OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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マルッコー、と幾分弾んだ声がカウンター越しに厨房から飛んできた。
夕食を終え食後のコーヒーを飲みほしさて部屋に戻ろうかというところだったマルコは、その声に怪訝な顔を上げた。
声の主サッチはマルコを見ることもなく、ジーと虫の鳴き声のような音を立てるオーブンに熱い視線を注いでいる。
サッチはそのまま再び口を開いた。
「明日何食いたい」
「明日ぁ?」
白ひげ海賊団の毎日のメニューは、サッチ率いる4番隊があらゆる食への知識を動員して立てられる最高の献立である。
なんでそんなことオレに聞く、と付け足したマルコにサッチはやっと顔を上げた。
呆れ顔である。
「なんでじゃないでしょ。たんじょーびだよ、たんじょーび」
「誕生日?」
誕生日ってなんだっけ、とでもいうような顔をして見せたマルコにサッチは本気で呆れたように肩をすくめた。
「そうだって、一番隊隊長不死鳥のマルコさん。あなたのたんじょーびですよー」
「…あぁ」
明日あなたの誕生日ねと言って、これほど気のない返答があるだろうか。
サッチは内心ガックシ、と頭を垂れた。
ガックシ、と声が漏れていた。
「ま、とりあえずいろいろ作るけどさ。お前の好きなもんはフルコースで、あと年代物の酒開けて…
あとはお前のリクエストに応えるけど」
「んな仰々しいことしなくていいよい。メシも適当で」
「バッカお前それで野郎どもが満足すると思ってんのか」
家族の生誕はみんなで祝うもの。
半ば刷り込みのように教えられたそれは、彼らがオヤジと慕う白ひげの教育方針の一つである。
無論マルコもそれに染められているので、クルーの誰かが誕生日だと聞けば無条件で嬉しいし、祝いの言葉も言いたい。
だがそれがいざ自分のこととなるとどうもピンとこないのだ。
マルコは面倒くさそうに後頭部を掻いた。
「任せるよい」
「…投げやりね」
ま、いっかと呟いたサッチは一度ぴうっと口笛を鳴らしてオーブンを開けた。
もわんと甘い香りが立ち上る。
「何焼いてんだい」
「ケーキ」
お誕生日ケーキを焼いてるんですよ、とサッチはオーブンの中身から目を離すことなく付け足した。
「これぁ試作品だけどなー。言やぁエースの夜食だ」
「お前甘やかすんじゃねぇよい。餌付けなんかしやがって」
「餌付けじゃねぇもん。夜中ここに食い物置いとくと勝手にエースが食うんだもん」
「余計駄目だろい!!」
刺々しい声を出したマルコを、サッチはまあまあと宥めた。
「明日は楽しめよー」
「はんっ、誰かさんがさっさと換金リストのまとめ出してくれたらそのほうがよっぽど楽しいよい」
「ひえぇ」
*
翌日、マルコはいつもどおりの時間にいつもどおり起きた。
近頃肌寒いため、一度むくりと起き上った体は再び生暖かい布団の中へもぐりこむ。
それを数回繰り返してマルコはようやくベッドから抜け出した。
いつものことなので、とくに生活に支障はない。
部屋で顔を洗い着替えて、マルコは部屋の扉を開けた。
と、ぱさりと足元に何か落ちる。
同時に視線も落とすと、鮮やかな幾つもの色が目に飛び込んできた。
青、白、黄色を中心に色鮮やかな花が連なって輪を作っている。
それが部屋の外側のノブにかかっていたのだ。
それを見てマルコは、今日と言う日の意味を再び思い出した。
モビーの上では誕生日が来るとその日の朝、部屋のノブに花輪がかかる。
隊長格であろうとナースであろうと下っ端の一隊員であろうと、誰にも平等に誕生日がやってくるように、その日になると誕生日の主役の部屋には花輪がかかるのである。
それを誰がやっているのか、そいつがどうやって全員の誕生日を把握しているのかはほとんどのクルーが知らない。
モビーディック号の化身、クラバウターマンがやってるんじゃないかとの噂もあるが、本当のところは謎のままだ。
細やかな野郎がいるもんだよい、とマルコはそれを拾い上げた。
その動作をするマルコの口元は自然とゆるく弧を描いていたが、それにマルコ自身が気付くことはない。
花輪を部屋の内側のノブに再びかけて、自室を後にした。
部屋を出て食堂に辿りつく数分の間、すれ違うクルーはもれなくマルコに祝いの言葉を告げた。
おめでとうございますと笑顔で言われて、ああありがとよいと返すと、マルコよりむしろクルーたちの方が明らかにうれしそうな顔をする。
そうも誕生日ってのぁいいもんかねい、とマルコは内心呟いた。
マルコにとって誕生日に起こるいいことは、酒が多く出て美味い物が食える、それくらいである。
「マルコ隊長!おはようございます!お誕生日おめでとうございます!」
「ああ、ありがとよい」
13番隊と思われるクルーは、マルコの返答に嬉しそうな顔で笑い返して去って行った。
まああいつらが嬉しそうならそれはそれでいいか、と曖昧な納得を抱えてマルコは食堂へと入っていった。
*
「マルコ、次の島の報告書だ」
「ああそこ置いといてくれ」
「マルコー、見張りの当番表廻ったぜ、チェックしてくれ」
「おう」
「悪いマルコ、これなんだが…」
「ああ、それぁ確かここに資料が」
仕事が来る。
じゃんじゃん来る。
マルコはめまぐるしく働いた。
といっても目まぐるしく動いているのは頭の中だけで、マルコ自身は自室の椅子から一日のうち数えるほどの時間しか離れていない。
いつも通りの日々だ。
頭の中は今後の仕事の算段でいっぱいで、余計なものはすべて仕事の邪魔にならないよう自ら頭の片隅に身を潜ましている。
そういう考えの配分を自然とこなしてしまうマルコは、怒涛の流れで進む仕事にも、忘れていく今日のイベントにも、特に違和感がなかった。
「マルコごめん!遅れ…た?」
エースが滑り込むように書類を掴んで入ってきた。
現在時刻午後四時。
いつもなら積もり積もった仕事に追われてマルコが最も根を詰めている時間帯である。
そしてそこに遅れた書類を叩きだすのがいつものエースの姿で。
しかし飛び込んだエースが見たのは、ちょうど煙草に火をつけたところのマルコだった。
「おう、やっと持って来たかい」
「マルコ、仕事終わった?」
「ああ、どれ貸してみろい」
エースの手から書類を受け取ったマルコはそれに一通り目を通す。
そしてさらさらと必要事項を書き込み、サインをし、丁寧にファイリングした。
「完了?」
「完了」
オウム返しのようにマルコが答えると、エースがにんまりと笑った。
目が三日月のようになっている。
「…なに気味悪い笑い方してんだい」
「なっ、ひどっ、おまっ」
心外だとでも言わんばかりの顔でエースがマルコをじとりと睨む。
マルコは煙草の煙を吐き出しながら笑った。
「んじゃ、行こうぜ!もう準備できてんだろ」
「あ?どこに。メシはまだ早ェだろい」
エースは踵を返しかけた足を止めて、肩ごしにマルコを振り返った。
呆れたようなその顔は、とてもサッチに似ている。
「あんたのための宴に決まってんだろ」
そこでマルコは再三忘れていたそれを、再び思い出したのだった。
*
乾杯の音頭は、なぜか既に酔っぱらっていたラクヨウとハルタがとった。
「われらがあー、一番隊のお、マルコの生誕を祝いましてえー!!」
「ふしちょーのおー、さらなる繁栄を願いましてえー!!」
「さらなる繁殖じゃねぇの!」
ギャッハッハという笑い声と、「乾杯!!」の叫びが重なって怒号のようになった。
乾杯してしまえばあとはもうただ飲むだけの野郎たちである。
本日の主役に一声二声かけて酒の一気飲みを煽り、嫌な顔をされて笑って逃げる男たちが後を絶たない。
いつもの馬鹿騒ぎに輪をかけて騒がしく始まった宴を、マルコは淀んだ色の酒が入ったジョッキを片手に呆れ顔で眺めていた。
眺めると言っても次から次に声がかかるのでゆっくり飲むこともできない。
しかも飲めるのは淀みきった各種の酒フルコースミックスで、純粋なものは期待できそうにない。
目の前に並べられた料理をつまんで、その美味しさにひとり薄らと笑う。
笑ったマルコを端目で確認して、サッチがまた笑う。
エースが花火を上げた。
悲鳴のような歓声が上がる。
誰かが海に落ちた。
誰かが服を脱いだ。
白ひげが彼のための席で旨そうに酒を飲む。
マルコと目が合うと、にやりといつもの顔で笑った。
気まずげに目を逸らしたマルコは少し逡巡して、それから自分を囲む男たちに一言告げて腰を上げた。
「いい夜だなあ、マルコ」
「…宴の大義名分なんてあってないようなもんだろい」
「どうだかな」
白ひげは大きな盃を指先で簡単に持ち上げ、ぐいっと一口飲んだ。
旨そうに、滴が端からこぼれていく。
マルコが白ひげの隣に腰を下ろすと、白ひげはマルコのジョッキに自分の酒を満たした。
そしてすぐ自分の杯にも注いだ。
「…オヤジ、あんまり」
「あぁ?今日は小言ぁ聞かねぇぜ」
独特の笑い声と共にマルコの窘めを一蹴した白ひげは、よかったなと呟いた。
ばれていた。
今この瞬間自分がとても満たされた気持ちでいることがオヤジにはばれていた。
そう思うと気恥ずかしいような、くすぐったいような、どちらにしろおっさんと呼ばれる年の男には似合わない気分になる。
いつ絶たれる命かわからないから、見るのは前だけでいい。
それゆえ生まれた日を顧みても、なんの感慨も起こらないのは仕方がないと思う。
それでも大切な日を大切だと惜しげもなく思うことはとても大切だ。
自分にとってなんでもないたった一日をこんなにも色鮮やかにしてくれる。
それを教えてくれる人が、とても大切だということも、わかる。
「ああ…悪くねぇよい」
白ひげの愛酒をぐいと飲み干すと、ほんのり視界が淡く滲んだ気がした。
夕食を終え食後のコーヒーを飲みほしさて部屋に戻ろうかというところだったマルコは、その声に怪訝な顔を上げた。
声の主サッチはマルコを見ることもなく、ジーと虫の鳴き声のような音を立てるオーブンに熱い視線を注いでいる。
サッチはそのまま再び口を開いた。
「明日何食いたい」
「明日ぁ?」
白ひげ海賊団の毎日のメニューは、サッチ率いる4番隊があらゆる食への知識を動員して立てられる最高の献立である。
なんでそんなことオレに聞く、と付け足したマルコにサッチはやっと顔を上げた。
呆れ顔である。
「なんでじゃないでしょ。たんじょーびだよ、たんじょーび」
「誕生日?」
誕生日ってなんだっけ、とでもいうような顔をして見せたマルコにサッチは本気で呆れたように肩をすくめた。
「そうだって、一番隊隊長不死鳥のマルコさん。あなたのたんじょーびですよー」
「…あぁ」
明日あなたの誕生日ねと言って、これほど気のない返答があるだろうか。
サッチは内心ガックシ、と頭を垂れた。
ガックシ、と声が漏れていた。
「ま、とりあえずいろいろ作るけどさ。お前の好きなもんはフルコースで、あと年代物の酒開けて…
あとはお前のリクエストに応えるけど」
「んな仰々しいことしなくていいよい。メシも適当で」
「バッカお前それで野郎どもが満足すると思ってんのか」
家族の生誕はみんなで祝うもの。
半ば刷り込みのように教えられたそれは、彼らがオヤジと慕う白ひげの教育方針の一つである。
無論マルコもそれに染められているので、クルーの誰かが誕生日だと聞けば無条件で嬉しいし、祝いの言葉も言いたい。
だがそれがいざ自分のこととなるとどうもピンとこないのだ。
マルコは面倒くさそうに後頭部を掻いた。
「任せるよい」
「…投げやりね」
ま、いっかと呟いたサッチは一度ぴうっと口笛を鳴らしてオーブンを開けた。
もわんと甘い香りが立ち上る。
「何焼いてんだい」
「ケーキ」
お誕生日ケーキを焼いてるんですよ、とサッチはオーブンの中身から目を離すことなく付け足した。
「これぁ試作品だけどなー。言やぁエースの夜食だ」
「お前甘やかすんじゃねぇよい。餌付けなんかしやがって」
「餌付けじゃねぇもん。夜中ここに食い物置いとくと勝手にエースが食うんだもん」
「余計駄目だろい!!」
刺々しい声を出したマルコを、サッチはまあまあと宥めた。
「明日は楽しめよー」
「はんっ、誰かさんがさっさと換金リストのまとめ出してくれたらそのほうがよっぽど楽しいよい」
「ひえぇ」
*
翌日、マルコはいつもどおりの時間にいつもどおり起きた。
近頃肌寒いため、一度むくりと起き上った体は再び生暖かい布団の中へもぐりこむ。
それを数回繰り返してマルコはようやくベッドから抜け出した。
いつものことなので、とくに生活に支障はない。
部屋で顔を洗い着替えて、マルコは部屋の扉を開けた。
と、ぱさりと足元に何か落ちる。
同時に視線も落とすと、鮮やかな幾つもの色が目に飛び込んできた。
青、白、黄色を中心に色鮮やかな花が連なって輪を作っている。
それが部屋の外側のノブにかかっていたのだ。
それを見てマルコは、今日と言う日の意味を再び思い出した。
モビーの上では誕生日が来るとその日の朝、部屋のノブに花輪がかかる。
隊長格であろうとナースであろうと下っ端の一隊員であろうと、誰にも平等に誕生日がやってくるように、その日になると誕生日の主役の部屋には花輪がかかるのである。
それを誰がやっているのか、そいつがどうやって全員の誕生日を把握しているのかはほとんどのクルーが知らない。
モビーディック号の化身、クラバウターマンがやってるんじゃないかとの噂もあるが、本当のところは謎のままだ。
細やかな野郎がいるもんだよい、とマルコはそれを拾い上げた。
その動作をするマルコの口元は自然とゆるく弧を描いていたが、それにマルコ自身が気付くことはない。
花輪を部屋の内側のノブに再びかけて、自室を後にした。
部屋を出て食堂に辿りつく数分の間、すれ違うクルーはもれなくマルコに祝いの言葉を告げた。
おめでとうございますと笑顔で言われて、ああありがとよいと返すと、マルコよりむしろクルーたちの方が明らかにうれしそうな顔をする。
そうも誕生日ってのぁいいもんかねい、とマルコは内心呟いた。
マルコにとって誕生日に起こるいいことは、酒が多く出て美味い物が食える、それくらいである。
「マルコ隊長!おはようございます!お誕生日おめでとうございます!」
「ああ、ありがとよい」
13番隊と思われるクルーは、マルコの返答に嬉しそうな顔で笑い返して去って行った。
まああいつらが嬉しそうならそれはそれでいいか、と曖昧な納得を抱えてマルコは食堂へと入っていった。
*
「マルコ、次の島の報告書だ」
「ああそこ置いといてくれ」
「マルコー、見張りの当番表廻ったぜ、チェックしてくれ」
「おう」
「悪いマルコ、これなんだが…」
「ああ、それぁ確かここに資料が」
仕事が来る。
じゃんじゃん来る。
マルコはめまぐるしく働いた。
といっても目まぐるしく動いているのは頭の中だけで、マルコ自身は自室の椅子から一日のうち数えるほどの時間しか離れていない。
いつも通りの日々だ。
頭の中は今後の仕事の算段でいっぱいで、余計なものはすべて仕事の邪魔にならないよう自ら頭の片隅に身を潜ましている。
そういう考えの配分を自然とこなしてしまうマルコは、怒涛の流れで進む仕事にも、忘れていく今日のイベントにも、特に違和感がなかった。
「マルコごめん!遅れ…た?」
エースが滑り込むように書類を掴んで入ってきた。
現在時刻午後四時。
いつもなら積もり積もった仕事に追われてマルコが最も根を詰めている時間帯である。
そしてそこに遅れた書類を叩きだすのがいつものエースの姿で。
しかし飛び込んだエースが見たのは、ちょうど煙草に火をつけたところのマルコだった。
「おう、やっと持って来たかい」
「マルコ、仕事終わった?」
「ああ、どれ貸してみろい」
エースの手から書類を受け取ったマルコはそれに一通り目を通す。
そしてさらさらと必要事項を書き込み、サインをし、丁寧にファイリングした。
「完了?」
「完了」
オウム返しのようにマルコが答えると、エースがにんまりと笑った。
目が三日月のようになっている。
「…なに気味悪い笑い方してんだい」
「なっ、ひどっ、おまっ」
心外だとでも言わんばかりの顔でエースがマルコをじとりと睨む。
マルコは煙草の煙を吐き出しながら笑った。
「んじゃ、行こうぜ!もう準備できてんだろ」
「あ?どこに。メシはまだ早ェだろい」
エースは踵を返しかけた足を止めて、肩ごしにマルコを振り返った。
呆れたようなその顔は、とてもサッチに似ている。
「あんたのための宴に決まってんだろ」
そこでマルコは再三忘れていたそれを、再び思い出したのだった。
*
乾杯の音頭は、なぜか既に酔っぱらっていたラクヨウとハルタがとった。
「われらがあー、一番隊のお、マルコの生誕を祝いましてえー!!」
「ふしちょーのおー、さらなる繁栄を願いましてえー!!」
「さらなる繁殖じゃねぇの!」
ギャッハッハという笑い声と、「乾杯!!」の叫びが重なって怒号のようになった。
乾杯してしまえばあとはもうただ飲むだけの野郎たちである。
本日の主役に一声二声かけて酒の一気飲みを煽り、嫌な顔をされて笑って逃げる男たちが後を絶たない。
いつもの馬鹿騒ぎに輪をかけて騒がしく始まった宴を、マルコは淀んだ色の酒が入ったジョッキを片手に呆れ顔で眺めていた。
眺めると言っても次から次に声がかかるのでゆっくり飲むこともできない。
しかも飲めるのは淀みきった各種の酒フルコースミックスで、純粋なものは期待できそうにない。
目の前に並べられた料理をつまんで、その美味しさにひとり薄らと笑う。
笑ったマルコを端目で確認して、サッチがまた笑う。
エースが花火を上げた。
悲鳴のような歓声が上がる。
誰かが海に落ちた。
誰かが服を脱いだ。
白ひげが彼のための席で旨そうに酒を飲む。
マルコと目が合うと、にやりといつもの顔で笑った。
気まずげに目を逸らしたマルコは少し逡巡して、それから自分を囲む男たちに一言告げて腰を上げた。
「いい夜だなあ、マルコ」
「…宴の大義名分なんてあってないようなもんだろい」
「どうだかな」
白ひげは大きな盃を指先で簡単に持ち上げ、ぐいっと一口飲んだ。
旨そうに、滴が端からこぼれていく。
マルコが白ひげの隣に腰を下ろすと、白ひげはマルコのジョッキに自分の酒を満たした。
そしてすぐ自分の杯にも注いだ。
「…オヤジ、あんまり」
「あぁ?今日は小言ぁ聞かねぇぜ」
独特の笑い声と共にマルコの窘めを一蹴した白ひげは、よかったなと呟いた。
ばれていた。
今この瞬間自分がとても満たされた気持ちでいることがオヤジにはばれていた。
そう思うと気恥ずかしいような、くすぐったいような、どちらにしろおっさんと呼ばれる年の男には似合わない気分になる。
いつ絶たれる命かわからないから、見るのは前だけでいい。
それゆえ生まれた日を顧みても、なんの感慨も起こらないのは仕方がないと思う。
それでも大切な日を大切だと惜しげもなく思うことはとても大切だ。
自分にとってなんでもないたった一日をこんなにも色鮮やかにしてくれる。
それを教えてくれる人が、とても大切だということも、わかる。
「ああ…悪くねぇよい」
白ひげの愛酒をぐいと飲み干すと、ほんのり視界が淡く滲んだ気がした。
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白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
@kmtn_05 からのツイート
我が家は同人サイト様かつ検索避け済みサイト様のみリンクフリーとなっております。
一声いただければ喜んで遊びに行きます。
足りん
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