦げ付いてきた」
「はん、てめぇの欲しいモンを人に頼むなんざするもんじゃねぇぞクソコック」
「んだとこの芝生がァ」
あ、また始まった。
「私は部屋用のコーヒーメーカーが欲しいわ」
「金金金」
・・・ナミ、
苦笑していると、いつのまにか全員の視線がオレに集まっていた。
「で、チョッパーは?」
「・・・え、オレ?欲しいもの?」
うんうんと皆が一様にうなずく。
うーん、欲しいもの、欲しいもの・・・新しい本はこの前の島で買い置いたからまだたくさんあるし・・・薬品も切れていない。オレはみんなみたいに着ているものも多くないわけだし、飾るものは必要ない。
「へへ、オレは今ないや」
えー!!とルフィが叫ぶ。もったいねぇじゃねぇかとウソップ。
え、だってサンタクロースって一人なんだろ?それでいろんな子供のところを回るんだろ?そんな忙しい人がオレの所に来るはずがない。ましてやオレはトナカイだ。配る側なんだ。
「まあ、チョッパーらしいけどね」
その物欲のなさ、とナミが紅茶をすすった。
そのあとはルフィが紙に『肉肉肉』とたくさん書いて、届くようにと海に流していた。
サンタに届くといいな、ルフィも、皆のも。
オレはかちりと小さなランプを消した。
この男部屋で起きているのはもうオレだけだ。あちこちでいびきの大合唱が鳴り響く。
オレは読んでいた医学書を本棚に戻してハンモックへと飛び乗った。
船の揺れにあわせるように揺れるこの寝床にもだいぶ慣れた。
・・・あともう少しで、クリスマスイブ。
・・・それから、おれの・・・
ううん、いいんだ。そんなことは。明日はもっとすごい日なんだから。聖なる日なんだから。
そう頭の中で繰り返しながら、オレは眠りへと落ちていった。
・・・ッパー、チョッパー、
「・・・ん・・・何・・・」
かすかに俺を呼ぶ小さな声に引かれるように瞼を上げる。部屋は薄明るく、明け方だとわかった。目の前にはロビンが。
「おはよう」
「・・・ん、おはようロビン・・・何かあっ・・・」
ロビンの細長い指がおれの口を閉ざす。ロビンは微笑んだままオレにハンモックから降りるよう示した。
言われるがまま降りると、そのまま手を引かれる。
「???」
わけがわからずロビンに促されて男部屋のドアをあけた。
アレ、そういえば部屋に誰もいない。みんな朝が早いなあ。
「誕生日おめでとう、チョッパー!!!」
ぼんやりとした朝日の中、似合わないほど軽快な炸裂音と歓声。目の前で花火が上がり、オレの顔をかたどる火花が散った。
「・・・え?」
目をしばたかせるオレに、ウソップが呆れるように笑った。
「おいおい、自分の誕生日も忘れちまったのか」
え、誕生日…?ああそうだ、今日はオレの… でも、でも、昨日そんな話一度もしなかったじゃないか。昨日はみんなでクリスマスの話をして、オレの誕生日の話なんて、
「まったく、本当に欲がないんだから」
信じられないわ、とナミが呟く。
ぐるりとオレを囲むようにみんなが立っていて、背の高いみんなを見上げるようにすると朝日が目に入ってすごく眩しい。まだ、今の状況に頭がついていかないみたいだ。
「はい、私からはこれを」
ロビンが艶やかな紫のリボンを結んだ本を差し出してくれた。それはずっしりとオレの手になじむ。
「…これ…」
「以前から持っていたものだけど、医学について興味深いことがたくさん書いてあるのよ」
ふわりと古い紙の匂いが香る。それはロビンの匂いでもあった。
「…ありがとう」
「オレからはこれだっ」
そうウソップが差し出したのは、透明な酒瓶。…あれ、中に何か…
それを受け取って驚いた。すげぇっ!!
「瓶の中に船が入ってる!」
「へへ、すげぇだろ、ボトルシップっていうんだぜ」
瓶の中にはマストが何本も立つ船が、細かいところまでしっかりと組立てられている。
あれ、でもこの船見たことがないけど。そう口にすると、ウソップが誇らしげに腕を組んだ。
「よく見てみろ」
促されるまま視線を落とし船を見る。 …海賊旗がある。 …凛々しい髑髏と、その回りに散るピンク。
この旗は…
「…ドクターの…」
「お前が掲げる髑髏は麦藁海賊団のだけどな」
この旗はお前の信念だから、お前とお前のオヤジさんだけのモンだ、と。
忘れたことなんかなかった。いつもオレは心の中でこの旗に助けられていた。それが今、目の前にある。
「…ありがとう、ウソップ」
「あたしはあげるものが何もなかったから、あんたの今までの借金全部チャラにしてあげるわ」
そう言って、ナミはとんとオレの額を小突いた。ナミがお金に関して寛容になってくれるなんて。恐ろしくていくら貯まっているのか聞けないほどだったのに!
「ありがと、ナミ」
「それだけじゃないのよ」
そういってナミが顔を向けたほうを見遣ると、サンジが大きな台車を引いてきた。その上には、鮮やかにみかんが盛られたオレの背よりも大きなケーキ。
「…う、わあ…」
「オレからはこれ。変わり映えねぇけどオレには料理くらいしかねぇからな。みかんはナミさんから。このケーキのために30個もくれたんだぜ!」
そうなの?とナミを見上げると、すごく優しく笑ってくれた。
「サンジ、ナミ、ありがとう。みんなで食べたら食べ切れるよなっ」
「おいチョッパー。オレァお前にやるもんがねぇ」
そう言ってゾロは決まり悪そうに頭を掻いた。
「そんなのいいよ、ありがとな」
「ああ、だからチョッパー、一緒に風呂入っぞ」
風呂?意図が掴めずに首を傾げると、ゾロは少し口端を上げた。
「背中流してやる」
「え…いいの?」
当たり前だろ、と小突かれた。未来の大剣豪に背中を流させるなんて!
「…へへ、ありがとゾロ」
「チョッパー!!」
大きく澄んだ声が甲板に響く。ケーキをつまみ食おうとしてサンジに愛のキックをくらったルフィが頬を痛々しく腫らして叫んだ。
「今日一日、この船はお前のもんだ!!好きにしていーぞー!」
オレからのプレゼントだ!!
そう言って、にしし、と笑った。
じわり、じわりと温かな気が滲む。数年前のオレは知らなかった、すごく素敵なこと。
「…ありがとう…ルフィ、みんな」
ぐじゅ、と鼻がなってしまった。やっぱりオレは肝心なところで締まらないんだ。
やあね泣かないでよ、とナミに呆れられた。
クリスマスである明日には、ドクトリーヌに手紙を書こう。
オレのところには、サンタが6人もやってきたんだって。
チョッパーハッピーバースデー!!
「ある冬島ではね。明日、12月24日はクリスマスイブというの」
「クリス・・・って、なんだそりゃ?」
「昔から伝わるお祭りのようよ。25日がクリスマス。で、前日がクリスマスイブ」
どうかいつまでも清らかに
夜ご飯を食べながらのことだった。
オレは今日のシチューがいつもより美味しい気がして、サンジのところにおかわりを貰いにいっているときだったから、ロビンの話を聞き逃さないように慌てて席へと戻る。
「この日はね、聖なる日と言われていて、大切な人に愛を語らう日なのよ」
「へぇ、ロマンチック」
「でしょう」
ふふ、とナミとロビンが顔を見合わせて笑いあう。こういうときのふたりは綺麗で可愛くて、好きだ。
サンジが少しそわそわしてるのは気のせいじゃないと思う。
「それだけではなくてね、クリスマスには子供たちの元に素敵なプレゼントがやってくるのよ」
「ぷれぜんとぉ?」
「そう。サンタクロースといってね、私も本の挿絵で見ただけなのだけど。赤い服を着て白いひげを生やしたおじいさんなの。そりにたくさんのプレゼントを積んでね、そう、そのそりはトナカイさんが引くのよ」
「えっ、オレ!?」
「あんたじゃないでしょ」
トナカイがそんな役を引き受けていたとは。オレも鼻が高い。
「なんだその、サンタクロースって奴は慈善事業でもしてるのか」
「そうね、よくはわからないけど・・・夜子供たちの枕元に吊るされた靴下の中にプレゼントを入れていってくれるんですって」
「なんだサンタ・・・って、めっちゃいい奴じゃねえか!!!」
ルフィはそう器用に叫び、口の中のものをごきゅんと呑み込んだ。
「サンター!!オレにもプレゼントをくれー!!肉がいいぞー!!」
「オレは追加用の火薬が欲しいぜ!」
「オレァ新しいフライ返しが欲しい。焦げ付いてきた」
「はん、てめぇの欲しいモンを人に頼むなんざするもんじゃねぇぞクソコック」
「んだとこの芝生がァ」
あ、また始まった。
「私は部屋用のコーヒーメーカーが欲しいわ」
「金金金」
・・・ナミ、
苦笑していると、いつのまにか全員の視線がオレに集まっていた。
「で、チョッパーは?」
「・・・え、オレ?欲しいもの?」
うんうんと皆が一様にうなずく。
うーん、欲しいもの、欲しいもの・・・新しい本はこの前の島で買い置いたからまだたくさんあるし・・・薬品も切れていない。オレはみんなみたいに着ているものも多くないわけだし、飾るものは必要ない。
「へへ、オレは今ないや」
えー!!とルフィが叫ぶ。もったいねぇじゃねぇかとウソップ。
え、だってサンタクロースって一人なんだろ?それでいろんな子供のところを回るんだろ?そんな忙しい人がオレの所に来るはずがない。ましてやオレはトナカイだ。配る側なんだ。
「まあ、チョッパーらしいけどね」
その物欲のなさ、とナミが紅茶をすすった。
そのあとはルフィが紙に『肉肉肉』とたくさん書いて、届くようにと海に流していた。
サンタに届くといいな、ルフィも、皆のも。
オレはかちりと小さなランプを消した。
この男部屋で起きているのはもうオレだけだ。あちこちでいびきの大合唱が鳴り響く。
オレは読んでいた医学書を本棚に戻してハンモックへと飛び乗った。
船の揺れにあわせるように揺れるこの寝床にもだいぶ慣れた。
・・・あともう少しで、クリスマスイブ。
・・・それから、おれの・・・
ううん、いいんだ。そんなことは。明日はもっとすごい日なんだから。聖なる日なんだから。
そう頭の中で繰り返しながら、オレは眠りへと落ちていった。
・・・ッパー、チョッパー、
「・・・ん・・・何・・・」
かすかに俺を呼ぶ小さな声に引かれるように瞼を上げる。部屋は薄明るく、明け方だとわかった。目の前にはロビンが。
「おはよう」
「・・・ん、おはようロビン・・・何かあっ・・・」
ロビンの細長い指がおれの口を閉ざす。ロビンは微笑んだままオレにハンモックから降りるよう示した。
言われるがまま降りると、そのまま手を引かれる。
「???」
わけがわからずロビンに促されて男部屋のドアをあけた。
アレ、そういえば部屋に誰もいない。みんな朝が早いなあ。
「誕生日おめでとう、チョッパー!!!」
ぼんやりとした朝日の中、似合わないほど軽快な炸裂音と歓声。目の前で花火が上がり、オレの顔をかたどる火花が散った。
「・・・え?」
目をしばたかせるオレに、ウソップが呆れるように笑った。
「おいおい、自分の誕生日も忘れちまったのか」
え、誕生日…?ああそうだ、今日はオレの… でも、でも、昨日そんな話一度もしなかったじゃないか。昨日はみんなでクリスマスの話をして、オレの誕生日の話なんて、
「まったく、本当に欲がないんだから」
信じられないわ、とナミが呟く。
ぐるりとオレを囲むようにみんなが立っていて、背の高いみんなを見上げるようにすると朝日が目に入ってすごく眩しい。まだ、今の状況に頭がついていかないみたいだ。
「はい、私からはこれを」
ロビンが艶やかな紫のリボンを結んだ本を差し出してくれた。それはずっしりとオレの手になじむ。
「…これ…」
「以前から持っていたものだけど、医学について興味深いことがたくさん書いてあるのよ」
ふわりと古い紙の匂いが香る。それはロビンの匂いでもあった。
「…ありがとう」
「オレからはこれだっ」
そうウソップが差し出したのは、透明な酒瓶。…あれ、中に何か…
それを受け取って驚いた。すげぇっ!!
「瓶の中に船が入ってる!」
「へへ、すげぇだろ、ボトルシップっていうんだぜ」
瓶の中にはマストが何本も立つ船が、細かいところまでしっかりと組立てられている。
あれ、でもこの船見たことがないけど。そう口にすると、ウソップが誇らしげに腕を組んだ。
「よく見てみろ」
促されるまま視線を落とし船を見る。 …海賊旗がある。 …凛々しい髑髏と、その回りに散るピンク。
この旗は…
「…ドクターの…」
「お前が掲げる髑髏は麦藁海賊団のだけどな」
この旗はお前の信念だから、お前とお前のオヤジさんだけのモンだ、と。
忘れたことなんかなかった。いつもオレは心の中でこの旗に助けられていた。それが今、目の前にある。
「…ありがとう、ウソップ」
「あたしはあげるものが何もなかったから、あんたの今までの借金全部チャラにしてあげるわ」
そう言って、ナミはとんとオレの額を小突いた。ナミがお金に関して寛容になってくれるなんて。恐ろしくていくら貯まっているのか聞けないほどだったのに!
「ありがと、ナミ」
「それだけじゃないのよ」
そういってナミが顔を向けたほうを見遣ると、サンジが大きな台車を引いてきた。その上には、鮮やかにみかんが盛られたオレの背よりも大きなケーキ。
「…う、わあ…」
「オレからはこれ。変わり映えねぇけどオレには料理くらいしかねぇからな。みかんはナミさんから。このケーキのために30個もくれたんだぜ!」
そうなの?とナミを見上げると、すごく優しく笑ってくれた。
「サンジ、ナミ、ありがとう。みんなで食べたら食べ切れるよなっ」
「おいチョッパー。オレァお前にやるもんがねぇ」
そう言ってゾロは決まり悪そうに頭を掻いた。
「そんなのいいよ、ありがとな」
「ああ、だからチョッパー、一緒に風呂入っぞ」
風呂?意図が掴めずに首を傾げると、ゾロは少し口端を上げた。
「背中流してやる」
「え…いいの?」
当たり前だろ、と小突かれた。未来の大剣豪に背中を流させるなんて!
「…へへ、ありがとゾロ」
「チョッパー!!」
大きく澄んだ声が甲板に響く。ケーキをつまみ食おうとしてサンジに愛のキックをくらったルフィが頬を痛々しく腫らして叫んだ。
「今日一日、この船はお前のもんだ!!好きにしていーぞー!」
オレからのプレゼントだ!!
そう言って、にしし、と笑った。
じわり、じわりと温かな気が滲む。数年前のオレは知らなかった、すごく素敵なこと。
「…ありがとう…ルフィ、みんな」
ぐじゅ、と鼻がなってしまった。やっぱりオレは肝心なところで締まらないんだ。
やあね泣かないでよ、とナミに呆れられた。
クリスマスである明日には、ドクトリーヌに手紙を書こう。
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