OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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理由はわからないけど、気付いたら私はぐずぐずと泣いていた。
涙で荒れた目の下の皮膚をこすりながら、どこかでこれは夢だと分かっていた。
泣いている自分を俯瞰しているような、それでいて泣いているのは私だという実感があり、悲しい気持ちに胸を塞がれながらも頭のどこかでこれは夢だからいつか覚めると冷静に考えていた。
逆上がりに失敗したとき、足を地面から離した瞬間「あ、回れない」とわかる感覚によく似ている。
と、次の瞬間にはもう目が覚めていた。
手足の感覚が戻り、頭を乗せていた腕にじわじわと痺れが広がっていく。
頬を指で触っても、そこはかさりと乾いていた。
ほのかに青い野菜の香りがしている。
「起きた?」
肩越しに振り返るサンジくんの姿に焦点が合い、ようやくここがダイニングテーブルであると思い出す。
腕の右側には蓋が開いたままのインク壺と乾いたペンが転がっていた。
「……紙……」
「皺になりそうだったから避けといた」
彼が指差す方に首を振ると、腕の左側に描きかけの海図がきちんと置いてあった。
二日前に立ち寄った、小さな春島とその周辺を記したものだ。
どこか遠くの方で頭が痛む。
う、と小さく呻いた背中を伸ばした。
「私どれくらい寝てた?」
「20分くらいかねえ。微動だにしなかったけどよく寝られた?」
「わかんない、なんか夢も見た気がするし」
サンジくんはタバコのフィルターを柔らかく嚙み潰し、笑った。
彼がつけた薄黄色のエプロンの真ん中に、水が跳ねたような丸い跡があった。
「野郎どもも昼寝してっから、静かだもんな」
「あそっか、まだ昼なんだ。なんか時間の感覚おかしくなっちゃった」
キッチンの掛け時計は午後4時を示している。
丸い窓から切り取られた空はまだ明るい。
ぼんやりと座ったままの私に背を向けて、サンジくんは何かをさくさくと小気味よく切り続ける。
コンロに掛けられた鍋から、きめの粗い湯気が換気扇に向かってゆっくりと立ち上っている。
部屋の中は青臭いような土の匂いが充満していた。
「なに作ってんの?」
「スープさ」
「野菜の?」
んー、と肯定のようなそうでもないような返事が返ってくる。
「見る?」
「んー、いい」
立ち上がるのが億劫だった。
「残念」
そう言ってサンジくんは乾燥棚から小さなカップを手に取った。
とぷ、と重い液体がカップの底を打つ音が私の耳にも届いた。
サンジくんはさも当たり前のようにカウンターを回って、私にカップを差し出した。
「熱いから気をつけて」
受け取ったそれは、薄黄緑色の中に小さな緑の粒が浮いたクリームポタージュだった。
「もっかい裏ごしするつもりだから未完成でわりぃけど」
「これなに?」
くんと鼻を近づけてみると、意外にも青臭さは微塵もない。
もったりとしたミルクの甘い香りに、新鮮で透き通った野菜の香りがする。
「ソラマメのポタージュ」
「ソラマメ?」
珍しい、とカップに口をつけた。
熱いとろみが唇に触れて、一瞬ひるむがそのまま口に含む。
まろやかな甘みと塩気が広がって、つぶつぶとした食感が面白い。
裏ごしいらないのにな、と思いながらおいしーと呟いた。
「旬のもんはうまいからな、よかった」
サンジくんは咥えていたタバコに火をつけて、カウンターの内側へと戻っていく。
腐ったキャラメルみたいな甘い匂いが、そんなにすぐに香るはずないのに、確かに私は感じる。
かき消すようにまたスープを啜った。
「なんか春ねえ」
「春だなあ」
「次の島は冬島なのよねえ」
「そらまた逆戻りって感じだな」
「やだなー」
カップを温めるように両手で包んだ。
少しだけ船が傾いて、壁にかかったフライパンがかつんとぶつかり合う。
サンジくんはおもむろに鶏肉をまな板の上にどかんと置いて、びーっと皮を剥いた。
「ナミさんそんな冬嫌いだったっけ」
「ううん、むしろ好きだけど。雪とか、食べ物もおいしいし」
「おれもわりと冬島好きだなあ」
「冬が嫌なんじゃなくて、春が名残惜しくて」
「あーそりゃわかるかもしんねえ」
薄手のコートが腰のあたりでぴらぴらと揺れる。
どんよりとした曇り空は霞かかって、生暖かいのに時折肌寒い風が髪に絡まる。
ぼんやりとした淡い空気の色に、いつのまにか頭のネジを抜き取られて狂いそうになる季節。
「なんか一線超えそうな気にならねえ? 春って」
不意にサンジくんがそんなことを言うのでどきりとした。
なにそれと言うと、いやあと彼もよくわからないと言いたげだ。
「なんか知らねぇうちにやばいことしちまいそう」
「……それって季節関係ある?」
「あるある、薄気味わりーような、でもちょっと気持ちいいみたいな暖かさなんだよな」
わかる。
そう言う代わりに残りのスープを飲み干した。
底には緑色の澱のようなものが溜まっていた。
それを見つめて、私は想像する。
サンジくんの筋張った手が鍋にどぷりと浸かる。
薄緑色の膜が張り付いたその手でポタージュをぐるぐるとかき混ぜて、引き上げた指先からそれがぼたぼたと滴るところを。
「一線って、なんの?」
「え?」
サンジくんは緩く笑った口元のまま振り返った。
「なんの一線を越えるの?」
「知りたい?」
サンジくんの手は薄緑色には染まっておらず、代わりに生肉の脂でてらてらと光っていた。
「知りたい?」と彼は微笑んだままもう一度訊く。
私はわずかに首を動かしたけど、頷いたのか首を振ったのか自分でもわからなかった。
「あとでね」
サンジくんは大きな音を立てて水を流し、手を洗った。
夕飯であのポタージュをみんなが飲むのだと思うと、このやりとりまで他の誰かの喉を通るように思われて落ち着かない気になった。
あとでっていつだろう。
執拗なほど長く手を洗う彼の背中をじりじりと見つめながら、ずっとそんなことを考えていた。
涙で荒れた目の下の皮膚をこすりながら、どこかでこれは夢だと分かっていた。
泣いている自分を俯瞰しているような、それでいて泣いているのは私だという実感があり、悲しい気持ちに胸を塞がれながらも頭のどこかでこれは夢だからいつか覚めると冷静に考えていた。
逆上がりに失敗したとき、足を地面から離した瞬間「あ、回れない」とわかる感覚によく似ている。
と、次の瞬間にはもう目が覚めていた。
手足の感覚が戻り、頭を乗せていた腕にじわじわと痺れが広がっていく。
頬を指で触っても、そこはかさりと乾いていた。
ほのかに青い野菜の香りがしている。
「起きた?」
肩越しに振り返るサンジくんの姿に焦点が合い、ようやくここがダイニングテーブルであると思い出す。
腕の右側には蓋が開いたままのインク壺と乾いたペンが転がっていた。
「……紙……」
「皺になりそうだったから避けといた」
彼が指差す方に首を振ると、腕の左側に描きかけの海図がきちんと置いてあった。
二日前に立ち寄った、小さな春島とその周辺を記したものだ。
どこか遠くの方で頭が痛む。
う、と小さく呻いた背中を伸ばした。
「私どれくらい寝てた?」
「20分くらいかねえ。微動だにしなかったけどよく寝られた?」
「わかんない、なんか夢も見た気がするし」
サンジくんはタバコのフィルターを柔らかく嚙み潰し、笑った。
彼がつけた薄黄色のエプロンの真ん中に、水が跳ねたような丸い跡があった。
「野郎どもも昼寝してっから、静かだもんな」
「あそっか、まだ昼なんだ。なんか時間の感覚おかしくなっちゃった」
キッチンの掛け時計は午後4時を示している。
丸い窓から切り取られた空はまだ明るい。
ぼんやりと座ったままの私に背を向けて、サンジくんは何かをさくさくと小気味よく切り続ける。
コンロに掛けられた鍋から、きめの粗い湯気が換気扇に向かってゆっくりと立ち上っている。
部屋の中は青臭いような土の匂いが充満していた。
「なに作ってんの?」
「スープさ」
「野菜の?」
んー、と肯定のようなそうでもないような返事が返ってくる。
「見る?」
「んー、いい」
立ち上がるのが億劫だった。
「残念」
そう言ってサンジくんは乾燥棚から小さなカップを手に取った。
とぷ、と重い液体がカップの底を打つ音が私の耳にも届いた。
サンジくんはさも当たり前のようにカウンターを回って、私にカップを差し出した。
「熱いから気をつけて」
受け取ったそれは、薄黄緑色の中に小さな緑の粒が浮いたクリームポタージュだった。
「もっかい裏ごしするつもりだから未完成でわりぃけど」
「これなに?」
くんと鼻を近づけてみると、意外にも青臭さは微塵もない。
もったりとしたミルクの甘い香りに、新鮮で透き通った野菜の香りがする。
「ソラマメのポタージュ」
「ソラマメ?」
珍しい、とカップに口をつけた。
熱いとろみが唇に触れて、一瞬ひるむがそのまま口に含む。
まろやかな甘みと塩気が広がって、つぶつぶとした食感が面白い。
裏ごしいらないのにな、と思いながらおいしーと呟いた。
「旬のもんはうまいからな、よかった」
サンジくんは咥えていたタバコに火をつけて、カウンターの内側へと戻っていく。
腐ったキャラメルみたいな甘い匂いが、そんなにすぐに香るはずないのに、確かに私は感じる。
かき消すようにまたスープを啜った。
「なんか春ねえ」
「春だなあ」
「次の島は冬島なのよねえ」
「そらまた逆戻りって感じだな」
「やだなー」
カップを温めるように両手で包んだ。
少しだけ船が傾いて、壁にかかったフライパンがかつんとぶつかり合う。
サンジくんはおもむろに鶏肉をまな板の上にどかんと置いて、びーっと皮を剥いた。
「ナミさんそんな冬嫌いだったっけ」
「ううん、むしろ好きだけど。雪とか、食べ物もおいしいし」
「おれもわりと冬島好きだなあ」
「冬が嫌なんじゃなくて、春が名残惜しくて」
「あーそりゃわかるかもしんねえ」
薄手のコートが腰のあたりでぴらぴらと揺れる。
どんよりとした曇り空は霞かかって、生暖かいのに時折肌寒い風が髪に絡まる。
ぼんやりとした淡い空気の色に、いつのまにか頭のネジを抜き取られて狂いそうになる季節。
「なんか一線超えそうな気にならねえ? 春って」
不意にサンジくんがそんなことを言うのでどきりとした。
なにそれと言うと、いやあと彼もよくわからないと言いたげだ。
「なんか知らねぇうちにやばいことしちまいそう」
「……それって季節関係ある?」
「あるある、薄気味わりーような、でもちょっと気持ちいいみたいな暖かさなんだよな」
わかる。
そう言う代わりに残りのスープを飲み干した。
底には緑色の澱のようなものが溜まっていた。
それを見つめて、私は想像する。
サンジくんの筋張った手が鍋にどぷりと浸かる。
薄緑色の膜が張り付いたその手でポタージュをぐるぐるとかき混ぜて、引き上げた指先からそれがぼたぼたと滴るところを。
「一線って、なんの?」
「え?」
サンジくんは緩く笑った口元のまま振り返った。
「なんの一線を越えるの?」
「知りたい?」
サンジくんの手は薄緑色には染まっておらず、代わりに生肉の脂でてらてらと光っていた。
「知りたい?」と彼は微笑んだままもう一度訊く。
私はわずかに首を動かしたけど、頷いたのか首を振ったのか自分でもわからなかった。
「あとでね」
サンジくんは大きな音を立てて水を流し、手を洗った。
夕飯であのポタージュをみんなが飲むのだと思うと、このやりとりまで他の誰かの喉を通るように思われて落ち着かない気になった。
あとでっていつだろう。
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