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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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カリカチュアの朝1/2/昼1//夕暮れ(R-18)



とんでもなく暗い穴の底にいて、地面はしんしんと冷たく、触れるとざらりとしている。
黒いワンピースの裾は暗闇に同化して地面と布の境目がわからなくなっていて、身体も一緒に闇に溶けていくみたいに感じられた。
ひどく静かで、そのくせ羽虫が飛び回るような細かい雑音が頭の奥でずっと鳴り響いている。
耳を塞ごうと手を上げたら、上げた手の甲がなにかにぶつかり、ハッと目が覚めた。

んが、と大きく鼻を鳴らす音がすぐそばで聞こえた。
両手を広げて大の字に寝転がるゾロの右わきに収まるように、いつのまにか寝入っていたらしい。
どんな夢だかもう思い出せもしないけれど、寝ながら動かした手がゾロの脇腹に当たったのだ。それでもゾロが目を覚ます気配はない。
身体を起こす。
二人を横切るようにシーツの上掛けがしわくちゃになったまま身体にかかっていた。
ふるりと肩が震えて、効きすぎた冷房が部屋をキンキンに冷やしているのに気付く。手を咲かして冷房を止め、ベッドの上から窓の外に目を遣ると外はまだ薄明るかった。

「ゾロ」

起きないで、と思いながら名前を呼んでみる。案の定彼は目を覚まさない。
そっと身体を折りたたむようにして彼の胸に頭を置いた。
深く大きい呼吸で胸がゆっくりと上下し、片耳を胸につけて心音を聴きながら目を閉じるとまるで船の上にいるようだった。

ふと頭に重みがかかり、彼の胸が大きく震えて同時に低い唸り声が下から響いた。
私の頭を掠め、髪を梳きながら離れていった手はそのまま彼の頭上に伸びていって、ゾロは今度は「ぐおお」と言いながら伸びをする。

「今何時だ」
「さあ」
「ここぁどこだった」
「さあ、どこかの宿場ね」
「んだ、なんにもわかんねぇじゃねぇか」

そうなの、とつい笑いがこぼれる。何笑ってやがる、とどやされるが笑いは止まらない。
ゾロがむくりと身体を起こすと、私の身体も一緒に持ち上がった。

「寒ィな」
「今空調を止めたわ」
「服、どこだった」
「まだ乾いてないんじゃないかしら」

ふーん、と興味がないように頭を掻いて、くわぁとあくびをひとつする。そして急に私の上体を引き寄せて、ゾロはまたベッドに倒れ込んだ。
どん、と彼の上に乗り上げるように寝転がってしまう。

「んじゃ乾くまで寝てるか」
「だめよ、帰らなきゃ」
「着るもんがねェ」
「買ってくるわ」
「何着て買いに行くんだよ」

少し考え、それもそうねと私も諦める。だろ、とゾロも頷く。
真新しいとは言いにくいけれど、少なくとも清潔ではあるだろうベッドの上で、私たちは目を合わせ、口づけた。
ゾロは唇を合わせる少し前に、真一文に引き結んだ口を少し開く。
私の両唇を挟むみたいに、閉じ込めるみたいに口づける。
どういう意味があるの、と聞きたくて、私はずっと聞けないでいる。
私たちの口づけには一体どういう意味があるの。

ぐるるる、と深いところから忍び寄ってくるみたいな音で、ゾロのお腹が低く鳴った。
決まり悪そうにゾロが一言「腹減った」と呟く。
でこぼこに割れた彼の腹筋に手を添えて、「私も」と言った。

「なおさら帰らなきゃね」
「あーめんどくせぇ」

子どものようにごねて眉間にしわを寄せる彼を眺めていたら、このままどれだけでも時間をつぶせてしまう。
名残惜しい気持ちを振り払って身体を起こし、彼の身体からシーツをはがして自分の身体に巻きつけた。
風呂場へ向かうと、干した服や下着がまだ水を滴らせている。
「困ったわね」とひとりつぶやき、また部屋へ戻る。
ゾロはベッドの上から手を伸ばしてカーテンを少しずらし、窓の外を見下ろしていた。

「おい、あれ」

彼が指さす窓の下を私も近寄って見下ろす。通りの端で、派手なミニドレスの女と恰幅の良い男が、互いにしなだれかかるみたいにして腕を組んでいた。
買い物帰りだろうか、男は腕にいくつもの紙袋を提げていて、まだ日も明るいのに酔った足取りで宿を物色して歩いていた。
ゾロが彼らを指差した真意に思い当り「悪い人ね」と呟くが、私も既にそれしか方法はないと思っている。
「もらっちまうか、あれ」とゾロが言い、「やってみるわ」と私が答える。
千鳥足の女の足元に手を生やし、彼女の足首をそっと掴んだ。
驚いた女がつまずき、転びかけたところを男が咄嗟に手を伸ばして支える。しかし男の方も酔っているようであり反射神経もよさそうには見えない。女は掴まれた腕だけ残してずるりと膝をつき、男も引っ張られるように身体を傾けた。そして音はここまで届かないが、おそらくガサガサと紙袋が鳴って、男は二つ三つ、袋を地面に落とした。
なにか言葉を交わす男女の背中側で、私の手は紙袋を二つ持ち上げて、彼らの死角となる路地裏までそっと運んでいく。
男が減った紙袋の数に気付かずそのまま持ち上げてまた歩いていくまで、息を詰めて見守った。

「やるじゃねぇか」

ゾロはベッドから腰を上げると、風呂場の棚に畳んでおいてあったローブを羽織った。
「取って来る」と言い、部屋を出ていく。
窓の外を見ていると、しばらくしてゾロが出て来て、通りにぽつんと残された袋を手に取った。
そしてこちらの部屋の方を見上げ、どういう意味か「よう」とでもいうように手を上げてみせる。
私もカーテンの隙間から彼を見下ろし、少し手を振った。
そのあまりの平和さに、涙が出そうだった。

カップルから拝借した紙袋の中身は全て女物だったが、幸いなことに紙袋のひとつは下着で、私の上下が一式揃った。腰の部分とスカートの裾にフリルのついた水色のワンピースはあまりに滑稽な気がしたが、文句は言えない。
サイズが合わずに胸元がいっぱいいっぱいなのを、ワンピースと一緒に入っていた白のジャケットを羽織ることで隠した。

「適当に買ってすぐに戻るわ」
「おう、わりーな」
「あなたがこれを着て買いに行くわけにはいかないもの」
「脚は。いいのか」

忘れていた、と自分の足首を見下ろす。
水に濡れても剥がれてこないテーピングはしっかりと巻き付いたままで、私の足首も痛みを忘れて平気な顔をしている。

「平気。だいぶ楽になったみたいだし、そんなに遠くへは行かないから」

それに彼が買いに行ってまたここに帰ってこられるとは考えにくかった。
でも皆まで言わず、ベッドにぽつねんと座る彼を残して部屋を出る。
この服の元々の持ち主に見つかるわけにはいかないので、宿の建物を出るときには慎重に辺りを見渡した。
日はすでに傾き遠くの建物の裏側へ落ちて行こうとしていて、あたりは薄暗い。
歓楽街で一人は目立つ。半ば小走りで走り抜け、あかりの灯ったネオンのアーチをくぐって服屋のありそうな通りの方へと急いだ。


細い路地を1つ2つ曲がったところで、ハッと足が止まる。
メインストリートはまだ先だが、その通りと平行に走るここも、昼間と景色が一変していた。
店先や家々の玄関口に飾られていたオレンジ色の花が明るく光っている。
昼間に吸い込んだ白い光を放出しているみたいに、惜しげなく花が光っているのだ。
それらがランタンのように通りを照らし、祭りの衣装を着た島民たちが踊るように手を繋いで通りを歩いている。
マンドリンの震えるような低い弦の響きは昼間の軽快さとは打って変わって、酔っ払いの歌声に負けない強さでジャカジャカとかき鳴らされる。
無秩序なようでいて確かに音楽となったその音が、人々の話し声や笑い声とからまりあいながら、島中に満ちていた。

思わず立ち尽くし、上を見上げ、紺色と鈍い青色が混じる夜の入り口みたいな空を確かめる。
塩気の強い食べ物の香りがあちこちから漂い、乾杯のグラスがぶつかる音もまたあちこちから聞こえた。
目移りするように左右を見渡して、通りを過ぎる人の波にもぐりこむ。
客引きさえも酔っ払ったような赤い顔で、一人歩きの私を呼び込もうとする。それらをかわして道の両端をかわるがわる見ながら歩いていたら、ショーウィンドウ越しにマネキンの姿が見えて、その店に人波を横切って飛び込むように入った。

「いらっしゃい」

店の奥から声がして、目を凝らすとカウンターの内側に店主らしい小さな男が座っていた。
後ろを振り返って、私が立っていた場所にあっという間に人が次から次へと流れてくるのを確かめて言う。

「すごい人ね、なんのお祭り?」
「旅の人か」
「えぇ、昨日ついたの」
「ログは2日で貯まる」

知ってるわ、と答えて店の中を見渡す。
主人は私の質問に答える気は無いらしい。
どうもカジュアルな男性用の洋服が中心に扱われているらしく、ちょうど良かったと私はまずゾロの服を調達する。
Tシャツにズボン、それにつばの部分がデザインで擦り切れたキャップを1つ。

「サングラスとかはないかしら」
「ない」

肩をすくめて、今度は私の服を探す。
男性用とはいえ私の身長からサイズ感は問題ないだろうし、変装するにはそのほうが適している。
黒いTシャツと、細身のパンツ、ベルトを選んで店主の元へと持って行った。
無言で服の値札を確かめる男を前に、そうだと思いつく。

「下着はない?男性用の」

無言で壁の方を指差される。
目を向けると、ワゴンにうざむざと積まれた布切れがある。
選り分けて見てみると男性用の靴下や下着などが一緒くたになっていて、その中から一着黒い下着を選んで「これも」と差し出した。
店主は私の意向を推し量るようにしたからちらりと目を上げて、しかし何も言わずに道具を弾いて「14000ベリー」と告げた。
ゾロの分だけ袋に入れてもらい、私は試着用らしい簡易カーテンで仕切られたスペースで今買った服に着替える。
だぶついたTシャツの裾を追ってパンツに差し込み、店を出ると外の熱気はいや増しているようだった。
急いで宿に帰らないと、と来た道を辿る。

私は浮き足立っていた。
祭りの夜、鮮やかな空、子鹿みたいに飛び跳ねる軽やかな音楽。
ひととき肌を重ねたこと、ゾロの服を選んだこと、今この時もゾロが私を待っているということ。
スキップこそしなかったけれど、歩くたびに片手に下げた袋ががさがさとリズミカルに音を立てるだけで胸が弾んだ。

しあわせですこと、と口に出してみる。
ひとごとみたいに言ってみれば客観視できるんじゃないかと思った。
しあわせという語感がそれだけで私を幸福な気持ちにして、客観視だとかもはやどうでもいい。
安っぽく光るネオンのアーチを一人でくぐるおかしな女に向けられる目も気にならなかった。

だけど、宿に戻って何か言いたげな主人のいる窓口を通り過ぎて部屋へ上がったら中はもぬけの殻で、

「ゾロ?」

とただ名前を呼んだだけの私の声がいやにまぬけに響いた。

風呂場に干していた私の服も、彼の服も、買い物袋も何もかもがなくなっていて、狭い室内は暗闇に沈んで口を開けているみたいに私を待ち受けた。
一瞬、部屋を間違えたのかと思う。
けれどベッドの足元には男女から拝借した洋服の紙袋が横倒しに転がっていて、ゴミ箱には私が捨てた包帯の残骸が残っていた。
風呂場はまだ湿り気が淀んでいて、ベッドはしわくちゃのシーツが丸まっていた。

その部屋で私は二度もゾロの名前を呼んだりはしなかった。
ただ冷静に部屋の中を検分し、残した私物がないかを確認して、また部屋を出た。
一階に戻ると、小窓から投げつけるように「会計は終わってるよ」と告げられる。
返事もせずに宿を出た。

とっぷりと暮れた歓楽街は、祭りの通りとは少し毛色の違う賑やかさで明るく足元が照らされていて、行き過ぎる人はどれも火照った顔をてからせて笑っていた。
「おねーさんおねーさんひとり? うちね、あのね男の人にお酒作る女の人探してて」と執拗に後をつけてくるスーツの男を三本の手で捻り上げて、歓楽街を抜ける。

がらんどうの部屋を見た時、私が一番に思ったのは、やっぱりね、だった。

やっぱりね、うそだった。
朝頬張ったクロワッサンも、足元にまとわりついた猫も、おぶわれたときに触れた冷たいピアスの感触も、二本も空けたワインの瓶も。
一瞬繋いだ手の温度も、足の痛みも、倒れ込んだ生ゴミの悪臭さえ、やっぱりなにひとつ私のものではなかった。
どこか上空で誰かが私を笑って見ていて、いつでも簡単に捕まえてしまえるんだぞと私の人生そのものを掌の上に乗せている。
後ろの襟首から冷たい手を差し込まれて背中を撫でられる、走って逃げる私の後ろ髪を掴もうと手が掠める。
私の後ろ暗さを物語る妄想が次々と思いつき、自分でも笑ってしまう。

本当はわかっている。
このまままっすぐいけば大通りに出て、西に向かえば入り江の影にサニー号が停泊している。
船には何人かの仲間がいて、戻った私に笑って「おかえり」と声をかけてくれる。
ごはんはたべたか、買い物はできたか、街はどうだったか、矢継ぎ早に質問されて、私は席につきながら笑ってひとつ1つの質問に答えるのだ。
でもゾロは、けして私に話しかけたりはしない。
そこにいてもいなくても、私の方を見もせずに、黙って酒瓶を傾ける。
ただ転がり落ちるみたいにまっさかさまだった私の恋というやつだけが、静かに、彼に向けて熱を発し続けている。

どん、と肩に人がぶつかった。
夜目でもはっきり赤とわかる鮮やかなドレスを着た女性が、明るい声で「ごめんなさい!」と笑いかけ、くるりと回ってまた踊るように音楽と人の波に乗って消えていく。
彼女を黙って見送って、私はまた船に向かって歩き出す。
明るい光を放つオレンジ色の花は小さな花びらを人いきれに震わせて、そのたびに町全体の灯りが幻想的に揺らめいた。

また、どんと肩に人がぶつかる。
ごめんなさい、というあの明るい声が耳によみがえるよりも早く、手首を掴まれた。

「おい、テメェどこ行きやがる」

ゾロは息を切らしていた。
右手には半透明のビニール袋を提げていて、中にいろんな布切れが押し込まれている。私の服だった。
左手には大きな紙袋があり、少し覗き込めばクリーニングに出した衣類とカーテンだとわかる。
それらをひとつひとつ確かめてから、顔を上げて彼の顔を見た。

「ゾ」
「ひとりでふらふらすんな、探しきれねーだろうが」
「だってあなた」
「お前が出てってすぐ、通りを海軍が走ってった。お前を付けてくのかと思って」
「それで宿を出たの?」

いや、と彼は短く答える。
今度は彼の背後を通った人がその背にぶつかり、ゾロの身体が少しだけこちらに傾く。
人の流れの多いこの場所でたたずむ私たちは明らかに邪魔だった。
けれどそのまま根が生えたように私たちは立ち止まり、動こうとしない。

「んなことで心配がいるほどのタマじゃねぇだろ」
「じゃあなぜ」
「脚、怪我してたろうが」

私と彼の視線が同時に足元に向く。
もはや痛みも熱さも感じないそこを見下ろして、また顔を上げると彼と目があった。

「だから」
「だから?」

口を開いた彼が何かを言い澱み、また閉じて、目をそらす。
たまらずその首に腕を伸ばして抱き着いた。
うお、と小さな声をあげたものの彼はよろめきをせず私を抱きとめる。
代わりにクリーニングの紙袋が地面に落ちた。

ゾロの服は濡れていた。
濡れていたのに、そのまま着たのだ。
そして慌てて部屋を飛び出し、私の後を追った。
私の服をそのままにせず、きちんと持って出て。
だけれど自力で私を見つけ出せるはずもなく、代わりにクリーニング屋だけは見つけて、律儀に荷物を回収し、また私を探して祭りに浮き立つ夜道をひとりで歩く。

やっぱり、本当だった、なにもかも。
誰も私のことを笑ったりはしない。
だってこんなにも好きなんだもの。
必死で生きてる恋なんだもの。
抱きしめたら抱きしめた分だけ、強い力が返ってくるんだもの。

「ゾロ、私今日とても楽しくて」
「ん、あぁ」

要領の得ない声でゾロが相槌を打つ。
「あなたもそうだったらいいのだけど」と彼の肩に顔を押し付けくぐもった声で言う。
ゾロはぽんとひとつ私の背を叩き、

「そりゃよかったな」

とちいさく答えた。

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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足りん
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