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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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「ジョズ、これ」

「ああ、アン…もう大丈夫なのか」

「うん、全然元気」

「そうか、無理するなよ」


大きな体を少しかがめるようにしてアンと視線を合わせるジョズは、アンの手から今日付けの書類を受け取った。
その視線はどこまでも優しい。


「…あの、さ。その書類なんだけど…」

「あぁ、マルコが少し埋めてくれてたんだろう。知ってる」

「…あ、そう…」


別にそんなことわざわざおれに言わなくてもいいものを、とジョズは胸中ため息をついたが、妙なところで律儀なアンのことだ。
自分が全部したわけじゃないと伝えなければと変に思ってしまったのだろう。

じゃあと踵を返しかけたジョズに、アンがあ、と掠れた声を出す。

「なんだ?」

「…あ、マルコ、どこにいるかな…」

「ああ、さっきまで甲板に…いや、部屋戻るって言ってたか」

「あ、わかった、ありがと」


くるりとジョズが向かうのと反対方向に踵を返したアンは、ぎこちない足つきで渦中の男の部屋へと向かった。
その後姿を心配げに見遣るジョズの耳には、ぎこぎことアンの手足の動作音が聞こえてくるように感じられた。














木の扉を前にして、アンは足を止めてしまった。

ああ、あたしの馬鹿。
なんで止まっちゃったんだろう、勢いで入ってしまえばいいものを。

きっとマルコは既に自室の扉の前にいる気配に気づいているだろう。
でも中から開けることはきっとない、とアンはひとり俯いた。
そんなマルコの性分さえ分かるほど近くにいたのに、自分はどれほど大きなことをマルコに隠していたんだろうと悔やまれてならない。

弱い自分が、嫌になる。


(あれ、でも)




…あたしはあたしを好きだと思ったことなんて、これまであったの、かな…














世界と言うのはただ暗くて湿ったような薄汚いところなんだと信じて疑わなかった。
だって目に見えるそれも事実その通りだったから。
大人はすぐに嘘をつくから嫌い。
子供は力がないから嫌い。
子供である自分も、早く大人になりたいと思ってる自分も大嫌いだった。

それでも、あたしを好きだと言ってくれる奴はいた。

子供だし、力もないし、馬鹿でうるさくて本当に本当に、
…大好きだった。




会いたい。



無性にルフィに会いたい。
守られていたのはあたしのほうだ。
力があったって、弱いままのあたしよりルフィのほうが断然に強かった。

今マルコの部屋の扉へと伸ばしかけている手の震えを止めてくれるのは、ルフィしかいない。




(怖い)




嫌われたくない。
強がっていたって一人はいやだ。

今まで誰になんて言われようと、ぶん殴ってそれで終わり。
たとえ暗く狭いどこかに押し込められたって、膝を抱えて唇噛んでれば耐えられた。
でも、マルコに嫌われたらあたしはもう、






ここにはいられない。













アンは震える手をそのままに、扉のノブを回した。


ノックしろとの小言は聞こえず、一番に目に入ったのは少し丸くなった背中。

「遅かったねい」

その言葉が、アンがドアの前で佇んでいたのを知っていることを物語っていた。



「…マルコ、」

「ちょっとそこ座ってな」


背中が丸まっていたのは物を書いていたからで、マルコの言うそこと言うのはおそらくベッド。
言われるがまま、マルコが見ていないのを知りつつもアンは頷いてベッドに腰掛けた。
いつもは遠慮なしに寝転んでいた所なのに今日は知らないところのように落ち着かず、おしりがむずむずするなとアンは何度も座りなおした。


カチャンっと小さな金属音が鳴ったことでアンの肩が小さく揺れる。
マルコは眼鏡を置き、ベッドのほうを振り返りつつ腰をあげた。
アンは怒られた子供のように身を縮めたままベッドの隅に腰掛けていた。


ぼすんっとベッドのスプリングが鳴る音と布がこすれる音がして、アンの身体が上下に跳ねる。
顔をあげなくてもマルコがベッドに腰掛けたのだと分かった。

ただそれからは滔々と沈黙が流れ、どちらからとも話そうともしない。
アンは口を開こうともがいていて、マルコはただそれを待っていた。
静謐が痛いほどアンの身体を刺すようだった。










話して怖いことなど何もないと、言葉で諭してやりたい。
ただそれができないことに歯がゆさを感じる。
アンがそれを体で理解しなければ駄目だとわかっているから、マルコは口を開こうとはしない。
ただ、空寒い気分だった。


アンには自分が、自分たちがいれば大丈夫なのだと高をくくっていた。
いつでも明るくて笑っていて馬鹿をして怒られて、よく寝ることもよく食べることも生きることに素直だからで、それでアンは幸せなのだと思い込んでいた。



(…とんだ馬鹿野郎だよい)



重たい足枷を繋がれたまま、しかもそれと一生を共にする運命を背負わされて、アンは笑っていたのだ。
傷ついた痕も流れた血も上手く隠すことばかり上手になって、その癖人の痛みには敏感で、自分を捨てる真似はしないがいつでもその覚悟をちらつかせる。
こんなに哀しいことはない。














「…マルコ、」

「あぁ」

「…書類、ありがと」

「…あぁ」

「…マルコ」

「なんだよい」

「…何にも、言わないの…?」



人二人分ほどの距離をあけて、アンは俯いたままそう問いかけた。
何に対してか、を聞くほど野暮ではない。



「…今朝、言ったろい」

「でもっ!」

勢いづけてアンがマルコの顔を仰ぎ見た。
ゆるりとマルコも視線を合わせる。
マルコが捉えたアンは歯を噛み締めて力を込めているようで、そうしなければ震えて呼吸することもできないとでも言っているようだった。


「…そんな、簡単じゃ、ない…!」





カチリと震えてぶつかったアンの歯が音を立てた。
ずり、と衣ずれの音がしてマルコがアンの方へと腰をずらす。
驚いてアンが身を引くより早く、マルコの腕がアンのそれを捉えて引っ張った。

「!」

思わずぎゅっと目をつぶったアンの顎に硬いものが当たる衝撃があり、体中に締め付けを感じた。
ゆっくりと目を開けると見えるのはベッドの頭が来る部分と、さっきまでマルコが使用していたデスクと椅子。
すべてマルコの肩越しの景色だった。


「…マルッ、」

「オレにゃぁわかんねぇ」


耳の後ろから聞こえてくる声が、直接アンの頭に響く。
聞きなれたバリトンも今は気道を埋める要因にしかならない。


「お前がロジャーの子供だってことが、なんでそこまでお前の重荷になるのかオレにはわからねぇ。
オレから見たらお前はただのガキで、オヤジの子供で、女だ。
だからお前がなんでそうまでして嫌いな血縁を意識するのか全く理解できねェ」


腕の中にいるアンの小刻みな揺れが少しばかり激しくなる。
マルコはアンにまわした腕の力を強めた。






「だがよい、アン。

お前がそういうしがらみから逃げられねェってんなら、腹ァくくって一生背負ってけ。
んで、重くて重くて動けなくなったらオレが他のモン背負ってやる。
お前が潰れねぇように、全部背負ってやる。
お前は自分が選んだそれだけ背負ってりゃぁいい」



オレはそのためにずっとここにいる。














細い腕がマルコの背中に回されると、零れた慟哭に混ざってマルコの背骨が軋んだ。














存在価値

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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