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スプーンに盛られた一口分が、パクリと口の中に消える。
うもうもと頬が上下して、喉が少し動く。
そんな咀嚼を一つするたびに、アンはスプーンを握るこぶしをテーブルにつけては悩ましげなため息をついた。
「何アン、今日は勢いのらねぇな」
アンの斜向かいで、イゾウが湯呑に口をつけたままアンに問う。
んー、と肯定ともつかない声を発して、アンは再び皿の中身を口へと運んだ。
「腹減ってねェのかよい」
「そういうわけでも…んー、ないんだけどなー…」
「夏バテかよい」
今日は特に暑ィからねい、と隣でマルコがアイスコーヒーをすすった。
サッチが厨房から三枚の皿を両手に載せてやってくる。
アンのための「おかわり」である。
鼻唄交じりにやってくるその姿を、アンはぼうっとかすむ視界の向こうで捉えた。
「何、アンまだそっち残ってんのか」
「んー、ごめんおいしいんだけどねえ。今日はもういいや」
「まじ?夏バテ?」
サッチも先程のマルコと同じくそうアンに問うと、アンはそうかもと笑うだけで席から腰を上げた。
「あたし先部屋戻るね」
「おー」
ひらりと長椅子を跨いだアンは、とてりとてりと幼時のような足取りで食堂の正面扉へと歩いていく。
どうにも違和感満載なその後ろ姿を眺めていた、隊長たちをはじめとする男たち一同だったが、不意にサッチがおおう?と頓狂な声を上げたことで視線を集めた。
「なんかここ、焦げてね?」
そういって手を伸ばす先の長いす、今先程アンが座っていた部分が丸く黒い跡を残している。
そして空になった大皿が数枚積まれたテーブルにも、ところどころ黒くくすぶった跡が。
まさかと合点の行った男たちがその火種に目をやったその瞬間、およ?と呟いたアンの歩みが止まった。
かと思えば左右にふらふら揺れ出して、終いにはその細い体が一枚の薄い紙切れとなったかのように崩れた。
その一連の映像に目をひん剥いた男たち全員が、アンを受け止めるべく一歩を踏み出す。
しかしアンの膝が床につくよりも早く、その体は風を切った男の腕によってとさりと受け止められた。
じゅうっと皮膚の焼ける痛々しい音が近辺に響く。
しかしマルコはそのまま顔色一つ変えることなく、両腕を青い翼へと変化させた。
全身を不死の羽毛で包まれたアンは、力なく腕を垂れて目を閉じている。
「ナースを呼べ、あとオヤジに報告。コックどもは療養の準備だよい。…さっさと動け!」
その一声で、男たちは弾かれたように動き出した。
*
「道理でやたらとあの席暑ィと思ったよ」
ナースたちへの指示説明を終えたマルコに、袂へ手を収めたままのイゾウが声をかけた。
マルコはその声の主を振り返ることもなく、手中の書類の文字に斜線をかける。
「アンがやられんだ、ただの菌じゃねぇかもな」
「わかってるよい」
「んじゃあいつは隔離か」
「ああ」
きゅ、とマルコのペン先が紙の上で止まった。
イゾウは視線をそこに留めたまま煙管を取り出す。
紙の上のペン先は、一度大きくたわんだかと思えば次の瞬間に弾け飛んだ。
まるでそれを予期していたかのように、イゾウは静かな顔で自分のほうへ飛んできたペン先を顔を背けて避けた。
「今日唐突にだったんだ、気づけるわきゃねぇ」
「朝からアイツはおかしかった」
「だからって自分責めて腹ぁ立ててりゃ世話ねぇな」
マルコは先のないペンを握りしめたまま押し黙った。
いつもの元気や勢いが人並み外れているアンだからこそ、気づくべきだった。
マルコがそう言いたいのはイゾウにだってわかる。
自分だってそうだからだ。
一概にマルコにだけ言えることではないと、誰もが思っている。
だがマルコがことアンに関してはひときわ高くプライドに似た責任感を持っていることも、知っている。
それは恋人に対するものというより、親から子へのそれに近い。
「アンは、自分の部屋か」
「…いや、原因がわかるまでは医務室に近い空き部屋を無菌に近づけて隔離だよい」
船の中で流行り、感染る病ほど怖いものはない。
時にはそれがまるっと一つの海賊団を飲み込んでしまうことさえある。
そういう危険因子をまき散らさないためにも、一人無菌室で隔離されたアンの姿を思い浮かべ、マルコとイゾウはどちらともなく苦い顔を見せたのだった。
*
その日の夜、浮かない顔がそろいにそろった食堂からマルコは一足早く立ち去った。
階段を下り二つ角を曲がれば目的の部屋がある。
ノックしようと右手を持ち上げたものの迷い、結局そのままドアノブに手を掛けた。
「マルコ隊長?」
不意に現れた高い声に、マルコは無意識のうちに素早くノブから手を離した。
声の主を振り返れば、束となったカルテと思われる書類を手にした一人のナース。
古株の一人だ。
「ここにいたんですね」
「ああ…悪い、無菌ってのぁわかってたんだが」
やっぱ入っちゃまずいのかよい、ときまり悪そうに頭を掻くマルコに、ナースは思わず笑ってしまった。
「今、そのことについてまず隊長に話そうと思って食堂まで行ってたんですけど。
入れ違いになっちゃったみたいですね」
くすくすと上品に肩を揺らすナースをぽかんと眺めていれば、ナースは目元に笑い皺を作ったまま、
「アン隊長、大丈夫ですよ。溶連菌感染症、ってわかります?」
「溶連菌?」
「えぇ、一昨日上陸した島で貰ってきたんでしょうね、もしかしたらほかに症状のある人が出るかもしれないです。
でも幸いアン隊長はもともと専用の食器使っておられますし、そう広がることはないかと」
アンの食器は、特注特大サイズ。ブレンハイムと同じものだ。
そういうことを得意とするクルーの手によって鮮やかに絵付けされている。
「ああ…そうかい、じゃあ隊員たちに報告」
「アン隊長の容体と今後の体制、クルーたちへの消毒の義務付けは全部報告してきましたから」
どうぞごゆっくり、と意味深な笑みを見せて、ナースはマルコが用のある部屋の隣、ナースたちの部屋の扉に手を掛けた。
「おい、感染症なんだろい。入ったらいけねぇんじゃねェのかよい」
「もちろん出るときは消毒、してくださいね。それに隊長は大丈夫でしょう?
不死鳥だもの」
消毒液は部屋の中ですからと言い残し、今度こそナースは隣室に消えた。
楽しげだったことがいささか気になる。
「オレをなんだと思ってんだい」
とりあえず誰も聞くことのない呟きを漏らして、マルコは再びドアノブに手を伸ばした。
*
熱い額に手をのせると、そこは常人よりは熱いがもう皮膚を焼くほどではない。
思い至って布団の端を捲れば、案の定アンの細い手首は、片手ではあるが海楼石の手錠がはめられていた。
不意にアンが身じろいだ。
うっすらと瞼が持ち上がる。
「起こしたかよい」
「ん…マル、」
こてんとこちらに首を転がして、潤った黒目がマルコを捉えた。
ぼんやりと焦点の合わない瞳は、何を言うでもなく目の前の男を見つめている。
多分何も考えていないのだろう。
マルコも特に何を言うでもなく、見つめられるがままその瞳を見返していた。
「…手…」
不意にアンが自身の右手を持ち上げた。
ぱさりと布団から腕が現れ、くすんだ紺色のような金属がジャラリと鳴った。
「熱がすげぇからよい、能力が制御で来てねェ。気分悪ぃだろうが我慢しろよい」
「…やだあ…」
眉を眇め、取ってくれとでもいうようにベッドの横の木の椅子に腰を下ろしたマルコの眼前でふらりふらりと手首を振る。
我慢しろ、とマルコはその腕を布団の中に戻した。
「…あたし…びょうき…」
「溶連菌感染症だとよい」
「よーれん…」
「そうたいしたもんでもねぇ、夏風邪だと思え」
なつかぜ…と呟いたアンは、視線を天井へと戻した。
「夏風邪はなんとかがひくって言うが、その通りだよい」
「…るさい…」
くくっと空気を含んだ笑いを漏らすと、アンは仰向けのまま顔をしかめて見せた。
応える元気があるならまあ大丈夫か、とマルコは汗で額に張り付いた黒髪を払ってやる。
「っと、もう晩飯終わったんだがねい、なんか欲しいもんあるかい。食いたいもんとか」
「…よるごはん…終わったの…」
「言っとくが普通の飯は食えねェよい。消化に悪いからねい」
「…今日ごはんなに」
食えねぇって言ってんだろがと言いつつも今日のメニューを教えてやると、アンは呼気に大きなため息を混ぜて吐き出した。
「…あたしのぶん…とって、」
「また作ってもらやぁいいだろい、しばらくは食えねぇよい。それより今何もいらねぇのかい、なんか食えそうなもん」
「んぅ…」
アンはしばらく考えをめぐらすように目を瞑り、真剣な面持ちで口を閉ざした。
数秒後、再びこてんと首をこかすと口を開いた。
「サッチ…プリン…アイス…」
「はいはい」
言われるまでもなくサッチを筆頭にアンの病人食は作られているのだろうが、ご指名とあればアイツはいくらでも作るだろう。
マルコは、サッチを喜ばせるのは癪だがと思いつつもアンの要望を伝えるべく立ち上がった。
「…マルコ」
「あ?」
「…どって…くる…?」
口より下を布団の中に隠して呟かれたため、言葉はもごもごと聞き取りづらい。
しかしマルコは数秒考えたのちアンの言いたいことを捉え、その額に大きな手を被せた。
「すぐ戻ってくるよい」
口の端に笑みをのせてそう言えば、アンも安心したように赤くなった目元を緩めた。
「…マルコ…」
「まだなんかあんのかよい」
「…プリン…に、生クリーム…」
「はいはい」
どこのお嬢様だかと思いつつ、まあそう変わんねぇかとひとりごちて、マルコは食堂へと赴くためアンの部屋を後にした。
*
扉を開けると、今度は眠りが浅かったのかアンはすぐに起きた。
ナースに着せられたのだろう、クリーム色のシャツを着ていた。
「起きられるかい」
「ん・・・へいき…」
よいせと腕を突っ張って上体を起こすアンを、支えるようにして手伝う。
そしてその膝の上に、持ってきた盆を置いてやった。
「おぉ…」
標準サイズのプリンに、ぽってりと生クリーム。
その横に彩られた柑橘類のフルーツ。
そして水分補給のための栄養ドリンクと、薬。
アンは要望通りの食べ物たちに感嘆の声を出したものの、同じく乗せられた粉薬を目に捉えて顔をしかめた。
「くすりぃ…」
「それ食ったら飲めよい」
「こな、やだぁ…粒がいい…」
「ガキくせぇこと言ってねぇでさっさと食え」
しばらくぶすくれていたアンだったが、諦めたのか食欲に負けたのかしぶしぶスプーンを手に取った。
が、掬った量が、いつもより少し少なめと言うだけでどう考えても病人の口のサイズに合わない。
そもそもプリンを2、3口で食べてしまおうというのがおかしい。
それでもアンは小さなスプーンで、生クリームとプリンをごっそり掬った。
「おいおいおいゆっくり食…」
「あ、」
小さなスプーンの上で重力に負けたプリンは、まっさかさまにアンの腹の上に落ちた。
ぺしょっと、無残にも腹の上で潰れている。
「あああああ…」
「言わんこっちゃねェ…」
マルコが慌てて盆の上の布巾に手を伸ばした隙に、アンは腹の上に落ちたプリンを指とスプーンで掬いだした。
「おいそんなん食うんじゃねぇ」
「だってもったいない…」
言ってる傍からアンは腹の上のプリンを掬い、迷いなく口へと運んだ。
その味がお気に召したのか、一人にへっと笑う。
「ったく…おら、手ぇ出せ」
熱が出ると子供返りするというがここまでかと、マルコは半ば辟易しながらアンの指を丁寧に布巾で拭っていく。
シャツの腹部も荒くではあるが拭いてやり、マルコはアンからスプーンを奪い取った。
「ああっ」
「おめぇ手元もおぼつかねぇんじゃねぇかよい」
スプーン返してと真赤な顔でわめくアンをすっきり無視して、マルコはアンのプリンを標準的な一口サイズで掬った。
「ほら」
「えぁっ、」
「口開けよい」
つんつんとプリンをのせたスプーンの先でアンの唇を突いてやる。
食わせてやるっつってんだよいと言うと、アンは発火しそうな勢いでますます顔を赤らめた。
「う、あ、」
「いらねぇなら食っちまうぞ」
「いるっ!」
慌ててあがっと口を開ければ、スプーンとプリンの冷たい感触が口内に触れる。
するりと溶け込んだほどよい甘さに思わず顔を緩ませると、スプーンを握るマルコの頬も心なしかゆるんだようだった。
アンが口の中のものを飲み込んでしばらくすると、再び甘い匂いが口のあたりに持ってこられる。
今度は喚くことなく小さく口を開くと、先と同じようにプリンが滑り込んできた。
その動作を何度も繰り返す。
二人ともが何を話すでもなく、淡々とマルコはプリンを運び、アンはそれを食べていった。
「…おいしかった」
「そりゃよかったよい」
「ありがと」
よいとそっけなく応えたマルコはアンの膝の上から盆を退け、アンの右手に液体の入ったコップ、左手に薬の包みを持たせた。
アンがうえっと顔を歪ませても、マルコはさぁ飲めと言わんばかりの表情でアンを追い詰める。
「…この、さぁ…こなだと、さぁ…コフコフするんだもん…」
「じゃあ明日の薬は粒にしとくよう言っといてやるよい、だが今日はそれを飲め」
いやだ、だめだ、むりだ、むりじゃない、と似たような応酬をいくつも繰り返して数分、アンは諦めたのかぐっとコップを握りしめた。
勢いのまま口の中にばさばさと薬を放り込み、すぐさま水を含む。
ぎゅっと目を瞑った一瞬の動作だった。
「~~っ、オェッ、まずっ、」
「ほらよい」
口直し、とマルコは甘い栄養ドリンクの入った別のコップをアンに手渡す。
アンはすぐさまそれを受け取り喉に流し込んだ。
「はああ~」
アンが目を閉じたまま安堵の息をつくと、ふわりと大きな掌がアンの頭上をかすめた。
しかしアンが目を開けてマルコを見ても、マルコは何を言うでもなく再び食器の乗った盆を手に取る。
「すぐ戻ってくるからよい、ちょっと寝ろ」
「…あ、うん…あ、マルコ仕事は…」
「ここでする、気にすんな」
いいから寝ろと言い残して、マルコの背中は再びドアの向こうに消えた。
アンは火照った頬を押さえて、ぼんやりと木の扉を見つめていた。
*
ペン先が紙の上を踊る音と、一定の呼吸音。
ときおり息が詰まったような苦しげな声を出しては寝返りを打つ。
そのたびにマルコはペンを置いてアンの顔を覗き込んだ。
(…暑そうだよい)
いくら額に張り付いた髪を払ってやっても、アンは不快そうに顔をよじる。
ナースに熱が上がっているようだと告げたが、
「夜には熱は上がるものなんです。薬も飲まれたので、しっかり汗かいて眠れば大丈夫ですよ」
と替えの氷枕を手渡されただけだった。
アンの頭を持ち上げ、新しい氷枕を入れてやると気持ち良かったのかすうっとアンの顔が和らいだ。
額と首元に冷えたタオルをあてて汗を拭いてやる。
「ん…きもちい…」
「そうかい」
ぼんやりと目を開けたアンはにへりとその目を細めた。
しかし、ぺたりと自身の首元を触って、うへぇと顔をしかめた。
「べたべた・・・」
「あぁ、風呂ぁ入れねぇからよい。着替えるかい」
「んぅ…脱ぐ…」
もぞりと半身起こしたアンは、窮屈そうにシャツのボタンに手を掛けた。
「ちょっと待て、替えがねぇから持ってきてやるよい」
「いい…もう着ない…」
「アホウ、おい、待てって」
言ってる傍からシャツを脱ぎ捨てたアンは、いつものホルタ―ネック姿で再びシーツの中へと埋もれていく。
「それじゃ治んねぇっつってんだ、ったくなんか着るもん持ってきてやっから」
「いい…」
「よくねェよい」
「…じゃあそれでいい…」
そう言ってアンがつんと引っ張ったのは、マルコが羽織る白いシャツ。
オレに脱げってかと呟くも、アンはシャツの裾を握りしめたままただぼんやりとマルコを見上げている。
「…オレァまだ着替えてねぇからよい、これ一日来てたから汗くさいよい」
「いい…」
「オレのがいいなら別の持ってきてやるから」
「いらない…」
「…あのなぁ、」
それがいい、と握りしめたシャツをそのままに目を閉じたアンを前にして、マルコは閉口する。
熱も酒もタチが悪いことには変わりねぇな、と自身のシャツを脱ぎ取った。
「ほらよい、体起こせ」
ずるずると這い上がってきた上体をしっかり立たせて、ばさりと幾回りも大きなサイズのシャツを羽織らせる。
上から下まできっちりボタンをしめてやり、長すぎる袖を幾重にも曲げて指先を出してやる。
アンはされるがまま、首を上げたり手を伸ばしたりしつつ、頭をふらふら揺らしていた。
「ほい完成」
さあ寝ろ、と額を小突くとアンの身体はあっけなく陥落した。
もぞもぞとシーツの皺と皺の間に埋れて行くアンを眺めながら、マルコはいつのまにか肌を伝っていた嫌な汗を拭った。
きっちり上まで閉められたシャツの襟元に顔をうずめるようにして、アンはすんすんと鼻を鳴らす。
マルコは思わずやめてくれと言いたくなったが、アンが満足げな顔ですうと眠りに落ちたのでマルコの肩からも力が抜けた。
(…こりゃあ敵襲でもあったほうがマシだよい)
全身を襲う疲労感を持て余して、はあとため息と共に首筋をさする。
しわくちゃになった掛け布団でアンの身体を覆い、この厄介娘がと軽く額に手のひらをこすりつけた。
「…ルコ、」
「あ?」
いつもなら一度寝れば生半可な刺激では起きないアンが目を覚ましたことに半ば驚きつつ声を返す。
しかし当の本人は目を閉じたまま。
うわ言かと背を向ければ、再び囁かれる自分の名前。
「…なんだよい、さっさと寝ろって」
「…きょうの、マルコ…なんか、へんだ…」
未だ目は閉ざしたまま、しかし今度ははっきりとそう呟いた。
アンを覗き込むように腰を屈めていたマルコはその言葉に軽く目を見張ってから、吐息を吐き出すついでにベッドの傍の椅子に腰を下ろした。
「変って、なにが」
「…マルコが、やさし…」
オレはいつも優しいだろうがと憤然と返せば、少しの後嘘だあと返ってきた。
こんな状態で普通に会話が続いていることが不思議で仕方ない。
「…でも、だめだねえ…」
「なにが」
「…こんなふうに…マルコがやさしいと、病気も、いいなって…」
びょうきしたことなかったけどこんないいものだとおもわなかったよ。
そう言ったかと思えば、今度こそ寝たのだろう、ことんと首が傾いて規則正しい寝息が続いた。
「…バカタレ」
ぺんと額をはたくつもりで手を伸ばしたものの、すぐに迷ってその手は頬に伸びた。
不謹慎な言葉への制裁の代わりに額へは唇が落ちた。
ああも騒々しいアンの声がこうも懐かしくなるなんて。
こっちこそ心労で死にそうだと、大きくついた溜息は途中で笑いに飲み込まれた。
あの喧騒に早く会いたい
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
@kmtn_05 からのツイート
我が家は同人サイト様かつ検索避け済みサイト様のみリンクフリーとなっております。
一声いただければ喜んで遊びに行きます。
足りん
URL;http;//legend.en-grey.com/
管理人:こまつな
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