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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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ミラが優しく緩慢な手つきであたしの髪を撫でる。
その手の動きに寄せられるようにして、いつのまにか床に座ったまま彼女の膝に頭を乗せていた。
 
「…いつ、産まれるの?」
 
「そうですね、あと7ヶ月くらいかしら」
 
「…長い、ね」
 
「ふふ、お腹大きくなったらとてもじゃないけどあの靴は履けませんわ。アン隊長いりませんか?あのブーツ」
 
「はぁっ!?」
 
ミラが目線で示した物を自分でも確かめ、慌てて首を振る。
可愛らしいブーツ立てが差し込まれて、ひっそりと部屋の隅を華やかにしているヒョウ柄のニーハイブーツ。
 
「いらないっ、ていうか履けないし履かない!」
 
「でしょうね」
 
 
ふっと少しの間があって、くすくすと細い笑い声が二人分こぼれ出る。
 
 
 
「…すごく、おかしな感じなんです」
 
 
ふっと笑い声が途絶えたとき、ミラはポツリとそう言った。
 
「自分の中にもう一人人間がいるって…まだ信じられない」
 
ミラの細くしなやかな指があたしの耳の後ろを滑り、それから前にきて顔にかかった跳ねた髪の筋を耳にかけてくれる。
少し視線を上へとやると、ミラの形のいい顎が見えて、彼女がまっすぐ前を見据えているのだとわかった。
 
 
「最初から嬉しかったわけじゃないんです」
 
「え?」
 
「だって突然ここに子供がいるのよって言われても、実感湧かないじゃないですか、」
 
「…そう、なのかな」
 
「えぇ、でもね。彼が喜んだんです、すごく」
 
 
電伝虫で、陸にいる父親となる男に伝えたのだという。
 
 
「ありがとうありがとうって、泣いて喜んでて。そのとき結婚しようって言われたんですけど」
 
ふふっと小さく肩が揺れて、視線を上に上げてみれば少し赤に染まる頬が見えた。
 
 
「そのときになってやっと、ああこれは本当に嬉しいことなんだって、思って」
 
 
そうしたら、じわりじわりと広がっていくの。
暖かいお腹も、陸での新しい生活への期待も不安も、彼と過ごす未来も、全部この子がくれたんですよ。
そしたらもう、愛しくて、愛しくて仕方がないんです。
 
 
そう言って、ミラの指先があたしの頬を滑る。
その指先までもが暖かい。
それが母親っていうものなんだろうか。
 
 
 
「…ミラの子だもん、きっとみんなが大好きになるようないい子が産まれるよ」
 
「ふふっ、ありがとうございます。パパさんがね、この子が大きくなった頃にまた島に寄ってくれるって仰ってるんです。家族の子供は家族だからって。だからアン隊長も、そのときは愛してあげてくださいね」
 
「…うん…でも、どうやって?」
 
 
問うようにミラの膝の上で小さく首を傾げれば、あたしの髪を梳く指がぴたりと止まった。
あれ、あたし変なこと言った?と思わず膝から顔をあげれば、少し驚いたように眼を丸くする整った顔。
 
 
「…ミラ?」
 
 
自分の失言のせいで彼女が固まってしまったのかと思い、やたらと緊張する。
思わずミラが腰掛けるベッドのシーツを固く握りしめた。
するとミラはふぅっと息を吐き出すのと一緒に笑い、またあたしの頭を撫でてくれた。
 
 
 
 
「隊長が、してもらっているようにすればいいんですよ」
 
「…して、もらって…?」
 
 
 
 
それはつまり、あたしが愛されているように愛してあげればいいってこと?
じゃあ愛されているようにって、みんながあたしのこと、愛して…
 
 
 
 
 
 
ああもうっ!と自分の頭を掻き回す。
愛されるとかなんだとか、あたしの日常生活とは程遠すぎてわからないんだ。
しかもなんだか無意味に小っ恥ずかしくなってきて、ぽすんと目の前の膝に再び頭を預けた。
 
 
「…それってなんか、よくわかんない!」
 
 
膝に顔をうずめてごにょりとそう呟くと、頭の上からぷっと噴き出す声が届いた。
 
 
「すぐにわかりますよ」
 
だって私もあなたをとても愛してる、と。
 
頭の上からまろびでた言葉はどこまでも柔らかくて、あたしは只々顔を伏せるばかりだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ナース部屋からの帰り、今日まったく仕事をしていないことを思い出した。
やっばい今日3番隊に回す書類あったのに…!と慌てて自室へ戻る。
何にも手を付けていないから、今からガリガリやっても昼ご飯に間に合うかどうかだ。
食いっぱぐれるとか最悪!と内心毒付いて、仕事用のデスクの上を漁り回して書類を探す。
 
…え、ないんだけど。
さあっと血の気が引く音が聞こえかけたとき、ふと机の端に見慣れないファイルを捉えた。
 
なんだこれ、と持ち上げてみるとぺらりと一枚の紙切れが舞い落ちる。
慌ててそれをぱしんっと両手で捕えた。
 
 
…あった。
探していた書類だ。
『次の隊に回せ』と右上がりの整った字体で走り書いてあるから間違い無い。
でもこんなファイルにいれた覚えないなあと書類とファイルを同時にぺらぺらと煽ってみると、ファイルの中からもう一枚、小さな紙切れがするんと落ちてきた。
 
床に滑り落ちたそれに手を伸ばしたときにみえた文字。
書類の走り書きと同じ右上がりでそれは書かれていた。
 
 
"今月の報告書け"
 
 
 
腰をかがめた状態のまま、は?と思わず口に出して、それからはっとして渦中の書類を顔の前まで持ってきた。
 
 
 
下の方、枠で囲まれた二番隊の仕事の進行報告部分は空白のままだ。
でもややこしくて嫌いな経費の計算も、今月の隊の費用の合計も全部埋めてあった。
全部全部、右上がりの字体で。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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