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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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「っ何してんだよい!」


果汁が垂れたのと反対の腕を荒々しく引かれてアンが後ろによろめくと、ぽすんと背中に固く広いものが当たる。
見上げると、イゾウに強い視線を送るマルコの顎が見えた。



「…? マルコもたべる?」



あからさまに怒気を孕んだ声をしているマルコに、アンが首をかしげつつマンゴーをマルコの眼前まで持ち上げれば無言で押し返される。

いらないの、と軽く口を尖らせてから、アンはマルコの胸板に背中を預けたまま呑気に再びマンゴーを食べ始めた。




「…行くよい」

「え?うわっ」



ひとくち噛り付いた途端にマルコに掴まれた腕を引かれ、アンは半ば引きずられるように船内へと歩いていく。


「ちょっ、も、マルコ!?」


すたすたと歩いていく背中に問いかけても返事はなくて、遠くなっていくサッチとイゾウに視線で助けを求めても、サッチは苦笑まじりに、イゾウは涼やかな笑顔で、手を振ってアンを見送るだけだった。












「…お前なぁ、こっちがびっくりするだろ!」

「でもおめぇさんよ、あのまんまだとアンが自分の腕舐めてただろうが。正視に耐えねぇだろ」

「・・・たしかに、いや、でも・・・あぁ、うん・・・でも手首って、」














掴んだ腕をそのままに自室まで戻ったマルコは、自室のシャワー室の入口に掛けてあったタオルをアンに差し出した。


「拭けよい」

「あぁ、うん…」



引きずられながらマンゴーを完食したらしいアンは、数個の種を近くにあったゴミ箱に投げ入れてから右腕全体をタオルで拭った。
マルコはその姿を確認して、ベッドへと腰を下ろす。
スプリングの軋みとため息が混じって大きな音を立てた。

両手を組んで足に肘をつき、額をその手で支えたまましばらく心落ち着かせる。
少し視線を上げればばっさばっさとタオルを動かし果汁を拭い取るアンの姿が確認できて、またひとつ深い息が漏れた。


「…お前よい、」

「うん?」

「…あー…いや……タオル貸せ」

「?」



差し伸ばされた手に促されてそこにタオルを乗せれば、腕を引かれてそれと同時に口元にタオルがあてがわれる。


「っふが、いたっ、」


険しい顔のマルコに口元を荒く拭われてアンの頭がガンガン揺れる。
なんだか自分が小さいころのルフィみたいだと思わずほんわりしかかって、しかし子ども扱いしないでほしいとタオルの上からマルコを睨めばマルコの額にさらなる皺が増えた。
・・・子ども扱いでいいからもう少し優しくしてほしい。




「できたよい」

「…あー、うん。ありがと」



心なしかひりひりする口元に手をやっていれば、ベッドの上にタオルを放ったマルコは後ろに手をついてあからさまな溜息をついた。






「・・・やっぱマルコも食べたかった?」




マルコの溜息の原因を思いつくままそう言うと、マルコの口が一度開いて、逡巡するかのように固まっていたかと思えば何を言うこともなくまた閉じた。

帰ってこない返事に首をかしげれば、唐突に腕を引かれる。

ずいと寄った顔に驚いて身を引いたが腰を抱き込まれて動けなくなった。






 


「食わせてくれんのかよい」








え、と声を発せば右腕をぐいと引っ張りあげられて、手首を強く掴まれる。




「…されるがままにしてんじゃねぇよい」




その言葉とマルコの視線が行き着く先を見て、さすがのアンもああさっきのことかと合点がいった。



「だっていきなりだったんだもん…って、あ。意味、聞き忘れた」

「…何がだよい」

「だから、キス、手首の意味、」

「・・・」



返事が返ってこないと思えばなぜかちっと舌打ちされて、え、なんで怒ってんのとアンが怪訝な顔をする。



「もしかして手首に意味とかない?」

「・・・」

「・・・あるんだ」

 

明後日な方向を向き顔をしかめていたかと思えば、マルコはアンの右腕を開放し代わりにそれと逆の手を取った。
取られた手をさらに引っ張られ、バランスを崩したアンは深く座るマルコの脚の間に膝をつく。


ほえ、と目を丸めたアンの目の前でマルコが左手首に唇を寄せるので、途端に顔に熱が昇った。




「ママママルコ!」

「…手首は、『欲情』」



 

ぱっと左手が離されたかと思えば抱き込まれた腰を引き寄せられ、ピントが合わないほどの至近距離に二人の顔が近づいた。






「ちなみにここは、わかるかよい」






マルコが口を開いて喋ればその都度微かに唇が触れ合って、でもぴたりと合わさることはなくて、そのもどかしさにアンの背中が粟立った。




「…わっ、わかんないよ!」





こんなにも近くにいるのにやたらと大声でそう言えば、ぼんやりとした視界のなかでマルコが笑うのがわかった。
そしてアンが何を言う暇もなく今度は隙間なく口を塞がれる。

いつまでたっても余裕なんてものが身につかないアンは肩を強張らせてマルコのシャツの肩口を掴むと、アンの腰に回された腕の力がさらに強くなった。


食むようにやわやわと唇をはさまれて、離れた口の隙間から慌てて息を吸い込めばまたマルコが喉で笑った。




「…で、意味は?」

「言わなきゃわかんねぇかよい」




う、とアンが言葉に詰まればくるりと世界が反転し、ふかりと弾むベッドがアンの背中を受け入れる。
ぱちくりと目の前の顔を見つめれば不意に耳元にマルコの唇が寄せられて、ぽそりと低く囁かれた。







「~~~っ!!・・・っ、マルコはずるい!」

「なんとでも言え」






まさしくにやりと。
口角を上げたマルコはまた軽くアンに口付けて、そこから伝うように唇を下ろしていく。

頬も顎のラインも首筋も、とあますことなく口付けを落とし、次いで耳の下あたりにも顔を埋めるようにして口付ければ、あ、と相も変わらず空気を読まない声が聞こえた。






「・・・なんだよい」

「ね、そこは?今したとこ全部」

「・・・また意味かよい」

「うん」

「・・・いい加減そこから頭離せ」

「わかった、で、意味は?」

「・・・意味なんてねぇよい」



えぇー、と不満げに眉を寄せるアンをいい加減黙らせようと、もう一度深くキスをした。














Please kiss me!




(唇は愛情)


(それ以外は)





(狂気の沙汰)



拍手[29回]

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まぁいいか、おれっちで上塗りしちゃる!と高らかに宣言したサッチは、再びアンに顔を寄せた。
またキスされるのかとアンは身構えたが、頬に当たったのはそれよりも面積のあるもの。


「うわっ、サッチ、ヒゲが痛い!」

「時には愛って痛いもんだぜっ」


 
 
むずがるアンにお構い無しで、サッチはアンの頬に自分のそれを寄せて頬ずりする。
サッチなりの精一杯の愛情表現である。



(…まったく、ほんとに…)




 

どこまで可愛いんだこの人たちは。
マルコを除き、クルーたちは揃いもそろってアンを猫可愛がりするが、アンからしてみればこんなに可愛いおっさんたちは他にいない。



「…ひりひりする…」

「んひひ」

「…ふふっ、」



耳のすぐ横でサッチが嬉しそうに独特の笑い声を出す。
それにつられるようにして、思わずアンからも笑みが漏れた。

ふたり顔を寄せたままくふくふと笑うと、それが囁くほどの小さな声でも、じわりと温度のように甲板に広がった。

通り過ぎるクルーたちは、場合によっては冷や汗ものの光景であっても、今のこの状況に半ば苦笑混じりの、それでいて微笑まずにいられないといったように笑みを零すのだった。








 
 
 
 
 


しかしそれも長くは続かず、上空から飛び降りたように高くカンッと靴底が鳴ったことによってその状況は一変した。


所謂、冷や汗ものの光景に。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
当事者二人のうち、先に気付いたのはサッチだった。
 
 
 
(…あー、こりゃまた物騒な)
 
 
 
ぴんと張りつめた空気が電気のように肌を刺す。
 
 
 
 
 
「…随分と楽しそうじゃねぇかよい」
 
「おうよ、超楽しい」
 
 
そこに影ができるほど眉間に皺を刻んだマルコとは対照的にサッチがにこやかに返答すると、マルコはさらに額の青筋を増やした。
サッチの胡坐の中に座り込んでいたアンはというと、心当たりのありすぎる声を聞いて顔を輝かせ振り返る。
 
 
 
「マルコ!おっかえり!!」
 
 
わたわたと、不安定なサッチの脚の上から抜け出したアンは迷うことなくマルコの胸に飛びついた。
それを難なく受け止めたマルコは、いつもの小言そっちのけでサッチへと視線を戻す。
 
 
 
「で、何してたんだよい」
 
「んな怖ェ顔すんなって」
 
 
まったく過保護は困るとでもいうように軽く苦笑を浮かべながらそういうが、マルコの機嫌は一向に転じない。
どれだけ顔をしかめサッチを睨んでも、腰にアンがぶら下がっていては効果半減ではあるが。
 
 
 
「いいじゃんたまにはオレにも構わせろよ」
 
「断る」
 
「…お前最近いろいろ露骨になってきたな」
 
 
 
サッチの呆れが混じった声を聞き流して、マルコは腰にくっついたままのアンを頭から引きはがした。
そのときマルコの背後から、つまりはアンとサッチの正面から、カンッと軽く甲板を叩く音が響く。
カランともうひとつ木の音が柔らかく響いて、薄紅の着物がふわりと翻った。
 
 
「おう、おけーり」
 
サッチの声にイゾウは片手をあげて返事をし、少し顔を引くようにして三人を見渡した。
 
 
「三隊長集まって、またアンの取り合いか?」
 
「そーそー、マルコが譲ってくれねぇの」
 
「違うよい」
 
「どの口がぬかすかテメェ」
 
 
片手に茶色の紙袋を抱えたイゾウはくだらない応酬を繰り広げるマルコとサッチの傍らで、もう片方の手で支えていた煙管を口に咥えさえるとおもむろに紙袋の中を漁りだした。
そうして取り出したのは赤から黄へと、鮮やかなグラデーションに染まった果実。
 
 
「アンに、土産」
 
「マンゴぉっ…!」
 
 
あっさりとマルコから離れたアンは、差し出されたマンゴーを両手のひらで受け取った。
 
 
「名産なんだとよ」
 
「おぉ、それオレも見てきたぜ。すっげぇいい色してるよな」
 
「っ…!食べていい!?」
 
 
勿論とイゾウが頷けば、アンはプレゼントの包みを開ける子供のように顔を綻ばせてマンゴーの皮を剥きだした。
 
 
「アンそれ食いにくいだろ。切ってきてやんぜ?」
 
「待てない…!」
 
「…あ、そう…てかイゾウ、お前アンにだけかよ」
 
「なんでオレが野郎に土産買わなきゃなんねぇんだよ」
 
「ごもっとも!」
 
 
 
 
ぺろんと上部の皮を剥いたアンは、輝かせた瞳のままかぷりとそこに噛り付いた。
 
 
「んまいっ…!それにあまい…!!」
 
「そりゃよかった」
 
 
ありがとイゾウ!と朗らかな笑顔を見せれば、イゾウも満足げに口角を上げた。
 





「で、また興のある遊びが流行ってるらしいじゃねぇか」

「っ!!・・・イゾウまで知ってんの?」

「さっき船に上がる前にラクヨウに会ってな」


心当たりあるその名前にアンが顔をしかめれば、マルコが何の話だよいと目を細めた。




「隊長格の野郎どもがアンにキスを迫ってるってぇ話」

「・・・は?」



ゆらりとマルコの背後、厳密には空気が揺らぎ、先ほどのアンとサッチの光景に納得がいったマルコはついと視線をサッチに移す。
険のある視線を受けたサッチは、焦るように口を開いた。



「バッカ、遊びっつったろうが!あそび!」

「男の悋気は見苦しいねぇ」

「りんきってなに?」

「イゾウもアンも余計なこと言うな!!」



馬鹿馬鹿しいと口では言いながらも、マルコはしっかりと視線でサッチにくぎを刺す。
サッチは半ばあきれたように苦笑しつつもその視線をしかと受け止めた。
受け流せる程度の牽制ではなかったゆえ。




「馬鹿らしい遊び流行らせてんじゃねぇよい」

「発端オレじゃねぇもーん、ジョズだもーん」

「そうそう、ジョズはゆーじょー」


マンゴーに齧り付きながら怪しい呂律でアンがそういえば、マルコは友情?と眉を寄せた。


「ほら、キスは場所によって意味があるとか言うだろ?」

「ジョズはおでこだったから、ゆーじょー」

「『友情』な、アン」


またもやマルコは馬鹿馬鹿しいと呟くが、ということは他の野郎どもがアンの至る所にキスしたってことかよいと内心穏やかではない。



「そう、あとまだ聞いてないとこあった。瞼は?」

「瞼ぁ?意味なんてねぇだろ」

「・・・いや、瞼は確か『憧憬』、じゃねぇか」


ショウケイ?とアンが首をかしげれば、憧れ、とイゾウが注釈を入れる。
瞼へのキスは、ブラメンコとキングデュー(まぁ事故ではあるが)。




「・・・そういうことって、なんでみんな知ってんの?ジョーシキ?」

「常識ってか、男の嗜み」


なぜか胸を張るサッチに、ふんとマルコが鼻で笑った。



「ひっかかりもしねぇ女のためにたしなんでても仕方ねぇよい」

「辛辣!」



どすっとたわわなリーゼントがマルコの肩に刺さるが、マルコは鬱陶しさを前面に押し出した顔でそれを手で払った。

ふうん、たしなみ、と呟いたアンは、また半分ほどになったマンゴーに齧り付く。
じゅるりと果汁が切り口から染み出した。



「アン、手ぇ」

「? おぉ、」


イゾウが視線で指し示すのはアンの手首。
果実から指先を辿り滴った果汁がアンの手首を滑り落ちて行く。

勿体ない!とアンが慌てて滑り落ちる液体に顔を近づけたそのとき、ぐいと別の力がアンの腕を引っ張り上げた。


「イゾッ、垂れるっ、勿体な、」


離してという意味を込めてそう言った矢先、不意にイゾウが小さく屈んだ。

前腕の裏側、その中央あたりに生暖かい感覚を捉え、それがつ、と上へと昇っていく。
イゾウの高い鼻が手のひらにぶつかって止まると、とくとくと脈を刻む手首の上にひとつキスを落としてイゾウの舌先が離れた。

アンはただそのイゾウの動きを辿るようにぼんやりと眺める。
サッチがんひゃーと素っ頓狂な声を出す。
マルコの細い目がこれでもかと開いた。









「おう、いい味してんじゃねぇか」

「あ、うん」
















Please kiss me!




(ちょっと待て、今の軽くスルー!?てかマルコ息しろ!!アンも「うん」じゃなくて・・・あぁもうツッコミが追いつかない!)


拍手[17回]



マルアン連載【それは狂気に満ちている】から始まって
続編含め全30話、ここまで読んでいただき
まっことにありがとうございます!


とりあえずなんだか偶然区切りがついちゃったので、
とっても唐突ですがマルアン続編これにて終了とさせていただきマッシュ!
















・・・え?







ってなったヴァナータ!
いや、もうほんとありがとうございます。べたっ(三つ折り)











前々、更新履歴やらあとがきやら小ネタやら好き勝手やらかしているもう一つのブログのほうで言ったんですが、
このままじゃマルアン続編だらだら続いてきそうで、
それはなんだかなぁと思っていたのでこういう形になりました。



最初の10作でマルコとアンちゃんの駆け引き
次の20作でふたりがなんらかの壁超える

ってな感じで綺麗にまとまってしまいましたので。いやはや




 

んで、もちろんこれでうちのマルアンが終わったりはしません。
つづきますよ。
えぇもちろんつづきますとも!
こんなにも熱く滾ってるのに!!!うおおお
 

『第三部』として続きます。
展開は、前にもうひとつのブログのほうでちろっと呟いたので今回は黙っておきますが!



しばらくマルアンは、1万打企画と小ネタ現パロのほうを書いていこうかとおもっておるよ。
とか言ってすぐ第三部始まったりもするよ。
わかんないよ。











とにかく、30話も続いた話を根気よく読み続けてもらって、
本当に本当に本当にありがとうございます・・・!!!

なにがメインなんだかわからんサイトですが、
ちょっとでもマルアンすきーさんが増えてもらえると嬉しいな!

うちでマルアンにはまった!とかってコメントもらうと
もう液晶の前で涙にじませて悶えていましたよ!

たくさんたくさんコメントありがとうございました!
これからもいっぱいしてね。
返事させてええええ





んでは、ここまで読んでくれたみなさまがたに最大級のハグをして
これにてしつれい!



11.04.21 こまつな

拍手[25回]

 
甲板掃除をしていた一人の隊員を捕まえて強引に肩を組み、嬉々として喋りまくるラクヨウをアンは苦笑を交えた呆れ顔で見ていた。
 
「ところでアン」
 
「ん?」
 
「まだどこが残ってんだ?」
 
「?」
 
何やら真剣な顔つきで問いかけるサッチに、何のこと?とアンは首をかしげる。
膝でにじり寄ってきたサッチは、ふうと一息ついてからアンの肩に手を乗せた。
 
 
「まだどこキスされてないんだ?もちろんオレっちのぶんは、空けといてくれてんだろ?」
 
「はあ!?」
 
 
また何を突然、と目を丸くするアンに構わず、サッチはがばちょっとアンに覆いかぶさるように抱き着いた。
 
「うわっ!」
 
「サッチ兄ちゃんは悲しいぞ!妹が、妹が汚ェ野郎どもに汚されるなんたぁ!」
 
「バッカ、あんたの兄弟たちだろ!」
 
 
ぎゅうぎゅうと遠慮なく締め付けてくる腕に初めは抵抗していたものの、この素面で酔っ払い並みのタチの悪さであるサッチを相手にするのは相当の徒労であり、アンは早々と諦めて体の力を抜いた。
腕の中でアンの力が抜けたのを感じたサッチは、さらに機嫌をよくして胡坐をかいた自分の膝の間にアンを入れた。
 
通り過ぎる隊員たちはくっつきあう隊長二人に一瞬目を丸め、それからすぐに苦笑の色を浮かべる。
なにやってんすか、サッチ隊長マルコ隊長に見つかったらやべぇっすよ、等々の声がかけられるがサッチからしたらむしろこんなチャンス逃してなるもんか、マルコがいねぇ今だからこそ、とここぞとばかりにアンを腕の中に閉じ込めた。



 
 
 
「あ、ねぇサッチ」
 
腕の中でアンがひょっこりと顔を上げ、間近にあるサッチの顔を見上げる。
おぉ可愛い、と顔を蕩けさせつつもなんだと返す。
 
 
「ビスタがね、キスは場所によって意味が違うって言ってたんだけど」
 
知ってる?と漆黒の瞳が見上げてきた。
キスの意味ぃ?とサッチは頭をひねる。
 
「…あー、なんか聞いたことあるな」
 
「教えて!」
 
「んん、あんまり覚えてねぇけど…確かデコが、『友情』?だったかねぇ」
 
 
首筋をさすりながら記憶を探るサッチの膝の上で、アンは自分の額に手を持って行った。
額にキスをしたのは、ジョズとナミュールだ。
 
「あ、こめかみは?」
 
「こめかみぃ?そんなとこにもされたのか。知らねぇよこめかみとか」
 
こめかみにキスしてきたのはクリエルとスピード・ジルだ。
ふーんと相槌を打ちながらその箇所を指先で辿る。
 
 
「あとなんだったっけなぁ…あぁ、手のひらが『懇願』、だっけ」
 
「コンガン?」
 
「おぉ、まぁ意味なんて知ってるやつぁいねぇだろうがな」
 
確かに、とアンが同意するとサッチがにひっと笑みをこぼした。
手のひらにキスをしたブレンハイムとフォッサがそんなことを知っているとは到底思えない。
 
 
「あとは?」
 
「んむ、あ、手の甲が『尊敬』、だったか」
 
 
尊敬?とアンが言葉を返すと、尊敬。とさらにサッチがオウム返しをする。
手の甲にしたのは、アトモスと、ビスタ。
 

 
 
「…そんけい…」

 
 
 
たとえそのキスに意味なんかなくたって、遊びの一環だとしても。
その行為が尊敬を示していることに、アンは自然と頬を緩めた。
 
子ども扱いされてあやすように宥めすかされることがあっても、ちゃんと自分のことを一人のクルーで隊長だと認めてくれているのだと思わずにはいられない。
それに、キスに意味があることを教えてくれたのはビスタだ。
 

 
ふぅっと吐息と一緒に笑えば、サッチの手のひらがくしゃりと黒髪を撫でた。
 
 
 

 
 
「あ、そういえばここは?」
 
そう言って先ほどラクヨウが口づけた頬を指させば、サッチはにしゃりと笑ってその頬を撫でた。
 
 
「頬は、『厚意』」
 
「コウイ?」
 
「好意じゃなくて、厚意な。思いやりとかそゆこと」
 
「ふーん…」
 
「ま、どっちにしろお前のことが好きだっつー意味」
 
 
と適当な訳を当てておいて、サッチはにやりと口角をあげた。
 
「まぁな、オレァ唇でも一向に構わねぇんだが。さすがのサッチ様も命は惜しい。っつーことで、」
 


 
 
見上げてくるアンの顔に影を落として、手を添えていない右の頬へとちゅっと音を立てて唇を落とした。
 
 
 




 
 
「オレもここにしとくよ」
 
 
 
 
 
 
 




 
 
 
 
 
 
Please kiss me!
 
(…そこハルタもしたよ)
 
(なんっ…!)
 

拍手[12回]

 
「…あのね。待っててもしないからね」
 
呆れを全面に滲ませながらそう言えば、サッチはまたまたあ~と白ひげの巨体にひっつくアンに歩み寄った。
 
 
「知ってんだぜー、アン、今日は隊長たちに熱い口付けプレゼントキャンペーン実施中なんだろ?」
 
「はっ!?何それ違うし!みんなが勝手にあたしにしてくるんだよ!」
 
 
いつのまにかこの話が手を替え品を替え、おかしな噂になってしまったらしい。
サッチは、あれーおかしいなあそうだっけ?とでも言うように首を傾げていたのだが。
 
 
(…こいつ、絶対確信犯…!)
 
 
 
 
 
そこに突如響いた独特の笑い声と小さな揺れ。
ふわりと、アンは白ひげの身体から、サッチの足は地面から離れた。
 
 
「グララララ!人の身体の上で兄妹喧嘩してんじゃねぇぞハナタレがぁ!!」
 
 
その大きな手に襟首を掴まれた2人は、ぶんと顔が風を切ったかと思えば次の瞬間、サッチが入ってきた時のまま開け放たれてある大きな扉の外へと身体を放りだされた。
 
 
 
ドサッ、ゴツッ、と鈍い音が鳴り響き、背後からは豪快な笑い声。
 
 
「いってぇー…、くそ、オヤジのやつ、手加減しろよな…」
 
 
サッチが倒れた上体を起こしながらも手櫛でリーゼントを整え、同じく投げ飛ばされたアンの方を見遣る。
アンはうつ伏せのまま床で呻いていた。
 
 
「いったぁー…!」
 
「おいアン大丈夫か。なんか鈍器がぶつかったみてぇな音したぞ」
 
つーかお前痛いのかよとロギアという特殊能力を持つはずの妹に問いかければ、あろうことかアンの下にある床がむずりと動いた。
 
 
「お?」
 
「う?」
 
むくりと上体を起こしたアンが自らの着地点に視線を落とす。
と、そこには痛々しく額を腫らしたキングデューの姿があった。
 
 
「…アン、お前、物質的石頭…」
 
「うわわわわ!ご、ごめんキングデュー!下敷きに!!」
 
 
アンが慌てて身体を退ければ、額を摩りながらキングデューが身を起こす。
 
 
「なんで二人して飛んできたんだ」
 
「「オヤジに投げ飛ばされた」」
 
飛ばされた二人が口を揃えてそう言えば、キングデューは少し呆れを滲ませた顔をしながら立ち上がった。
 
「悪さもほどほどにしとけよ。マルコが帰ってきたらその分制裁も増えるぞ」
 
「失敬な!悪いことなんてしてないもん」
 
ただちょっとオヤジの上だってこと忘れてサッチと言い合いになっただけで、とその場にぺたんと座り込んだままのアンがごにょごにょと言い訳じみたことを口にする。
気まずそうに前髪をくしゃりと掴んだアンは、髪の毛のほかに別のものの感触があることに首をかしげて、それを梳くようにして手に取った。
 
「…頭に埃、ついてた」
 
「あ、さっきまでオレ酒蔵の整理してて結構古いやつ掘り出したりしてたからな。オレについてたのかもしれねぇ」
 
「うわほんとだ、アンまだついてんぞー」
 
 
サッチが左隣から膝ですり歩くように寄ってきて、動物の毛づくろいのようにアンの髪についた埃をひとつずつ取り払っていく。
キングデューも同じようにアンの頭頂部についた大きな埃を取ろうと身をかがめたその時、どどどっと重たい騒音が数回響き、次の瞬間にはアンの身体が大きく前に押し出された。
 
 
「わっ!」
 
「アン見つけた!!」
 
後ろからがばっと抱き着いたラクヨウの衝撃によって、アンの身体がぐんと前に傾く。
そしてアンの頭は、ちょうど腰を曲げてアンの頭を覗き込んでいたキングデューに再び衝突した。
 
がつ、と嫌な音がして、キングデューが口元を抑えながらふらふらと後ずさる。
アンも右目の上を手のひらで押さえてキッと後ろを振り返った。
 
「ラクヨウ!イッタイなぁもう!!」
 
キングデューに謝れ!と目くじらを立てると、アンの肩からぶら下がるようにして抱き着いていたラクヨウは多少きまり悪そうに笑った。
 
「いやワリィ。大丈夫かキングデュー」
 
「あ、あぁ…口打った…、アンも大丈夫か」
 
「あたしは大丈夫、あんまり硬くなかったんだもん」
 
そういえば、アンの肩口から顔をのぞかせていたラクヨウがピクリと反応し、そしてぎりりと奥歯をかんだ。
 
「…なんで悔しそうにしてんの、ラクヨウ」
 
「くそ、図らずとはいえ、キングデューにキスさせちまった!」
 
その言葉に、純情丸出しのキングデューは火がついたように赤くなった。
オレとしたことが!と悶え悔しがるラクヨウに、アンは肩に乗せられたラクヨウの腕を外しながら心底呆れたといった顔を見せる。
 
「…ラクヨウいいかげんそれから離れれば?」
 
「おぉ…なんかよくわかんねぇけどラクヨウすっげぇ頭悪そうに見える」
 
 
アンの言葉にサッチが同調すれば、ラクヨウはうるせえうるせえと激しく首を振った。
 
「ほっぺたでいいからオレにもキスさせろ!」
 
「いいよ」
 
 
 
さらっとそう答えたアンに、ラクヨウはぱくりと口を開けた。
 
「…おまっ…じゃぁなんで今まで逃げてたんだ」
 
「だって追いかけられたら逃げちゃうんだもん」
 
ラクヨウすっごい怖い顔してたし、とアンが顔をしかめれば、ラクヨウはがくりと膝をついた。
 
「…最初から普通に頼めばよかった…!」
 
「お前絶対頭悪いだろ」
 
サッチの罵倒に構わずそうしてひとしきり悲しむと、ラクヨウは唐突に身を起こした。
 
「では失礼!」
 
えいやっ、という掛け声とともに、未だ座り込んでいるアンの頬にラクヨウが唇を寄せる。
アンがきゅっと目を瞑ると、ふにっと頬にやわらかい感覚があって、それはすぐに離れた。
 
 
「…ひひっ、やった、」
 
 
アンの横にしゃがみこんだままラクヨウがあんまり嬉しそうに笑うので、アンはさっきまで気持ち悪いとまで思って逃げていたのに、途端に可愛く思える。
これだからうちのおっさんたちは困るんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Please kiss me!
 
(おおそこの一隊員のお前ちょっと聞けよ、オレアンにキスしちまった!)
 
(…やっぱちょっとアレかも)
 

拍手[7回]

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