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「おいアン、肉ばっか食うなよい。野菜を食え、野菜を」
「ひゃはいもはべてふ(野菜も食べてる)」
「アンちゃんぽんずとゴマダレどっちがいい?」
「ん、んぐ、あー、どっちも。マルコ、お皿二つ欲しい」
「・・・めんどくせぇ・・・」
白い蒸気が七畳の狭い室内を満たして、三人の鼻先を濡らしていく。
サッチが冬を偲んで投入した白菜やら白ネギやらそのほか多くの野菜が鍋を彩り、アンとサッチの絶え間ない会話によって唐突に始まった三人鍋は上々の出来だった。
「ていうかこの狭さに男二人の時点できついんだけど」
「同感だよい。お前が出てくかい」
「これ作ったのおれ!ちなみに材料もおれ!」
「なんでマルコはここに住んでんの?」
マルコとサッチのくだらない応酬を肉をつまみながら聞いていたアンは、思ったままの質問を口にした。
マルコはアンに少しの視線をくれてから、すぐに首を振った。
「・・・別に。知り合いの編集者が近ぇし、そこそこの収入が入る前から住んでるからなんとなくそのまま住んでるだけだい」
「・・・ふーん」
ほら野菜食え、とマルコはアンの器に適当な野菜を投入する。
マルコがアンの質問に答える前、一瞬だけアンに視線を合わせたことが、アンにはマルコが言い淀んでいるように思えた。
サッチは特に何を思う風もなく新しく野菜を鍋に投入しているし、人の私生活を詮索するのはよくないよねえ、とアンはひとり納得する。
「サッチはどこに住んでんの」
「おれ?こっから車で20分くらいんとこ」
「ひとり暮らし?あ、サッチなんで結婚してないの」
「・・・アノネ。結婚になんでとかないの!もうアンちゃんお口にチャック!!」
*
あれから三人で後片づけをして、サッチが材料と一緒に買ってきていたゼリーを食べた。
サッチが帰る際、お前が来たから手間が省けたと、マルコはサッチの手に一本のUSBを握らせた。
それを見てサッチは口の端を引きつらせる。
「・・・お前、これまさか」
「再来月号の原稿」
「おれにどうしろと」
「入稿完了だよい」
「ちょっと待て!おま、これまさかおれに持ってけとか言うの!?」
「メールで送るの嫌いなんだよい。信用ならねぇ」
「知ってるけど!おれ直接お前からもらうといっつも怒られんだよ!私事をはさむなっつって!」
「さっさと起こしといてくれよい。原稿料早く振り込んでもらいてぇ」
「人の話をっ・・・、あぁ、もう、しょうがねぇな・・・」
溜息と共にUSBを無造作にポケットへ突っ込んだサッチは、アンに特大笑顔で手を振りながらマルコの部屋を去って行った。
なんだかんだ言いながらのいつもの光景であることを、マルコとサッチもわかっていた。
アンもそろそろ目に馴染みはじめている。
あれだけ騒がしかったはずの室内は今はマルコとアンの二人だけで、二人から発せられる音は皆無だ。
マルコの部屋に響く音はパソコンから流れるBGMと鼻にかかったような人の声だけで、部屋の照明は落とされパソコンの画面からのみ光が漏れる。
「う、わっ!まる、まるこ!あそこ絶対なんかでる!!」
「出るだろうねい」
アンが無意識に抑えた声で隣のマルコに話しかけるので、マルコもつられて小声で返す。
マルコとアンは、サッチが置いて行ったDVDを鑑賞していた。
「・・・だからこっちのアクションにしようっていったのに・・・」
「嘘つけよい。お前がこれ見たいって言ったんじゃねぇか」
「だってサッチがあんまり怖くないって言っ…っぁあああ!まままるこ!あそこにぃいいい!!」
片手はマルコのシャツの裾を、もう片方は画面を指差して絶叫するアンをマルコは呆れたように横目で見やった。
頭からすっぽりシーツをかぶって震えるアンも相当ホラー要素たっぷりだと、マルコは思う。
「やだやだやだもうやだ、マルコ消してそれ消して!!」
「あと30分で終わるよい」
「つづきは明るい時にみるの!」
既にすっぽりシーツで顔も覆ってしまったアンはもうDVD鑑賞をすっかり拒否していて、その姿を確認したマルコはため息とともにマウスを動かしDVDを止めた。
途端にしんとなる室内。
ソファにゆるりともたれて足を組むマルコと、その隣には白い塊もといアン。
静謐が、今の状況をありありと伝えた。
「…アン」
マルコが声をかければ、シーツの盛り上がりがぴくりと動く。
その動作が、この状況に対してアンがそれなりに理解していることを示していた。
「お前もう帰れよい」
「・・・う、ん・・・」
肯定の返事をしたものの、アンは一向にそれ以降のアクションを見せない。
マルコが再び声をかければ、アンの顔がちらりとシーツの隙間から覗いた。
「・・・帰らなきゃなんないのはわかるんだけどね・・・こわい」
暗闇に慣れてきたマルコの目が、アンの歪んだ口元を捉えた。
そんな顔でそんなことを言われたら、返す返事も与えられたようなものじゃねぇかと、マルコは内心ここぞとばかりにため息をついた。
「じゃあこっちで寝てくかよい」
躊躇いもなく返ってきた頷きにマルコは今度ばかりは紛れもなく本物の溜息が零れたのだが、アンは気づかなかった。
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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