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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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マルアン連載【それは狂気に満ちている】の【08はじめて】 のマルコサイドです。



























活気ある呼子の声、漂う食い物の匂い、どこからともなく流れる音楽は酒屋から零れる宴の音頭だろうか。

昼飯を終え中心街を一通り見て回った頃には、すでに日が傾きかけていた。



右手にはこの島の名物と歌われていた肉を、左手には串刺しにされたこれまた違う種類の肉を持ったアンは、あちこちに連なる屋台をひっきりなしに往復して、機嫌よく腹を満たしていた。

あああれもおいしそう、こっちもいい匂い、と尻尾を振るアンには、だらしなく引き締まらない表情筋同様に財布の紐もゆるっゆるな男がついているので、金に困ることもない。

オレはその二人の後ろをたらたらついて行って、たまにアンが呼ぶ際にだけそれに応える。

そんな風にして久々の停泊、そして休日を過ごしていた。






















「ねェマルコ!鳥!鳥売ってる!!」

「買わねぇよい」


鉄の檻に入った毛染めされた小鳥を指差すアンに即座に釘を刺せば、アンはすぐさま口を尖らせ不満を示し、するりとオレの腕に自分のそれを絡ませた。



「マルコも仲間増えたほうが楽しいじゃん」


絡んだ温度はあまりに馴染みすぎていて、振りほどくのを忘れた。

馴染んでいることにさえ気が付かないほど、そこは、オレの左腕は『アンの場所』で。


しかし「鳥扱いすんじゃねェ」と口を開いたその矢先、アンは熱いものに触れたかのように素早くオレの腕から手を引いた。



思わず目を軽く見開いたままアンを見下ろせば、アンは困惑したように視線を彷徨わせ、行き場に困った両手をさっと後ろに回した。
そして頼りなく眉を下げたまま、笑った。



「ごめん」




遠くでサッチがアンを呼ぶ。
アンはこれ幸いとばかりにオレに背を向けて、サッチのほうへ駆けて行った。

オレは一気に温度を失った腕を持て余して、その後ろ姿を眺めていた。






















「おいマルコー!ちょっとこれ見てみなさいよ、すんげぇの」


サッチがげらげらと笑いながら店の中を指差して見せる。
道の真ん中で叫ぶんじゃねェよいと小言を呟いてそいつのもとに近づこうと歩んで数歩、気づいた。


オクターブ高い歓声が、日の光を吸い込んだオレンジのテンガロンが、少し前から見当たらない。


「ほら来れ、お前にそっくりじゃ」

「アンは」

「アン?さっきまでそこの店の前に」


そういってサッチが指差す場所には、当然アンの姿はない。
そう言えばどことなく人の数もまばらになってきた。
空は少し白っぽい橙に色づき、西日がきょとんと立ち尽くすサッチの顔を光らせる。



「いねぇ」

「…まじで」

「いねぇよい」

しばし目の前の男の面を見つめていたのだが、オレたちが佇んでいるそこに店を構える主人が「兄ちゃんたちもう店閉めるけど」といぶかしげに声をかけたことによって、久しぶりの休日に終わりが告げられたことを悟った。















初めは二人で適当に街をぶらつき来た道を戻ったりして、アンを探した。
どうせその辺で食いもの屋の屋台に張り付いて、早く店じまいしたい店主に煙たがられているだけだろうと思っていた。
だが結局アンは見つからないまま港まで戻ってしまい、おれたちは立往生せざるを得なくなったというわけである。


「アンの奴、街から出ちまったんじゃね?」

「食い物もねぇのにかよい」

「うちの子ネコちゃんに理屈は通じねぇだろ」

「…オレァ空から探すよい」

「ああその方がいい。俺はもっかい街に戻る」


しっかり頼むぜと笑ったサッチにテメェもなと視線で返し、オレは地を蹴り空へと舞いあがった。



















探さずとも、そのうちひょっこり帰ってくるのかもしれない。
一ケタのガキでもあるまい、ましてや一隊長を務める奴を男二人で探すのも、馬鹿げているかもしれない。
ただオレもサッチもそれを口に出さないところを見ると、すでにオレたちは後戻りのできないところまで来ているらしい。
それはモビーに乗る野郎共、誰一人として漏れることなく当てはまるのだが。


「…とんだ厄介の種だよい」



全体的に影が落ちてきた街の上空を火の粉を散らしてひとつ旋回したその時、数百メートル離れた山のふもとで猛々しい音と共に業火と熱風が舞い上がるのが見えた。







(・・・)




まったくなんというべきか。
ことあるごとに面倒事を引っ掻き回すその癖は才能というか天性というか。
また豪勢にやったもんだと上がった火柱を眺めながらため息ひとつ吐き出して、オレはその火種のもとへと高度を落としていった。







ふと、オレの眼下に転がるようにして山を下っていく数人の男たちが映る。
服の焦げ具合からして、アンの相手か。


山賊だ。
必死の形相で逃げていく男たちをまぁ可哀相にと見送って、オレはさらに高度を落とした。
















「アン!」



へたりこむアンのつむじをみた瞬間、何も考えることなくその名を呼んでいた。
弾かれたようにオレを見上げたその顔は、いつもに反して血の気が引いていて、青白い。
目の前に降り立つと、アンは揺れる瞳でおれを見上げてそれからぎゅっと目を閉じた。
怒られるのを待つ子供のようにこぶしを握って、微かに睫毛を震わせる。





どこまでも呆れた。
だがそれについて口うるさくするのは後でいい。
アンの前にしゃがみ込むと、アンは気配で顔を上げた。





「心配したよい」



怒っているかのごとく眉間に皺が寄るのはもう見逃してほしい。
均衡が崩れたのかほろりと一筋泣いたアンは、今のオレの顔をどう思っているのだろう。
泣くなよいとすすけた頬を拭ってやると、ギュっと下唇をかみしめて涙をこらえるふりをした。
その様の幼さに、思わず頬が緩んだ。






俗に言う女にしかできない座り方で地面に座り込んだアンのふとももはぱっくりと切り裂かれ、鮮やかな赤が流れ続けている。
だが見たところ傷は深くなさそうで、皮膚が裂かれただけらしい。
しかし物理的な切り傷を受けたのなど久しぶりなのだろう、オレがその傷口を指摘してもアンはいやなものを見るかのようにそこから顔を背けた。






「ごめん」

「何謝ってんだい、ほら乗れ」



帰るぞと背中を向ければ、少しの間の後とさりと背中に重みかかかる。
その重みを落とさないよう、オレは形状を変えて空へと舞いあがった。



















薄い青に浸透するように伸びていた橙は、群青色に飲み込まれていく。
そしてその下に続く黒い海には、ぽつんとひとつオレたちの船が浮いていた。
空から見るとそれはとても小さくて、頼りなくすら感じる。
ただ近づくにつれて大きくなり白鯨の船首がぼんやりと浮かび上がって、そこは間違いなくオレたちの家だった。



アンと二言三言かわしていれば、不意に沈黙が訪れた。
アンの視線の先がどこなのかはわからないが、オレの背中の羽を握りしめる手の温度が伝わる。








「マルコ、すき」





ぽんと、放り出されるように言われた。
受け取ってもらうことを期待していないように無責任に発された言葉は行き場がなく、オレたちの間をゆらゆら彷徨っているような感じがした。


ただ、いつものようにあしらいつっぱね返すことはできない重みだけはしっかりと持っていた。









「…知ってるよい」






アンが小さく息をのむ。
オレは聞こえないふりをして、目先の船を見つめていた。



ああこれで、逃れる術も理由も、ついになくなってしまった。

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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