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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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ウソップは駅前のロータリーで私を下ろすと、言葉のかたまりをのどに詰まらせたような苦しげな顔で私を見たが、結局「おつかれさん」とだけ言って帰って行った。
駅前は明るくて騒々しく、まだ20時前にもかかわらず酔っ払いの高笑いが重なり合いながらその空間にこもっていた。
南口の明るい場所、と辺りを見渡すと、駅に隣接したベーカリーの灯りの下にサンジ君を見つけた。
半分ほど距離を縮めたところでサンジ君が私に気付き、ポケットに入れていた手を出してゆらゆらと振った。


「おつかれさん、打ち上げなくなっちゃったんだ」
「うん、また日を改めるんだって」
「そっか。じゃあメシ食ってねェのな」


頷くとサンジ君は「おれもまだなんだ」と嬉しそうに笑った。


「行くつもりのバー、メシも旨ェんだ。そこでいい?」


うん、と頷いたとき、すれ違う一団の大学生らしき一人が私の肩にぶつかった。
おっと、とよろけると、ぶつかったのと反対の手を引かれて身体がかたむく。


「おい気ィつけろ」


すんませーん、と軽い謝罪と共に遠ざかる彼らをサンジ君はたしなめるように見送り、すぐに「大丈夫?」と私の顔を覗き込んだ。
私と一緒にいるときに、彼のあんな低い声を聞いたのは初めてだ。
「平気」と答える私の手を握ったまま、「行こうか」と彼は歩き出した。


駅から10分と少し歩けば、喧騒から離れてひっそりとした夜の中に身体が溶けていくようだ。
今日はなにをしたのか、どうだった、とサンジ君が歩きながら尋ねる。
配置の手伝いと受付をした、ずっと座ってるのはつらかったけどアルバイトは初めてだから楽しかった、と私は答える。
そりゃよかった、とサンジ君は湿った空気を噛むように浅く笑った。


「ん、ここだ」


彼が立ち止まったのは、住宅アパートと民家の間に挟まれた小さな一軒家のような店だった。
看板が小さなライトで照らされていることで、かろうじて飲食店だと分かる。
にんにくとオリーブオイルの香ばしいかおりがふわふわとその店を取り巻いていた。
いいにおい、と呟く私を促して、サンジ君が扉を開けた。

右側にカウンターと椅子が6つ。その向かいに2人掛けのテーブル席が4つ並んでいた。
店の中は小さく、所狭しとお酒の瓶とグラスが壁に並んでいる。
地震が来たら怖いなあと場違いなことを考えて、店の中を見渡した。


「テーブルでいい?」
「うん」


カウンターとテーブルに1組ずつ先客がいて、サンジ君は彼らから一番離れた奥のテーブルに私を座らせた。
カウンターの向こうに立つ若いマスターが「お酒、何にします」と私たちに声をかける。


「おれウイスキーが飲みてェな。おすすめで。ナミさんどうする?」
「あ、じゃあ、白ワイン」
「あと料理のメニューください」


サンジ君の声で、ホールの女の子がメニューを持ってきてくれた。
彼とそれを覗き込み、おすすめとしるしのついたいくつかを注文する。
すぐにやってきたお酒で、小さく乾杯をした。
水割りのウイスキーを口に運んで「うわ結構キツイ」と眉をすがめたあと、サンジ君は私を見て照れたように笑った。


「おれ、実はあんまり酒強くねェんだ」
「そうなの? ウイスキーなんて飲むから」
「好きなんだけど、量は飲めない」


ナミさんは? と尋ねられて私は曖昧に首をかしげた。
お酒は好きだし、ふらふらになったり酔いつぶれたりした記憶もないけど、こんなふうにお店で飲む機会はきっと彼より少ない。


「飲むのは好きよ」


ははっと彼は声をあげて笑い、ナミさん強そうで怖ェなあと言った。
注文していたサラダやアヒージョ、パエリアがテーブルにやってくると、異国の香りと言ってもいいオイルの香りが強く私たちを囲った。


「あ、にんにく平気だった?」
「うん。家では食べられない料理だから、うれしい」
「ん、なんで?」


きょとんと私を見返したサンジ君の頬には、パエリアがギュッと詰まっている。
こんなあどけない顔で食べるんだなあと上下する喉元を眺めながら、「だって家で作れないじゃない」と言う。


「そんなことねェぜ。アヒージョもパエリアも、家で作れるよ」
「え、でもこういうオイルとか調味料って、売ってないでしょ」


サンジ君は口の中のものをごくんと大きく飲み下すと、あははと笑った。


「意識して探さねェから知らねェだけで、普通に売ってるもんで作れるんだよ」
「そうなの」


ベルメールさんは料理に関しては結構保守的で、私たちが子供の頃から好きだったメニューや自分が上手く作れるものを何度も何度も作る。
新しい料理に挑戦するとたいてい失敗して、私たちがからかって笑うのでへそを曲げてしまうのだ。


「じゃあサンジ君はよく作るのね」
「よくってわけじゃないけど」


いいなぁと自然と言葉が零れた。
サンジ君は顔を綻ばせて、「ナミさんは料理あんまりしねぇの」と尋ねる。


「うん、家で母がしてくれるからどうしても。たまーに作ったりするけど、簡単なものしか」


「ルフィも私が作るよりベルメールさんが作ったほうがやっぱり喜ぶし」と言うと、「贅沢ものめ」とサンジ君は顔をしかめた。


「じゃあ今度一緒に料理しよう。教えるから」


私は、いいわねと笑ってサラダに添えられたプチトマトを口に運んだ。
サンジ君が語る私と彼の『今度』は、まるで物語のスピンオフみたいにあってもなくてもいいような宙に浮かんだ未来だ。
そうとわかりながらも、私はふたりで並んだキッチンを想像せずにはいられない。
乾いたスポンジが水を吸うように、期待はどこまでもどこまでも胸を膨らませて、たとえ一時的にでも私を温めた。


「ナミさんのワインおいしい?」とサンジ君が訊くので、飲んでみるかと差し出したらサンジ君は迷わず口を付けた。


「美味いな。おれ次はその赤にしようかな。ナミさんは?」
「私は……別の種類の白にする」


サンジ君がホールの女の子をつかまえ、お酒を注文してくれる。
おなかはちょうどよく膨れ、眠気に似たほろ酔いが頭を重たくするが悪い気分ではない。
サンジ君はさっきのウイスキーでそこそこ目の下を赤くしているので、弱いというのは本当なんだろう。
ワイングラスをつまんでいた指先が冷え、私はテーブルの上で両手をもむように重ねていた。


「寒い?」


サンジ君が訊く。


「ううん、指だけ冷えたみたい」


なにも言わず、サンジ君の右手が私の指先を掴んだ。
ほのかに温かくて、少し湿っている。
ほんとだ、と彼は呟いた。


「何か温かいもの頼む?」
「もうおなかいっぱいよ」


じゃあこれ飲んだら出ようか、と彼は赤い液体を口に含んだ。



会計はいつもみたいにサンジ君が済ませてくれた。
わたしがトイレに席を立った間にしてしまうその手腕はスマートと言うか、抜け目がない。
店を出ると道路が濡れていて、どうやら雨が降ったらしい。
紺色の空を水で滲ませたみたいに、重たい雲が低い所にいっぱい詰まったようなどんよりした夜空だ。
ただ、暑くも寒くもない気温は心地よかった。
酒でほんのり火照った頬に外気が触れると洗われたような気分になる。
腕時計を確認すると、21時半だった。


「帰りは電車? バス?」


少し前を歩くサンジ君が、ほんの少し私を振り向くように顔を傾けて尋ねる。
街灯が照らす、白い魚の腹みたいな彼の頬をみつめて、私は言葉を詰まらせた。

どうして。
こんなにも、こんなにもままならない。

答えない私をいぶかしんで彼が振り返る。
私はその視線から逃げるように俯いて、ひたすら足を動かした。
やがて彼の隣に並び、同じ歩調で歩きだす。
6月の夜風でぬるくなった大きな手が、私のそれを掴んだ。


「狭いけど、うちでよければ」


返事の代わりに、すがるようにつながった手に力を込めた。
振り払われるはずもなく、かといって強く握り返されることもなく、サンジ君は私の手を握ったまま静かに駅へと歩いた。





彼の家は街の北はずれで、電車に20分くらい乗ってから少し歩いたところにある住宅街のうちの一軒だった。
奥に長いのか道路に面している部分はこじんまりとしていて、ひっそりと主張がない。
よくいえばさっぱりとした、悪く言えば飾りっ気のない印象を受けた。
誰もいないのか、窓からもれる灯りはない。
サンジ君は取り出した鍵で玄関扉を開けると、「どうぞ」と私を招き入れた。
だれもいない空間にあいさつの声をかけて、足を踏み入れる。


「ご家族、とかは」
「あー、帰りがおせぇんだ」
「レストランしてるんだっけ」
「よく覚えてるね」


覚えていてほしくなかったみたいな苦笑いが落ちる。
玄関の目の前は階段が続いていて、そこを上ってすぐの部屋がサンジ君の自室だった。
狭いけど、と家に入るときと似たようなことを言って扉を開ける。
6畳ほどの空間でいちばん存在を主張するベッド。
書き物机と可動式のイス。
あとはクローゼットと本棚がひとつずつ。
彼がここで今朝起きたときのままみたいなふうに、掛布団がいびつに丸くなっていた。


「適当に座ってて。お茶でいい? それか酒も確かあったけど」
「ううん、お茶がいい」


了解、と穏やかに笑ったサンジ君はいつもより近い場所にいるみたいに見えた。
ここが彼のパーソナルスペースだからか、そこに私がいるからか。
どちらでもいい、入ってしまったのだから。
みずから望んで飛び込んだのだと思うと、たまらなく心地よかった。

ベッドに背中を預けるように床に腰を下ろして、そういえば家に連絡を入れなきゃいけないと思い出す。
マグカップを二つ持って戻ってきたサンジ君に、申し訳ないのだけど携帯を貸してほしいと申し出る。
彼もウソップと同じように、あっさりと携帯を取り出してくれた。


「いいよ、家?」
「うん、姉に」


指が覚えているノジコの番号──彼女の携帯はベルメールさんのお下がりだ──をプッシュした。
数コールで電話を取ったノジコは、私の声を聞くとすぐに「泊まってくるの?」と言った。


「うん。悪いんだけどベルメールさんに」
「わかってるわかってる。これサンジ君の携帯?」
「うん」


そ、と興味なさ気に呟いて、ノジコは「帰り気を付けなよ」とだけ言って電話を切った。


「お姉様、仲いいね」
「歳もそんなに離れてないからかな」
「いくつ離れてんだっけ」
「たぶん2つ」
「たぶん?」


冗談だと思ったのか、サンジ君は笑みを浮かべてマグカップに口を付けた。
私も彼にならい、熱い紅茶を飲んだ。
唇にその熱さが痛いくらいだ。


「おいしい。上手に淹れるのね」
「そ? 慣れてるからかな」


サンジ君は言葉を濁したが、紅茶は本当においしかった。
湯気が目に染みて、軽く目を閉じる。


「ナミさん、シャワー浴びたかったらどうぞ。浴槽ためてもらっても全然構わねェし」
「ん……」


サンジ君がテーブルにカップを置く音が、やけに大きく響いた。
まだまだ直接もつには熱いカップの側面を、私は手のひらで包んだ。
じんじんと伝わる熱に耳を澄ましていると、サンジ君が私を呼んだ。
「ナミさん」と。


「ヤケんなってねェ?」


顔を上げると、サンジ君は変わった形の眉毛を下方にしならせて精一杯困った顔をしてみせた。


「正直ナミさんみてェな可愛い子がするするっと寄ってきてくれると、警戒しちまうっつーか。ナミさんはウソップの友だちで、ルフィのお姉様なわけだし」
「──ウソップや……ルフィは関係ないわ」
「ん、でも」
「いいの。ヤケなんかじゃない」


カップをテーブルに置くと、熱の余韻で手のひらが痒くなった。
きっと私は忘れない。
こんなふうに冷めない熱を手のひらに抱え込んだまま、じっとじっと耐えたことを。
サンジ君が私の頬に手を伸ばして、髪を耳にかけたことを。

身を引くともたれているベッドが微かな音を立てて軋んだ。
サンジ君が手をつくと、さらに遠慮のない音を立てる。
キスをするとき、サンジ君は私が目を閉じるまでじっと見ていた。
さらさらの前髪が私の頬に乗るように触れて、くすぐったさを感じるより前に頭の後ろに手が滑り込んできた。
私の頭を抱え込むみたいに両手で支えて、たくさんキスをする。
引き寄せようと首に手を回すと、応えるように舌が入ってきた。
服を脱がし、脱がされて、温度のないベッドになだれ込む。
サンジ君はあいかわらずやさしかった。
ぜんぶを知り尽くした指先が身体を這って、私の中をかき回して、着実に私をどこかに連れて行く。
その気持ちよさに身を委ねていたら急に怖くなって、私は逃げるようにベッドの上の方へとずり上がる。
するとすかさずサンジ君は私の肩や、腕や、ときには足首を持って引きずり戻した。

口から洩れた声が自分のものではないみたいで、咄嗟に唇を噛み締めた。
それに気付いたサンジ君が唇を重ねてきて、舌でこじ開けるように私の喉に空気を送り込む。
それでも半ば意地を張って、こぼれ出す声を抑え込んだ。
甲高い声は私ではなく、どこのだれかわからない別の女をサンジ君に思い出させてしまうような気がしておそろしかったのだ。

胸やお腹がぴったりと重なって肌と肌の隙間が限りなくゼロになるとき、その重さに意識が遠のきそうになるほど喜んだ。
初めて触れた男の人の身体は硬くて身がぎっしり詰まった木の実を連想させた。
下腹部がこじ開けられるような痛みも、関節がおかしな方へ曲がって二度と戻ってこないんじゃないかと思うような感覚も。
サンジ君が私の肩を掴んで額のあたりで吐いた荒い息も、まじりあった汗のにおいも、熱を逃がさないシーツの皺も。
すべて抱えて私のものだと叫びたくなるくらい、いとおしかった。





目覚めると狭いシングルベッドに私は広々と横たわっており、隣に誰もいなかった。
なにひとつ身に付けていない身体にはすっぽりと毛布と掛布団が覆いかぶさっており、寒さは感じないが足の先だけがやけに冷えていた。
カーテンが薄く開いていて、そこから光が線のように部屋を横切っている。
そのすぐそばの窓際に、サンジ君はいた。
下だけ何か衣服を身に付けて腰を下ろし、裸の背中をこちらに向けている。
窓が少し開いているのか、カーテンが揺れていた。

煙草だ、と気づくのに時間がかかったのは、早朝の光に煙が溶け込んで見えなかったからだ。
サンジ君は足元に引き寄せた灰皿にときおり灰を落とし、音も立てずに煙草を吸っていた。

どうしてにおいで気付かなかったんだろう。
ベッドにも、壁にも、染みついたように煙草のかおりが隠れるそぶりもなく存在を主張している。
顔の見えないサンジ君は、ただ煙草を口に持っていき、だらりと腕を下げて、ときどき灰皿に持っていく、その動作を繰り返した。
そのときどんなふうに背中の筋肉が動くのか目に焼き付くほど私は知っているのに、この人は私のものにはならない。
ひきつるような性器の痛みとともにそんなことを考えながら、目を閉じてまた眠った。



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カンバスのある丘6
続くが気になります…
あー夢に出てきそうです。
私的にサンジくんナミさんのハッピーエンドを見たい(読みたい)です…
さちよ 2015.02.11 Wed  21:16 Edit
Re:カンバスのある丘6
さちよさんまたもやコメントありがとうございます!

夢に出てくるなんてそんな///本望^///^
しかし安心してください!!!私の脳内サンナミに関してはハッピーエンドしかありません!
横恋慕やましてや死ネタなんかのバッドエンドはちらりとも考えてはおりませんので!
ネタバレしてしまって申し訳ありませんが、どういう形でこいつら上手いことまとまるんだ~オイオイくらいの気持ちで追っかけていただけたらさいわいです。
時間がかかりそうですが、ゆっくりと楽しんでいただけたらうれしいです!
あっあと突然のエロチックシーンに引かれなかったようで安心しました(笑)
コメント、本当にありがとうございます~^^
2015.02.12 Wed  22:31
material by Sky Ruins  /  ACROSS+
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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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