OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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マルコの姿が見えなかったので、一度甲板から去りマルコの部屋を覗いた。
しかしそこにも目的の姿はなく、アンは首をひねりつつとてとてと廊下を歩く。
別段用事があるわけではなかった。
ただなんとなくマルコがいないというそのことがとてもアンを不安定な気分にさせる。
輪になって酒を飲む男たちの中できょろきょろと首を回して、一度マルコを探し始めるともう見つけるまでおしりが落ち着かない。
だからアンは立ち上がって、マルコを探した。
冬島と秋島のちょうど間の海域に差し掛かった一昨日あたりから、肌寒い日が続いている。
ランプの頼りない灯りが照らす廊下を歩いていると、むき出しのアンの肩を冷たい風がぺろりと舐めるように吹き去って行って、アンは無意識に肩をすくめた。
しかし酒のおかげか、顔だけはほかほかと温かい。
まぶたもじんわりと温かくて気を抜いたらすとんと寝落ちてしまいそうだったが、マルコを探す足は止まらなかった。
アンはぼんやりと霞のかかった頭のまま船の中をさまよった。
みんな甲板で宴をしているので、誰にも会わない。
マルコの気配は見つけられない。
気配を隠す必要などないのだから、きっと大勢の人にマルコも紛れていて見つけられないだけだ。
ということはやはりマルコもまだ甲板にいるのだ。
アンはもう一度外に出た。
「マルコ?さあ、部屋戻ってねぇか?アイツに新年も何も関係ねぇからなあ」
「部屋いなかった」
「マジ?じゃあわりぃ、わかんねぇわ」
サッチはぽんぽんとアンの頭の上に手を落とした。
いいのありがとうと返すと、にっこり笑って手にしたジョッキの酒を呷る。
アンはサッチが作る輪の中から外れて、また歩き出した。
「マルコ…は、悪いアン、俺は見てないな」
「そう…」
「何か用があるなら見かけたときに伝えておこうか」
「ううん、いい、ありがと」
ジョズが巨体をかがめてアンを見送る。
アンはまた、一つの輪の中から外れて歩き出した。
もうここは、船の船首に近い本当の端っこだ。
ふと視線を上げると、モビーの白い頭の上に人が一人座っているのが見えた。
黒い後頭部が覗いている。
「イゾー」
声を上げて手を振ると、振り返ったイゾウは意味もなく不敵な笑みを見せた。
アンは声を張り上げた。
「マルコ知らなーい?」
「マルコ?さぁ、知らねぇなあ」
特に叫んでいるわけでもなさそうなのに、なぜかイゾウの声はよく通る。
ひとりで呑むことが珍しくないイゾウは、よくこの船首の上で酒をたしなんでいたりする。
宴の最中にイゾウを探そうと思えば、ここか宴の輪の中にいて涼しい顔で酒を呷りながら隊員に無茶ぶりを仕掛けているかどちらかなので、簡単に見つけられる。
しかしマルコにはそうやって思い当たる場所がない。
だからアンはこうしてしらみつぶしに広い甲板をあてどなく歩き探すしかないのだ。
アンはイゾウに礼を告げて立ち去ろうとした。
しかしすぐに呼び止められる。
「オヤジに聞いてみろ」
なるほど、と手を打ったアンは、すぐさま白ひげの特等席へと向かった。
寒い風が吹きすさぶ甲板の上でも、酒とその場の雰囲気でいろいろ忘れてしまったクルーたちにとって寒さなど気にするほどでもないらしい。
服を脱ぎ散らかした隊員たちもごろごろいる。
さらにいうと、白ひげの足元にはたくさんのクルーが群がっているので、その熱気はすさまじい。
これならオヤジもあったかくていいだろうと思ったが、アンからすれば少しどころじゃなくむさくるしい。
アンは足元に転がる男たちを踏みつぶさないようよけてつま先で歩きながら、そして時には誤って踏んでしまいぐぇっと言う声を聞きながら、白ひげの元へと近づいて行った。
おォアン、と大きく低い声が迎えてくれる。
「オヤジ、マルコがいない」
「マルコォ?あぁ、見てねぇなァ」
「しごと?」
「いや、特に言いつけた覚えはねぇ」
どっかでひとり呑んでるんだろう、ともっともらしいことを言う。
そしてからかうようにグララと笑った。
「珍しいな、アン、おめぇの鼻でも見つけられねぇのか」
「酔ってるからね」
「アホンダラァ、酔っ払いは自分で酔ったなんざ言わねぇモンだ」
そうっすよ、隊長飲みましょうと白ひげの右足の後ろに隠れていた隊員が赤い顔をへらへら緩ませて声をかけた。
「マルコ見つけたらね」
「なんだアン、マルコに用でもあるのか」
「そういうわけでもないんだけど」
アンの返答に赤ら顔の隊員は首をかしげたが、白ひげはまたグララと笑うだけだった。
「この船の上でひとりで呑める場所なんてそう多くはねぇ。その辺にいるだろうよ」
白ひげのそのアドバイスを頼りに、アンはまた歩き出した。
ひとりで呑める場所。
モビーの上にはイゾウがいた。マルコの部屋にはいなかった。
食堂、会議室、風呂…呑もうと思えば呑める場所だが、殺風景な食堂や会議室でマルコが一人呑んでいるとは考えにくいし、能力者が水につかって酒を飲むなど自殺行為だ。
マルコはそんなにバカじゃない。
ふと、視界の少し上あたり、船の最前部にあるフォアマストの向こう側の夜空で星が流れた。
空気の澄んだ冬島の海域では、目を瞠るほど美しい星空も風物詩のひとつだ。
流れ星など別段珍しいものではないが、それでもアンの心は少しふわりと浮かんだ。
今日は天気もいい。
星は玩具箱からぶちまかされたおもちゃのように無秩序に、そして余すことなく夜空に散らばっている。
光は遠かったり近かったりして、しかしどれもかわらずまばゆい。
アンはつい立ち止まって上を見上げ、思わずあ、と呟いた。
マルコの居場所に思い当った。
メインマストの最上部、見張り台の上。
ぎっ、ぎっ、とロープを鳴らして上っていく。
もはや確信に近い気持ちがアンにじれったささえ感じさせた。
ロープ梯子の最後の段に手をかけて、ひょこりと顔を覗かせる。
見張り台の中では、付きだしたメインマストに背をもたれさせて気だるげにグラスをかたげるマルコがいた。
アンは悪戯に成功したかのような顔でにやりと笑った。
「──見つけた」
「見つかったよい」
登ってきているのがアンだと、きっと疑いもしなかったのだろう。
マルコは当然のようにアンを迎え入れた。
といっても座ったまま、アンがとんと軽く見張り台の中に乗り込んでくるのを眺めているだけだ。
アンはためらいなくすとんとマルコの隣に腰を下ろした。
「見張りの奴は?」
「オレが代わるっつって降りさせた」
マルコはそう言いながら、アンにグラスを差し出す。
これマルコのじゃんと言うと、オレはここから呑むからと瓶を掲げた。
「邪魔した?」
「いいや」
構わねぇ、とマルコは静かに言った。
しばらくの間、ふたりは黙ったまま酒を飲んだ。
マルコが持っていた酒にアンがひとくち口をつけると、ぴりっと舌がしびれるほど辛い酒だった。
アンが好んで飲む種類の味ではないけれど、目が覚めてちょうどいいやとかまわず一口流し込む。
途端にぼっと目のあたりが熱くなった。
「いい…宴だったかい」
「うん」
アンは迷わず頷いた。
マルコも満足そうに瓶に口をつける。
年が明けてアンの誕生日を迎えてからここ三日、毎晩宴が続いている。
どれだけ新年を祝っても祝っても、祝いきれないのだ。
新しい年を迎えて、今を生きていることを喜ぶ気持ちは誰も抑えきれない。
初っ端がアンの誕生日パーティーだったこともあいまって、今や下火ではあるとはいえ未だ誰も宴の火を消火できていない。
「昨年も…思ったけどさ」
「ん」
「誕生日とか…新年とか…祝ってさ、みんなでお酒飲んで」
マルコは黙って先を促した。
「こんな楽しいこといっぺんに来ちゃっていいのかなって、おもう…」
もったいない、と呟いたアンに、思わずマルコは笑った。
「小分けにして来いってか」
「…それもなんか微妙だな」
ぎゅ、と顔をしかめて真剣に考えだしたらしいアンは、そもそもなんであたしの誕生日はこの日なんだ、と言っても仕方ないことを呟いている。
マルコにとっては、誕生日なんて関係ないほっとけー!と叫んでいた一年前が少し懐かしい。
考えても仕方ないと悟ったのか、アンはかくんと首を後ろにそらせて頭をマストに預けた。
そうするとちょうど視界は星空でいっぱいになるのだ。
「すごいよ、星」
「ああ、すげぇ数だよい」
「きれいだとおもう?」
「こんなにいっぱいあるとな」
苦笑するようにマルコはそう言った。
「眩しいもんね」
「あぁ」
「あたしは…きれいだとおもうけど」
「お前がそう思うなら、そうなんだろうよい」
投げやりにも聞こえそうなほどぽんと放たれたその言葉が、嬉しくてアンは俯いた。
マルコの言葉は、アンのすべてを許してくれる。
また新しい一年が始まったのだとアンはマルコに寄り添いながら思った。
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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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