OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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外は雨だ。
久しぶりの雨のおかげでどことなく暖かさの残っていた日中も肌寒くなり、すっかり秋に深みが増してしまった。
寒いのは嫌いだ。
暑いのも腹立たしいが、寒さも堪えるものがある。
特にこの歳になると。
マルコは何でもかんでも歳のせいにしすぎだと笑うアンに返す言葉はなく、ふんと開き直るしか術はない。
パソコンの画面に注視したまま機械的な動作でいつもの場所に置いてあるマグを手に取り口をつける。
しかし中身はすっかり冷めていた。
それこそ興ざめだ。
長い溜息をついてから、ぬるくまずいコーヒーを一気に飲み下した。
「マルコっ」
マグをデスクに置いて振り返った。
二人掛けのソファの上でうつぶせになり雑誌を開いていたアンは、なぜか幾分頬を紅潮させてマルコを見上げていた。
ソファからはみ出た長い肢体がふらふらと交互に揺れている。
げ、と内心で呟いた。
こういう顔をするアンはろくなことを言わない。
「は、は、」
「は?」
「は、」
くしゃみでもするのかと思った。
しかしくしゃみをするでもなくアンから発せられた言葉はあまりに聞きなれないもので、その言葉を飲み下すのに時間がかかった。
「は、はろうぃーん、したい」
「ハロウィン?」
こくこくこく、と頭がもげようかと言うほど頷いたアンは、もう一度意味もなく「ハロウィン!」と高らかに叫んだ。
ちらりとアンの手元に視線を落とすと、開かれた雑誌が目に入る。
オレンジと黒が目に痛いそのページを見て、ああと納得がいった。
空になったマグを台所に持っていこうと、マルコはそれを手に取り立ち上がる。
「かぼちゃ買ってくりぬいてりゃいいだろい」
「なんでかぼちゃ?」
マルコの言葉に首を傾げたアンは、雑誌を手に上体を起こしてソファに座り直した。
「あれだろ、かぼちゃに顔作るやつがやりてぇんじゃねぇのかよい」
「なにそれ」
「違うのかよい」
「…あたしがしたいのとはちがう」
しょぼ、とあからさまに視線を落としたアンを尻目に、マルコはマグを流しに置こうとしたのを思い直してコーヒーメーカーのスイッチを入れた。
それからもうひとつオレンジ色のカップを棚から取り出し、自分のそれの横に並べる。
冷蔵庫からきんきんに冷えた牛乳を取り出して、オレンジのカップに半分まで流し入れた。
そしてそれは電子レンジの恩恵を受ける。
コーヒーメーカーがごぽっと音を立てて最初の滴を垂らした。
「お菓子もらうやつがしたい」
「…ああ」
そういえばハロウィンの醍醐味と言えばそれだった。
あまりに自分と縁遠いものなので、ハロウィンと聞いて浮かんできたのはあのこにくたらしい顔をしたかぼちゃだったのだ。
「わかる?マルコ」
「人ン家にガキが菓子せしめに行く行事だろい」
「そう!たぶん!なんか、呪文みたいなの言う!トリック!だっけ」
「…それじゃ一方的に一択しか選べねぇだろい」
「あれ?」
「トリックオアトリートだろい」
「そんなのだった!」
やりたいー!ハロウィンしたいー!トリックなんとかしたいー!と雑誌を握りしめ悶えるアンからは、『菓子が欲しい』とあまりにわかりやすい本心が駄々洩れていた。
マルコはアンとのやり取りの間に淹れた色の違う二つの飲み物を手に、アンの座るソファへと歩み寄った。
アンがふわりと香るコーヒーの匂いにクンと鼻を鳴らす。
ひとつを手渡すとアンは嬉しそうに手を伸ばした。
隣に腰かけて、マルコもコーヒーをすすった。
「うまい」
「そりゃよかったよい」
「マルコはカフェオレ淹れるのがうまいね」
「お前よりはな」
「…そういうことを言う」
端目でアンが口を尖らせたのが見えた。
すすっと細い音を立ててアンは吸うように飲む。
「じゃあマルコ、お菓子買っといて」
「…そんでどうすんだよい」
「あたしが外からトリッ…トリックなんとかするから、そしたらドア開けてお菓子ちょうだい」
「…それ楽しいのかよいお前」
「…」
あまり楽しくなさそうなことに気付いて、アンはむ、と眉間に皺を寄せた。
どうしたらハロウィンを楽しめるものかと考えているらしい。
「それにハロウィンってのは、なんでもかんでも行けば菓子もらえるもんでもねぇだろい」
「そうなの!?」
「…お前何の知識をもって今日がハロウィンだと思ってんだよい。あれだ、仮装しなきゃなんねぇんだろい」
「かそう」
「ほら、それにも載ってんじゃねぇかい」
そう言いマルコが指さしたのは、アンの膝の上に載った雑誌。
全身真っ黒のミニドレスを着て角やら尻尾やらこまごまと着飾ったモデルと、顔色の悪い背丈の大きな男がページの向こうで何やら不敵な笑みを浮かべていた。
「…こういう格好しなきゃなんないの」
「そういう行事だろい」
アンは両手でマグを握りしめて、膝の上の雑誌を食い入るように見つめた。
そして何を思い立ったか、唐突に顔を上げ立ち上がった。
ばさりと膝の上の雑誌が床に落ちる。
「ちょっとイゾウんとこ行ってくる!!」
「アホッ、待てバカタレ」
突拍子もない発言にマルコが慌てて引き止めれば、アンは不満げに振り向いてマルコを見下ろした。
「かそう、するから服借りてくる!」
「いらねぇことすんじゃねぇよい!イゾウは、駄目だい」
「なんで」
なんでもだと理屈もへったくれもない理由で無理やりアンを引き留めた。
イゾウの元へやってしまえば、そらきたと言わんばかりにあれやこれやとアンはイゾウの好き放題されてしまうに違いない。
イゾウのニヒルな笑い顔を見たくないというのと、そんな奴のところへアンをやりたくないというのを分かりやすく説明するのは至難の業だった。
マルコの剣幕に押されて渋々腰を落ち着けたアンは、至極不満と言った顔でマグをはむはむとくわえた。
「つまんない。ハロウィンやりたい」
「…菓子買ってきてやるから」
「それじゃいっつもと変わんない」
「…かぼちゃくりぬくか?」
「いらない」
へそを曲げたアンは、空になったマグを手の中でもてあそびながらマルコに背を向けた。
丸くなった背中にガキじゃねぇんだからとため息をつきかけて、そういえばまたガキなんだったと思い出した。
「アン」
「…呪文、つづきなんだっけ」
「…呪文じゃねぇが、トリックオアトリートだろい」
それっきりかたくなに黙りこくった背中は、しばらく動かなかった。
そしてマルコがコーヒーを飲みきったころ、アンは小さく「とりっくおあとりーと」と呟いた。
「…選んでいいのかよい」
「? なにが?」
マルコの答えに首をかしげながら振り向いたアンは、その先にあったマルコの顔の近さに思わずぎょっと身を引いた。
「なっ、なにっ」
「あいにく今手持ちがねぇんだよい」
「なんのはなしっ」
「菓子はあとでな」
二人掛けのソファの上、アンが後ずさったところで先はなかった。
マルコは、はて自分は悪戯されるほうだったと気付いたがどちらでも同じことかと気を取り直す。
はなしがちがう、とわめきかけたアンの口はすぐさま塞がれた。
*
ぴんぽん、と軽やかなメロディが3回ほど鳴った。
アンのシャツの下に潜り込もうとしていたマルコの手は止まらなかった。
ぴんぽんぴんぽん、と軽い音がいっそ腹立たしいほど鳴りつづける。
戸惑うアンに構わずマルコは華麗に無視した。
「マッ、マルコ!誰かっ…」
「聞こえね」
「アーンちゃーん、マルコー」
マルコの手が止まった。
「…サッチだよ」
「…」
アンの上から無言で退いたマルコは、禍々しい気配を漂わせて玄関へと歩いていく。
アンが慌てて乱れた衣服を直していれば、ガチャリとドアが開く音がした。
「ンだ、てめぇかよ。アンちゃんは?」
能天気にへらりと笑った男は、マルコの背後を首を伸ばして眺めまわした。
そして不満げに口を尖らせたが、すぐさまにぱりと笑った。
「まあいいや。とりあえずトリッ」
超速急で靴が飛んだ。
Trick and Trick
(いわれのない暴力!理不尽!)
(ああ、お前仮装してねぇじゃねぇかい。出直して来い、もう一足投げてやるから)
(なんでそんな機嫌悪いの!?)
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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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