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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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砲列甲板の床は硬かったけど、私はそれがちっとも気にならなかった。
強い力で抑えつけられて、息を呑むひまも与えられずに突き上げられる。何度か呼吸が止まりそうになると顎を掴まれ唇を塞がれた。
キスは深い。
事は性急に、着実に終着へ向かうのに、キスだけはまるで一瞬ためらうみたいに慎重に重ねてから、ずぶずぶ奥深く進むのだった。

は、と短く息をついて背中にのしかかる重みが震える。中に収まった彼のものが何度か痙攣し、その振動を感じた次の瞬間には引き抜かれた。
ふーと長く息を吐いて呼吸を整えると、彼はさっさと衣服を身に付ける。
余韻を断ち切るそっけない仕草とは裏腹に、彼は暗がりの中私の下着を拾って寄越してくれることもあった。
私たちは黙って身支度を整える。
事務処理をこなすように、淡々と、冷静に。
そこに情熱みたいなものが、そうさっきのキスみたいな何らかの温度があってはならない。
誰に言われたわけでもないのに私たちはそれをちゃんと知っていた。
身体の関係を持つのはこれで三度目だ。

「──おい、お前」

そこ、と指を差され、左腕の肘下を見る。
暗闇でよく見えないものの、触れると擦り傷のような痛みがあった。熱く湿っていて、血が染みている。

「気が付かなかった」
「ここ、釘が出てんな」

しゃがみこんで床に手をあてる彼の背中はごつごつと隆起している。
そのくぼみに沿って手を這わせるのがすきだ。

「平気、すぐ治るわ」

心配されたのかしらと言う浅はかな喜びと、ただ目についたものを口にする彼の眩しいまでの単純さをいとおしく思う気持ちが同時にこみ上げて、思わず微笑む。
しゃがんだまま私を見上げた彼は、数秒考えるような顔つきのあと目を反らして言った。

「お前もう来んなよ」
「え?」
「ここ。もう来るな。おれも来ねェから」

体つきのわりに素早い動きで彼は立ち上がり、私が訊き返す間もなくこちらに背を向けて出口へ向かう。
彼が開けたドアからこの部屋よりも明るい暗闇が流れ込んでくる。
その向こう側へ、彼はさっと消えた。

剣士さん、となにもない空間に声をかける。




誘ったのは私の方からだった。
夜の甲板で鉢合わせたのはたまたまで、私は眠れない時間を持て余して狭い船内を散歩していたのであり彼は食堂からくすねた酒を持ち去るところだった。
私を認めて迷惑気に顔をしかめた彼は、「言うなよ」とそっと口先に指をあてがった。
二人きりで話すのは初めてだった。

「──私が言わなくても、明日の朝になればコックさんには分かってしまうんじゃないかしら」
「お前がおれだと言わなきゃ誰の仕業かわかんねぇだろ」

彼があまりに真面目な顔つきでそう言うので、思わずふっと吹き出して「そうかしら」と言うと彼は笑われたことに対して不思議そうにきょとんとした。
妙に明るい月明かりの下で、彼は日の光の下にいるよりも幼く見えた。

「飲み過ぎてはだめよ」

言い残して立ち去ろうとすると「おい」と呼び止められる。
「どこに行く」と尋ねた彼の口調はさながら不審者に対するそれで、その目はあっという間に年相応の幼さを引っ込めていた。

「どこにも。どこにも行きようがないじゃない」

船の縁の外は真っ暗で、時折波が泡立つのが白く光る。
木の床は私が身を潜めたどの船よりも狭く、歩くたびに大きな音で軋んだ。

「──なにもしないわ。本当よ。眠れないの」

信じて。
口にするたびに言い訳のように聞こえて、私が言葉を言い募れば言い募るほど彼の目が不審に細くなるように見えた。
ふん、と彼は返事ともつかない息をついて、その場で酒瓶のコルクを抜く。
一口飲むとそっぽを向いてしまった。

「ナミは寝てんのか」
「え、あぁ、えぇ、おそらく」
「眠れねェならお前も飲むか」

急な申し出に意表をつかれて黙り込むと、「いらねぇならうろついてねェでさっさと部屋戻れ」と彼は背を向けてしまった。見張り台へと戻るのだ。
慌てて追いすがるように言葉をぶつけた。

「分けてくれるの?」
「口止め料程度なら」

足を留めてくれたことがうれしくて、強張りかけた顔がゆるむ。
酒瓶をそのまま差し出され、ひとまず受け取ろうと手を伸ばした。
ところが受け渡されるそのとき、なめらかに細い瓶の口を私が掴み損ねて瓶は音もなく落下した。
あっ、と短い悲鳴が上がる。

「うおっ」

彼が慄いて身を引くと、小さな口から少しだけ中身が飛び跳ねた。
瓶が床にぶつかって叩き割れる直前、彼の脛から生えた私の手がしっかりと瓶を握りしめていた。

「危なかった。ごめんなさい上手く──」
「こんなとこからも生えるのか、びびった」

自分の足から生えた白い腕を気味悪げに見下ろして、「どうなってんだ」と彼は呟く。
ごめんなさい、と繰り返した。
ハナの手は瓶を床に置きフッと消える。

「上手く掴めなくて。もったいないことをするところだったわ」
「──いや」

かがんで瓶を取ろうと手を伸ばしたら、同時に彼も腰をかがめた。
瓶を手に取る間際に気付いて顔を上げたら思いのほか近くで彼も同じようにこちらを見ていて、動けなくなった。
耳に掛けていた一筋の髪が動きに耐えかねはらりと落ちる。

私がお酒を一口飲んで彼に返したら、彼はさっさと見張り台へと戻るだろう。
きっと私が横に並んで酒を一緒に減らしていくことを彼は許してくれない。
居場所を探して船を彷徨う気味の悪い女を、彼はそばには置いてくれない。

どうしたら少しでも長くそばにいられるのかを咄嗟に考えた。

「──口止め料、別のものでもいいかしら」
「たとえば」
「あなたとか」

目を逸らさず口にしてしまえば、その瞬間すっと心が凪いだ。
彼は一瞬目を眇め、口を開く。

「どう……いや、いいぜ」

言いかけた言葉を呑みこんでから、彼は私より先に視線を外して酒瓶を掴みあげた。

「ここでいいだろ」

大きく瓶を傾けて中身を豪快に飲み下し、彼はすぐそばにあった砲列甲板に続く扉に手を掛けた。
その中は外よりもひんやりと乾いていて、暗くて今すぐ彼を絡め取りながら跳びこみたいような気持ちがした。
暗闇の中目が見えず、何度も腕や脚を掃除道具やキャプスタンにぶつけて不自由な思いをしたものの、彼は順序良く事を進めてきちんと自身も欲を吐き出し、あろうことか唇まで重ねてくれたのだった。

二度目はなんとなく、示し合わせたわけでもないのにやはり夜中に彼と鉢合わせ、今度は彼の方から「するか」と言われて応えた。
体温の高い彼の身体はのしかかられると心地よく、筋肉の張りつめた腕に触れるととても充足した気持ちになれた。
繋がった気持ちよさよりも、そういう、身体的な接触を許された喜びで満ち溢れていて、ただとても嬉しかった。





晴れた空の下、テーブルとパラソルを持ち出して甲板で本を読んでいたら不意に目の前に影が差し、顔を上げるとウソップが座っていた。

「よう、お邪魔さん」
「あら、どうかした?」
「ちと手を貸してくれよ」

いいわよと立ち上がりかけると、「あー違う違う、このままで」と押しとどめられる。
首をかしげて座り直すと「言葉通りの意味だって。手ェ貸してくれ、ほらこうやって」と手のひらを下に向けるよう示される。
言われるがまま手の甲を彼に向けて差し出すと、ついと指先をとって引かれた。
ウソップは腰に付けたポーチからごそごそといくつか細かい小瓶を取り出してテーブルに並べて、「好きな色選んでくれー」と言った。

「なあに?」
「エナメルと着色料を混ぜて作ったオリジナルのマニキュアだ! 前々からナミに作ってくれって言われててよー。せっかく出来あがったから塗ってやろうとあいつのところ行ったら、珍しく料理なんてしてやがって『今ムリ』とか言いやがって。せっかくだからお前さんにも試させてもらおうかと」

早口でそう言うと、ウソップは「ほら選んでくれよ」と私を急かした。

「なんしょくでもいいぜ」
「じゃあ……これとこれ」

白と淡いグリーンを選んだ。
「よし」と言って彼は早速蓋をあけて再度私の手をしっかりと取る。

「おれが試すと気持ち悪ィことになんだろ。だからロビンが初めてなんだよ」
「光栄ね」
「おれ様はこういうこまけー作業が得意だかんな、綺麗に塗ってやれると思うぜ」

まぁやったことねーけど、と彼は鼻唄をうたいながら軽やかに私の爪先に色を付け始めた。
独特のにおいがほんのりと香る。
集中したら黙りこんでしまいそうなところ、ウソップは塗り始めて間もなく「暇だよなー、いいけど。嵐も敵襲もなくてのんびり」と話し始めた。
彼の器用な手の動きを見つめながら、私も考えるともなく答える。

「そうね、空島から戻ってしばらくは慌ただしかったけど、それから気候も穏やかね」
「眠くなんねェ? おれぁ日なたに倒れ込んだら一秒で眠る自信があるね」
「ふふ、私は本を読んでたから」
「んーでもなんか考え事してたんじゃねぇのか?」

視線を上げて彼を見る。ウソップの視線は私の爪先から離れない。

「なぜ?」
「だってしばらく見てたけどよ、全然ページ進んでねーんだもん。あ、邪魔した?」
「いえ、大丈夫──」

そか、と短く答えて、ウソップはふと黙った。
着色が小指に差し掛かったので集中したらしい。
考えていたことまでばれてしまったわけではないのに、気まずい思いで私も黙り込んだ。
ウソップは小さく細長い小指の爪までも、綺麗に白とグリーンのバイカラーで彩ってくれた。

「ほい逆の手。あ、色変える?」
「いえ……任せるわ」
「んじゃこのままで」

差し出す手を右から左に替え、「しばらく乾かしてな」というウソップの言葉通り右手は宙に浮かせておく。

「にしても、本当に綺麗な手してんなーロビンは」
「そう? ありがとう」
「悪魔の実の能力と関係あんの?」
「多分関係ないんじゃないかと」
「だよなー、と、あ、ゾロ起きた」

唐突に現れたその名前につい目を丸めてしまう。
ウソップは私の後方を見上げていたので、私も首を振ってそちらを確かめる。
くあ、と大きな口をあけてから、彼は「なんでおめーまで女みてぇなことしてんだウソップ」と欠伸混じりに言った。

「おれは塗ってやってるだけ! 女みてぇなことじゃねぇしー!」

「この繊細な手つきと絶妙な配色バランスはおれにしかできねェんだよっ」と彼に向かって歯を剥いて、ウソップはちょんちょんとほんの小さな筆先を動かして私の左爪先を塗り終えた。

「ほい完成ー!」
「ありがとう。素敵」
「ん、おめーの選色もまぁまぁだがなによりおれ様の技術が光っておるな!」

ウソップが高い鼻をさらに高く上に向けたところで、キッチンの扉が開いて「ウソップー!」と甘い声が彼を呼んだ。

「終わったわ、マニキュアやってちょーだい!」
「おまっ、勝手か!」

ふりむきながらナミに叫び返しつつ、ウソップは小声で「しゃーねぇなー」といいながら出した小瓶をポーチにざくざくと仕舞いこむ。
「んじゃ、練習台さんきゅー」と臆面もなくウソップは言い放ち、さっさとキッチンに向かって行った。
「材料費払えよな!」とキッチンに向かって叫んでいる。

ふと足元とテーブルがぐらつき、よくもこんな波の中でこうも綺麗に塗れるものだと爪を眺めて感心してしまう。
どさっと乱暴な音を立てて彼がウソップのいた場所に座ったのは、ふっと左手に息を吹きかけたそのときだった。
言葉を継げずに彼を見つめると、彼は端的に「ペンキくせェな」と呟いた。

「これの匂いが……」
「あぁ」

会話が終わり、ゾロは仏頂面で腕を組む。私はいたたまれずに本を手に取るも、耐え切れずに口を開いた。

「なにか用だった?」
「いやなにも」
「そう……なら」
「用がなくてもいいだろ。別に」

もちろん、いいけど、と応えながら落ち着きなく本の表紙を撫でる。あんなにも心落ち着く紙の感触がざらざらと指に触れ、ちっとも落ち着かない。

「私のことが嫌ではないの」

仏頂面のまま顔を上げ、彼は「なんでだよ」と短く尋ねた。

「だってもう来るなって」
「ありゃあ夜の話だろ」
「夜だとか昼だとか関係あるの?」
「はぁあるに決まってんだろお前昼間っからここでおっぱじめられるわけねェじゃねーか」

わけがわからないまま、ただどんどん彼も私も気色ばんできた。
ぼそぼそと小声ではあるものの、早口の応酬が続く。

「そういうことじゃなくて、私のことが嫌になったからもう来るなって言ったんじゃ」
「誰もんなこと言ってねェだろうが、ただおれはもうここでしねぇぞって」
「じゃああそこじゃなきゃするってこと?」
「そうだ」

柄にもなく勢いづいて話していたので思わず聞き流しそうになった。
「え?」と問い返すと「あ?」と目つき悪くねめつけられる。

「どういうこと?」
「そういうことだろうが」
「わからないわ」

狼狽えるような声が出た。
でも「テメェで考えろよ、学者先生」と言われたときには既に彼の言葉を反芻して考え始めていた。
落ち着いて彼の言葉を呑みこんで、テーブルに本を戻す。
彼は私が置いた本にちらりと視線を落としたが、すぐに興味なさ気に視線を外して私を見た。

「そういうことだ」

に、と彼が口端を上げた。
あっと思わず声が出そうになった。

日の光の下で見る彼の顔は幼いとか大人びて見えるとかかわいいだとかかっこいいだとかそういうあらゆる印象を押しのけてただただ眩しく、もしかしたらあの暗い部屋で彼はこういう顔をしていたのかもしれないけれど、あそこではけして見ることができないのだった。
だって見えないのだから。あの暗さでは、表情も何も。

「あぁ、そういう……」と視線を落とすと綺麗に彩られた自分の爪が目について、ほんのりと華やいだ指先に心が浮かぶ。
彼が私の視線を追ってこちらの手元に目を落とした。
ち、と突然舌を打つので驚いて顔を上げると、せっかく珍しく上がっていた口元が盛大にひんまがっている。

「どうかしたの」
「別に」
「すごく物騒な顔よ」
「うるせぇな」
「どうかしたの」

ぐいっと余所へ顔を向けて彼は言う。

「お前の手が綺麗なことはおれだって知ってる」

まぁ、と間の抜けた声が出た。

「──暗くても見えてた?」
「そらお前……つーか最中じゃなくても見えんだろ、普通」
「そうね、ありがとう」
「おう、たいしたもんだ」

ふふっと笑いこぼすとひんまがった彼の口元もやんわりと笑う。
唐突に彼は音を立てて椅子を引いて立ち上がり、「まだ眠ィ」と欠伸した。欠伸しながらがしがしと頭を掻いて、甲板の隅へと昼寝に戻って行く。
そしてあの砲列甲板の壁を背にしてすぐさまぐうぐうと眠り始めた。

いつか広くて清潔なシーツの上で、ほんのりとした明るみにされされて、何かに脚をぶつけることなく彼と身体を重ねる時が来るかもしれない。
そのときはそこに情熱みたいなものが、そうたとえば私たちのキスみたいな、温度の高いなにかがあればいいと思った。

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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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