OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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【ハロー隣のクラッシャー】続編で、おなじみトリトネコ。のハナノリさんとの合作です。
元ネタ・一部セリフ→ハナノリさん
文→こまつな
という具合です。
スクロールでどうぞ!
ん、と低く唸るような声がした。
ソファに持たれてサッチに借りたポータブルゲームをしていたアンは、今いるこの部屋の主であるマルコのほうへと顔を向けた。
黒い回転椅子に深く腰掛け手に持つ書類を睨んでいるところはいつもとなんらかわりないのだが、節くれだった大きな手が後頭部あたりに所在なく回されていることとしかめっ面の横顔からして、どことなく困惑しているように見えないでもない。
「どうかした?」
「・・・いや・・・ん・・・アイツんとこに入れなきゃなんねェ記事があるんだがよい・・・忘れてた」
しまったよい、いやでも取りにこねぇアイツも悪い、などとぶつぶつ呟くその顔はどこまでも渋い。
アイツというのはアンにとってもお馴染みのあの人のはずで、確かに「最近超忙しい」という内容の絵文字・顔文字の並ぶ女子高生のようなメールが届いていたなあとアンもそこはかとなく考える。
「今から行く?」
「・・・あぁ・・・いや、明日の正午締切がこっちに・・・だから・・・クソ、あの女・・・」
既にマルコの頭の中では今日を含め明日の締め切りまでの予定が建てられていたはずで、車を出していかなければならないサッチの出版社に出向くとなるとその予定は大幅に後方へ振られることとなる。
生憎そんな想定外をやすやすと許せるような性格ではないのだ。
しかしだからといって入稿を見送れば、来週購入予定だったソフトが手に入らない。
そうなれば次の仕事が遅れて、予定もクソもあったもんじゃないのだ。
またアンは、あの女というのは多分あの人のことだろうなあとその女性の姿を脳内に描いていた。
フレアスカートが薄茶色の髪と共にふわりと舞うのがとても似合う綺麗な人。
それでも笑うときはとても豪快で元気で、マルコには『鬼だよい、アイツァ、鬼。締切一分一秒たりとも許しゃしねェ』と形容されている。
それでもマルコが手を切らないのはそれなりの信頼があるからで、よって悪態を付くくらいしか彼女に打つ手はないのである。
締切が時報のように正確なことに加えてマルコの舌打ちを誘うのは、その女性がマルコに託した仕事の量である。
その仕事に確かな原稿料が約束されていること、そしてその先にある一つの予定によって、こと彼女との仕事に関してマルコは身動きが取れない。
珍しく頭を抱えるようにしてテーブルに臥せってしまったマルコの背中を眺めていたアンは、ふと思い立ってひとりマルコの背中でにたりと笑った。
むくりとソファから体を引きはがし、ぺたりぺたりと裸足の脚をフローリングの上に乗せてマルコの背後へと歩み寄る。
気配に気づいてマルコが振り返るとそこにあるのは嬉々としたアンの顔。
「ね、あたしがサッチんとこ持ってってあげる」
「・・・あ?」
「その間にマルコはそっちの仕事できるし、あたし暇だし。ね、」
なんていい考えだと言わんばかりに顔を輝かせるアンの瞳はもう既に今日の楽しみ見つけたと語っていて、マルコは一瞬言葉に詰まる。
だが口から転び出た言葉は案外簡単だった。
「駄目だ」
「え!なんで」
「・・・だいたいお前足がねぇじゃねぇか」
「じってっんっしゃ!」
「遠いよい」
「前に車で通ったとこじゃん?あたしのバイト先のファミレスとあんまり距離変わんないよ」
「・・・今日は昼から雨降るよい」
「さっきテレビで今日は一日晴天って言ってた!」
「・・・そのうちサッチが取りに来るよい」
「サッチ今日は会社でてんてこまいって朝メールきた!」
「・・・」
「ね、いいじゃん、なくしたりなんかしないからさ、」
こうしてる時間がもったいないよと言うアンを前にして、すでにマルコは今の状態を回避する術をすべて失ってしまった。
別に原稿をなくされることを危惧しているわけじゃない(安心して任せられるとは言い辛いが)。
サッチの会社に行かせたくないのだ。
あそこにはアンには顔合わせさせたくない奴らがうようよしている。
特に、とマルコはある姿を思い浮かべて顔をしかめた。
しかしアンが引く気配は全くないわけで。
自身の仕事の予定と勝手な心配、ふたつを秤にかけた際、軍配は前者に上がった。
「・・・オフィスの4階、サッチの雑誌はわかるな?」
「! うん!」
「ロビーに入ったら正面に受け付けがあるからそこで受付嬢に詳しい場所を聞け」
「うんうん」
「会社の奴が声かけてきても適当にかわして相手にするんじゃねェぞ」
「わかった!」
「迷っても知らない奴には付いていくな。受け付けに戻れ」
「会社の人でも?」
「絶対だよい。食いもんくれるって言われても付いてくんじゃねぇぞ」
「だいじょうぶ!」
「・・・・・・。アイツァ多分自分の席に噛り付いてるたぁ思うが、もしいなかったら直接電話しろ。出なかったり来なかったりしたらもういい、すぐ帰ってこい」
「他の人に渡したら?」
「極力人とは喋るな」
よしわかった、まかせて!と調子よく頷いたアンの顔を座ったまま見上げて、マルコは内心信用ならねぇとため息をつく。
だが背に腹は代えられないというやつで、差し出されたアンの手に小さなメモリをひとつ乗せたのだった。
自分の家から小さなリュック一つ持ってきたアンはその内ポケットに大事なUSBメモリを収めてリュックを背負う。
マルコはその姿をげんなりと玄関口で眺めていた。
「じゃ、行ってきます!」
「・・・おうよい、わかってんな、知らない奴にゃあ」
「付いてかない!お菓子貰っても付いてかない!もうマルコ面倒臭いなあ」
なっ、と声をあげたマルコにアンは既に背を向けて、しっかり届けてくるからねー!とひらひら手を振って階段を下りて行った。
面倒臭いと形容されたマルコはその背中をやりきれない思いで見送ったわけだが、
子供をはじめてのおつかいに行かせる父親でもあるまいし、と胸の奥深くでさわりと揺れる不安を抑えつけながら無理やり納得させたのだった。
*
見上げたらひっくりかえってしまいそう、というのは誇張が過ぎるが、近くにこれほど高い建物は見当たらない。
白く光るそのビルは高くそびえたち、圧倒的な威圧感を放っていた。
以前マルコの車の中から前を通ったときにもおっきいビルだなあくらいには思っていたが、目の前に立つと一際その高さが目に付く。
大きな会社だということはそこに勤めているサッチも比例して凄いということで、ほおと思わず感嘆の声が漏れた。
会社の入口付近、駐車場あたりを見渡したが自転車置き場は見当たらなかったので、駐車場の隅にこっそりおいておくことにした。
リュックを背負い直し、肩ひもを強く握って自分に喝を入れる。
びびるな、目的はサッチ、4階だ!と強く言い聞かせてアンは自動扉へと足を進めた。
「・・・う、わ・・・」
一歩中に入ればそこはずっと上まで吹き抜けで、ざわざわと人の話し声が混ざり合っている。
せわしく目の前を通り過ぎる人もいれば、数人組で談笑しながら歩いていく人たちもいた。
かっちりとした見た目とは裏腹にそこに存在する人々は顔も服も多種多様で、ああサッチが馴染みそうな場所だと思える。
正面にはマルコの言った通り受け付けがあり、そこには三人、なんとも綺麗な女性が立っていた。
(・・・しゅっぱんしゃ、っていうのは綺麗な人が多いのか、)
別の出版社の女性の姿を思い浮かべて、アンはぼんやりとそんなことを考える。
自動ドアの前に立ち尽くしたままのアンにとっくの前から気づいていた受付嬢たちはアンの視線を捉えてニコリとほほ笑んだ。
「何か御用でしょうか?」
「っわ、あの、サッチ、じゃなくて・・・4階の〇〇って雑誌の編集部に行きたいんですけど!」
慌てて受け付けに歩み寄り早口にそういえば、受付嬢は微笑みを絶やさずにどこからともなく一枚の紙を取り出した。
もうひとりの受付嬢が受話器を取りどこかに電話を掛ける。
「こちらが社内の地図になります。あちらのエレベーターで4階まで昇っていただいて、つきあたりを右に。そしたらすぐ自動販売機のスペースが見えますので、そこを左にお進みください。しばらく行くと印刷室がありますので、その隣の小さな階段を少し降りていただいて、右に曲がったところが編集部になります」
「え、あ、はい。って、勝手に入ってもいいの?・・・ですか、」
「えぇ、マルコさまからお電話いただいておりますので」
おぉさすが、とアンが感動したところで先ほどまで電話をしていた受付嬢がアンのほうを振り向きゆるりとほほ笑んだ。
「編集部のほうへ電話を入れておきましたので、何かあれば迎えがあると思いますわ」
物事が驚くほど滑らかに滞りなく進んでいく様を前にして、アンは目を白黒させた。
大きな会社はこう、物腰と言うか雰囲気と言うか、序盤から何かと違うものだ。
しかし白黒していても仕方ないので、アンはありがとう!と受付嬢に頭を下げてエレベーターのほうへと足を進めた。
ああ楽しいことになりそうだ。
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