OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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よろりと、白髪の長が数歩前に進み出た。
彼をはじめとする村人に穴が開くほど見つめられて、アンは「え、え、」と無意味に辺りを見渡してクルーに助けを求めた。
「え、なに?髪?」
違うだろ、とサッチのつっこみが入るよりも早く、村人たちが突然蜂の子を散らすように騒ぎ出した。
「神だ!我らの神がお帰りになられた!」
「早く!供物を捧げろ!」
「神殿へ!玉座へ案内しろ!!」
「いや、それよりまず」
立ち上がっては大騒ぎし、うろめいていた人々が慌てて動きを止め、広場の中心でぽかんと立ち尽くすアンに向かって跪き、恭しくこうべを垂れた。
「よくお帰りになられました、神の子…!」
いくつもの黒い頭がアンに向かって敬意を示す。
白ひげクルーたちは、その様子にアンと同様目を白黒させた。
だばだばだば、と傾いたジョッキからは琥珀色の甘露がとめどなく零れていくが、それを手にしているクルーは気付きもしない。
ぱちくりと瞬いたアンは、村人たちの言葉をゆっくりと噛み砕き、反芻した。
かみ、かみ、神!?とようやく事の成り行きに整理のついたアンが助けを求めるようにマルコを仰ぎ見る。
しかしマルコもジョッキを手にしたまま、困惑した顔でアンを見返した。
白ひげだけが細い目を数回瞬かせてから、にやりと笑ったのだった。
*
信仰するは火の神、この島を作った創造の神。
名をカクス。
この島ドラウン・カクスは、カクス神のエネルギーによって造られた。
神の力は海底火山を噴火させ、隆起した海底が島となりそこに生物が住みついた。
人間が好きなカクス神は自ら人間を造り、自身が造ったその島に住まわせる。
神の恩恵を受けた人間はその島で自分たちの文化を育み、自然との共存を覚え、数千年を生きてきた。
「言い伝えがあるのです」
長は依然として恭しく頭を下げたまま言った。
地面にぺたりと座り込んだアンは、アンを囲むように並べられたバナナ・リンゴ・マンゴー・パッションフルーツによくわからない果物たち───供物に目移りしながらへえ、と相槌を打った。
「カクス神の力を分け与えられた人間が、ある時空の中でただ一人だけ存在する。
人間でありながら神の子───崇められるべき存在であるそのお方は、千年に一度、この我らが島におかえりになられるのだと」
それが今日だった、と。
そしてその神の子がアンであると、長は言い切った。
「へえ、面白い話があんだねえ、ね、サッチ!」
「…面白いっつーか、なんつーか」
うず高く積まれた果物たちに隔てられつつもアンの隣に座ったサッチは、曖昧に笑い返した。
アンは単純に島民の物珍しい歓迎の仕方を喜んでいるようだから、サッチとしてはあまり水を差したくないところである。
しかしいくつもの島を、そして民族を見てきた船乗りとしてはあまり関わりたくない話であるのも事実。
民族性や宗教が強すぎる輩に首を突っ込むと碌なことがないというのも経験が教えてくれている。
実際サッチは、おずおずと始まった宴の場をマルコが静かに離れるのを目にした。
おそらく今頃は船の書庫で史料を漁っているはずだ。
(多分ハズレだろうな)
マルコがいくら史料を漁ったところで収穫はゼロだろう。
いくら白ひげ海賊団が、そしてそこに所属する航海士や考古学者たちが保有する情報に自信を持っていると言っても、こんな小さな一民族だけが住まう島に関する歴史まで知っているとは思えない。
島に着く前に働いた勘は、これのことだったんだろうかとサッチはひとり首をひねった。
そうであるような気もするし、そうじゃないような気もする。
しかしどっちにしろ、今はアンが至極楽しそうであるのが何よりだろうと思う。
次々と村の女たちが運んでくる果物がサッチからアンを隠していくが、その鮮やかな壁の向こう側からはアンの楽しげな歓声が聞こえる。
座っていれば周りには次々と美味しそうな食べ物が積まれていく。
はじめは戸惑い目を回していたアンも、その順応性にはさすがと言うところか、今ではささげられる食べ物を消化することに専念している。
そしてなにより村人の丁重な言葉遣いと振る舞いは、心からアンを崇めていた。
酒も食い物も文句なし。
土地柄も人柄も悪くない。
たった4日のことだと、自分に言い聞かせるようにサッチは酒を飲んだ。
*
「お迎え?」
翌朝二日酔いにより脳内工事中かというほどの頭痛に襲われたアンは、船べりにつかまりながら陸を覗き込んだ。
跪いた島民が4人。
男が二人と女が一人と昨日アンに懐いた少女が一人。
3人の大人は相変わらず寡黙そうな、言ってしまえばむっつりとした面持ちは崩さなかったが、少女だけはにこにこと笑ったままアンを見上げていた。
「玉座に案内いたします。どうぞご同行ください」
「ぎょく?ってなに?」
アンが内側から鳴りやまない工事音を押さえつけるように、額に手を当てたまま尋ねる。
年配の男は顔を伏せたまま答えた。
「カクス神の神殿にございます」
し、ん、で、ん…とアンは顔をしかめたまま呟いた。
顔をしかめているのは頭痛のせいだけであり、その神殿とやらへの興味は深々である。
「…行って、みたいなー…」
「是非」
「その神殿とやらは、昨日オレらに手を出すなって言ったヤツじゃねぇのかよい」
背後からマルコが、寝起きのような低い声を出して近寄ってきた。
アンが振りかえった時にはすでにアンの隣に並んでいる。
マルコの手には数枚の紙切れ。
明け方まで考古学者たちと話をしていたらしいマルコの目の下は不健康に染まっていたが、どうやら欲しかった情報は揃わなかったらしい。
「その通り、島民以外の常人の入れるところでは」
「…アンならいいってか」
黒い頭が縦に振られた。
アンはどこか控えめにマルコを仰ぎ見た。
「ね、行っても…」
「…お前は今日非番だろい」
「う、ん」
「好きにしろ」
ぱあっとアンの頬が興奮と喜びで染まった。
随分と前から、アンのこの顔を見るのが好きだ。
そして何度もこの顔を壊したこともある。
今回も「ダメだ行くな」と舌先に乗っていた言葉があったが、ちゃんと代わりの言葉が出てくれた。
村の中心にあるというその神殿にアン以外近づけないというのならお守をつけるということも拒まれるだろう。
そもそもそれはアンが嫌がる。
アンを説き伏せ、マルコ自身が神殿の近くまで島内の調査を兼ねて付いていくという案もあったが、いかんせん今日マルコは他の仕事が詰まっていた。
白ひげの健康診断もちょうどこの寄港と重なっており、船を離れたくはないというのも事実。
「弁当作ってもらってくる!」と嬉々としてキッチンへと駆けていくアンの細い背中を見送って、マルコは再び船の下の陸、4人の島民を見下ろした。
少女は自分の首飾りを指で弄りながら鼻唄を歌い、嬉しそうにアンを待っている。
しかしほかの3人の大人の黒い目(それはアンのに似ていた)は、どこも見ていなかった。
*
「…随分奥だな…」
アンはリュックいっぱいに詰まった弁当を担ぎ直して、二人の男の後をついて行った。
後ろには女、そして隣には少女。アンと手を繋いでいる。
神殿は島の中心だと聞いていたが、村も島の中心の小高い場所にあったからどういうことなんだろうとアンは頭にぼんやりと島の地図を思い浮かべた。
「ね、神殿って島のど真ん中にあんの?」
隣の少女はにっこりと笑ったまま頷いた。
「村は神殿より手前にあるの!」
「ああ、なるほど」
船からのこのルートはどうやら村を迂回しての道らしい。
どうして村を横切らないのか尋ねたら、「だってパニックになっちゃう」らしい。
昨日のあの様子が再びとなればちょっとキツイか、とアンも納得した。
不意に、隣の少女が後ろにいる女に小さく声を掛けられた。
どうやらアンに馴れ馴れしくしたことをたしなめられているらしい。
そんなこといいよとアンが口を開いたそのとき、前の男たちが立ち止まった。
生い茂り視界を塞いでいた樹木の葉を、男たちが手で退ける。
開けたアンの視界の向こう側には、白い、とても白い石の建造物が煌々と日の光を受けて輝いていた。
「う…あ…」
すごい、と無意識に口から零れた。
真っ白い三段だけの階段があり、その先には4本の白い石の柱が四角いスペースを作っていた。
アンはその階段をゆっくりと上った。
柱には細かく繊細な彫り物が描かれており、アンが近づいて目を凝らしてもその細かい造形をすべて見ることはできない。
そして柱に囲まれたちょうど中心には、たったひとつだが圧倒的な存在感を放つ椅子が置かれていた。
その背から肘置きに至るまで細かい彫刻があり、あまりの美しさにアンは触れることをためらった。
「美しいでしょう」
静かで低い声。
アンが振りかえると村の長が階段の下にたたずんでいた。
アンをここまで連れてきた4人は、長からさらに離れたところで静かに立っている。
長は、昨日より幾分か柔らかい顔つきでアンを見上げていた。
「すぐに酒食を持って来ますから、どうぞ座ってお待ちください」
「ここに?」
アンが白い椅子を指さすと、長は勿論と頷いた。
アンは手でおしりを払うと、おずおずとそこに腰かけた。
固くひんやりとした感触が背中を駆け抜けた。
「あ、そうだ、あたしお弁当持ってきたんだ!」
アンがリュックをごそごそと漁ると、長はそれを手で制して少しだけ悲しげに眉を寄せた。
「貴女様のために村で料理をこしらえております。是非それを食べていただきたい」
「…そ、う…」
そんじゃ食べなきゃ悪いよな、とアンは開きかけた弁当のふたをゆっくりと閉めなおした。
弁当を食べたところで長の言う村の料理が食べられなくなるということはないだろうが、せっかく自分のために作ってもらっているご飯はお腹がすいている時に食べたい。
持ってきたお弁当も、サッチがアンのためだけに作ってくれたものだ。
しかしこちらはいつだって食べられるが、村の料理はそうじゃない。
このお弁当の中身は帰り道で食べることにしようと、アンは弁当箱をリュックの中に戻した。
「では酒食が届くまで、少しこの島の話をお聞きいただけませんかな。
なに、けして退屈させることは致しませんから」
昔話かなんか?と尋ねると、長は少し考えてから首を振った。
「順を追ってお話ししましょう」
むかしむかしあるところに
彼をはじめとする村人に穴が開くほど見つめられて、アンは「え、え、」と無意味に辺りを見渡してクルーに助けを求めた。
「え、なに?髪?」
違うだろ、とサッチのつっこみが入るよりも早く、村人たちが突然蜂の子を散らすように騒ぎ出した。
「神だ!我らの神がお帰りになられた!」
「早く!供物を捧げろ!」
「神殿へ!玉座へ案内しろ!!」
「いや、それよりまず」
立ち上がっては大騒ぎし、うろめいていた人々が慌てて動きを止め、広場の中心でぽかんと立ち尽くすアンに向かって跪き、恭しくこうべを垂れた。
「よくお帰りになられました、神の子…!」
いくつもの黒い頭がアンに向かって敬意を示す。
白ひげクルーたちは、その様子にアンと同様目を白黒させた。
だばだばだば、と傾いたジョッキからは琥珀色の甘露がとめどなく零れていくが、それを手にしているクルーは気付きもしない。
ぱちくりと瞬いたアンは、村人たちの言葉をゆっくりと噛み砕き、反芻した。
かみ、かみ、神!?とようやく事の成り行きに整理のついたアンが助けを求めるようにマルコを仰ぎ見る。
しかしマルコもジョッキを手にしたまま、困惑した顔でアンを見返した。
白ひげだけが細い目を数回瞬かせてから、にやりと笑ったのだった。
*
信仰するは火の神、この島を作った創造の神。
名をカクス。
この島ドラウン・カクスは、カクス神のエネルギーによって造られた。
神の力は海底火山を噴火させ、隆起した海底が島となりそこに生物が住みついた。
人間が好きなカクス神は自ら人間を造り、自身が造ったその島に住まわせる。
神の恩恵を受けた人間はその島で自分たちの文化を育み、自然との共存を覚え、数千年を生きてきた。
「言い伝えがあるのです」
長は依然として恭しく頭を下げたまま言った。
地面にぺたりと座り込んだアンは、アンを囲むように並べられたバナナ・リンゴ・マンゴー・パッションフルーツによくわからない果物たち───供物に目移りしながらへえ、と相槌を打った。
「カクス神の力を分け与えられた人間が、ある時空の中でただ一人だけ存在する。
人間でありながら神の子───崇められるべき存在であるそのお方は、千年に一度、この我らが島におかえりになられるのだと」
それが今日だった、と。
そしてその神の子がアンであると、長は言い切った。
「へえ、面白い話があんだねえ、ね、サッチ!」
「…面白いっつーか、なんつーか」
うず高く積まれた果物たちに隔てられつつもアンの隣に座ったサッチは、曖昧に笑い返した。
アンは単純に島民の物珍しい歓迎の仕方を喜んでいるようだから、サッチとしてはあまり水を差したくないところである。
しかしいくつもの島を、そして民族を見てきた船乗りとしてはあまり関わりたくない話であるのも事実。
民族性や宗教が強すぎる輩に首を突っ込むと碌なことがないというのも経験が教えてくれている。
実際サッチは、おずおずと始まった宴の場をマルコが静かに離れるのを目にした。
おそらく今頃は船の書庫で史料を漁っているはずだ。
(多分ハズレだろうな)
マルコがいくら史料を漁ったところで収穫はゼロだろう。
いくら白ひげ海賊団が、そしてそこに所属する航海士や考古学者たちが保有する情報に自信を持っていると言っても、こんな小さな一民族だけが住まう島に関する歴史まで知っているとは思えない。
島に着く前に働いた勘は、これのことだったんだろうかとサッチはひとり首をひねった。
そうであるような気もするし、そうじゃないような気もする。
しかしどっちにしろ、今はアンが至極楽しそうであるのが何よりだろうと思う。
次々と村の女たちが運んでくる果物がサッチからアンを隠していくが、その鮮やかな壁の向こう側からはアンの楽しげな歓声が聞こえる。
座っていれば周りには次々と美味しそうな食べ物が積まれていく。
はじめは戸惑い目を回していたアンも、その順応性にはさすがと言うところか、今ではささげられる食べ物を消化することに専念している。
そしてなにより村人の丁重な言葉遣いと振る舞いは、心からアンを崇めていた。
酒も食い物も文句なし。
土地柄も人柄も悪くない。
たった4日のことだと、自分に言い聞かせるようにサッチは酒を飲んだ。
*
「お迎え?」
翌朝二日酔いにより脳内工事中かというほどの頭痛に襲われたアンは、船べりにつかまりながら陸を覗き込んだ。
跪いた島民が4人。
男が二人と女が一人と昨日アンに懐いた少女が一人。
3人の大人は相変わらず寡黙そうな、言ってしまえばむっつりとした面持ちは崩さなかったが、少女だけはにこにこと笑ったままアンを見上げていた。
「玉座に案内いたします。どうぞご同行ください」
「ぎょく?ってなに?」
アンが内側から鳴りやまない工事音を押さえつけるように、額に手を当てたまま尋ねる。
年配の男は顔を伏せたまま答えた。
「カクス神の神殿にございます」
し、ん、で、ん…とアンは顔をしかめたまま呟いた。
顔をしかめているのは頭痛のせいだけであり、その神殿とやらへの興味は深々である。
「…行って、みたいなー…」
「是非」
「その神殿とやらは、昨日オレらに手を出すなって言ったヤツじゃねぇのかよい」
背後からマルコが、寝起きのような低い声を出して近寄ってきた。
アンが振りかえった時にはすでにアンの隣に並んでいる。
マルコの手には数枚の紙切れ。
明け方まで考古学者たちと話をしていたらしいマルコの目の下は不健康に染まっていたが、どうやら欲しかった情報は揃わなかったらしい。
「その通り、島民以外の常人の入れるところでは」
「…アンならいいってか」
黒い頭が縦に振られた。
アンはどこか控えめにマルコを仰ぎ見た。
「ね、行っても…」
「…お前は今日非番だろい」
「う、ん」
「好きにしろ」
ぱあっとアンの頬が興奮と喜びで染まった。
随分と前から、アンのこの顔を見るのが好きだ。
そして何度もこの顔を壊したこともある。
今回も「ダメだ行くな」と舌先に乗っていた言葉があったが、ちゃんと代わりの言葉が出てくれた。
村の中心にあるというその神殿にアン以外近づけないというのならお守をつけるということも拒まれるだろう。
そもそもそれはアンが嫌がる。
アンを説き伏せ、マルコ自身が神殿の近くまで島内の調査を兼ねて付いていくという案もあったが、いかんせん今日マルコは他の仕事が詰まっていた。
白ひげの健康診断もちょうどこの寄港と重なっており、船を離れたくはないというのも事実。
「弁当作ってもらってくる!」と嬉々としてキッチンへと駆けていくアンの細い背中を見送って、マルコは再び船の下の陸、4人の島民を見下ろした。
少女は自分の首飾りを指で弄りながら鼻唄を歌い、嬉しそうにアンを待っている。
しかしほかの3人の大人の黒い目(それはアンのに似ていた)は、どこも見ていなかった。
*
「…随分奥だな…」
アンはリュックいっぱいに詰まった弁当を担ぎ直して、二人の男の後をついて行った。
後ろには女、そして隣には少女。アンと手を繋いでいる。
神殿は島の中心だと聞いていたが、村も島の中心の小高い場所にあったからどういうことなんだろうとアンは頭にぼんやりと島の地図を思い浮かべた。
「ね、神殿って島のど真ん中にあんの?」
隣の少女はにっこりと笑ったまま頷いた。
「村は神殿より手前にあるの!」
「ああ、なるほど」
船からのこのルートはどうやら村を迂回しての道らしい。
どうして村を横切らないのか尋ねたら、「だってパニックになっちゃう」らしい。
昨日のあの様子が再びとなればちょっとキツイか、とアンも納得した。
不意に、隣の少女が後ろにいる女に小さく声を掛けられた。
どうやらアンに馴れ馴れしくしたことをたしなめられているらしい。
そんなこといいよとアンが口を開いたそのとき、前の男たちが立ち止まった。
生い茂り視界を塞いでいた樹木の葉を、男たちが手で退ける。
開けたアンの視界の向こう側には、白い、とても白い石の建造物が煌々と日の光を受けて輝いていた。
「う…あ…」
すごい、と無意識に口から零れた。
真っ白い三段だけの階段があり、その先には4本の白い石の柱が四角いスペースを作っていた。
アンはその階段をゆっくりと上った。
柱には細かく繊細な彫り物が描かれており、アンが近づいて目を凝らしてもその細かい造形をすべて見ることはできない。
そして柱に囲まれたちょうど中心には、たったひとつだが圧倒的な存在感を放つ椅子が置かれていた。
その背から肘置きに至るまで細かい彫刻があり、あまりの美しさにアンは触れることをためらった。
「美しいでしょう」
静かで低い声。
アンが振りかえると村の長が階段の下にたたずんでいた。
アンをここまで連れてきた4人は、長からさらに離れたところで静かに立っている。
長は、昨日より幾分か柔らかい顔つきでアンを見上げていた。
「すぐに酒食を持って来ますから、どうぞ座ってお待ちください」
「ここに?」
アンが白い椅子を指さすと、長は勿論と頷いた。
アンは手でおしりを払うと、おずおずとそこに腰かけた。
固くひんやりとした感触が背中を駆け抜けた。
「あ、そうだ、あたしお弁当持ってきたんだ!」
アンがリュックをごそごそと漁ると、長はそれを手で制して少しだけ悲しげに眉を寄せた。
「貴女様のために村で料理をこしらえております。是非それを食べていただきたい」
「…そ、う…」
そんじゃ食べなきゃ悪いよな、とアンは開きかけた弁当のふたをゆっくりと閉めなおした。
弁当を食べたところで長の言う村の料理が食べられなくなるということはないだろうが、せっかく自分のために作ってもらっているご飯はお腹がすいている時に食べたい。
持ってきたお弁当も、サッチがアンのためだけに作ってくれたものだ。
しかしこちらはいつだって食べられるが、村の料理はそうじゃない。
このお弁当の中身は帰り道で食べることにしようと、アンは弁当箱をリュックの中に戻した。
「では酒食が届くまで、少しこの島の話をお聞きいただけませんかな。
なに、けして退屈させることは致しませんから」
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白ひげ一家を愛して12416中心に。
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@kmtn_05 からのツイート
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一声いただければ喜んで遊びに行きます。
足りん
URL;http;//legend.en-grey.com/
管理人:こまつな
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