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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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シリュウが進んでいく通路は、不気味なほどに人気がなかった。
看守の姿どころか足音さえ聞こえず、この建物の中にはアンとこの男のふたりしかいないのではと錯覚しそうになる。
アンは始終きょろきょろと辺りを見渡し、足音忍ばせるように小走りを続けていたが、シリュウは自分の左右もアンがいる背後も一切振り返ることなく、淀みない足取りで進んでいく。
まるでこの建物全体がアンとシリュウの味方になり、外まで導こうとしているかのように感じた。
 
シリュウは薄暗い通路の突き当り、通用門のような扉の前まで来ると、懐から鍵を取り出して扉を開けた。
おそらく通常はそこにも門番が立っているはずだろうが、なぜだろう、人がいない。
外に足を踏み出すと、日差しのシャワーが頭のてっぺんから降り注いできて、目がくらんだ。
それはすでに西日だ。空が赤い。
シリュウは歩みを止めず、誰もいない裏庭を突っ切ろうとする。
あちこちにある監視カメラはほんとうに稼働していないのだろうかと、アンは気が気でない。
 
 
「この先に車を寄越してある。それでまっすぐいつもの事務所まで行ける」
 
 
いつもの事務所とは、あのティーチの税理士事務所だろう。アンは必死で足を動かしながら、無言で頷く。
シリュウの言うとおり、建物の角を曲がるとフェンスの裏手に黒塗りのセダンがアンたちを待っているのが見えた。
 
 
「……あんたは?」
「オレはまだここで仕事がある。先に行け」
 
仕事とは看守としての仕事だろうか、それでも黒ひげとしてのだろうか。
シリュウは四角い顎でアンに先を促した。
とはいえどうやってこのフェンスを越えるのだろうとアンが視線を前に戻すと、ちょうど目の前のフェンスには無理やりぶち抜かれたようなひしゃげた穴が開いていた。
短時間で無理にこじ開けたに違いない。
随分強引なやり方だ。
黒ひげの方も鬼気迫る状況に焦っているのかもしれない。
 
 
「それじゃ」
 
 
礼を言うのもおかしい気がして、アンは足早にシリュウから離れてフェンスに近づいた。
その自分の後ろ姿が、逃げるように見えていそうで悔しい。
事実逃げているのだから仕方がない。
穴をくぐる瞬間ちらりと背後を振り返ったが、シリュウの巨体はもうすでに煙のように掻き消えていた。
 
停まっていた車に近づくと、運転席に座る男が「早く」というように頷いた。
ラフィットだ。
アンは素早く助手席に体を滑り込ませた。
車は即座に、氷の上を滑るようなわずかな起動音とともに発進する。
ラフィットは顔をこちらに向けることなく口を開いた。
 
 
「お久しぶりですね、ゴール・D・アン」
「あっさり出てこられたけど、本当によかったの? 他の看守たちは?」
「……あなたが心配することは何もありません。そんなことよりも」
 
 
アンの勝手な行動をティーチは当然快く思っていないということを、ラフィットは回りくどいほど丁寧な言い回しで伝えた。
 
 
「ただし私たち黒ひげとあなたは、契約関係にあります。あなたは私たちの思惑通りエドワード・ニューゲートの地位を陥れてくれた。我々はそんなあなたの仕事ぶりへの対価を支払いきれていない。つまりあなたは結局、髪飾りを手に入れられていない。よってあなたの失敗によって警察に捕まったとしても、我々はあなたを救いださねばならない義務がある。これで説明はつきますか」
「……わかったよ」
 
 
黒ひげの本意がそれとは全く違うことを知りながら、アンはそうと言うしかなかった。
今はとりあえず、黒ひげのもとへ行くしかない。
 
 
「ふたりは……」
「はい?」
「……いい、なんでもない」
 
 
アンは言葉を打ち消すように首を振り、背もたれに背中を預けた。
ラフィットは見透かすような目を横には走らせてきたが、結局なにも言わなかった。
全てわかっているような口元の笑みが気味悪い。
 
サボとルフィの安否を聞きたかった。
しかしもし黒ひげがふたりを保護しているという答えを聞いてしまったら、サボとルフィはおそらく今向かっているティーチの事務室にいるはずだ。
ふたりを前にして、ティーチと対峙する気力を保つ自信がなかった。
またもしふたりが黒ひげの手から逃れられているとしても、それはつまりふたりが黒ひげから逃げたということ、アンが逃がしたということをさらけ出すことでもある。
わざわざこちらから言うことではない。
 
アンはむっつりと口を閉ざし、流れていく車窓を眺めていた。
日はとっぷりと傾いて、紺色に染まっていく街並みが滲んでいく。
不意に、ラフィットが激しくハンドルを左に切った。
アンは驚く間もなく身体を窓ガラスに押し付けられる。
 
 
「なっ」
「伏せてください」
 
 
ラフィットの口調はいつもとかわらず平坦なものだったが、アクセルを強く踏み込むよう足が動くのが見えた。
アンは素早く言われるがままダッシュボードの下に体を滑り込ませた。
 
 
「警察……?」
「行政府の人間です。いまやあなたの顔は割れている。車に濃いスモークはかかっていますが、念のためしばらくそのままで」
 
 
ラフィットは細い路地を猛スピードで潜り抜けていくようだった。
ただし誰かに追いかけられているようなひっ迫感をあまり感じない。
車の後ろを振り返りたい衝動に駆られたが、耐えて大人しくじっとしていた。
 
しばらくすると、車はゆっくりとスピードを落とし、やがて停車した。
 
 
「お疲れ様です、降りてください」
 
 
いつもはアンを建物前に下ろし車を停めに行くラフィットが、このときはアンよりも早く車を降りた。
まるでアンを急かしているようだ。
アンは折りたたんでいたからだを伸ばしながら車を降りた。
そして違和感に気付く。
 
 
「……ここどこ?」
「いつもの事務所は今日ばかりは少し危険です。申し訳ありませんが今回はここでボスがお待ちしています」
 
 
ラフィットの感情の見えない口元の笑みはそのままだ。
上がった口角を見て、アンは凍りついた。
──やられた。
行政府の人間なんていうのは嘘だ。
アンは今、この場所が街のどのあたりに位置するのか全く分からない。
小さく息を呑むアンを意に介することなく、ラフィットは建物へと先立って歩き出した。
振り返り、早く、というようにアンを見つめる。
その目がぞっとするほど平らで冷たいことに、背筋が凍った。
 
行くしかない。
 
アンはラフィットの背中を追いかけて歩き出した。
 
 
 

 
建物の中は、いつもの事務室と何ら変わらない作りで、真ん中の皮張りのソファにはやはりティーチがどんと大きく座していた。
大きな窓が背後に並んでいる。
アンとラフィットが部屋に入ると、ティーチは顔を上げわざとらしいほど嬉しそうな笑みを見せた。
 
 
「おォアン、よく無事だったなオメェ!」
 
 
オレァお前が捕まったって聞いて心臓が止まっちまうかと思ったぜ。
ティーチはわざわざ立ち上がり、アンの元まで歩み寄ってきた。
ラフィットがすっとその場を離れ、広い部屋の書棚の方へと歩いていく。
固い顔のアンは、まるで激励されるようにティーチに強く肩を叩かれた。
 
 
「なんだって無茶しやがんだオメェはよ。作戦に納得いってねェのは気づいていたが、まさかこんな特攻やらかすたぁオレも計算違いだったぜ」
 
 
まぁいい座れ、とティーチはアンを促しつつ自身もソファに戻った。
アンは気を抜くと竦みそうになる足を叱咤して、ソファへと自分をいざなう。
どうしてだろう、今ばかりは初めて、この場所が怖い。
明るく電光が照らしているのに、いつかぽかりと闇が口をあけそうな空気がある。
アンは浅くソファに腰かけた。
 
 
「豚小屋はさぞかし陰気くせぇ場所だったろう、オメェにゃキツイ場所だ」
 
 
まるでかわいそうに、とでもいいたげな口調に寒気がした。
ティーチは懐から取り出した葉巻に火をつけた。
煙が瘴気のように部屋を蔓延し始める。
 
 
「シリュウの奴に聞かなきゃ、オレァ呑気に朝のニュースでお前の逮捕の知らせを聞くところだった。一歩遅けりゃお前を助け出す手筈もうまくいかなかったかもしれねェ」
 
 
いやあよかったよかった、とティーチはにやつきながら頷いている。
アンはいちばんに聞きたいことを胸の奥にぐっと押し下げて、当座の質問を口にした。
他に聞きたいこと、言いたいことがあるのはティーチも同じだろう。
腹の中を探り合うもどかしさ、禍々しさが向かい合う二人の間を行き来している。
 
 
「逃げるとき……看守がひとりもいなかったのはなんで」
「看守? あァ、シリュウのヤツが手を回したんだろう。アイツァオレの腹心だ、そこらで拾った使い捨てとは違う。そうか、ひとりもいなかったか!」
 
 
ティーチは玩具をもらって喜ぶ子供のように、いっそあどけないほどあけっぴろげに笑った。
大きく開いた口から灰色の煙が浮かぶ。
 
そう、ひとりもいなかったのだ。
あの建物の中にはまるでアンとシリュウだけのように静かで、物音も、足音さえしなかった。
 
アンが青い顔を上げてティーチを見据えると、ティーチはより一層嬉しそうに口角を上げた。
 
 
「……殺したの」
「看守が一人もいなかったってのなら、まぁそうだろうな。アイツにゃ5人だろうと10人だろうと手に掛けるのはお手のモンだ。オレァ『アンを逃がせ』と伝えたまでだがな」
 
 
ティーチは部下の仕事ぶりを純粋に喜んでいるだけに見えた。
その単純さが、より一層アンの血の気を引かせた。
膝の上で握った拳が震えるのを、抑えきれなかった。
 
あの建物には、収容所にはあの人が、ベイがいたかもしれないのだ。
アンの手を握って『しあわせになれる』と力強く言ったあの美しい女性が。
彼女の細い体の線を思い出した。
彼女の涼やかな色が、重たい赤黒さでかき消されていく。
 
収容所にいたすべての関係者が殺されたとは限らない。
ベイはアンの取り調べを終えて建物を出ていたかもしれない。
そうだ、そうに決まっている。
アンは震える拳をもう片方の手で掴み、無理やり押さえた。
その仕草をティーチがじっと見ている。
 
 
「結局髪飾りは、警察の手に行っちまったか」
 
 
ティーチは思い出を語るような口調でそう言った。
アンが顔を上げると、ティーチはやっとのことで笑みをしまいこんだようだ。
深呼吸するように葉巻を吸っていた。
葉が焼ける音が微かに部屋に落ちる。
街灯に集る虫の羽音のようだ。
 
 
「まだ欲しいか」
「……髪飾りを?」
「あァ、取り返したいか」
「……もういい……」
 
 
何を考えることもなく、言葉は自然と口をついていた。
疲れていた。
アンの身体も心もすべてが、ぼろぼろと、鳥に突かれた魚の身のように穴が開き崩れていた。
帰りたかった。
何も知らない、サボとルフィとアンの三人だけの日常に。
つまらないほど平和で刺激のない日々に。
 
きっと母さんは許してくれる。
よく頑張ったわねアン、と頭を撫でてくれる気がした。
そうだよあたしは頑張った、こんなにも頑張ったと母さんの膝にすがりたかった。
 
 
そうか、とティーチも静かに答えた。
 
 
「オレたちゃぁオメェのおかげでニューゲートを貶められた。ほっときゃそのうち警察は転覆する。政権は交替だ。この街の仕組みそのものががらりと変わるだろう。オメェさんらがそれにこれ以上巻き込まれる筋合いはねェ。オレらがオメェたちを外へ逃がしてやる」
 
 
ティーチはもたれさせていた背を上げて、ソファに座り直した。
 
 
「アン、オメェの弟たちはどこにいる?」
 
 
アンはティーチと正面から目を合わせた。
しまったと思ったのに、がっちりと視線を捉えられて逃げることができなかった。
ブラックホールのような底なしの闇色の目がアンを見つめる。
並びの悪い歯が覗く。
ティーチは笑っていた。
 
 
「アン、オメェ、弟たちをどこにやった?」
 
 
オレたちからふたりを逃がしただろう。
ティーチの笑みは、もはやそれとわかるほど大きくなっていた。
 
残念だぜアン、とティーチは言った。
 
 
「オメェがオレたちに全幅の信頼とは言わずとも、任せるべきところは任せてくれていりゃあこんなことにはならなかった。きちんとオメェに4つの髪飾りを手に入れさせてやれたし、オメェが無様にサツから逃げたり、無駄に弟たちを逃がしたりする手間もいらずに済んだ」
 
 
ティーチは咥えていた葉巻をガラスの灰皿に押し付けた。
燻る煙が淡く霧散していく。
──サボとルフィは黒ひげの手の中にいない。
クロコダイルは約束通り、ふたりを匿ってくれたのだ。
そのことに心底安堵すると同時に、先ほどのティーチの言葉に引っ掛かった。
「4つの髪飾りを手に入れさせてやれた」というのはどうもおかしい。
 
 
「……あたしが欲しかったのは母さんの、本物の髪飾りだけだ。もし初めに襲撃した銀行に本物があれば、あたしが手に入れる髪飾りは一つで済んでいた」
 
 
ティーチはきょとんとアンを見返すと、ゼハハ!と大きく笑い声をあげた。
 
 
「そうかそうか、そうだったな! いけねェ、いらんことまで言っちまった。まぁ今となっちゃどうでもいいことだ」
 
 
ティーチはあくまで楽しげに、懐から2本目の葉巻を取り出した。
一方アンの頭は、血液の代わりに冷水を入れらたようにしんしんと冷えていくのを感じていた。
同時に思考がはっきりとしていく。
 
この計画そのものが、仕組まれていたの?
 
もはや疑いようもないそれに、アンは止まっていた拳の震えがまた始まるのを手のひらでじかに感じていた。
 
ティーチはアンの顔色を覗き込むようにちらりと視線を上げ、大きく息を吐いた。
子供をなだめすかす前に大人がするため息のような音だ。
 
 
「髪飾りの話はほんとうだぜ、アン。オメェだって覚えてるんだろう、ルージュが髪飾りを持ってたことは」
 
 
ティーチは2本目の葉巻を吸う片手間のように、アンに話す。
 
 
「ただし偽の髪飾りをばらまいたのはニューゲートじゃねェ。オレだ」
「……あんたが」
「ルージュの髪飾りが稀代のものだと知っていた。これを使わねェ手はないと思った。偽の髪飾りをばらまいて、それらをまとめて街の重要資財に認定させた。本物にゃ劣るが、偽ものだって相当の金を出して作らせた立派な宝物だ。重要資財ってのはわかるか、街がそのものの価値を認めて、安全を保障してくれる財宝のことさ。そうすりゃ偽だろうとなんだろうと、街が髪飾りを守らにゃならねェ。ニューゲートの野郎はさぞかし腰を抜かしたこったろうなぁ、自分の預かった髪飾りのレプリカが、いつの間にやら本物を出し抜いて重要資財になんかなっちまってたら」
 
 
面白そうに笑うティーチを前に、アンはじっと座ってなどいられなかった。
立ち上がると、やっとこの男の顔が見下ろす位置にくる。
 
 
「……4つの髪飾りは、どれも偽物なんだな。本物は、警察が持ってるんだな」
「そうさ! ニューゲートの野郎が大事に大事に保管してやがるのさ! 馬鹿みてぇにロジャーに義理立てして、アイツァ本当に甘ったるい」
 
 
アンはずっとずっと、偽物の髪飾りを追いすがっていたのだ。
その事実よりも、本物が確かに存在するということに安堵する気持ちの方が大きかった。
母さんの髪飾りはこの街に実在する。
そう思うと、ついさっき折れかけていた気持ちがむくりと頭をもたげて立ち上がってきた。
 
もう終わりにしたい。
全てを放りだして逃げたい。
きっと母さんは許してくれる。
 
それでも、母さんが許しても、あたしは許せるの?
 
あたしはあたしを許せるの?
 
 
 
「ロジャーが死んだ時点で、オヤジがトップになるのはわかりきっていた。当然髪飾りの責任も奴にお鉢が回る。オレァ自分でばらまいた髪飾りをオヤジに押し付けて、それをまた自分で回収することでアイツを貶める作戦をずっと温めてたんだ。お前が育つまで、十年もの間な!」
 
 
オヤジとはニューゲートのことだろうとアンは考える。
ティーチは、自身がそう言ったことに気付いていない様子で話を続けた。
アン、オメェは上手くやってくれたと笑う。
 
 
「予想以上の働きぶりだった。もっと早く捕まっちまうかと思ったが、お前は最後までやりきった。多少動かしづれぇ所もあったが、些細なことだ。オレァ細かいことをぐちぐち言う性質じゃねェんだ」
 
 
ティーチはゆったりとソファに座ったまま、アンを見上げた。
この男が尋常な思考を持ち合わせていないのはよくわかった。
それでも、不気味に思わずにはいられない。
ロジャーが死んでから10年、いやもしかしたらそれよりもっと前から、ティーチはニューゲートを陥れるためだけに生きてきたのだ。
ひとつの計画のためにアンが成長するのを待ち、時が来れば嬉々としてそれを実行するいわば執念が異常だ。
ティーチはこの10年を、本人さえ知らないうちにニューゲートに捧げて生きてきたに違いない。
憎くてたまらない人物に自分が振り回されていることに気付かず悦に浸っている馬鹿馬鹿しさとはうらはらに、ティーチは真剣だ。
アンは目の前の男の果てしない闇の深さに、背中が冷たくなった。
 
 
「どうして、そんなにエドワード・ニューゲートを……」
「たまたまトップにいるのがあの男だというだけで、引きずりおろすのは誰だろうとかまやしねェんだ」
 
 
ティーチはどこか記憶の端に触れるように、目のぎらつきを奥に引っ込めた。
ぼんやりとどこか遠くを、遠い過去を見ている。
だが、そうだな、とティーチは息を継いだ。
 
 
「あの男のままごとみてぇな甘っちょろいやり方や、鬱陶しい信条にほとほと愛想が尽きたといやあ理由がつくか」
 
 
オレァあいつに行政府に登らされたんだ、とティーチは立ち上がったアンの膝のあたりを見るともなしに目をやった。
 
 
「だが行政府が転覆したとき、あいつは自分のお気に入りだけを警察内部に引き入れて、オレのことは目に掛けなかった。お前に警察なんて柄は似合わないとかなんとか、その場しのぎでしかない理由をつけて、オレを放りだしやがった」
「……あんた、行政府にいたのか」
「税理士は行政府が腐り落ちた後の肩書だ。……オレァ有能だった。警察との関係が険悪になって来たときも、当時はオヤジがオレを気にかけていたから、オレが橋渡しになって奔走した。すべては行政府──街のためさ。いつかオレァトップになってやると、そこらじゅうに脚ばかり運んで働いた。にもかかわらずあのジジイは」
 
 
いざ行政府が転覆したら、ニューゲートはティーチを救わなかった。
それはティーチの仕事ぶりの背後に後ろ暗い思惑があることを、現トップの男はわかっていたからではないかとアンにも想像できた。
ただそんな考えに至らないらしいティーチは、ただただ歯噛みしている。
徐々に脂ぎった黄色い目の光が戻ってきた。
 
 
「オレァあいつの『お気に入り』には入れなかった。今となっちゃその方が都合よく動けているが、とにかくあいつのそういうやり方がとことん気に入らねェんだ」
 
 
だがそれもここまでだ、とティーチはアンを見上げ、並びの悪い歯を見せて笑った。
 
 
「いずれそう遠くないうちに、ニューゲートは失脚する。警察内部はロジャーが死んだ時以上の混乱を見せる。行政府が力を盛り返す。そしたらおれの登場だ。オレァこの街のトップになってみせる」
「そ、そんなに上手くなんて」
「いくんだ、アン、オメェの緩んだ頭じゃ一生かけてもわからねェことがオレにはできる」
 
 
ティーチが不意に、アンの背後に目をやった。
その視線を辿り振り向きたい衝動に駆られたが、歯を食いしばって耐えた。
背後の扉から誰かが入って来た。
黒ひげの誰かだろう。
ラフィットは二人から離れた書棚の傍にじっと立っている。
振り返ってしまえば、顔を戻した時の景色が一変してしまう気がして、動けない。
 
 
「あとはオメェたちだけだ、アン。オメェとサボ、そんでもってルフィだったか。オメェら3人を片づけちまえば後腐れなくことは終わる」
「……最初から、そのつもりだったの」
「そうだ、オメェたちはここでお役御免だ。だがどうだ、幸せだったろう、母親の形見を追いかけるのは。最後の髪飾りを見つけたときゃあうれしくなかったか、アン」
 
 
どうだ、と笑いながら口もとをにやつかせるこの男に、アンは吐き気以上に胸が悪くなった。
瞬きすると立ちくらみのような眩暈が襲った。
いろいろな感情がせめぎあいながら、アンの喉を塞いでいく。
言葉にならない悔しさと怒りを、初めて感じた。
あたしは馬鹿馬鹿しいほど単純だったのだ。
馬鹿で、若く、無鉄砲だった報いかもしれない。
それでもここまで馬鹿をやらかしたのならもう一緒だ、とアンはわななく唇を開いた。
 
 
「あた、あたしはあんたらのこと、誰に言うつもりもない。もちろんサボとルフィだって」
「おいおいアン、まさかそんな口上が通るなんざ思ってねェよな?」
 
 
ティーチが立ち上がった。
優にアンの3倍はある横幅と、頭三つ分は高い位置にある視線がアンを圧迫した。
巨大な黒い塊に前方を遮られたような息苦しさに喘ぎそうになる。
思わず一歩後ろに足を引いたが、かかとがソファにぶつかってすぐに止まった。
ふたりの間を隔てるのは、低いテーブルだけだ。
 
 
「アン、オメェは甘かったんだ。欲しいモンを手に入れるのに、代償がないわけがねぇだろう? オメェは事あるごとに弟たちがどうだとか、人が死ぬのは嫌だとか、ったく反吐が出るぜ。オメェに関わる一連の事件で、どれだけ人が死んだか知っているか?」
 
 
ティーチは目を輝かせて、口の端に泡を浮かべ、憑かれたように話す。
 
 
「少なくともオレがオメェのために雇ったクズは全員死んだ。オレたちの仕事にゃ幹部以外の下っ端は入れ替え制なんだ。使い捨てさ。そんなことも知らねェでお前は」
「こ、殺してたの、あんたたちがずっと」
 
 
オレたちがじゃねェ、と言うティーチの目が黄色く光った。
 
 
「お前がだ。オメェに関わったせいで死んだんだ。そいつらのおかげでオメェは何にも知らずにのうのうと盗みを働いて、それが終わりゃあ呑気に生活して、全くいい気なもんだ。ちょっと考えりゃわかる話なのになァ。口止めと死は同義だ」
 
 
ちがう、と口をついた言葉はあまりに小さく、弱弱しかったがティーチには届いた。
しかしそれも鼻で笑い飛ばされる。
 
 
「何も違わねェさ、アン」
「あ、あたしが殺したんじゃない……」
「同じことだ。手を下したのはオレたちだが、原因を作ったのはオメェだ」
「殺さなくても方法はあっただろ!!」
「オレたちが始末しておかなかったら、オメェがここまでやってこれたか? 情報を金で売り買いできる時代だ。オレたちが金で雇った人間が、お前の情報を金で売らないとなぜ言い切れる」
 
 
乱暴に言葉を切ると、ティーチはおもむろにアンへと腕を伸ばした。
避ける間も与えられず、アンの襟首はティーチの太い指に絡め取られるように掴まれていた。
そのまま引き寄せられ、アンのかかとが浮く。
すねがテーブルにぶつかって鈍い音を立てた。
濁った葉巻のにおいが、生暖かい息となってアンの頬にぶつかった。
 
 
「まったく虫唾が走るぜ、ニューゲートと言いオメェと言いどうしてこうも甘い人間が生きてるのかオレには信じられねェ。ロジャーの奴も似たようなもんだ、オメェら家族のことを引き合いにだしゃ扱うのに事欠かねェんだからなァ」
「な、なんの話……」
 
 
ギリギリと締まる首元を解放しようと、アンは咄嗟にティーチの太い手首を掴んだ。
強く握るが、いっこうに堪える気配はない。
自然とアンの顔は歪んだ。
あぁ、とティーチは思いだしたような声を出した。
 
 
「そうか、オメェは知らねェよなァ。当たり前だ、知っていたらオレたちと手を組むはずがねぇもんなァ」
「だから、なんの話だっ……!」
「世の中には知らねェほうが幸せなこともあるって話さ」
 
 
不意に突き放されて、アンは後ろのソファに倒れ込んだ。
同時にひどく咳き込んで、生理的な涙がにじむ。
コイツの前で泣いてやるもんか、と言う意地がそれさえも飲みこんだ。
 
ティーチの言葉に、知りたくない事実が否応なくアンにも想像できた。
痛みや息苦しさとは別のものに反応する涙が滲みそうになるが、泣くわけにはいかないと必死で飲みこむ。
 
ティーチは足と手で無造作にテーブルを横へ押しやると、アンが転がったソファへと歩み寄った。
アンは即座に体を起こすが、腰を上げるより早く前髪を掴まれて無理やり上を向かされた。
ティーチの顔は逆光でもわかる、もう笑ってはいない。
 
 
「もう一度訊くぜ。弟たちをどこにやった」
「あいつらはもう関係ない……!」
 
 
途端に視界がぶれ、頭がい骨が振動するのを感じた。
頬の痛みより頭の揺れが先走り、一瞬なにが起きたのかわからなかった。
 
 
「クソ生意気な目をしてやがる。ロジャーと同じ目だ、胸糞悪ィ。この期に及んでまだそんな甘いこと言うったァ、根性が座ってるのかただの馬鹿なのか」
 
 
前髪を掴む力が強くなり、アンの頭はますます後ろへと反った。
口の中にじんわりと鉄くさい味が滲む。
ふん、とティーチは大きく息を吐いた。
 
 
「まぁいい。どうせ『黒ひげ』にかかりゃああんなガキ共なんざすぐに見つけてみせる。なに殺しゃしねェよ。若い身体ってのぁな、いくらでも金になるんだ」
 
 
そうだな、と目算するように黒いギョロ目が上を向く。
 
 
「内臓、目玉、角膜、血液……人の身体のパーツってのぁ貴重なんだぜ。しかも若けりゃ若いほどいいってもんだ」
 
 
濁流のように、ティーチの笑い声が部屋に響いた。
痛みや恐怖よりも大きな怒りがアンの胸に溜まっていくが、掴まれた頭も掴んだ太い腕もびくともしない。
サボ、ルフィ、お願いだから逃げ切って──
 
 
「ト、トップになんか、アンタがなれるもんか」
「あァ?」
 
 
開いている方の手で再び襟首を掴まれ、気道が狭まる。
それでもまっすぐにティーチを見ることはやめない。
目を逸らしたらその瞬間に負けて、飲みこまれてしまう。
 
 
「アンタは、この街のトップになんか、なれない。政権が代わろうと、絶対に」
「なぜ言い切れる。オメェに何がわかる!」
「マルコがいる!!」
 
 
叫び返したアンの声より、飛び出したその名前に虚を突かれたようにティーチは目を見開いた。
 
 
「マルコ?」
「エドワード・ニューゲートがいなくなっても、マルコがいる。他にも、アンタなんかには負けない人間が、警察にも、行政府にも、絶対にいる!」
 
 
ティーチはしばらくのあいだ、アンの勢いに飲まれたように黙っていたが、すぐに口元をゆるませて「そうか」と言った。
 
 
「マルコか……懐かしい、いたなそんな男も。確かにアイツァ少し面倒だが、オレたちの相手になりゃしねぇさ。アイツは典型的なオヤジの犬だ。オヤジが堕ちりゃあマルコが堕ちるも同じ話さ」
「ち、ちがう、マルコは絶対」
 
 
ぎゅっと襟首が締まり、否応なくアンの言葉は続かなかった。
ティーチの顔が近くなる。
 
 
「えらくマルコに肩入れすんじゃねェか。あいつとの追いかけっこがそんなに楽しかったか? それとも惚れたか? あの男に」
 
 
ティーチの冗談はどこかアンの琴線に触れて胸の奥が音を立てたが、気丈にアンは睨み返す。
こんなときにマルコの微かな笑い皺や穏やかな低い声がよみがえって、胸が詰まった。
まぁいい、とティーチは笑った。
 
 
「オメェにはしばらく眠ってもらう。よかったな、死ぬわけじゃねェ。まぁ次に目を覚ます頃にゃお前の身体の中身は空っぽだろうから、死ぬも同然か」
 
 
サービスだ、とティーチは付け加えた。
 
 
「抜け殻になったオメェの身体は、大好きな弟共の抜け殻と一緒に並べてやるよ」
 
 
冷え切った血液が、一瞬で沸騰した。
目の奥が真っ赤に染まる。
アンは渾身の力を込めて、両足でティーチの腹を蹴り込んだ。
長くて細い鋭利な脚はティーチのみぞおちに食い込み、巨体が九の字に折れ曲がった。
同時にアンを掴む両手が緩み、アンはすかさずその下から逃れる。
 
 
「オーガー!!」
 
 
嗚咽混じりにティーチが叫んだ。
出口を振り向いたアンの正面には、銃口がアンを見つめ返していた。
 
 
「動くな。いずれ貴様は撃たれる運命だが、ボスの命令がない限り今はそのときではない」
 
 
出口のドアに背をつけて、オーガーが細長い銃身を構えていた。
アンの背後で、のっそりとティーチが身を起こす気配がする。
 
 
「クソッ、調子に乗りやがってガキが……」
 
 
ティーチの腕がアンへと伸びる。
咄嗟に横に逸れて避けたが、その瞬間右足のあたりにキンと跳ねる尖った音が響いた。
 
 
「動くなと言った」
 
 
麻酔銃だと思っていたそれはどうやらそれほど穏やかなものではないらしいと、背中が冷たくなる。
一瞬竦んだ隙に、左横腹に激しい圧迫感と衝撃を感じてアンの身体は横に吹き飛んだ。
床に体をしたたかにぶつけ、倒れ込む。
リノリウムの冷たさが頬に触れた。
再び口の中が、温度のある生臭い味でいっぱいになる。
また別の場所を切ったらしい。
 
 
「テメェは今すぐにでも死にたいらしいな」
 
 
倒れたアンの身体を大きな足が跨いだ。
襟首を引き上げられて、少し開いた口の隙間から血が漏れた。
嘔吐感が何度もアンを襲い、それを抑え込むのに必死で生理的な涙を抑える余裕がどうしてもない。
左の目からだけ、一筋の液体が流れた。
霞んだ視界の中で見上げたティーチの顔は歪み、目は淀んでいた。
 
 
「もういい、テメェはもういらねェ、テメェは金になる価値さえねェ。さっさと大好きなオヤジ共のところへ送り込んでやる」
 
 
ティーチが腰からピストルを引き抜いた。
真っ黒の銃口がアンの眉間に触れ、ひやりとした金属の温度が伝わった。
 
 
「……ティーチ、それは予定とは違う」
「うるせぇ! お前らは黙って見てろ」
 
 
静かに反駁の声を上げたオーガーも、それ以上は言わず黙りこんだ。
まだ書棚の傍に立っているらしいラフィットも、微かに息を吐いた音だけをさせてなにも言わない。
至近距離にあるティーチの荒い鼻息だけがアンの耳に届いた。
拳銃の安全装置が外される音が、アンの人生の幕引きの音のように、重々しく響いた。
 
 
「じゃあな、アン。お前だけ人行き先に向こうに行ってろ」
 
 
ティーチの濁った白目が歪んだ笑と共にアンを見下ろす。
アンは生唾を飲み込んだ。
 
 
「あ、アンタが、アンタが殺したんだろ」
「あァ?」
 
 
ティーチが眉根を寄せて、引き金を引く指の動きを止めた。
 
 
「誰のことだ」
「父さんと母さんを、アンタが殺したんだろ!!」
 
 
悲鳴のように、室内に反響した。
意図しない涙が右の目からも、一すじ流れた。
自らの口から発したはずの言葉が、鋭く尖って胸を突き刺した。
 
ティーチが発する言葉のところどころに、ティーチがアンを見下ろす時の視線に、何も知らない愚か者を見るような優越感が混じっていることに気付いていた。
それがまさか、自分の殺した人間の子供が親の仇とも知らずにいることへの嘲笑とは思わなかったけれど、今ならわかる。
父さんと母さんはこの男が殺したのだと、アンの中に生きるふた親の血が告げていた。
 
ティーチは黙ったままピストルを下ろした。
 
 
「……なぜそう思う」
「と、父さんはニューゲートと一緒に街のトップだった。あんたがトップになりたいと思うのなら、ふたりとも始末したいって思うはずだ」
「それだけの理由で、オレたちが殺したってェのか」
 
 
アンが答えずにいると、ティーチはフンと鼻で大きく息を吐き、ピストルの柄を握り直した。
ティーチはたいして面白くもなさそうに、床に向かって言葉を落とした。
 
 
「そうだ。オレたちが殺した」
 
 
わかっていたはずなのに、それを自分の言葉で噛み締めたときよりもずっとずっと深く、おぞましいものが胸の奥に入り込んできた。
手が指の先から冷たくなっていく。
ティーチが不意にアンの襟首を離したので、アンは頭から床にぶつかった。
ごとりと鈍い音と痛みが響いたが、アンの頭は重たく、視界に映るティーチが父さんと母さんを殺し幸せな生活を奪ったのだという事実も、どこか遠いことのように感じた。
 
ティーチはアンにまたがったまま、銃口を覗き込んだ。
 
 
「悪運転する車とすれ違って運悪く? 交通事故? 馬鹿馬鹿しい。あの男がそんな理由で死ぬわけがねェだろう。とことんこの街の人間どもは呑気だ。ロジャーはニューゲートと一緒くたになってオレの邪魔をしようとしやがった。だから殺してやったんだ、仲良く夫婦一緒に、オレが雇った『当たり屋』にやらせてな」
 
 
ティーチは、体を起こさないアンを見下ろして、久しぶりの笑みを見せた。
 
 
「怒る気力もねェか。いっそすがすがしいだろ、死ぬ前に親の死因を知れてなァ。もうひとつ教えてやろう、ロジャーの野郎が死ぬ羽目になった要因だ」
 
 
ゼハハ、と短く笑ってティーチは目を光らせた。
 
 
「あの日、オレァあいつに教えてやったんだ。オレの仕事にいい加減口を挟むのをやめねェと、お前の大事なガキ共がどうなるか。例も出したな、そうだ、たとえば親の帰りを待つガキどものいる家が、くだらねェ放火犯の餌食になるとか──」
「ッ、アンタッ」
 
 
アンが上体を起こそうとした瞬間、強い力が肩を押さえつけ、アンの背中は再び床へと打ち付けられた。
 
 
「そうだ、オレァそう言ったんだ。もちろん直接じゃねェ、駒を介してだがな。ロジャーの奴ぁ馬鹿みてぇに狼狽えて、家へとんぼ返りよ。慌てりゃ運転も荒くなる。注意散漫にもなる。そこへ『当たり屋』がちょっと仕掛けりゃアイツの車は簡単に電信柱に突っ込んだ。呆気ねェにも程がある!」
 
 
ティーチは銃を持つ手を下ろし、どこか上を見上げてそう叫んだ。
それと同時にアンの肩を抑える手に力がこもる。
 
 
「オメェらはとことん馬鹿だ。家族だとか兄弟とか、守るモンを作るから結局自分自身が死んじまうのさ。現にロジャーはそうして死んだ。お前も兄弟を守りきれずに死ぬ。最後はオヤジだ、あいつも同じ末路さ!」
 
 
再び冷たい金属が、アンの眉間に触れた。
その冷たさに反して、熱を持った液体が目じりから溢れ、こめかみへと流れていく。
もう止めることなどできるはずがなかった。
サボでもルフィでもない、こんな男の前であたしは泣いている。
そう自分を詰ってみても、涙は止まらなかった。
ささやかな抵抗を示したアンの手は、ティーチの膝に踏みつぶされ、みしりと嫌な音を立てた。
 
 
「オメェはよくやった。ただしちと頭が悪かった。世の中生き延びるのは知恵と力のある者だ、今までだってそうやってこの街も作られてきたんだ」
 
 
ティーチの太い指が、再び引き金に引っ掛かった。
滲んで揺れる視界の向こうで、歯を見せて笑うティーチの顔が垣間見えて、最期の景色がこんなものだなんて、とアンは目を閉じた。
最後の一滴が両方の目から涙の軌跡を転がり落ちる。
 
 
押し付けられた床の冷たさは、水のようだった。
身動きの取れない身体は、重たく濡れた砂をまとっているようだ。
流れ続ける涙は、潮の味に似ているに違いない。
 
海を思い出した。
たった一度だけ家族5人で行った薄暮時のあの海を。
夕日が白浜を薄いピンクに染めて、その上に父さんと母さんが二人寄り添って立っている。
サボとルフィの甲高い声が水音と共に頭の中でよみがえる。
見上げた空には確か一本の飛行機雲があったはずだ。
いつかあそこにもう一度行けたら、そのときは真っ青な真昼の海に飛び込んでみたいと思った。



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