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「・・・何?」
「こっから引っ越すよぃ」
え、とアンは背中に氷を詰められたような気がした。
マルコが引っ越す?ここから?
いなくなる・・・の?
「候補は二つで、場所はこっから15分か20分そこら動く、駅は近い」
アンはマルコの説明をただの音でしか聞けなかった。
一回断った話、あれ、まだ続いてたんだ・・・
あたし来たから引っ越し止めたって言ってたけど・・・
そうじゃ、なかったの?
「んで、お前ェは仕事先がちょっと遠くなるが、通えねェ距離じゃねぇと思う」
「・・・へ?」
ぱちくりと瞬きをした小娘の顔を見て、マルコはとたんに嫌な顔をした。
これはアホらしいが、非常にアホらしいが、確認しなければならないらしい。
「・・・何で俺一人でこっから出る話になんだよぃ」
「?」
「お前ェも一緒に決まってんだろうが」
「へ?あれ・・?あたし?・・・引っ越すの?」
嫌って言っても連れてくよぃ、と言ったマルコは立ち上がると机横の棚の端から何やら引っ張り出し、
再び戻ってアンの前に座る。
きっちり立ち上がる前と同じ体勢、つまりは足の間で捕獲状態に戻したマルコはアンに二枚の紙を見せた。
「払う家賃は今と殆ど変らねェ、どっちがいい?」
アンはよくわからないままマルコから差し出された紙を勢いで受け取ってしまった。
1つはキッチンとダイニングが広め、もう一つは角部屋でベランダが広めというのが売りの様だった。
アンは選択肢を出された条件反射で、どっちだろうと悩みかけたが、
いや待て、と根本的な事に気付いた。
どうみても、今よりも数段広くて何か部屋もいっぱいある。
食べるとことテレビのとこ、あと1つの部屋では寝るとして・・・もう一つで何すんだ?
家賃変わんないのに、今より広くなるってものすごく不便ってことか?いやいやでも駅近いって・・・
うーん、と眺めているうちに、キッチンが広めの方は何故だかストンと心に落ちた。
理由はよくわからないけれど。
眺めている長さから、マルコはアンの返答を得たとばかりにそっちかよぃ、と1つ息をついた。
そして落選した方の紙を回収する。
微かにマルコの態度にはマイナスの気持ちが含まれていて、アンはパッと紙から目を上げるとううん、と首を振った。
「いや、別にマルコがこっちがいいんなら、あたしはそっちでいい」
そっち、とたった今マルコに回収された方の間取りを指さしてアンは慌てて訂正をした。
「あ?」
「いや、だから、別にあたしは隣同士ならどっちでもいいから、マルコの選ばなかった方でって・・・・・・マルコ?」
はぁぁぁぁ、とマルコは今世紀最大のため息とでもいうようなシロモノを己の口から吐き出すと、
何でお前ェは、と呟いて首のあたりをさすっていた。
アンにはマルコの行動がサッパリわからない。
もう一度アンがマルコの名前を呼ぶと、マルコはもう一度二枚の紙をアンに持たせ、トンと二か所を指さした。
それはアパートの住所。
「・・・・・・・何で隣同士で住所違うの?」
「別の建物だからに決まってるだろぃ」
「でもどっちがいいって・・・」
「聞いたよぃ。んで、お前はこっち選んだんだろぃ」
「いや、選んだっつーか、別に・・・・へ?」
「一緒にここ出るっつって、嫌でも連れてくって、そんで何でわざわざ『お隣さんゴッコ』継続しなきゃいけねェんだ」
アホ娘、とマルコは不要になった方の物件情報を丸めると、
筒状になったそれでアンの頭をはたく。
たかだか紙一枚の威力ではポコッという間抜けな音しか発しなかった。
「え?じゃ、じゃぁ、あたしとマルコ、一緒に・・・」
住むの?と告げたアンの迷子になった様な台詞に、
マルコはだから最初からそう言ってんだろぃ、と今度はペチッと額を叩かれた。
「イテッ!最初からも何もそんな風に言ってねぇじゃん!ちょ、気軽に叩くな!」
「動きが鈍いモンは叩くと直るのが定石だよぃ」
「あたしは旧式のテレビか何かか」
「テレビのが素直にこの技が効くよぃ」
「うっさい!マルコが分かりにくい言い方ばっかりするからだ!」
「言葉が足りねェのは悪いっつって、先に謝ったろーが」
「全っ然悪いって思ってねー顔で言うな!」
マルコの首にかかったタオルを奪い、それを顔に投げつけながら、
アンはぎゃぁぎゃぁといつもの調子で騒ぎ出す。
非常に煩いが、ようやく戻った日常にマルコはぶつけられたタオルを払いつつ喉の奥でクッと笑う。
こんな馬鹿みたいなガキのやり取りが戻ってよかったなど、と思う日が来るとは。
焼きが回ったとか、骨抜きになったとか、ドツボにハマったとか、
まぁ世間曰くのそういう類なんだろう。
もう一つ信じられないことに、それはそれほど嫌な気分でもなかった。
「あ!こら、マルコ離せ!」
折角のこの距離を有効に使わない手は無いと、
暴れるアンの両手をそれぞれ掴むと、意地の悪い顔で聞いた。
「返事がまだだよぃ」
「・・・嫌っつても連れてくとか抜かしたオッサンが、返事聞く意味ねぇだろ!?」
死んでも言わない、と恨めしそうに向かいあった下から睨まれても、
マルコは楽しそうに笑うだけ。
そして、片方の唇の端を上げたまま、マルコは契約印とでもいうようにアンにキスを一つ落とす。
「そいじゃ、契約完了だよぃ」
拒否されなかったことを揶揄するようにアンの耳元でマルコが低く笑う。
腕に囲われながらもアンは手探りでマルコの額辺りめがけてペチッとその小さな掌を振り下ろしたのだった。
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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