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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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寒かった怖かった寂しかった。
本当は拒んでなんてほしくなかった。
 
大丈夫、血縁なんて関係ない。
 
ただ一言、そういってもらえたらただそれだけで救われたのに。
誰も、誰もそんなこと言ってくれなくて。
 
 
 
 
 
 


 
 
 
ずっと昔、お腹がすいて道を歩いていると、優しい女の人が声をかけてくれた。
嬉しくて嬉しくて、あたしはその手に導かれるまま歩いて行って、ご飯をもらって。
 
『親はいないの?』
 
いないと答えれば、彼女は花のように笑った。
 
『じゃぁここにいればいいわ。私も一人なの』
 
居場所が、できたと思った。
思ったのに。
 
『商人だった夫がね、海賊に殺されたの。こんな時代のせいで。
…私はあの男を許さない』
 
それを聞いた瞬間、あたしは走り出した。
倒れた椅子にもあたしを呼ぶ女の人の声にも構わず、逃げるように走った。
やっぱり居場所なんてなかった。
 
 
後にも先にも他人の優しさに靡いたのはそれきりで、それ以来信じることが怖くなった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
『ねぇ、あのおっさん、』
 
『あぁ、マルコ隊長?一番隊の隊長だよ。なんだアン、気になんのか』
 
『…別に、なんでもない、です』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
この感情が、人を好きになることだと教えてもらって、
マルコの言動ひとつで右へ左へとあっちこっちへ動く自分の気持ちがくすぐったくて、
でもあたしが揺らいだときは支えてくれたり、押し戻してくれる家族がいた。
 
 
 
 
 
『お前、可愛いなあ』
 
『…アン、悲しい?』
 
『…泣いても、いいんだぞ』
 
『なんか、あったのかい』
 
『このバカ娘が。心配しただろ』
 
『だって私もあなたをとても愛してる』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
嬉しくないわけがない。
でも手放しで喜べるほど素直じゃなかった。
 
あたしのことをもっと知ったら、みんなはどんな顔をするんだろう。
そもそも命を取り合った敵の子供が、家族としてここにいると知ったら。
 
なじられて、蔑まれて、出てけと言われることなんてないのはわかっていた。
そんなことより、今まで隠し通してきたことを知られるのが怖かった。
でも明言できるほど大人じゃなくて、ずるずる、ずるずると。
 
 
 
 
 
 

 
 
マルコに求められていると知って、嬉しかった。
でもそれと同時に、応えられないという答えも出ていた。
 
血が混じる。
 
もし、もしも新しい命が宿ったら。
その命までもが鎖でつながれて、たとえどんなに鎖が細くなったって、絶対に千切れはしないから。
あたしの身勝手のせいで新しい命がまた枷に繋がれてあたしと同じ目にさらされたら。
そう考えて、ぞっとした。
だから拒んだのに。
 
 
 


 
 
 
 
『オレが他のモン背負ってやる』
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
思えば、いつも崖っぷちだった。
一歩踏み出せば堕ちるだけで、後ろを振り返っても真っ暗で、どこにも行けないまま危うい均衡を保ってゆらゆら揺れていた。
 
でも背中を押されて、一歩進んで堕ちてみたら、マルコが掬い上げてくれた。
そうだ、マルコには翼があったんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
とん、とん、と子供をあやすようにアンの背中を分厚い掌が叩く。
そのリズムに合わせて絡まるように抱き合う二人分の身体も揺れる。
しゃくりあげるアンの黒髪が涙で頬にぺたりと張り付くが、その都度マルコがそれを指先で払いのけた。
 
アンの慟哭がゆっくりと静まって、少し荒い呼吸音と背中を叩く音だけが部屋に響く。
泣き疲れてアンがマルコの肩に額を預けても、マルコはそれをさも当たり前のこととして受け入れた。
どちらも話そうとはしなかったが、離れようともしなかった。
 
 
すっと心が凪いでいく。
それに比例して胸のあたりがほっこりと温かい。
それはアンに対しても、マルコに対しても同じだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…なぁ、アン」
 
耳の後ろでぽそりと、まるで内緒話のようにささやかれた声にアンがぴくりと反応する。
 
「お前の名前、誰が決めたか知ってるかい」
 
「…な、まえ…?…たぶん、母親…」
 
未だぼんやりと霞がかった頭を働かせてそういえば、頭の後ろでマルコがふっと笑った。
 
「オヤジに聞いたんだがねい、その名前、ロジャーが決めていたんだとよい」
 
「…え、」
 
別にだからって嬉しくない、とアンの心の声が聞こえてきた気がしてマルコはくつりと喉で笑ってから、アンを抱きしめたままよいっという掛け声とともに腕を伸ばしてサイドテーブルに立ててあった一冊の本をとった。
 
マルコはゆっくりとアンを引きはがし、二人の間に隙間を作る。
離れたことでさっきまでくっついていた部分が急に寒くなって、アンはへにゃりと眉を下げた。
それを見てマルコは苦笑して、ベッドからぶら下がっているアンの膝下に手を差し込んだ。
 
「わっ」
 
ふわりと一瞬身体が浮かび、ぎゅっと目をつぶればすぐにとさりと落とされる。
次に目を開ければ見えたのはマルコの横顔で、アンはあぐらをかいたマルコの膝の上で横抱きにされていた。
 
「えっ、えっ、」
 
慌てふためくアンをよそに、マルコはアンの腹の上に先ほど取り出した本を置いた。
 
 
「…何?」
 
「ビスタが置いてったんだがねい、南の海で使われていた言葉のずっと昔の辞書らしい」
 
適度にアバウトな説明をしてから、とりあえず開いてみろとアンを促す。
促されるままページをめくってみれば、細かい文字の羅列がびっしりと虫のように紙を埋め尽くしていた。
 
「うわっ、文字ばっか!」
 
「そりゃぁ辞書、だからねい」
 
マルコはくくっと喉を鳴らしたが、アンは未だマルコの意図がつかめず、ただぺらりぺらりとページを捲っていく。
 
「左上に、文字がかいてあるだろい」
 
「あ、うん」
 
言われた通りページの左上には、Aの文字。
 
「自分の名前、引いてみろい」
 
「あ、あたしの名前?」
 
何を唐突に、とでも言わんばかりの顔でマルコを見つめても、マルコは少し口角をあげているだけで何も言わない。
 
(…辞書って、どうやって引くんだろ)
 
ぽかんとそんなことを考えながら、たぶんこうかな?ととりあえずぱらぱらとAのページを探していった。
 
「…過ぎたよい」
 
「えっ」
 
ぬっとマルコの手が伸びて、アンが捲っていったページを逆に戻していく。
それは数枚捲って止まった。
 
 
【Ann】
 
 
これ?と不安げに指差してマルコを見れば、ただ頷かれる。
文字が小っちゃくて見にくいぞ、と思いながらも本に顔を寄せて、【Ann】の欄に書かれている文字列を指でたどっていった。
そしてそれは、すぐに止まった。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
【Ann】
愛される者
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…ロジャーの奴が、こんなしゃれたこと知ってたかどうかは知らねぇが…
お前は潜在的に、ロジャーがこの名前を選んだ時から。
他の誰よりも愛される資格は持ってるんじゃねぇか?」
 
 
 
名前ってのぁ案外調べてみると面白れぇもんだよい、と小さく笑いながらマルコはアンの腹の上に乗せた本のページを捲っていく。
その間もアンは微動だにせず、ただ本に添えた手をそのままに固まっていた。
 
マルコがもう一枚ページを捲ったとき、本に添えられていたアンの手の甲にひとつ、水滴が落ちた。
マルコの視線もそれを捉えたが、あえて触れずにもう一枚ページを捲る。
 
 
 
「…あ、たし…」
 
掠れた声に導かれてマルコが顔を上げると、不安げに滲んで揺れるアンの瞳とぶつかった。
 
 
 
 
 
「生まれてきて、よかった…?」
 
 
 
 
 
 





 
 
 
 
もう答えは自分の中でも出ている、まるで最終確認のように問われたそれに、マルコはアンの頭の上に手を置いてその髪をくしゃりと掴むようにして撫でた。
 
 
 







 
 
「お前がいない世の中なんて、考えたくねぇな」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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