OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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島の創造主、カクス神は自ら作り出した人間をとても愛した。
人間の流す血や汗、信頼や思いやりを持った心にとても惹かれた。
彼は、当時神だけの所有物であった「火」を人間にも与えた。
火は人間に季節以外での暖を与え、食物の保存方法を大きく変え、人間に大いなる恩恵をもたらした。
人間はカクス神に感謝し、それに彼も心から喜んだ。
しかしそれをよく思わないのは他の神。
神の所有物を勝手に人間に与えたことが他の神から大きな反感を買い、彼は天を統べる全能の神に人間から火を取り上げるよう命じられた。
自分の子のように愛してきた人間からもはや火を取り上げることはできない。
人間は、既に火なしでは生きていけなくなっていた。
彼は全能の神からの命令を拒んだ。
そしてカクス神は天から降ろされた。
自らの「火」の能力だけを残して神の力をすべて失い、寿命を持った人間となった。
人間となった彼を島の人間は大いに歓迎し、カクス神自身もとてもよく人間に馴染んだ。
島は元神・カクスの火の力によって大いに、そして久しく繁栄した。
しかしそれから後、島は他の海域からやってきた見知らぬ人間による侵略を受ける。
自然の力を基として生活する島民の知恵と技術は侵略者による開拓の危機に瀕していた。
島民は武器を取った。
先陣を切ったのはカクス神だった。
見たこともない武器と鎧を持つ開拓者たちに、島民たちは苦戦した。
カクス神の操る炎が彼らの助太刀をした。
そして開拓者と元神率いる島民の戦いは四日間の連戦の末、決着がついた。
勝者は島民たち。
手製の槍と盾で向かい撃った彼らが、開拓者たちを追い返した。
損害は海岸沿いの森が数平方と、カクス神ひとり。
「…死んだの?」
アンが若干遠慮がちに、覗き見るように尋ねる。
長は静かに頷いた。
ひょえ、と声には出さなかったがアンが顎を引いて眉を寄せた。
その口の中には村人たちが用意したあらゆる料理がめいっぱいに詰まっている。
白妙(しろたえ)のようになめらかに輝く椅子の周りには、同じように真っ白なテーブルがいくつも並び、その上には所狭しと料理が並んでいた。
見たこともないような野菜やフルーツが煮られたもの、アンが目を奪われるほど大きな肉の塊。
アンは促されるまま初めはおずおずと、そして今では遠慮なしにがつがつと、余すことなく食い尽くさんばかりのペースで口に運んでいた。
まるで元気にご飯を食べる子供を見守る親のように、長は穏やかな顔でアンの食事風景を眺めていた。
二十歳前後、体つきのほっそりした娘がさて何人分かという料理を平らげていくという、普通なら一瞬でも目を向くはずの光景を、長は一瞬たりとも表情を崩すことなく受け入れていた。
勿論アンがそんなことを意に介するはずもないので、食事は構わず続いていく。
長はアンの食事の邪魔をするでもなく、しかし上手くアンの興味を引くという巧妙な口調で島の歴史を語っていった。
話を聞き続けることがそう得意でないアンも思いのままに引き込まれ、しまいには前のめりになりながら咀嚼するという器用な格好になっていた。
「彼は死に、我らの祖はとても悲しみました。創造主であり救世主である彼を死なせてしまったことを人々はとても悔いたのです。
本来ならば彼は火の神。人々は彼を火葬して丁重に葬りたかった。
しかし彼は砂浜での戦いの途中、突然の荒波に足を取られ海に投げ出されました。
…彼は泳げなかったのです。
よって彼の身体は波に揉まれ見つかることもなく、人々の願いは叶いませんでした」
ああ、戦いは彼のおかげでほとんど決着がついていたようなものだったので幸いと言えば幸いだったのですが、と長は苦笑しながら付け足した。
しかしアンには、長の苦笑に答える余裕はなかった。
口の端から麺のさきっぽを飛び出させたまま、今の話を頭の中で分解して理解し直していた。
「え、な…ん!?その…神様、泳げなかったの?」
「ええ」
それって、なんか、とぽろりぽろりと言葉の切れ端が勝手に零れていく。
長はアンが思い当った考えに気付いているのかいないのか、切れ長の目を伏せた。
そして俯いたまま口を開いた。
「火の神を、我々の祖は水に浸けて死なせてしまいました。
その後悔と共に彼に対する大恩を忘れぬよう、この歴史は代々語り継がれております」
「…へ、え…」
アンは食事を始めてから一度たりとも話すことなかったフォークを、初めてテーブルに置いた。
いつの間に来たのか、アンと長を囲むようにして跪く人の頭がポツリポツリと目についてきたからだ。
「…ねえ、なんでみんな集まってきてんの?」
「貴女様を一目見て、できることならば崇め奉りたいと皆が思っているからであります」
「あのさあ、『悪魔の実』って知ってる?あたしの能力はそれなんだよ、ホラ」
アンはかざした人差し指に朱く揺らめく小さな炎を灯した。
それを目にした島民たちが一様に息を呑み、一人の老婆に至っては涙を光らせたような気がしたのでアンはすぐさまそれを消したのだが。
「…紛うことなき、カクス神の力でございます」
「だっかっらっ!神様の力だか何だか知らないけどそういうんじゃなくて!呪いなの!ホントに知んないの!?」
マルコもジョズも、オヤジだって能力は違うけど『悪魔の実』の力は持ってるし、とアンは思うままに口を走らせた。
しかしそれが言い訳めいたように聞こえて、アンの顔は少し歪んだ。
なんて言えばいいんだろうかと精一杯頭をひねっても、今まで成人した人間で悪魔の実を知らない者に出会ったことなどないから、改めて呪いの説明をしろと言われるとそれはアンには難しすぎる。
もおおおお!と頭をかきむしりたい気分になった。
────いやそれよりも。
アンはいつのまにかショートパンツの裾を固く握っていた。
目が違う。
寡黙で、大人しく、懸命そうな島の民。
しかしその目の奥、アンと同じ漆黒の瞳には深く深く靄がかかっているように見えた。
そして彼らはアンを見ていない。
何を見ているのかアンには見当もつかないが、確かに見ているのはアンではなかった。
ぼんやりしているのとは少し違う。
アンの肌には確かにあまたの視線が突き刺さっているのだ。
それでも、違う。
違うとしか言いようのないいくつもの目がアンを見つめている。
今まで百を超える銃口を向けられても、それが大砲であっても、目の前で刃の切っ先が煌めいたとしても、こんな気分になったことはなかった。
冷たく、べっとりとした汗が背中をゆっくりと伝っていくような感覚。
アンは立ち上がろうと四肢に力を込めた。
「っ…!?な、」
「ああ、あまり力を入れるとお疲れになられてしまいます。遅効性の薬味草でございますから」
まるで『足元に気を付けて』とでもいうように、長は穏やかな顔のまま注意を促した。
白色の石に張り付いたように動かない手足にアンは懸命に力を込める。
しかしまるでその抵抗を嘲笑い蹴散らすように、アンの身体は徐々に徐々に重たくなっていく。
アンは左右に並べられた幾多の皿に視線を走らせた。
クッソ、と悪態吐いても状況が変わらないことは経験済みだ。
ぺろりと平らげてしまった料理たちが急激に憎らしくなってきた。
「…歓迎しといて毒盛ったの」
アンが憎々しげに長を睨みつけると、長は焦ったように、そしていつになく激しい身振りで首を振った。
「滅相もない!!毒なんぞでは」
ただ少し体が動かなくなるだけでして、と最後はにこやかに応える。
立派な犯罪だろ、とアンは内心呆れにも似た溜息を吐き出した。
「で、あたしをここに縛り付けて何したいわけ」
長は、「ああそうでした、話が途中でした」と後ろに手を組み、アンにしっかりと見合った。
「先に申しあげたよう、我々の祖は火の神を天に返すことができなかった。
その後悔はこの物語が数千年前の歴史となった今でも脈々と受け継がれております。
…しかしつい昨日のこと。その後悔に光が差し込む道が開けたのです。
…貴女様のおかげで」
今まで無邪気に楽しんでいた昔話が急にどうでもよく、下らなく思えてきたアンはイライラと眉をひそめた。
本当は八つ当たりにでも椅子の角を蹴っ飛ばしたいところだが、いかんせん体が一ミリたりとも動かない。
肘置きに置いた両手の指一本ですらぴくりとも動かせないところを見ると、服させられた薬の効き目は相当らしい。
そういえば医術班が、オヤジの治療に役立てる薬草をこの島で採っていくと言っていたっけとモビー上での会話がアンの脳裏をよぎった。
薬草が繁茂するような島であれば、効き目の強い痺れ薬を造ることなど島民にとっては造作もないことなのだろう。
そしてそれを料理に混ぜることも、海賊に気付かれないことも。
「貴女様はカクス神の生まれ変わり、この世に落とされた申し子であります。
よって我々は、彼の代わりに貴女様を天にお返しすることにしました」
なんだそれ。
何を勝手に決めてんだと口を開いたものの言葉は出てこなかった。
咽喉が震えて、声が出ない。
ぴりぴりとした痺れが喉の奥にまで広がっていた。
長をそれをさも当たり前のように流し見てから、ぐるりと周囲を見渡した。
「我らの神をお返しする儀式が、数千年の時を経てようやく叶おうとしているのです。
────神、我々の手で丁重に火をくべ貴女様をお返し致す」
なんてこった。
もう声を出すことはとっくに諦めていたが、じゃあ今から焼き殺しますからと言われて目を剥かないはずがない。
とんでもない殺人集団だ。
アンは物理的に体が動かせないのを承知の上で、自身の肩から炎を吹き上がらせた。
おおおっとどよめきが周囲に走り、それと同時にアンが長をねめつけるように睨む。
炎の化身である自分を、焼き殺すことなど不可能だと教え諭すために。
しかし長は曇った瞳をうっとりとアンに向けた。
「美しい。歴史が伝えたとおり、神の炎はとても神々しい。
…ただ…そのせいで、我々が使う炎は貴女様の炎に負けてしまうがゆえ、貴女様を天にお返しすることができない。
申し訳ありませんが、少々封じさせていただきます」
その言葉にアンが怪訝な顔を見せると、長の後ろから一人の男が小さな木箱を手に持って歩み寄り、長の足元に膝をついた。
長は手のひらにすっぽり乗るような大きさのそれを静かに受け取り持ち上げる。
「貴女様が先ほど仰せになられた『悪魔の実』…存じ上げております。
貴女様の力がその身から得たものだとしても、それが神の所業によるものだということには何ら変わりありません。
…我々は、炎を司る『悪魔の実』の存在を存じておりました。
そしてその力を身に宿した人物の到来を心よりお待ちしていた。
そして今来るこの時のために、これがあるのです」
長が数歩前へと進み、アンの2メートルほど手前で立ち止まった。
その手の中の木箱のふたが持ち上げられる。
長のかさついた指先が、箱の中の何かを持ち上げた。
その小さな物体の姿・形・色に、アンがぴくりと眉を動かした。
本来ならば舌打ちの一つでもしているところだ。
「『悪魔の実』の力を封じる…海の力。その力を秘めた固体。名を海楼石と言うらしいがそんなことは我々にとってとるに足らないどうでもよいこと。
今はこの力を借りて、少しの間だけ貴女様のお力を封じさせていただきたい」
長の両脇に音もなく二人の男が寄り添うように並び立つ。
相変わらず色の黒い肌の向こう側に潜む漆黒の瞳は淀んだ波の揺れのように定まらない。
長は木箱から取り出した「それ」をひとつずつ、両脇の男に手渡した。
「貴女様の…神の持たれるすべてのものが美しい。
美しい血を流させることは大変忍びないが、貴女様の美しい声は是非聴かせていただきたい」
貴女様の声にこの島の木々が鳥が魚たちが喜ぶことでしょう、と長は歌うように続けた。
目を閉じてそう語るさまは、アンから見ても一発でわかる。
気味が悪いほど、何かに心酔していた。
二人の男がアンの両脇に跪く。
アンは動かない両腕を張り付いた椅子からもぎ取ろうと必死で暴れ続けた。
しかし暴れているのはアンの動悸だけで、はたから見たアンの姿は大人しく椅子に腰かけるひとりの娘だ。
男たちはその手に持った海楼石の釘を静かに持ち上げる。
青い空を背景に、くすんだ鈍色が鋭く光った。
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