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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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カチャリとリビングのドアを開けて戻ってきた気配に、アンは振り返る事も出来ずに固まっていた。
足音はそれ以上しないので、部屋の入り口近くに佇んでいるらしい。


マルコが来たのはサッチの口ぶりで分かった。
けれど、そのサッチはどこかへ行ってしまったらしい。



「サッチ・・は?」

「足りねェもん買ってくるってよぃ」

「・・・・そ、う」



それっきり沈黙が訪れた。


アンにはその沈黙がマルコの怒りを示しているのだと思えて、
ますます自分からは何も言えなくなる。

嘘をつこうと思ってついたわけじゃなくて、
単に部屋から出たい理由をマルコには言えなかったから・・・
ああ、でも気付かれないように振る舞ったのは、あれはもう嘘つきたくてついてたことになるのかもしれない。


サッチは、全部言ったらアッサリ解決って言ったけど・・・


「出がけに、何か変だと思ったんだよぃ」
「え・・・・・・・?」


マルコの声は思いのほか静かで、アンは思わずテーブルの上ばかり見つめていた視線を上げた。


「お前ェの態度がどっか変だって思ったんだが、よぃ」
特に理由も見当たらねェし、思い過ごしだっつってそのままにしたんだが・・・・、

マルコはそこまで言うと、後悔していると言った風でハァとため息を吐いた。


「俺には言えねェ泣くほどの事って何だよぃ」


本当に心当たりがないという様子でマルコはじっとアンを見る。

外の雨は酷いのだろうか。あちこち濡れた姿のマルコ。

その顔にアンはマルコの怒りがない事を読みとってホッとしたけれど、同じだけ落胆した。


マルコは何にも分かっていない。
けれど分からないようにしてきたのは自分なんだし、それも仕方のないことかもしれなかった。



「何でも、ないよ」
ちょっと困らせたくなっただけ、マルコ仕事忙しそうで構ってくんなかったし、
それに泣いたとかもサッチの嘘だから。

ごめんね、とアンはマルコの視線から逃げるようにそう言った。


「・・・そうかよぃ」
「うん」



「って納得するわけねェだろが」

トッと足を踏み出す音を聞いた時には体がもう浮かんでいた。
グイと攫われたアンの体は、そのままあろうことかキッチンカウンターの上に乗せられる。

「う、わ、!?」

目線がマルコよりほんの少し上にきて、覗きこまれるようにされた青い目とまともにぶつかった。



「勝手に隠されて、勝手に納得されて、勝手に逃げられて、」
「ちょ、下ろせって」

カウンターについたマルコの両腕に囲われるようになり、
アンには逃げ場がない。
マルコの肩口を押しても当然目の前の男が揺らぐはずも無かった。


「そんで勝手に他の男んとこで泣くなんざ、」


ずるいにも程があんだろぃ、と言われた台詞にアンはカチンと来た。

マルコがずるいを言えた義理か。


「じゃぁ、さ」

こうなったら全部吐き出してやると、アンは半ばやけになってマルコへと告げる。






「・・・てていい?!」

「?」


「捨てていい?」

「・・・何をだよぃ」

「マルコんとこにある紅茶」

紅茶?そんなものが存在していたかとマルコは首を捻る。

あるとすればキッチンか?

記憶を巡らせても、コンビニに行くたびに増える菓子のオマケやら、ペットボトルのキャップやら、
応募券のシールやらが並んでいる記憶しかない。

一貫性の無いキャラクターの色や形は思い出せる癖に、マルコにはアンの言う紅茶がわからなかった。

ともあれそれがあるとして、
アンのおかしな態度がたかだか紅茶ごときなのかと、
マルコは話の見えなさ加減に眉を寄せた。


「そんなモンに覚えはねェが、お前がそうしたきゃすればいいよぃ」
ってか俺にいちいち聞くことでもねぇだろうが。こんな顔してまで。

呆れた様な声を出せば、アンは瞬間でだって、と言い募った。

「その紅茶あたしんじゃないもん!」
マルコの、前の、カノ

アンの口はそこまでを音にするのが精いっぱいだった。

けれどマルコはそれだけで言いたい事がわかったらしい。
アンの態度も、そして今の表情の意味も。


明らかにアンの瞳は傷ついていて、
マルコは先ほどサッチに言われた『反省しろ』の意味をようやく理解する。


アンが隠すようにした事も、よりにもよってサッチに吐きだした事も。

もろもろ全てに予測が付いた。




アンは思っているより恋愛情緒丸ごと欠如、というわけでもないのか、
と頭の隅でしっかり上書きをしつつ、さて、とマルコは独りごちる。


言い訳も、説明も、機嫌取りも、
そして何より反省も、

女との付き合いでした覚えがない手前、
なかなか貴重な体験をさせてもらえるもんだ、
と心の中で言ったのは逃げに近いのかもしれない。



マルコはアンの腰辺りを持ち上げて、カウンターからストン、と下ろした。

今までほんの少しだけ見上げていた角度が、すぐさま随分と下にさがる。

そして下げたところにはアンの黒曜石はなく、ただ俯いたアンの黒い柔らかなくせ毛が見えるだけだった。









「悪かった、よぃ」



マルコは俯いたアンの頭に向ってそう言った。


「俺は、どうでもいいモンに意識払う性質じゃねェから、
後生大事に取ってたわけでも棄てられなかったわけでもねぇよぃ」

「・・・・・そんなもん気にせず好きに棄てりゃよかった?」



さっきの発言がこうやって戻ってくるとは、
相当拗らせたらしいとマルコはうっかり発言をした数分前の自分の口に、
ガムテープを張ってこればよかったと思った。

そして、ふ、と息を吐くと答えた。

「考えなしに言って悪かったよぃ。お前ェが他人のモン勝手に捨てられねェ性質ってのは知ってたのにな」

「・・・・・・・・」

「それに、そういう曰く付きのモンだって分かった以上、お前の態度責めるのは筋違いだよぃ」


マルコの口から語られる言葉はとても静かで、
そしてとても真摯だった。


だからアンは聞いている途中から非常に居たたまれなくなっている


とるに足らないたかだか小さな紅茶のことで変な態度をとって、

そしてそれをきちんと話さずに居たのは自分。


勝手に逃げ出しといて、
結局責めるのは、都合がよすぎるような気もしていた。




まるでものすごく小さい子供みたいな・・・。





「・・・ごめん」

「何でお前ェが謝んだよぃ」

完全にマルコの言葉は苦笑交じりになった。


「だって・・・すごく、下らないことであたし・・・
たまに、気になるだけであとは全然平気だったし、
だから、ちょっとだけ気のせいだったかもしれないし、」

何故かアンが弁解するようになった口調を、マルコは一度名前を呼んで遮った。
が、アンの言葉は止まらない。

「しょうもないこと、で、嘘、ついて、ごめん」


口に出したら、とたんに力が抜けた。

同時にくしゃりと頭を撫でる手を感じて、うっかりまた鼻の奥がツンとし始める。



「ったく、何でこんな時ばっかり聞き分けがいいんだよぃ」


責めようが拗ねようが、もっと存分にやったとしてマルコはそれを甘受する気でいるのに、
アンは喚くどころか、自身の気持ちを抑え込んであろうことが自分が反省するというミラクルをしでかしていた。


「しょうもなかったのは俺の方だよぃ」


責められたほうがマシだ、などと自分が思う日が来るとは、
とマルコは目の前で小さくなってしまったアンへ再度悪かった、と告げた。

そして体の脇できゅぅと握ったままの小さな手をとると、
つい、と引いて玄関へ向かう。


「帰るよぃ」

「!?え、でも、サッチ買い足しって」

「いらねェって連絡しとく」

「けど」

「どうしてもやることがあんだよぃ」


それは一体なんだとアンは思ったが、すぐさま仕事のことだろうと思いなおす。
そもそも今日は手が離せないはずだったのだから。

(居ない間に姿消すなんて、サッチに悪すぎる・・・・)

ただ、真剣な言い様のマルコにそれ以上言い募って帰るのを拒否することはできなかった。
マルコの様子が気になって、アンは最終的にはマルコの後に続くことを了承する。


引かれた手を一度ほどいてもらって、
机に放置した自分の携帯と、サッチに買ってもらった菓子の入った袋を持ち上げた。

そして転がっていたペンで書き置きを残そうと思ったが、
メモ的な何かは見つからなかったので丸まったレシートの裏へ皺を伸ばして文字を書きいれた。








路上に乱暴に停めました、といった態の車にはよくぞ違反切符が貼られなかったものである。


マルコの運転は荒くは無いのでその停め方には少々違和感があったが、アンはとりあえず助手席へ乗り込む。

乗り込む時の傘の開閉が嫌なんだよな、とそんな事を思っていると、
マルコは傘も持たずに来たのか既に乗り込んでエンジンを回していた。



車が走り出すとアンはとたんに息苦しくなった。

それは相変わらず降り続けている雨のせいではない。


謝って謝られて、
これがサッチの言う解決なんだろうか。

スッキリした気持ちにはならないのが解決だってことなんだろうか
わからないがこれ以上どうしたらいいのかはアンにはお手上げ状態だ。


この狭い密室状態ではまだまだ空気がぎこちないことが嫌でも実感できて、
アンは膝の上に載せた菓子の袋の中、適当にガサガサと漁りつつ眺めている。


見た事の無い外国の物がいくつか在る袋の中、
手にとっていたのはいつも行くコンビニでもよく買うものだった。

アンが何をしているかなど、この距離だ。運転をしながらのマルコにも全て見えている。

マルコは信号待ちの間、ふとアンの手元に眼をやると、
また買ったのか、と少しだけ笑った。

そこには責めている風はなく、当然怒ってもいない。


「へ?」

「俺の冷蔵庫んとこにベタベタ貼ってあんだろぃ、それのオマケだか何だか同じのが」

菓子のオマケの王道がキャラクターもののシールなのは分かる。
が、それをいい歳した男の冷蔵庫へ貼る行動は理解不能だ。




『三歳児かお前ェは、貼りたいなら自分のとこに貼って来い!』

数を増やす度にマルコはアンの頭を叩くが、アンは一向に聞き入れない。

『やだよ、別にこれ好きじゃねぇもん』

『俺だってお前に輪をかけてお断りだよぃ!』

そういいながら、冷凍庫の扉に2つ、冷蔵扉の隅に3つ。
それが何のキャラクターなのかは知らないが、
マルコの頭では現在アンの手の中にあるものと同じだとの判別は付いた。




「何で同じのばっか」

「・・・そう、だっけ?」

覚えてない、と呟いたアンの台詞に、マルコはついにクッと吹き出した。


伝わると思ったのは自分が甘い。

似合わない様だと思いつつ、それでも懺悔のつもりでマルコは続けた。



「お前ェが忘れてても、覚えがなくても」


紅茶どうのは知らないが、アンがしでかしたことや、
持ちこんだものなら馬鹿みたいに、


「俺は全部覚えてるよぃ」




「お前ェのことならバカみてェに」


全部な、と言ったところで信号の色が変わる。

アンはびっくりしたようにマルコの横顔を見て、そしてすぐに手元の菓子へ目線を落とす。

言われたことを反芻して、そして何とか理解しようとしている様子が、
運転中のマルコの視界の端へ全部映り込んでいた。






**






車で20分。

アパートの姿が見えて、アンは少しだけ気が重たい。


昨日からずっとまだ心に引っかかってることのうち、
紅茶の事はマルコに伝えた。

伝えたけれど、この状態が解決なのかはわからない。

そして、まだ言っていないことがひとつ。



(天気がよかったら、まだ気持ちもこんなに沈まなかったかなぁ・・・)

アンが傘を開いて車を降りた時、マルコは傘もささずにそのままアパートに向っている。

昼前にアンがアパートを出た時から、降り方は変わらずかなりのもので、
マルコはあっという間に濡れていくシャツには一向に構わず、さっさと階段を上がっていた。


ガチャリとキーを回すと重たい扉をマルコは引く。

そしてアンが付いてきているのかも確認せず、真っすぐキッチンへ向かうと、
少しだけ視線を彷徨わせ、目的のものを目にすると驚いたように瞬きをした。


そして躊躇なくそれを掴むと、ゴミ箱に投げ入れあっという間に口を縛るとそれを掴み、
玄関に立ったままポカンとしているアンの横を通り過ぎてカンカンと階段を下りて行ってしまった。


(・・・え?)




手ぶらで戻ってきたマルコの顔を、アンはただ見つめるしかできずにその場に立っていた。


「やるこた済んだ。上がれよぃ」

「へ?」

たった今何をしてきたのか、全く頓着すらしていないといった風のマルコは、
相変わらず傘をささずに往復したため、頭から綺麗にずぶ濡れとなっていた。

玄関を上がり、シャツを脱いでガシガシと頭を拭くマルコに、
つられるように上がり込んだアンは今一つ理解できないままおずおずと聞いた。


「やること、済んだって・・・」

「お前に捨てさせるのは筋が違ェだろぃ」

「いや、そこじゃなくて、」

どうしてもというから、サッチには悪いと思いつつアンは共に戻ってきたのに、
それがたったこんな、自分が捨てたいと言ったそれをすぐさま実行に移すためだけに、
マルコは帰って来たというのだろうか。


アンのそんな表情へ、マルコは拭いていたタオルから顔を出すと、


「やんのが遅ェだとか、とっととやっとけとか、何で言わねェんだか」

「え、あ、いや、だって別に」

「別に、じゃねェ。大したことでも、しょうもなくもねェ」


アンが言おうとした端から、マルコはその全ての言葉を先回りで否定してしまった。


「言葉が足らねェのは俺が悪い。けど、我慢されて他の男んとこに避難されんのはごめんだよぃ」


責められていはいない。それはわかる。
わかるけれど、アンの口から出たのは、ごめん、の言葉だった。


それを聞き、マルコはあー、と首のあたりを擦りながら言い方を間違えたと唸った。


その場に胡坐をかくようドサリと腰を下ろすと、アンにも座れと促す。

目の前にぺしょん、と座ったアンを見ながら、マルコは一つ息を吐くと言った。




「お前ェが、泣くとか、怒るとか、他でやられんのは俺が嫌なんだよい」


「・・・・・」


「俺はどうやらお前ェが思ってる以上にしつけぇし、嫉妬もするし、大人げねェ」


「・・・・・」


「だから言いたい事があんなら、」


「・・・・」


「我慢する必要はねェんだよぃ」



別段大人でもないのだから、遠慮をする必要はないというマルコの理屈を聞きながら、
アンは何も言えなかった。

珍しく、というより初めてマルコが自分の内情を明かしてくれたのに驚いたのもあるし、
ずっと話してくれているマルコの声が静かで、
ただそれだけのことで何故だが泣きそうになっていたから。


「まだ、何かあんだろぃ?」

ビク、とアンの肩は跳ねて簡単に肯定の返事となってしまった。

そのことを理解しつつもアンはふるふると頭を振る。


どうしてわかってしまうのだろう。
大人げない、と称したマルコは嘘を吐いているに違いない。

大人だから、こうやって言いたくても言えないことを上手に見抜くことができるのだから。





「・・・ない」

「言え」


アンは頑なに首を振る。

だって、言っても今度はさっきの紅茶みたく、簡単に捨てられっこない。


それでもマルコ相手にこの問答がいつまでも続けられるとも思えなかった。


いつの間にか、マルコは立てた膝のあいだにアンを囲うほど近くにて、
アンはマルコと向き合うしかない。

濡れたシャツを脱いでしまっている状態では、アンは目の行き場に困り、
仕方なくマルコの首からかかっているタオルの先端を見ているしかなかった。


アンは何度目になるかわからないが、名前を呼ばれる度に首を振る。

マルコが先ほど言った、しつこい、ということに関しては確かにそうだと思うし、
この体勢は大人げないとも思う。


言わなければ終わらないと、アンは嫌でも悟ることとなった。










「前のひと、と、同じとこにいるのが、嫌」


終わらないやりとりに、ついにアンが根を上げてそうポツリと呟いた。

顔を見てなど言えるわけもなく、タオルの先端を見たまま一言だけ。

口に出せたのは半分自棄になった所為もあるが、
サッチの言っていた『全部話したらすっかり解決』をほんの少しだけ信じてみる気になったからでもある。


マルコが何と言うのか聞く前に、アンはこの場から逃げ出したい気持ちになっている。

前の彼女と同じ場所に居るのが嫌であれば、
アンがこの部屋を出て、どこか違う場所へ行けばいいだけだ。

けれど、
マルコの傍、声をかけたらいつでもそこに居るこの場所は、
どうしても簡単に棄てられなかった。

棄てられなかったのは自分で、
それなのに、ここに居るのが嫌とか・・・



「・・・そうかよぃ」


わかった、とマルコは一つ息をついた。


それを聞いて、アンは思わず小さく笑ってしまった。

一体何がわかったって言うんだろう。


アンは仕方の無い事を言ったと自覚があるし、
マルコだって言われて困るに決まっている。




「そんじゃ、お前も同意ってことで」

聞く手間が省けたよぃ、とマルコはとんちんかんなことを言い、
そして何故かそれはとても嬉しそうだった。




ハナノリさんのあとがき

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白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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