OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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低いのによく通るバリトンが、昼ご飯を食べているときも、服を片しているときも、夜ご飯を食べているときでさえアンの耳に住み着いて離れなかった。
「…変なの」
がちゃがちゃと騒々しい音を立てながら食器を洗い、その音に紛れてひとり呟いた。
*
窓から暗闇が溶け込んでくる。
室内の明かりは窓から外へと溶けていく。
アンはその境目を眺めながら、つくねんとひとり部屋の真ん中に座っていた。
(やっぱり、ちょっと寂しい…かな)
おかずの取り合いをすることも、食器洗いの当番を決めることも、おやすみと言う相手がいないことも。
しかしきっと寂しがりで甘ったれのルフィは、その何倍ものひとりぼっちに耐えているのかもしれない。
そう思うことだけが、これから自分の生活を支えることになるのだろうとアンは身に染みて感じた。
明日から、アンは今まで勤めていたファミレスのバイトに加えて小さな商社への出勤が始まる。
本当に小さな零細企業ではあるが、何かと入り用なアンにとって到底バイト資金だけでやっていけそうにはなかったので、この採用は本当にありがたかった。
仕事は事務であり、基本的に首より上を使うことが苦手なアンにとって向いているかどうかは疑問ではあるが、いまさら向き不向きがどうだとかは言ってられない。
ちなみにファミレスのバイトは夜間に移して続けることにした。
考えていても仕方ない。
明日着ていく予定である、規定された事務服をたんすの扉にかけようとアンは勢いづいて立ち上がった。
が、勢い余って足の指を机の脚にぶつけて目から火花を散らした。
「いたあぁっ!!つぅ~ぁ~っ…!」
つま先を抱えて丸くなり、にじんできた生理的な涙を抑えながら痛みをこらえる。
その様子が不意に滑稽に思えて、可笑しくなってきたアンはふはっとひとり笑いを零したのだった。
*
翌朝は、初出勤にふさわしい快晴だった。
事務服に着替えたアンは、バイト時代と違って余裕をもって支度をした。
昨日梱包を解いた際に出たビニールひもやらのゴミを袋に詰めると結構な量になり、アンはそれを片手に、もう片方に仕事用のカバンを抱えて家を出た。
もちろん鍵は忘れずに。
「…重っ」
いかん引っ越しなめてた、とひとりつぶやきながらずっしりと質量のあるそれを半ばひきずるようにして階段まで歩いていく。
階段の前までやってきて、一息ついた。
時間は余裕を持って出たからまだ大丈夫だ。
やっぱりふたつに分けるべきだったかな、と少しの後悔と共にアンは再びそのゴミ袋を持ち上げた。
が、その重みはふわりと浮かぶようにアンの手から消えた。
「えっ」
自分の手を確認して、それから心当たりの行ったアンが急いで振り返れば、今起きましたといった顔にお決まりの煙草を咥えた隣人の男。
Tシャツにスウェット姿のマルコはアンに目を合わすこともなく、ただ「持つよい」と言うとアンの返事も待たずに階段を下りだした。
アンが引きずっていたゴミ袋を片手で持ち、あろうことかもう片方の手には自分のゴミらしい小さな袋をもって下りていくその姿を呆気にとられて見ていたアンは、はっとして慌ててその後を追った。
アンが階段を下りた頃には、すでにゴミは集積場に鎮座しており、マルコが折り返し戻ってくるところだった。
「うわっ、ごめん、重かったのに!」
「だからだろい」
気にすんな、と煙草の煙と共に吐き出したマルコに慌ててありがとうを告げておく。
マルコはアンの姿をつま先から頭のてっぺんまでを一瞬眺めると、勝手に何かに納得したらしくよいと呟いた。
一方アンは、いい歳こいたおっさんが朝8時にこんなラフな格好でうろついていることに少なからず疑問を抱く。
「ねぇ、おっさん」
「マルコ」
「あぁ、そう、マルコ…さん」
「…マルコでいいよい」
「マルコは、仕事しないの?ないの?」
無邪気と言ってしまえばそれまでだが、こんなに朗らかに人の職業を尋ねさらには無職かとまで尋ねてしまうのはアンだけがなせる業である。
マルコは一瞬軽く目を開いてから、くつりとひとつ喉で笑った。
アンが反応するよりも早く、唐突にマルコの顔がアンのそれに近づく。
「そんなことより、昨日ぶつけた所、大丈夫かよい」
またあのときと同じ声が重たく鼓膜を打ち、アンは自分でもわからないうちに弾かれたように顔を引いて耳を手で押さえた。
「だっ、だいじょうぶ!」
叫ぶようにそう言って勢いよく身体を反転させたアンは、なんで知ってるんだていうかなんであんな声出すんだ馬鹿!と、ぐるぐると巡る頭を必死で落ち着かせようと、徒歩五分先にあるはずの会社に二分で着いてしまうほどのスピードで足を動かしたのだった。
→
2014.01.24 修正
「…変なの」
がちゃがちゃと騒々しい音を立てながら食器を洗い、その音に紛れてひとり呟いた。
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窓から暗闇が溶け込んでくる。
室内の明かりは窓から外へと溶けていく。
アンはその境目を眺めながら、つくねんとひとり部屋の真ん中に座っていた。
(やっぱり、ちょっと寂しい…かな)
おかずの取り合いをすることも、食器洗いの当番を決めることも、おやすみと言う相手がいないことも。
しかしきっと寂しがりで甘ったれのルフィは、その何倍ものひとりぼっちに耐えているのかもしれない。
そう思うことだけが、これから自分の生活を支えることになるのだろうとアンは身に染みて感じた。
明日から、アンは今まで勤めていたファミレスのバイトに加えて小さな商社への出勤が始まる。
本当に小さな零細企業ではあるが、何かと入り用なアンにとって到底バイト資金だけでやっていけそうにはなかったので、この採用は本当にありがたかった。
仕事は事務であり、基本的に首より上を使うことが苦手なアンにとって向いているかどうかは疑問ではあるが、いまさら向き不向きがどうだとかは言ってられない。
ちなみにファミレスのバイトは夜間に移して続けることにした。
考えていても仕方ない。
明日着ていく予定である、規定された事務服をたんすの扉にかけようとアンは勢いづいて立ち上がった。
が、勢い余って足の指を机の脚にぶつけて目から火花を散らした。
「いたあぁっ!!つぅ~ぁ~っ…!」
つま先を抱えて丸くなり、にじんできた生理的な涙を抑えながら痛みをこらえる。
その様子が不意に滑稽に思えて、可笑しくなってきたアンはふはっとひとり笑いを零したのだった。
*
翌朝は、初出勤にふさわしい快晴だった。
事務服に着替えたアンは、バイト時代と違って余裕をもって支度をした。
昨日梱包を解いた際に出たビニールひもやらのゴミを袋に詰めると結構な量になり、アンはそれを片手に、もう片方に仕事用のカバンを抱えて家を出た。
もちろん鍵は忘れずに。
「…重っ」
いかん引っ越しなめてた、とひとりつぶやきながらずっしりと質量のあるそれを半ばひきずるようにして階段まで歩いていく。
階段の前までやってきて、一息ついた。
時間は余裕を持って出たからまだ大丈夫だ。
やっぱりふたつに分けるべきだったかな、と少しの後悔と共にアンは再びそのゴミ袋を持ち上げた。
が、その重みはふわりと浮かぶようにアンの手から消えた。
「えっ」
自分の手を確認して、それから心当たりの行ったアンが急いで振り返れば、今起きましたといった顔にお決まりの煙草を咥えた隣人の男。
Tシャツにスウェット姿のマルコはアンに目を合わすこともなく、ただ「持つよい」と言うとアンの返事も待たずに階段を下りだした。
アンが引きずっていたゴミ袋を片手で持ち、あろうことかもう片方の手には自分のゴミらしい小さな袋をもって下りていくその姿を呆気にとられて見ていたアンは、はっとして慌ててその後を追った。
アンが階段を下りた頃には、すでにゴミは集積場に鎮座しており、マルコが折り返し戻ってくるところだった。
「うわっ、ごめん、重かったのに!」
「だからだろい」
気にすんな、と煙草の煙と共に吐き出したマルコに慌ててありがとうを告げておく。
マルコはアンの姿をつま先から頭のてっぺんまでを一瞬眺めると、勝手に何かに納得したらしくよいと呟いた。
一方アンは、いい歳こいたおっさんが朝8時にこんなラフな格好でうろついていることに少なからず疑問を抱く。
「ねぇ、おっさん」
「マルコ」
「あぁ、そう、マルコ…さん」
「…マルコでいいよい」
「マルコは、仕事しないの?ないの?」
無邪気と言ってしまえばそれまでだが、こんなに朗らかに人の職業を尋ねさらには無職かとまで尋ねてしまうのはアンだけがなせる業である。
マルコは一瞬軽く目を開いてから、くつりとひとつ喉で笑った。
アンが反応するよりも早く、唐突にマルコの顔がアンのそれに近づく。
「そんなことより、昨日ぶつけた所、大丈夫かよい」
またあのときと同じ声が重たく鼓膜を打ち、アンは自分でもわからないうちに弾かれたように顔を引いて耳を手で押さえた。
「だっ、だいじょうぶ!」
叫ぶようにそう言って勢いよく身体を反転させたアンは、なんで知ってるんだていうかなんであんな声出すんだ馬鹿!と、ぐるぐると巡る頭を必死で落ち着かせようと、徒歩五分先にあるはずの会社に二分で着いてしまうほどのスピードで足を動かしたのだった。
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2014.01.24 修正
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