OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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マルアンですが原作通りの未来です。
顔を寄せて、隠れるように笑い合う姿を知っている。
目を伏せるその瞬間まで、互いを捉えていることを知っている。
触れあったそのとき、柔らかくなる顔を知っている。
彼女は彼をとても信じていたし、彼は何より彼女を思っていた。
また、誰もにとって、彼らは大切だった。
周縁はかく言う
戦火は小火のようにちろちろと、ところどころでくすぶっているのみとなった。
黒く立ち上る硝煙のにおいと、生臭い人の血で鼻の奥がツンと痺れる。
海賊も、海軍も、多くが傷ついた。
生きるものはただ心臓が動いているというだけで、地面に横たわる死んだものと大した違いがみられない。
誰もが亡霊のように、黙々と、いっそ清々しいほど沈黙に浸って作業を繰り返している。
まだ亡霊の方が、未来のないぶん活気があるかもしれない。
未来があるというのは、今このときに関しては苦痛でしかなかった。
多くを失った未来。
先の見えない不安はいつだってある。
ただこのときだけは、その不安が何よりも濃く重く、誰もの胸にのしかかっていた。
広場の中心に、すすけた白い布が掛けられた部分がある。
ざわざわと遠慮がちな喧噪の中、灰色の石畳の上にぽっかりと浮かび上がった白は目立っていた。
誰もが一瞬そこに目を留めるが、すぐに目を逸らす。
気を抜けば零れ落ちる涙は作業の邪魔であった。
海賊とは、命を懸けた稼業である。
命を賭け、自由を得て、時には人のしあわせも奪い、できることなら自分も幸せになりたいと、そういうものである。
そのためには命が失われていく場面に遭遇することは珍しいことではない。
むしろ、何かの命を奪ったことのない海賊の方が少ない。
では海賊は軽々しく生きているのかと問われれば、けしてそうではなかった。
少なくとも今この広場にいる海賊たちは、そうではなかった。
できることなら生きたい。
できることなら生きてほしい。生きてほしかった。
白い布の周りには、それを囲むようにぽつぽつと人が立っている。
彼らはこの広場で数時間前まで繰り広げられていた闘いの、最前線に立っていた者たちである。
彼らはうつむきがちに肩を寄せ合い、何事かを相談し合う。
彼らの口から発せられる言葉は重たい瘴気をはらんでいるように見えた。
体内で生成されたわけではないその瘴気は、この広場中に蔓延していて、彼らはそれを闘いのさなかに吸ってしまったのである。
それを今、少しずつ吐き出していた。
男が一人、白い布に近づいた。
歩み寄った彼の足元は、白い布の奥からしみ出す黒々とした液体で濡れている。
男は布で包み込むように、その下に隠されていた身体を持ち上げた。
黒い頭が見えた。
埃で髪の色がくすんでいる。
男は動かない体の上半身をゆっくりと縦に起こした。
動かない体は座りが悪かった。
胸の半分がえぐれているので、バランスが悪い。
ぐずぐずと溶けた胸から、いまだ血が滴っている。
男はその血を掬うように、これ以上冷たい石畳に落ちてしまわないように、白い布をきつく巻いた。
男はその、座りの悪い、ぐずぐずと胸の溶けた、死んだ身体を布の上から抱きしめた。
男の背後にいる者からは、彼の肩から覗く小さな顔が、まるで生きているように見えた。
生きて、抱きしめられ、そのぬくもりに身を預けて目を閉じているように見えた。
口の端に滲む血さえ拭ってあげられれば、そうであってもおかしくなかった。
男は細い肩に顎を乗せ、力の入らない首に顔をうずめ、じっとしていた。
膝をついた彼の服には、布の下からしみ出した血が、黒く染みわたり始めていた。
白い布で巻き込まれた身体から、腕が伸びてくることはない。
伸びた腕が彼の背中に回されることもない。
白い布の下で、力なくだらりと垂れているに違いない。
本当は誰もがそうしたかった。
男がしたように、動かない体を立たせ、抱きしめ、頬を寄せたいと思っていた。
ただ今は、そうすることができるのは一人の男しかいなかった。
彼だけが生きた身体にもそうすることができたからだ。
顔を寄せて、隠れるように笑い合う姿を知っている。
目を伏せるその瞬間まで、互いを捉えていることを知っている。
触れあったそのとき、柔らかくなる顔を知っている。
そのすべてが、今白い身体を抱きしめる彼の姿に重なった。
力なく目を閉じるその顔が、今にも黒く光る瞳を覗かせ、いたずらっぽく笑うのではないかとか。
筋の通った鼻先を彼のそれに近づけて微笑むのではないかとか。
色のない唇にも、頬にも、花のような色が散るのではないかとか。
そして今にも白い歯を見せて、彼の名を呼ぶのではないかと。
男は埋めていた顔を持ち上げて、正面から目を閉じた小さな顔を見つめた。
左の腕で抱きとめるようにして動かない体を支え、空いている方の手で、彼女の頬に触れた。
そこにいる誰もがそうして欲しいと思っていた通り、男は親指で、ゆっくりと、彼女の口元を汚していた褐色の血を拭ってくれた。
彼の指圧が彼女の動かない頬をほんの少し動かした。
彼の指の動きが、ほんの一瞬だけ彼女の口角を上げたのである。
そのたった一瞬に、彼女のすべての笑顔が、底抜けに明るい笑顔が垣間見えた。
彼女が笑っている。
大きな口を開けて、何も隠すものなどないというように、あけっぴろげな顔をして笑っている。
両側の頬を膨らませて、大好きな食べ物を頬張って、嬉しそうに目元を緩ませている。
強気な黒目にいたずらな光を宿して、不敵に口の端を上げている。
彼女が笑っている。
きっとそれだけでよかったのだろうと、広場にたたずむ海賊たちはぼんやりと思った。
取り返したかったのはそれだけだ。
男の口がわずかに開いた。
乾いた木枯らしのような息の音に、ほんのすこしの言葉が混じった。
名前を呼んだ。
彼女は目を閉じている。
答えることはない。
微笑んだまま目を閉じる彼女は口を開けない。
もう一度、男が言葉を落とした。
「帰ろう」と言った。
*
男が彼女に、好きだとか、愛しているだとかを言っているのを聞いた者はいないだろう。
一方彼女は人目もはばからず、盛大に彼へ思いのたけをぶつけていた。
その温度差は一見傍観者をひやりとさせるが、実際の温度に大して違いはなかったはずだ。
彼女は彼をとても信じていたし、彼は何より彼女を思っていた。
顔を寄せて、隠れるように笑い合う姿を知っている。
目を伏せるその瞬間まで、互いを捉えていることを知っている。
触れあったそのとき、柔らかくなる顔を知っている。
二度とみることのないふたりの姿は、硝煙の舞う石畳の上に冷たく横たわったまま、いつまでも残像のようにまぶたの裏に焼き付いている。
顔を寄せて、隠れるように笑い合う姿を知っている。
目を伏せるその瞬間まで、互いを捉えていることを知っている。
触れあったそのとき、柔らかくなる顔を知っている。
彼女は彼をとても信じていたし、彼は何より彼女を思っていた。
また、誰もにとって、彼らは大切だった。
周縁はかく言う
戦火は小火のようにちろちろと、ところどころでくすぶっているのみとなった。
黒く立ち上る硝煙のにおいと、生臭い人の血で鼻の奥がツンと痺れる。
海賊も、海軍も、多くが傷ついた。
生きるものはただ心臓が動いているというだけで、地面に横たわる死んだものと大した違いがみられない。
誰もが亡霊のように、黙々と、いっそ清々しいほど沈黙に浸って作業を繰り返している。
まだ亡霊の方が、未来のないぶん活気があるかもしれない。
未来があるというのは、今このときに関しては苦痛でしかなかった。
多くを失った未来。
先の見えない不安はいつだってある。
ただこのときだけは、その不安が何よりも濃く重く、誰もの胸にのしかかっていた。
広場の中心に、すすけた白い布が掛けられた部分がある。
ざわざわと遠慮がちな喧噪の中、灰色の石畳の上にぽっかりと浮かび上がった白は目立っていた。
誰もが一瞬そこに目を留めるが、すぐに目を逸らす。
気を抜けば零れ落ちる涙は作業の邪魔であった。
海賊とは、命を懸けた稼業である。
命を賭け、自由を得て、時には人のしあわせも奪い、できることなら自分も幸せになりたいと、そういうものである。
そのためには命が失われていく場面に遭遇することは珍しいことではない。
むしろ、何かの命を奪ったことのない海賊の方が少ない。
では海賊は軽々しく生きているのかと問われれば、けしてそうではなかった。
少なくとも今この広場にいる海賊たちは、そうではなかった。
できることなら生きたい。
できることなら生きてほしい。生きてほしかった。
白い布の周りには、それを囲むようにぽつぽつと人が立っている。
彼らはこの広場で数時間前まで繰り広げられていた闘いの、最前線に立っていた者たちである。
彼らはうつむきがちに肩を寄せ合い、何事かを相談し合う。
彼らの口から発せられる言葉は重たい瘴気をはらんでいるように見えた。
体内で生成されたわけではないその瘴気は、この広場中に蔓延していて、彼らはそれを闘いのさなかに吸ってしまったのである。
それを今、少しずつ吐き出していた。
男が一人、白い布に近づいた。
歩み寄った彼の足元は、白い布の奥からしみ出す黒々とした液体で濡れている。
男は布で包み込むように、その下に隠されていた身体を持ち上げた。
黒い頭が見えた。
埃で髪の色がくすんでいる。
男は動かない体の上半身をゆっくりと縦に起こした。
動かない体は座りが悪かった。
胸の半分がえぐれているので、バランスが悪い。
ぐずぐずと溶けた胸から、いまだ血が滴っている。
男はその血を掬うように、これ以上冷たい石畳に落ちてしまわないように、白い布をきつく巻いた。
男はその、座りの悪い、ぐずぐずと胸の溶けた、死んだ身体を布の上から抱きしめた。
男の背後にいる者からは、彼の肩から覗く小さな顔が、まるで生きているように見えた。
生きて、抱きしめられ、そのぬくもりに身を預けて目を閉じているように見えた。
口の端に滲む血さえ拭ってあげられれば、そうであってもおかしくなかった。
男は細い肩に顎を乗せ、力の入らない首に顔をうずめ、じっとしていた。
膝をついた彼の服には、布の下からしみ出した血が、黒く染みわたり始めていた。
白い布で巻き込まれた身体から、腕が伸びてくることはない。
伸びた腕が彼の背中に回されることもない。
白い布の下で、力なくだらりと垂れているに違いない。
本当は誰もがそうしたかった。
男がしたように、動かない体を立たせ、抱きしめ、頬を寄せたいと思っていた。
ただ今は、そうすることができるのは一人の男しかいなかった。
彼だけが生きた身体にもそうすることができたからだ。
顔を寄せて、隠れるように笑い合う姿を知っている。
目を伏せるその瞬間まで、互いを捉えていることを知っている。
触れあったそのとき、柔らかくなる顔を知っている。
そのすべてが、今白い身体を抱きしめる彼の姿に重なった。
力なく目を閉じるその顔が、今にも黒く光る瞳を覗かせ、いたずらっぽく笑うのではないかとか。
筋の通った鼻先を彼のそれに近づけて微笑むのではないかとか。
色のない唇にも、頬にも、花のような色が散るのではないかとか。
そして今にも白い歯を見せて、彼の名を呼ぶのではないかと。
男は埋めていた顔を持ち上げて、正面から目を閉じた小さな顔を見つめた。
左の腕で抱きとめるようにして動かない体を支え、空いている方の手で、彼女の頬に触れた。
そこにいる誰もがそうして欲しいと思っていた通り、男は親指で、ゆっくりと、彼女の口元を汚していた褐色の血を拭ってくれた。
彼の指圧が彼女の動かない頬をほんの少し動かした。
彼の指の動きが、ほんの一瞬だけ彼女の口角を上げたのである。
そのたった一瞬に、彼女のすべての笑顔が、底抜けに明るい笑顔が垣間見えた。
彼女が笑っている。
大きな口を開けて、何も隠すものなどないというように、あけっぴろげな顔をして笑っている。
両側の頬を膨らませて、大好きな食べ物を頬張って、嬉しそうに目元を緩ませている。
強気な黒目にいたずらな光を宿して、不敵に口の端を上げている。
彼女が笑っている。
きっとそれだけでよかったのだろうと、広場にたたずむ海賊たちはぼんやりと思った。
取り返したかったのはそれだけだ。
男の口がわずかに開いた。
乾いた木枯らしのような息の音に、ほんのすこしの言葉が混じった。
名前を呼んだ。
彼女は目を閉じている。
答えることはない。
微笑んだまま目を閉じる彼女は口を開けない。
もう一度、男が言葉を落とした。
「帰ろう」と言った。
*
男が彼女に、好きだとか、愛しているだとかを言っているのを聞いた者はいないだろう。
一方彼女は人目もはばからず、盛大に彼へ思いのたけをぶつけていた。
その温度差は一見傍観者をひやりとさせるが、実際の温度に大して違いはなかったはずだ。
彼女は彼をとても信じていたし、彼は何より彼女を思っていた。
顔を寄せて、隠れるように笑い合う姿を知っている。
目を伏せるその瞬間まで、互いを捉えていることを知っている。
触れあったそのとき、柔らかくなる顔を知っている。
二度とみることのないふたりの姿は、硝煙の舞う石畳の上に冷たく横たわったまま、いつまでも残像のようにまぶたの裏に焼き付いている。
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