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俺は今非常にひどい頭痛に悩まされている。
それは小一時間続いていて、激しく俺のこめかみ辺りを打ち付ける。
元凶?
言うまでも無い。
今俺の背中に乗っているこいつだ。
crash!!
「なーなーなーなー。マルコー、行こうぜー、陸行こうぜー」
オレンジのテンガロンハットがぶすりと俺の後頭部に突き刺さる。
ヘアセットが崩れるからやめてくれよいと言ってみるが、
サッチみたいなこと言うなよ馬鹿だなマルコはお前寝てても起きてても髪型同じじゃねぇか、とつらつらと腹の立つことを述べられた。
まあ否定はできまい。
机に向かって書類を仕上げて行く俺の背にエースは寄りかかり、耳元やあたまのうえでぎゃんぎゃんとわめき散らす。
「なあちょっとだけじゃん。行こうぜー」
「一人で行けよい。てめぇ、おれが今誰のせいで缶詰状態になってるかわかってんのかい」
「んー、ビスタ?」
「てめぇだろい!」
あ、そういや昨日の書類にスープぶちまかしたんだった、とエースはぽんと手を打った。
「エースー!!早くー!!」
遠くでサッチが声を張り上げている。
「ほらお呼びだよい。行け」
「でも」
「でもじゃねぇよい。早く行「エースー!!早くマルコ連れて来いよー!!」
「・・・」
「サッチに頼まれたんだよな、オレ」
ひくり、と片眉が上がった。
今仕上げている書類の山のもう一つ隣にこんもりと形作る書類たちは、何を隠そう4番隊のアホが遅れたぶんを今になってどっさりよこしたものだ。
「・・・あのカス野郎」
「なっ?せっかく船番じゃねぇんだから降りようぜ」
帰ってから書類手伝うからさあ、とあっけらかんと笑った。
「・・・じゃあこっちの一山帰ってからてめぇがやれよい」
えーっ!?今日かよ!?と悲痛な叫びを後ろで聞きながら、オレは仕事用の眼鏡を机に置いた。
活気ある街だった。
三人で町をぶらついていると、市場ではあっちからこっちからと商売上手な声がかかる。
おっ、兄ちゃん旅の人かい?安くしとくぜ買ってけよ、と声をかけられるとエースはふらふらと寄っていく。
船を下りる前にマークは隠せとシャツを着せたからか、俺たちを海賊とは思わない市民たちから人懐っこく笑うエースには多くの声がかかった。
まあ見ているぶんにはいいかと思ってオレも町の様子を眺めながらぶらついていたが、しばらくして左隣のそいつがいないことに気づく。
後ろを振り返るも、目立つオレンジの帽子さえ見えない。
「よい、サッチ。エースの奴はぐれやがっ・・・」
右隣を振り向くと、そこも閑散としていて。
「・・・おまえもかよい」
思わず独り言が落ちてしまった。
しかしわざわざ道を戻って探すのも面倒で、子供じゃないんだそのうちどっかで会うだろうと俺は歩を進めた。
軒を並べる店たちを覗きながら歩いていると、後ろのざわめきの中からおいちょっと待てよあんたと遠くで誰かが言っていた。
だが別におれが呼ばれたわけではない。
気にせず歩を進めていると、はぁ、はぁ、と荒い息で何かを言う男の声が近付いてくる。
御苦労なこった。
そう思った時、聞き捨てならない言葉が届いた。
「ちょ、あんただよ、パイナップル頭の!!」
思わず足を止めてしまった。(それも悔しいが)
振り返ると、でっぷりと脂ぎった男がひぃひぃと喘ぎながらこちらへ走ってくる。
男はおれの目の前で止まると、膝に手をついて呼吸を整えた。
「・・・パイナップルとはご挨拶だねい」
低く抑えた声でそう言うが、動悸を鎮めるのに精いっぱいの男の耳には届いていないようで。
ようやくあげた男の顔はどこか切羽詰まっていた。
「・・・はぁ、あ、あんたさっきリーゼントの兄ちゃんと歩いてただろ?」
「・・・ああ、よい」
「そ、その兄ちゃんが向こうで・・・」
「待てこのクソガキ────!!!」
男の声は、雑踏の中から聞こえた怒号にかき消された。
怒鳴り声が聞こえたほうに無意識に顔を向けると、店から料理人らしき男が飛び出してきた。
目の前の男がぽつりと呟いた。
「ありゃあ食堂のオヤジじゃねぇか」
「なんかあったのかい」
「さあ・・・大方食い逃げかなんかだろう。それよりさっきの話だけど、」
「ファルホーーーー!!」
聞きなれた声が、またもや男の話を遮った。
とてつもなく嫌な予感がする。
ちなみにこういう予感に関しては、おれははずしたことがない。
声のほうを振り向けば、その頬をぱんっぱんに膨らまして駆けてくるオレンジのテンガロンハット。
その後ろには、先程食堂から飛び出してきた料理人が。
一瞬にして事態を飲み込んだ。
走ってきたエースはオレの目の前で咀嚼もろくにせず口の中のものを飲み込むと、ゴメン!と叫んだ。
「逃げて!!」
エースの一声と、後ろから追ってくる男の怒号が重なった。
俺たちは先ほどから話をさえぎられてばかりの哀れな男をそこに残し、一目散に駆け出した。
猛スピードで走り抜ける俺たちに道の住人は目を丸くして、慌てて道を明ける。
人並みをかいくぐりながら並行して走るエースに叫んだ。
「ちなみに聞くがてめぇ今度は何をしたぁ!!」
「今度も!!」
・・・食い逃げかっ!!!
後ろを振り返ると、食堂の親父は真っ赤な顔でまだ俺たちを追ってきている。
思わず舌打ちがもれた。
・・・はて。オレはある事に気づいた。
何故オレも一緒に逃げている?
「・・・てめぇ、エース、オレまで巻き込みやがって!!」
青筋立てて怒鳴ると、にしし、と腹の立つ笑い声が帰ってきた。
「おっ!!マルコー!!エースー!!」
三叉路に出ると、前方右側の路地から、サッチがリーゼント揺らしながら走ってきた。
「あ、サッチー!!」
エースは無邪気にそちらに手を振る。
それどころじゃねぇだろいっ!
しかしサッチのほうに目を凝らすと、奴の後ろから数人の男も汗を光らせ走っているのがわかる。
これはどうみてもサッチが追いかけられている図だ。
俺たちは三叉路の中心で合流し、もう一方の道へ駆け込んだ。
「サッチテメェなんで追われてる!」
「いやあふつうに散策中のつもりだったんだけどよぉ、気づいたらなんか」
ちらりと横目で奴を捕らえてその全貌を眺める。
いつものコック服を七分丈のズボンと、南国風な柄と派手な色合いのシャツに変えている。
この男がズボンのポケットに手を突っ込んでリーゼントを揺らしながら歩く様を想像してみた。
・・・柄が悪いにもほどがある。(職業柄しょうがないともいえる)
「てめぇからまれたんだろいっ!」
そうかもー!と気の抜ける返事が返ってきて、ああさっきの男はこいつが絡まれているのを知らせようとしていたんだと思い当たった。
おそらくこいつなりに今喧嘩を買ってはせっかくの久々の上陸が台無しになると気を使って、手は出さずにこうして逃げているんだろう。
「ところでなんでお前らも逃げてんの?」
「飯食って金なかったから逃げた!!」
「えっ!?マルコも!?」
「んなわけあるかぁっ!!」
俺たちは走って、走って、気がつけば屋根の上にも出たりして、とにかく港に向かって走り続けた。
ようやく波止場に出た頃には日も傾き始めていて、後ろを振り返ったが誰かが追いかけてくる様子もない。
俺たちは肩で息をしながら汗をぬぐった。
「・・・まいた、な・・・」
「・・・あぁ・・・」
「・・・てめぇら・・・、はあ、覚えてろいっ・・・!」
俺の悪態が届いたのか届いてないのか(きっと後者)、目の前の男二人は顔を上げ、にぱりと笑った。
「「あー楽しかった!」」
オレの額の静脈がびくんと音を立てたのは言うまでもない。
「さあ帰ろう帰ろう」
おれたちのいえーへー、モビーごうへーぇー、と適当な節をつけてサッチが歌い、歩き出す。
目前のでかい船からは、イゾウが船べりに肘をついて、お帰りと口だけ動かしたのが見えた。
今夜夕食前にこいつら二人の部屋にどっさりと未完の書類を積んでやろうともくろみ、でも夕飯は一緒に食いたいなとも思ってしまうオレは、まあ、結構なあれだ。バカ。
オレはイゾウがしたように、ただいま、と口だけ動かすと、答えるようにモビーが揺れた。
(────あ、走ったら腹減ったからオレちょっと街で腹ごしらえしてくるわ)
(ちょっと待てい!!)
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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