OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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騒がしい話し声やイゾウのものと思われる笑い声は、3つ先の部屋の前まで聞こえていた。
ナースの姉さんたちの鬼のように長い爪がきらりとひかって、アンの腕を妖艶に絡め取って上質な酒を次々とあけていくという男らしい女子会はお開きになったのだ。
ほろ酔い気味の身体をふらつかせて、アンは思うままに廊下を歩いていた。
そして気付いたら1番隊の廊下にいた。
もはや癖になりつつあるその行為に、あららとひとりこぼす。
アンの足はマルコのほうへと磁石のように引き寄せられる。
寝る前に顔が見たい。
できることならマルコのベッドにもぐりこみたいが、引きずりおろされるのが目に見えているので無駄なことはしない。
どうやら数人で飲んでいるらしいかの部屋は、アンがおぼつかない足取りで歩み寄っていくにつれて、声は抑えられていった。
どうやら馬鹿馬鹿しい話は終わったらしい。
少し顔を出して、マルコに小言を食らう前におやすみとだけ言えばいい。
それだけならマルコだって、普通に、以前のように、少し笑っておやすみと言ってくれるだろう。
イゾウたちがいるのなら、彼らにも同時におやすみと言えるし言ってもらえる。
ちょうどいいや、と赤くほてった頬を緩めてアンは突き当りのマルコの部屋に近づいていった。
ノックの習慣はないので、すぐさまドアノブに手を伸ばす。
そこまでやってくると、中の話し声はよく聞こえた。
ドアに近い床に座って飲んでいるのかもしれない。
「いつまでもアンがお前しか見てねぇと思ってっと、後悔すっぞ」
指先はノブに触れたが、回る前に動きが止まった。
あたしの、話してる。
この声、サッチ?
そのあとマルコとサッチが一言二言交わすのが聞こえた。
話の話題が自分であるという情報がすぐさま頭に染みわたって、こそばゆいような感覚が走った瞬間、鮮明にマルコの声が聞こえた。
「オレがあいつに惚れるこたぁねェ」
うわ、というような声が出そうになった。
なんと、核心に近い。
ドアに伸ばした手を引っ込めて、アンはすぐさま背を向けて歩き出した。
まるで逃げるようだが、そんな自分の姿に構ってはいられない。
酔っ払いの足取りで歩いていたのが嘘のように、すたすたと歩いた。
階段に差し掛かる角を勢いよく曲がる。
不意に目の前に現れた壁に、アンはつんのめるようにして立ち止まった。
その壁も同じように急停止して、おっとと声を上げている。
ビスタだ。
逞しい胸筋の上にある顔を見上げると、ビスタは「おおアン」と顔を綻ばせた。
しかしすぐ、何かに気付いたように眉を寄せる。
「アン、どうした?」
なにが? と問うと、いや顔が、と心配げに覗きこまれる。
その言葉に促されるように顔に手を持って行き、自分の頬に触れた。
上気していてほのかに熱い。
それに反して気分は高揚しているとはいいがたい、むしろ妙に凪いでいた。
「ビスタ…あたし、」
口を開いたそのとき、階段を軽やかに昇ってくる足音が聞こえた。
小柄な姿がひょこりと顔を出す。
「ビスター!寝る前に本貸してって言っただろ…って、あれ、アン」
ハルタはアンの姿を捉えて、ビスタと同じように目を細めて笑った。
「アンも飲んでたの?」
「うん」
そ、と頷いたハルタは、ビスタに視線を移したが、二度見するようにアンにまた視線を戻した。
「アン、何かあった?」
ビスタと同じように窺い見るような視線で、アンより少し低いところにある丸い眼が見つめてくる。
別に何もと首を振った。
ビスタに何を言おうとしていたのかもう思いだせない。
ビスタがそれを忘れていてくれるのを祈った。
「何もって顔してないぞ」
子どもをたしなめるような大人の顔つきで、ビスタはアンの肩に触れた。
そのまま歩くよう促される。
ひとまず私の隊長室に行こうか、とビスタは優しい声を出した。
*
その部屋は整理が行き届いた小奇麗な部屋で、男の、それも海賊の部屋とは思い難い。
片付けてもすぐに物の居場所がわからなくなるあたしの部屋とは大違いだ。
バラの香りがするのはビスタの風呂上りの香りか、それとも部屋の香りか。
マルコの部屋も綺麗に整頓されてたなあと思いだしてふるりと身体が揺れた。
「ほら」
「ありがと」
差し出されたカップを両手で受け取る。
熱いぞ、ぞビスタはそっと手を離す。
紅茶から立ち上る蒸気が鼻の先を濡らした。
ビスタは自身の仕事用の机に腰掛け、アンとハルタは並んでベッドに腰掛けた。
こくりと一口紅茶を飲むと、熱さでじわりと喉がしびれる。
「この前寄港した島が旨い紅茶の産地でな。葉を多く買い過ぎてしまったんだ」
そう言いカップを傾けるビスタがにっと口端を上げるので、アンもつられるようにして笑う。
んん、オレ紅茶苦手だなあと、ハルタは茶色い液体を舐めながら呟いた。
「落ち着かないときや困ったときは、とりあえず温かいものを飲むといい。息をつくだけで何かと変わるものだ」
そうだね、とアンは笑みを浮かべた。
紅茶のカップを膝の上に置いて覗き込むと、頼りない自分の顔がぼやけて見える。
「…あたし、そんなに変な顔してた?」
「変っていうか、いつものアンじゃないから」
ハルタが紅茶のカップをテーブルに置き、遠ざけるように手で押しやった。
気に入らないらしい。
ビスタはかける言葉を捜しているように押し黙っていた。
「本当にたいしたことじゃないっていうか」
軽く、与太話をするような口調で先程のことを言えば、ビスタはうむと唸ったきり考え込むように腕を組み、ハルタはきょとんとどんぐりのような茶色い目をアンに向けた。
「でもさぁ、マルコっていつもそんなんだろ」
ビスタが咎めるようにハルタを見るが、確かにその通りなので、だよねとアンは微かに笑う。
そうなのだ。
ゼロ地点から突っ走り始めたこの思いは、届かないという見込みの上で始まったも同然なのだ。
そのくせ何をいまさら、と馬鹿馬鹿しさが充満する。
「アン、悲しいの?」
ハルタが窺うようにアンを見上げた。
『悲しい』か、とアンは自分の内側に問いかけた。
返事はない。
「わかんない」
簡潔すぎる答えに、ビスタが困ったように眉を下げた。
「あたしバカだしなぁ」
「自分のことをバカだというのは感心しないな」
怒ったような声に、少し驚きをにじませてビスタを見ると、ビスタは大きな手を揺らしてアンを手招いた。
「なに?」
座ったまま首をかしげても、ビスタはアンを手招くのをやめない。
なんだなんだとアンは腰を上げた。
ビスタに手招かれるままその大きな体の正面に立つと、椅子に座ったビスタの顔は少し目線より低いところにある。
突如、背後から衝撃がぶつかった。
「うおっ…!」
その衝撃に押されるまま、ビスタの肩にぶつかるように乗りかかる。
肩に手をかけて後ろを振り向くと、衝撃の正体はハルタだった。
ハルタはアンの腰に抱き着くように体を寄せて、俯いている。
「なに、ハル」
タ、と最後まで続く前に、ビスタの太い腕がアンとハルタを丸ごと抱え込むように抱き込んだ。
小さい子供をあやすように頭を撫でられる。
「…ビスタ?」
返事はない。
これは、きっと、慰められているんだと気付いた。
別に落ち込んでないのに、子ども扱いしないで、といつもならすぐさまあらわるはずの腹立たしさがすぐにせりあがってこない。
ということは、きっとそれなりに自分は傷ついていたのだと、ようやく気が付いた。
ぽすん、とビスタの肩に頬を預けた。
目を閉じる。
マルコの顔を思い出す。
涙も出ない。
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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