OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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カチャリとリビングのドアを開けて戻ってきた気配に、
足音はそれ以上しないので、
マルコが来たのはサッチの口ぶりで分かった。
けれど、そのサッチはどこかへ行ってしまったらしい。
「サッチ・・は?」
「足りねェもん買ってくるってよぃ」
「・・・・そ、う」
それっきり沈黙が訪れた。
アンにはその沈黙がマルコの怒りを示しているのだと思えて、
ますます自分からは何も言えなくなる。
嘘をつこうと思ってついたわけじゃなくて、
単に部屋から出たい理由をマルコには言えなかったから・・・
ああ、でも気付かれないように振る舞ったのは、
サッチは、全部言ったらアッサリ解決って言ったけど・・・
「出がけに、何か変だと思ったんだよぃ」
「え・・・・・・・?」
マルコの声は思いのほか静かで、
「お前ェの態度がどっか変だって思ったんだが、よぃ」
特に理由も見当たらねェし、
マルコはそこまで言うと、
「俺には言えねェ泣くほどの事って何だよぃ」
本当に心当たりがないという様子でマルコはじっとアンを見る。
外の雨は酷いのだろうか。あちこち濡れた姿のマルコ。
その顔にアンはマルコの怒りがない事を読みとってホッとしたけれ
マルコは何にも分かっていない。
けれど分からないようにしてきたのは自分なんだし、
「何でも、ないよ」
ちょっと困らせたくなっただけ、
それに泣いたとかもサッチの嘘だから。
ごめんね、とアンはマルコの視線から逃げるようにそう言った。
「・・・そうかよぃ」
「うん」
「って納得するわけねェだろが」
トッと足を踏み出す音を聞いた時には体がもう浮かんでいた。
グイと攫われたアンの体は、
「う、わ、!?」
目線がマルコよりほんの少し上にきて、
「勝手に隠されて、勝手に納得されて、勝手に逃げられて、」
「ちょ、下ろせって」
カウンターについたマルコの両腕に囲われるようになり、
アンには逃げ場がない。
マルコの肩口を押しても当然目の前の男が揺らぐはずも無かった。
「そんで勝手に他の男んとこで泣くなんざ、」
ずるいにも程があんだろぃ、
マルコがずるいを言えた義理か。
「じゃぁ、さ」
こうなったら全部吐き出してやると、
「・・・てていい?!」
「?」
「捨てていい?」
「・・・何をだよぃ」
「マルコんとこにある紅茶」
紅茶?そんなものが存在していたかとマルコは首を捻る。
あるとすればキッチンか?
記憶を巡らせても、
応募券のシールやらが並んでいる記憶しかない。
一貫性の無いキャラクターの色や形は思い出せる癖に、
ともあれそれがあるとして、
アンのおかしな態度がたかだか紅茶ごときなのかと、
マルコは話の見えなさ加減に眉を寄せた。
「そんなモンに覚えはねェが、
ってか俺にいちいち聞くことでもねぇだろうが。
呆れた様な声を出せば、アンは瞬間でだって、と言い募った。
「その紅茶あたしんじゃないもん!」
マルコの、前の、カノ
アンの口はそこまでを音にするのが精いっぱいだった。
けれどマルコはそれだけで言いたい事がわかったらしい。
アンの態度も、そして今の表情の意味も。
明らかにアンの瞳は傷ついていて、
マルコは先ほどサッチに言われた『反省しろ』
アンが隠すようにした事も、
もろもろ全てに予測が付いた。
アンは思っているより恋愛情緒丸ごと欠如、
と頭の隅でしっかり上書きをしつつ、さて、
言い訳も、説明も、機嫌取りも、
そして何より反省も、
女との付き合いでした覚えがない手前、
なかなか貴重な体験をさせてもらえるもんだ、
と心の中で言ったのは逃げに近いのかもしれない。
マルコはアンの腰辺りを持ち上げて、カウンターからストン、
今までほんの少しだけ見上げていた角度が、
そして下げたところにはアンの黒曜石はなく、
*
「悪かった、よぃ」
マルコは俯いたアンの頭に向ってそう言った。
「俺は、どうでもいいモンに意識払う性質じゃねェから、
後生大事に取ってたわけでも棄てられなかったわけでもねぇよぃ」
「・・・・・そんなもん気にせず好きに棄てりゃよかった?」
さっきの発言がこうやって戻ってくるとは、
相当拗らせたらしいとマルコはうっかり発言をした数分前の自分の
ガムテープを張ってこればよかったと思った。
そして、ふ、と息を吐くと答えた。
「考えなしに言って悪かったよぃ。
「・・・・・・・・」
「それに、そういう曰く付きのモンだって分かった以上、
マルコの口から語られる言葉はとても静かで、
そしてとても真摯だった。
だからアンは聞いている途中から非常に居たたまれなくなっている
とるに足らないたかだか小さな紅茶のことで変な態度をとって、
そしてそれをきちんと話さずに居たのは自分。
勝手に逃げ出しといて、
結局責めるのは、都合がよすぎるような気もしていた。
まるでものすごく小さい子供みたいな・・・。
「・・・ごめん」
「何でお前ェが謝んだよぃ」
完全にマルコの言葉は苦笑交じりになった。
「だって・・・すごく、下らないことであたし・・・
たまに、気になるだけであとは全然平気だったし、
だから、ちょっとだけ気のせいだったかもしれないし、」
何故かアンが弁解するようになった口調を、
が、アンの言葉は止まらない。
「しょうもないこと、で、嘘、ついて、ごめん」
口に出したら、とたんに力が抜けた。
同時にくしゃりと頭を撫でる手を感じて、
「ったく、何でこんな時ばっかり聞き分けがいいんだよぃ」
責めようが拗ねようが、
アンは喚くどころか、
「しょうもなかったのは俺の方だよぃ」
責められたほうがマシだ、などと自分が思う日が来るとは、
とマルコは目の前で小さくなってしまったアンへ再度悪かった、
そして体の脇できゅぅと握ったままの小さな手をとると、
つい、と引いて玄関へ向かう。
「帰るよぃ」
「!?え、でも、サッチ買い足しって」
「いらねェって連絡しとく」
「けど」
「どうしてもやることがあんだよぃ」
それは一体なんだとアンは思ったが、
そもそも今日は手が離せないはずだったのだから。
(居ない間に姿消すなんて、サッチに悪すぎる・・・・)
ただ、
マルコの様子が気になって、
引かれた手を一度ほどいてもらって、
机に放置した自分の携帯と、
そして転がっていたペンで書き置きを残そうと思ったが、
メモ的な何かは見つからなかったので丸まったレシートの裏へ皺を
*
路上に乱暴に停めました、
マルコの運転は荒くは無いのでその停め方には少々違和感があった
乗り込む時の傘の開閉が嫌なんだよな、
マルコは傘も持たずに来たのか既に乗り込んでエンジンを回してい
車が走り出すとアンはとたんに息苦しくなった。
それは相変わらず降り続けている雨のせいではない。
謝って謝られて、
これがサッチの言う解決なんだろうか。
スッキリした気持ちにはならないのが解決だってことなんだろうか
わからないがこれ以上どうしたらいいのかはアンにはお手上げ状態
この狭い密室状態ではまだまだ空気がぎこちないことが嫌でも実感
アンは膝の上に載せた菓子の袋の中、
見た事の無い外国の物がいくつか在る袋の中、
手にとっていたのはいつも行くコンビニでもよく買うものだった。
アンが何をしているかなど、この距離だ。
マルコは信号待ちの間、ふとアンの手元に眼をやると、
また買ったのか、と少しだけ笑った。
そこには責めている風はなく、当然怒ってもいない。
「へ?」
「俺の冷蔵庫んとこにベタベタ貼ってあんだろぃ、
菓子のオマケの王道がキャラクターもののシールなのは分かる。
が、それをいい歳した男の冷蔵庫へ貼る行動は理解不能だ。
『三歳児かお前ェは、貼りたいなら自分のとこに貼って来い!』
数を増やす度にマルコはアンの頭を叩くが、
『やだよ、別にこれ好きじゃねぇもん』
『俺だってお前に輪をかけてお断りだよぃ!』
そういいながら、冷凍庫の扉に2つ、冷蔵扉の隅に3つ。
それが何のキャラクターなのかは知らないが、
マルコの頭では現在アンの手の中にあるものと同じだとの判別は付
「何で同じのばっか」
「・・・そう、だっけ?」
覚えてない、と呟いたアンの台詞に、
伝わると思ったのは自分が甘い。
似合わない様だと思いつつ、
「お前ェが忘れてても、覚えがなくても」
紅茶どうのは知らないが、アンがしでかしたことや、
持ちこんだものなら馬鹿みたいに、
「俺は全部覚えてるよぃ」
「お前ェのことならバカみてェに」
全部な、と言ったところで信号の色が変わる。
アンはびっくりしたようにマルコの横顔を見て、
言われたことを反芻して、
運転中のマルコの視界の端へ全部映り込んでいた。
**
車で20分。
アパートの姿が見えて、アンは少しだけ気が重たい。
昨日からずっとまだ心に引っかかってることのうち、
紅茶の事はマルコに伝えた。
伝えたけれど、この状態が解決なのかはわからない。
そして、まだ言っていないことがひとつ。
(天気がよかったら、まだ気持ちもこんなに沈まなかったかなぁ・
アンが傘を開いて車を降りた時、
昼前にアンがアパートを出た時から、
マルコはあっという間に濡れていくシャツには一向に構わず、
ガチャリとキーを回すと重たい扉をマルコは引く。
そしてアンが付いてきているのかも確認せず、
少しだけ視線を彷徨わせ、
そして躊躇なくそれを掴むと、
玄関に立ったままポカンとしているアンの横を通り過ぎてカンカン
(・・・え?)
手ぶらで戻ってきたマルコの顔を、
「やるこた済んだ。上がれよぃ」
「へ?」
たった今何をしてきたのか、
相変わらず傘をささずに往復したため、
玄関を上がり、シャツを脱いでガシガシと頭を拭くマルコに、
つられるように上がり込んだアンは今一つ理解できないままおずお
「やること、済んだって・・・」
「お前に捨てさせるのは筋が違ェだろぃ」
「いや、そこじゃなくて、」
どうしてもというから、
それがたったこんな、
マルコは帰って来たというのだろうか。
アンのそんな表情へ、マルコは拭いていたタオルから顔を出すと、
「やんのが遅ェだとか、とっととやっとけとか、
「え、あ、いや、だって別に」
「別に、じゃねェ。大したことでも、しょうもなくもねェ」
アンが言おうとした端から、
「言葉が足らねェのは俺が悪い。けど、
責められていはいない。それはわかる。
わかるけれど、アンの口から出たのは、ごめん、の言葉だった。
それを聞き、マルコはあー、
その場に胡坐をかくようドサリと腰を下ろすと、
目の前にぺしょん、と座ったアンを見ながら、
「お前ェが、泣くとか、怒るとか、
「・・・・・」
「俺はどうやらお前ェが思ってる以上にしつけぇし、
「・・・・・」
「だから言いたい事があんなら、」
「・・・・」
「我慢する必要はねェんだよぃ」
別段大人でもないのだから、
アンは何も言えなかった。
珍しく、
ずっと話してくれているマルコの声が静かで、
ただそれだけのことで何故だが泣きそうになっていたから。
「まだ、何かあんだろぃ?」
ビク、とアンの肩は跳ねて簡単に肯定の返事となってしまった。
そのことを理解しつつもアンはふるふると頭を振る。
どうしてわかってしまうのだろう。
大人げない、と称したマルコは嘘を吐いているに違いない。
大人だから、
「・・・ない」
「言え」
アンは頑なに首を振る。
だって、言っても今度はさっきの紅茶みたく、
それでもマルコ相手にこの問答がいつまでも続けられるとも思えな
いつの間にか、
アンはマルコと向き合うしかない。
濡れたシャツを脱いでしまっている状態では、
仕方なくマルコの首からかかっているタオルの先端を見ているしか
アンは何度目になるかわからないが、
マルコが先ほど言った、しつこい、
この体勢は大人げないとも思う。
言わなければ終わらないと、アンは嫌でも悟ることとなった。
*
「前のひと、と、同じとこにいるのが、嫌」
終わらないやりとりに、
顔を見てなど言えるわけもなく、
口に出せたのは半分自棄になった所為もあるが、
サッチの言っていた『全部話したらすっかり解決』
マルコが何と言うのか聞く前に、
前の彼女と同じ場所に居るのが嫌であれば、
アンがこの部屋を出て、どこか違う場所へ行けばいいだけだ。
けれど、
マルコの傍、声をかけたらいつでもそこに居るこの場所は、
どうしても簡単に棄てられなかった。
棄てられなかったのは自分で、
それなのに、ここに居るのが嫌とか・・・
「・・・そうかよぃ」
わかった、とマルコは一つ息をついた。
それを聞いて、アンは思わず小さく笑ってしまった。
一体何がわかったって言うんだろう。
アンは仕方の無い事を言ったと自覚があるし、
マルコだって言われて困るに決まっている。
「そんじゃ、お前も同意ってことで」
聞く手間が省けたよぃ、とマルコはとんちんかんなことを言い、
そして何故かそれはとても嬉しそうだった。
ハナノリさんのあとがき
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