OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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ハナノリさんにいただいたサンナミ【37】のつづきです。
前回はこちら
モーテルを出て、船までゆっくりと歩いた。
生ぬるい夜風が潮のにおいと共に後ろへ流れていく。
涙やけした目の下が、熱を持ってひりひりした。
サンジ君は手を繋いでくれた。
私たちはまるで幼い兄妹のように、手を繋いで、ゆっくりと船に戻った。
「足元、気を付けて」
馴れたタラップを登るときまで、彼は私を気遣った。
私が甲板に降り立つと、あとから彼も登ってきた。
船は静かだ。湿り気のある空気がひっそりと船を包んでいる。
夜中と言うにはまだ早い、何人かは起きているだろう。
今晩の見張りは誰だったろう。きっと私たちがそわそわと出ていくところも、項垂れるようにして帰ってきた今も、見ているのかもしれない。
サンジ君がたばこに火をつけ、小さなあかりが頼りなく灯る。
「おれはキッチンに行くけど、ナミさんは部屋に戻る?」
「うん」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ……」
最後に私と目を合わせ、少し下がった眉をゆっくりと動かして彼は笑う。
女部屋では、ロビンが書き物机で本を読んでいた。いつものように。
「おかえりなさい」
乾いた紙が捲れる音がする。
私は返事もせずに床を踏み鳴らしてベッドまで歩み寄ると、そこに勢いよく顔を突っ伏した。
わっと溢れるように花の香りが広がって、そこがロビンの場所だと気付く。
構うもんかと思った。
「ナミ?」
ロビンが手を止めて、こちらを振り向いた。
私は大きく息を吸い、身体の中のものを全部洗いだす勢いで息を吐く。
うっ、と喉が詰まったかと思うと、鼻の奥がツンと痛くなった。
ああと呻き声が漏れる。
「あらあら」
ロビンが腰を上げ、私の隣にしゃがみ込む。
ほのかな温度が背中に触れた。
「悲しいことでもあった?」
私はぶんぶんと音を立てて首を振る。
そしてまた、顔を突っ伏して「ああ」と呻いた。
嗚咽が胸の奥から、悪いものを外へ追い出すみたいにせり上げる。
涙は出なかった。
それでも鼻は水を吸い込んだみたいにツンと痛むのだ。
悔しくて、恥ずかしくて、いたたまれない。
後悔が嵐のようにあらゆる感情を巻き込んで、胸の中に渦巻いた。
私に誰かを思うことは荷が重い。
そのとき、ふふんと綿毛を飛ばすような軽さで笑う声がした。
鼻の頭を赤くしたまま顔を上げると、ロビンが同じ目線の高さで微笑んでいる。
「素敵」
うっとりともいえる表情で、ロビンが呟く。
なに、と音にならない声を絞ると、ロビンはまた「素敵ね」と繰り返した。
「彼を外に連れ出したの? 逃避行ね」
いつものしっとりと落ち着いた声で、でも夢見心地のような目をしてロビンは言う。
私はじとりと彼女を睨んだ。
「……馬鹿にしてるわ」
「まさか。羨んでるの」
なにを、と返すと、ロビンは私と同じようにベッドに肘をついた。
「私もそうやって、誰かのことで思いわずらったり悶々と悩んだりしてみたい」
普通の女の子みたいに。
そう付け足した彼女の声は少し照れていた。
「普通の……」
「そうよ、あなたまるで、普通の女の子みたい」
嘘、と呟いて顔を伏せた。
「『普通』は、したいからってだけで男を誘ったりしないわ」
「でもあなたは今夜、失敗して帰ってきた。泣いた目をして、部屋で大きなため息をついて」
これのどこが普通じゃないというのかしら、とでもいうように、ロビンは楽しげに声を弾ませた。
まるでずっと見てきたみたいに、包み込むような視線で。
操られたように、口がぱかりと開いた。
こ、と声を洩らす。
「こ?」
「怖いの」
ロビンは噛んで含めるように、ゆっくりと頷いた。
「わかるわ」
ロビンは確かな声でそう言った。
そのすぐあとで、もう寝なさい、とも。
私はのろのろと立ち上がり、自分のベッドに滑り込む。
ロビンがデスクの灯りを消す。
部屋の中は本当の真っ暗闇に包まれ、波の音がひと際大きく聞こえた。
目を閉じると、荒れた瞼がひりひりと痛む。
ロビンもこわいんだな、と思った。
恋することはとても怖い。
サンジ君は、と思った。
彼も怖かったに違いない。
さっきも、今も。どんなに怖かっただろう。
私も怖かったのね、と胸のうちで呟くと、喉に詰まっていた氷がすっと溶けるような気がした。
誰かを求めたり、求められたりするのはとても怖いのだ。
*
翌朝はいつも通り9人で朝食を摂った。
サンジ君はおはようと言って私に笑いかけ、ロビンにも同じようにする。
ウソップがバカな話をして笑わせて、そうこうしているうちに天気が荒れてきたので私たちは慌てて船を駆けまわった。
寄港中とはいえ、波止場に船がぶつかっては危ない。
激しくはないが細かく冷たい雨が降り始め、波が高く船はあっちへこっちへと傾いてはごおごおと音を立てた。
ロビンは図書室へ行くと言って、コーヒーを片手にキッチンを出て行った。
ウソップとフランキーは工房に閉じこもり、ゾロはトレーニングルームで見張りをしている。
ルフィとチョッパーはついさっきまでキッチンでウソップの作ったパズルで遊んでいたはずが、いつの間にか姿が見えない。
ブルックがアクアリウムバーで奏でるバイオリンの音色が、足の裏から体に沁み込む。
ぐっしょりと濡れたレインコートは、足元に小さな水たまりを作った。
「ごめん。キッチンの床、濡らしちゃった」
「いんや、構わねェよ」
レインコートを入れるようにと、サンジ君はゴムバケツを手渡した。
「部屋まで暖かいモン持っていくぜ。冷えちまったろう」
そうね、と頷きかけて、私は一拍置いて彼に向き直る。
「やっぱりいいわ。飲み物はここにおいておいて。すぐに戻ってくるから」
「え?」
サンジ君の問い直しには答えず、私はゴムバケツを抱えて自室へと向かった。
確かめたいことがある。
*
ペンとノート、羊皮紙にいくつかの本を抱えて戻ってきた私を、サンジ君は半ばぽかんとした顔で迎えた。
律儀にも、飲み物はきちんと用意されている。
そして、床にできた水たまりはすっかり消えていた。
「……ここで描くの?」
「いけない?」
ブンブンと首を振って、サンジ君は私のために椅子を引いてくれた。
広いダイニングテーブルに大きな羊皮紙を広げ、四隅を綺麗な宝石が施された文鎮でとめる。
横に本を積み上げてペンをインク壺に浸すと、とろみを帯びた濃い香りに心が落ち着いた。
少し顔を上げると、カウンターの向こうで水を使うサンジ君の背中が見えた。
メリーに乗っていたころは、よくこうして日誌を書いていた。
お風呂の後なんかに、彼が用意した飲み物をお供にして。
あまり遅い時間になると必ずサンジ君が声をかけてくれる。
その声を皮切りに、私は日誌を書き上げておやすみを言うのだ。
サニー号に乗り、私は自分の部屋にとても使い勝手のいいデスクとライトを置いた。
広い女部屋にはたくさんの本が置けたし、ロビンとのおしゃべりを挟みながら物を描くのは楽しかった。
定規を使って精緻な線を引く。
本を参考に海図を起こしていく作業は、頭に一切の音をも入りこませない。
どっぷりと紙とインクのにおいにだけ浸りながら筆を動かした。
ただ、ふっと集中が途切れた時に耳に滑り込んでくる物音がある。
暖かい湯気の気配が上の方に漂ってくる。
顔を上げると彼がいる。
サンジ君はこちら側を向いていたが、視線は手元のまな板に落ちていた。
しばらくの間手を止めて、その姿を見ていた。
揺れる前髪、細かく動く手元。
目を閉じると、包丁の小刻みな音がリズミカルに響く。
なるほどね、と思った。
誰かを感じたければ、近くに行って目を閉じればよかったのだ。
この部屋にはサンジ君が溢れていた。
生々しい彼の息遣いで満ちていた。
私はこの空気が好きだから、あの夜サンジ君に声をかけたのだ。
つまりそれは、
「あんたじゃなきゃダメだったの」
えっ?と短く声をあげ、サンジ君が私を見遣る。
ナミさんなんて?とゆるい笑顔で問い返す彼に、首を振った。
「おかわり」
「あぁ、はい。同じもの?」
「おまかせするわ。甘いやつ」
かしこまって「御意」と言った彼が、マグカップを取りに近づいてくる。
空になったそれを持ち上げようとした手を、私は上から押さえるように掴んだ。
コツ、とテーブルに固い音を立ててぶつかる。
サンジ君は目を丸めて、私を見た。
ナミさん?と発した声がほんのり不安を帯びている。
口を開くと、いろんな言葉が一度に飛び出てきそうだった。
サンジ君は私の言葉を待っている。
怖い思いをさせて、ごめんなさい。
私も怖いのよ。
「今夜、ふたりで出かけましょ」
サンジ君は丸めた目をさらに丸くして、えー、それは、と言い淀む。
「……何をしに?」
「決まってるじゃない。呑みに行くのよ」
「おれと? ナミさんが?」
「そうよ」
サンジ君は中腰のまま、目を泳がせて狼狽えた。
彼を初めてかわいいと思う。
「お話しましょ」
「……お話?」
うん、と大きく頷いた。
「教えて。あんたのこと」
肩を並べて、もしかしたら少し触れあって、いつのまにか指先を絡めたりなんかして、帰るときには手を繋いでいるかもしれない。
いい。
すごくいい。
狼狽えていたはずの彼はいつのまにか真剣な目で、私を見ていた。
もう片方の手が、私の片手に覆い被さる。
「知りたいと、思ってくれた?」
にっこり笑って、うんと頷く。
「セックスはなしね」
サンジ君は吹き出した。
笑いながら、彼は訊き返す。
「じゃあキスは?」
ふふっと笑いが零れる。
「考えとく」
Fin
前回はこちら
モーテルを出て、船までゆっくりと歩いた。
生ぬるい夜風が潮のにおいと共に後ろへ流れていく。
涙やけした目の下が、熱を持ってひりひりした。
サンジ君は手を繋いでくれた。
私たちはまるで幼い兄妹のように、手を繋いで、ゆっくりと船に戻った。
「足元、気を付けて」
馴れたタラップを登るときまで、彼は私を気遣った。
私が甲板に降り立つと、あとから彼も登ってきた。
船は静かだ。湿り気のある空気がひっそりと船を包んでいる。
夜中と言うにはまだ早い、何人かは起きているだろう。
今晩の見張りは誰だったろう。きっと私たちがそわそわと出ていくところも、項垂れるようにして帰ってきた今も、見ているのかもしれない。
サンジ君がたばこに火をつけ、小さなあかりが頼りなく灯る。
「おれはキッチンに行くけど、ナミさんは部屋に戻る?」
「うん」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ……」
最後に私と目を合わせ、少し下がった眉をゆっくりと動かして彼は笑う。
女部屋では、ロビンが書き物机で本を読んでいた。いつものように。
「おかえりなさい」
乾いた紙が捲れる音がする。
私は返事もせずに床を踏み鳴らしてベッドまで歩み寄ると、そこに勢いよく顔を突っ伏した。
わっと溢れるように花の香りが広がって、そこがロビンの場所だと気付く。
構うもんかと思った。
「ナミ?」
ロビンが手を止めて、こちらを振り向いた。
私は大きく息を吸い、身体の中のものを全部洗いだす勢いで息を吐く。
うっ、と喉が詰まったかと思うと、鼻の奥がツンと痛くなった。
ああと呻き声が漏れる。
「あらあら」
ロビンが腰を上げ、私の隣にしゃがみ込む。
ほのかな温度が背中に触れた。
「悲しいことでもあった?」
私はぶんぶんと音を立てて首を振る。
そしてまた、顔を突っ伏して「ああ」と呻いた。
嗚咽が胸の奥から、悪いものを外へ追い出すみたいにせり上げる。
涙は出なかった。
それでも鼻は水を吸い込んだみたいにツンと痛むのだ。
悔しくて、恥ずかしくて、いたたまれない。
後悔が嵐のようにあらゆる感情を巻き込んで、胸の中に渦巻いた。
私に誰かを思うことは荷が重い。
そのとき、ふふんと綿毛を飛ばすような軽さで笑う声がした。
鼻の頭を赤くしたまま顔を上げると、ロビンが同じ目線の高さで微笑んでいる。
「素敵」
うっとりともいえる表情で、ロビンが呟く。
なに、と音にならない声を絞ると、ロビンはまた「素敵ね」と繰り返した。
「彼を外に連れ出したの? 逃避行ね」
いつものしっとりと落ち着いた声で、でも夢見心地のような目をしてロビンは言う。
私はじとりと彼女を睨んだ。
「……馬鹿にしてるわ」
「まさか。羨んでるの」
なにを、と返すと、ロビンは私と同じようにベッドに肘をついた。
「私もそうやって、誰かのことで思いわずらったり悶々と悩んだりしてみたい」
普通の女の子みたいに。
そう付け足した彼女の声は少し照れていた。
「普通の……」
「そうよ、あなたまるで、普通の女の子みたい」
嘘、と呟いて顔を伏せた。
「『普通』は、したいからってだけで男を誘ったりしないわ」
「でもあなたは今夜、失敗して帰ってきた。泣いた目をして、部屋で大きなため息をついて」
これのどこが普通じゃないというのかしら、とでもいうように、ロビンは楽しげに声を弾ませた。
まるでずっと見てきたみたいに、包み込むような視線で。
操られたように、口がぱかりと開いた。
こ、と声を洩らす。
「こ?」
「怖いの」
ロビンは噛んで含めるように、ゆっくりと頷いた。
「わかるわ」
ロビンは確かな声でそう言った。
そのすぐあとで、もう寝なさい、とも。
私はのろのろと立ち上がり、自分のベッドに滑り込む。
ロビンがデスクの灯りを消す。
部屋の中は本当の真っ暗闇に包まれ、波の音がひと際大きく聞こえた。
目を閉じると、荒れた瞼がひりひりと痛む。
ロビンもこわいんだな、と思った。
恋することはとても怖い。
サンジ君は、と思った。
彼も怖かったに違いない。
さっきも、今も。どんなに怖かっただろう。
私も怖かったのね、と胸のうちで呟くと、喉に詰まっていた氷がすっと溶けるような気がした。
誰かを求めたり、求められたりするのはとても怖いのだ。
*
翌朝はいつも通り9人で朝食を摂った。
サンジ君はおはようと言って私に笑いかけ、ロビンにも同じようにする。
ウソップがバカな話をして笑わせて、そうこうしているうちに天気が荒れてきたので私たちは慌てて船を駆けまわった。
寄港中とはいえ、波止場に船がぶつかっては危ない。
激しくはないが細かく冷たい雨が降り始め、波が高く船はあっちへこっちへと傾いてはごおごおと音を立てた。
ロビンは図書室へ行くと言って、コーヒーを片手にキッチンを出て行った。
ウソップとフランキーは工房に閉じこもり、ゾロはトレーニングルームで見張りをしている。
ルフィとチョッパーはついさっきまでキッチンでウソップの作ったパズルで遊んでいたはずが、いつの間にか姿が見えない。
ブルックがアクアリウムバーで奏でるバイオリンの音色が、足の裏から体に沁み込む。
ぐっしょりと濡れたレインコートは、足元に小さな水たまりを作った。
「ごめん。キッチンの床、濡らしちゃった」
「いんや、構わねェよ」
レインコートを入れるようにと、サンジ君はゴムバケツを手渡した。
「部屋まで暖かいモン持っていくぜ。冷えちまったろう」
そうね、と頷きかけて、私は一拍置いて彼に向き直る。
「やっぱりいいわ。飲み物はここにおいておいて。すぐに戻ってくるから」
「え?」
サンジ君の問い直しには答えず、私はゴムバケツを抱えて自室へと向かった。
確かめたいことがある。
*
ペンとノート、羊皮紙にいくつかの本を抱えて戻ってきた私を、サンジ君は半ばぽかんとした顔で迎えた。
律儀にも、飲み物はきちんと用意されている。
そして、床にできた水たまりはすっかり消えていた。
「……ここで描くの?」
「いけない?」
ブンブンと首を振って、サンジ君は私のために椅子を引いてくれた。
広いダイニングテーブルに大きな羊皮紙を広げ、四隅を綺麗な宝石が施された文鎮でとめる。
横に本を積み上げてペンをインク壺に浸すと、とろみを帯びた濃い香りに心が落ち着いた。
少し顔を上げると、カウンターの向こうで水を使うサンジ君の背中が見えた。
メリーに乗っていたころは、よくこうして日誌を書いていた。
お風呂の後なんかに、彼が用意した飲み物をお供にして。
あまり遅い時間になると必ずサンジ君が声をかけてくれる。
その声を皮切りに、私は日誌を書き上げておやすみを言うのだ。
サニー号に乗り、私は自分の部屋にとても使い勝手のいいデスクとライトを置いた。
広い女部屋にはたくさんの本が置けたし、ロビンとのおしゃべりを挟みながら物を描くのは楽しかった。
定規を使って精緻な線を引く。
本を参考に海図を起こしていく作業は、頭に一切の音をも入りこませない。
どっぷりと紙とインクのにおいにだけ浸りながら筆を動かした。
ただ、ふっと集中が途切れた時に耳に滑り込んでくる物音がある。
暖かい湯気の気配が上の方に漂ってくる。
顔を上げると彼がいる。
サンジ君はこちら側を向いていたが、視線は手元のまな板に落ちていた。
しばらくの間手を止めて、その姿を見ていた。
揺れる前髪、細かく動く手元。
目を閉じると、包丁の小刻みな音がリズミカルに響く。
なるほどね、と思った。
誰かを感じたければ、近くに行って目を閉じればよかったのだ。
この部屋にはサンジ君が溢れていた。
生々しい彼の息遣いで満ちていた。
私はこの空気が好きだから、あの夜サンジ君に声をかけたのだ。
つまりそれは、
「あんたじゃなきゃダメだったの」
えっ?と短く声をあげ、サンジ君が私を見遣る。
ナミさんなんて?とゆるい笑顔で問い返す彼に、首を振った。
「おかわり」
「あぁ、はい。同じもの?」
「おまかせするわ。甘いやつ」
かしこまって「御意」と言った彼が、マグカップを取りに近づいてくる。
空になったそれを持ち上げようとした手を、私は上から押さえるように掴んだ。
コツ、とテーブルに固い音を立ててぶつかる。
サンジ君は目を丸めて、私を見た。
ナミさん?と発した声がほんのり不安を帯びている。
口を開くと、いろんな言葉が一度に飛び出てきそうだった。
サンジ君は私の言葉を待っている。
怖い思いをさせて、ごめんなさい。
私も怖いのよ。
「今夜、ふたりで出かけましょ」
サンジ君は丸めた目をさらに丸くして、えー、それは、と言い淀む。
「……何をしに?」
「決まってるじゃない。呑みに行くのよ」
「おれと? ナミさんが?」
「そうよ」
サンジ君は中腰のまま、目を泳がせて狼狽えた。
彼を初めてかわいいと思う。
「お話しましょ」
「……お話?」
うん、と大きく頷いた。
「教えて。あんたのこと」
肩を並べて、もしかしたら少し触れあって、いつのまにか指先を絡めたりなんかして、帰るときには手を繋いでいるかもしれない。
いい。
すごくいい。
狼狽えていたはずの彼はいつのまにか真剣な目で、私を見ていた。
もう片方の手が、私の片手に覆い被さる。
「知りたいと、思ってくれた?」
にっこり笑って、うんと頷く。
「セックスはなしね」
サンジ君は吹き出した。
笑いながら、彼は訊き返す。
「じゃあキスは?」
ふふっと笑いが零れる。
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
@kmtn_05 からのツイート
我が家は同人サイト様かつ検索避け済みサイト様のみリンクフリーとなっております。
一声いただければ喜んで遊びに行きます。
足りん
URL;http;//legend.en-grey.com/
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