OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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R-18!
6
夜はほとんどの住人が集まった。ルフィだけがいなかった。
「サンジくんの夕飯珍しいのに、聞いたらがっかりするわねあいつ」
ナミさんが焼いた手羽先にかじりつきながら言う。あふい、と目をぎゅっと瞑る仕草が愛らしい。立ったまま彼女の表情に目を走らせつつ、何食わぬ顔で手を動かした。
ナミさんとロビンちゃんの取皿に野菜やらいろいろを取り分けてから、下味をつけた別の肉をホットプレートに並べていく。
ゾロは、時間になったら何でもなかったみたいに降りてきて「おう、飯か」とダイニングを覗き込んで、パントリーから酒を取り出した。
ナミさんから「ボトルから直接飲まないでよ。みんなのぶんグラス持ってきなさいよ」と小言を言われてもどこ吹く風で、飲みたきゃてめぇでもってこいとボトルを傾げている。
「魚はねぇのか」とおれに注文までつけて、「貝ならある。あとイカ」と応えると「いいな」とにやっと笑った。
随分さっぱりとした性格というか、一度寝たら寝る前のことなんざ忘れてしまったみたいだ。
くやしいような、ほっとするような、色の違う煙が混ざり合って淀むような心地でおれはもくもくと肉野菜を焼く。
「サンジ、焼いてばかりいないであなたも食べて頂戴」
ひとりだけ優雅にワインを開け、ときどき野菜をついばむように食べるロビンちゃんがおれを気遣う。
やさしいなぁとやに下がって、言われたとおり肉を口に運んだ。
「サンジくん、そろそろ豚肉も焼いてー」
はぁい、と豚を包んだラップを剥がす。
するとナミさんがおれからその肉を取り上げて、「やっぱいいわ。私がやる」とおれの手からトングも奪った。
「いいよ、食べてなよ」
「いいって。それよりあんたも一度座って食べなさいよ。お酒も全然飲んでない」
そういうナミさんは、すでに二本目のビールを開けようとしていた。
少し悩み、言われたとおり腰を下ろして皿に放り込まれた肉と野菜に手を付ける。酒は、正直気が進まなかった。雰囲気で飲みたくなるもので、開けたはいいが連日の仕事で胃と肝臓はぐったりしている。
「ゾロ、お前次の仕事決まってんの?」ウソップが尋ねた。
「いや」
「家賃、遅れたらすぐ追い出すわよ」
まんざら冗談でもない調子でナミさんが言う。おれも気をつけねばと思う。
「前の仕事にほぼ毎日入ってたから金ならある」
「前って工事だろ? お前くらいしか毎日入れねーよ」
「体力なら売るほどあるもんね」
しかし次どうすっかな、とゾロは顎を撫でた。
するとウソップが思いつきをそのまま口に乗せたような軽い調子で、「サンジんとこ、バイトとか新しいホストとか募集してねーの?」と肉をかじりながらおれを見た。
「おれんとこぉ?」
思わず嫌悪感がにじみ出る。この緑頭が黒いスーツに身を包み、レディの横に座りおとなしく笑ったり酒を作ったりしている様子なんぞ、一ミリも想像できない。
「いやいや無理だろこいつに接客業は」
「わかんねーぞ、意外と人気出るかも」
「ぶ、ゾロがホストって」
周囲の反応をよそに、ゾロが考えるように視線を遠くにやった。おいおい、とおれが口を挟むより早く「アリだな」とゾロが言う。
「酒が飲める」
おま、とげんなりし、落ち着こうと手元の酒を飲み下す。
「おまえね、簡単に言うけど酒飲んでるだけの仕事じゃねぇからな。レディ方のお出迎えからお帰りまで神経張り巡らせて、朝起きたときからまめにメールやら電話やらで連絡取って、自分のお客の趣味やら好きなもんやら逐一覚えて、ぜってぇお前にゃできねぇ」
「やってみなきゃわかんねぇだろ」
それはそうだ。「ぜってぇ無理」念押しのように言ってから、たしか黒服がこないだ一人やめたな、とも考えている。ホストはともかくとして、黒服くらいならやってやれないこともないかもしれない。
「本気かよ」
「ん? ああ」
酒瓶を垂直に立て、最後の一滴まで飲み干して口元を拭うゾロが果たして本気で職を求めているようにはまったく見えない。が、黒服がひとり足らないだけで店の周りは悪くなる。だいたい黒服は学生くらいの若いやつがやるもんだが、多少とうが立っていても問題はない。
「しゃーねぇな、聞いといてやるよ」
「ああ、頼む」
「黒服な。雑用係なら空きがあったはずだ。黒服も客に気に入られりゃー酒も飲める」
「飲めるならなんでもいい」
すんなりとゾロが言うので幾分拍子抜けする。ウソップが「んじゃゾロの再就職にもっかい乾杯しよーぜ」とグラスを持ち上げるので、腑に落ちない気持ちのままグラスをぶつけた。
テーブルの上を片付ける頃、おれは立つことも億劫になっていた。赤い顔で息をつき、ソファに沈むと体から水が抜けるようにずるりと体が緩む。伸び切ったゴムのような心地だ。しかし片付けをせねば、と気合を入れて体を起こすと、柔らかな声でロビンちゃんに制された。
「いいわよサンジ、横になってなさい。片付けは私達がやるから」
「や、レディにやらせるわけには」
「いいって。結局あんた立ちっぱなし焼きっぱなしだったし。にしても本当弱いのね」
家だからという気安さのせいか、仕事のときと違って気を張る必要がなかったせいか、缶ビールとワイン少しでぐるぐると回りだした。
ソファの背に体を預け、天井を仰ぐと余計に体が波に揺れるような感覚がする。
結局レディたちのお言葉に甘え、片付けは任せることにした。遠くから、彼女たちの楽しげな声がこまかく聞こえてくるのもいいもんだ。
二人のどちらかがリビングの窓を開けたのか、煙たい空気がさっと流れていき、新鮮な夜の匂いがした。冷えた空気が心地よく、知らないうちにそのまままどろむ。
夢と現実の間のようなところで、淡い水彩画のような色がまぶたのうらに浮かんでは消える。
ぐぁ、と自分のいびきで目が覚めた。
跳ねるように体を起こす。もともと少量だった酒はすぐに抜けたようで、もう目が回るようなことはない。
キッチンは暗く静かで、おれのいるリビングの明かりだけがついている。
ぷあーっと遠くでクラクションのような音が鳴り響き、その音を目で追うように窓の方を見たらソファの端っこにナミさんがゆるりと座っている。こちらに足を伸ばしてパソコンを見つめていた。
「うわ、ごめんすげえ寝てた」
「うん、よく寝てた。いいわよ別に」
画面から目を離さずに言って、マグカップの中身をごくりと飲んだ。その喉の動きを思わず見つめている。
しまったな、と前髪をかきあげた。
「今何時?」
「22時半」
「うわ、やっべ。そんなに?」
「いいじゃない別に」
ナミさんは細いフレームのメガネをかけていた。細い鼻先にメガネを乗せた横顔は精緻な機械みたいに見える。
思わず手を伸ばし、彼女のこちらに伸ばしたつま先をそっとつまんだ。
怪訝そうにナミさんがおれを見る。
つ、と手を滑らして足の甲に触れる。細い骨が浮き出たそこは川の水みたいに冷えていた。
まだ酔いの欠片が残っているのだろうか。脳みその浅いところをさらうようにしかものを考えることができない。
短く切りそろえられた足の爪。薄いガラスのようなそこを指の腹で撫でる。ナミさんは動かなかった。おれの手の動きをじっと見ている。
足の甲をたどり、足裏に指を伸ばし、冷えたかかとを包む。筋張った足首を掴んだとき、ナミさんがパソコンを閉じた。
手が伸びてくる。おれの顔に触れるのかと思いきや、指先は顎の下に落ちる。
シャツの襟を、まるでカーテンの隙間から外を覗くときみたいに細い指がそっと払い、おれの鎖骨に触れた。
火が煙草の先を削るときに一瞬赤く灯るように、触れられた場所が熱を持つ。
おれはずっと彼女の足首を見ていた。丹念にそこを温めるように握り続けていた。
ナミさんの指はおれの鎖骨をたどり、シャツの下、肌の上を這い、肩の方に伸びていく。
するり、唐突にナミさんがおれの肩に手をかけた。
引き寄せられたような、自分から寄っていったような、どっちつかずのまま唇が重なる。
足首からふくらはぎに手を滑らせる。意味がないほど薄くて軽いスカートの中に、たやすく侵入する。
ナミさんの両手はおれの首を掴んでいた。そのままするするとシャツの中を出たり入ったりする。背中を這う冷たいその感触に矢も盾もたまらず、腰を引き寄せて深く舌を差し込んだ。
んう、とナミさんが小さく呻く。
触れたふくらはぎは頼りないほど細く、なのにやわらかくはりつめている。もっと奥へ、奥へ、と手がはやり、同時に彼女を引き寄せるように強く舌を吸う。太腿の裏に湿度を感じたとき、不意に我に返ったような心地で唇を離した。
スカートの中から手を出して、彼女の顔にかかった髪を払う。水面みたいに揺れた目がおれを見上げる。
「部屋に来てよ」
ささやくように言うと、ナミさんは少し視線を外し、小さな声で「いいけど」と言った。
「その前にお風呂入りたい。煙くさいし、服も髪も」
「無理、待てねぇ」
よいしょもなく彼女の腰を持ち上げた。
うわ、と声を上げ、とっさに彼女がおれの肩を掴む。一度自分の膝の上に座らせてから、勢いをつけて立ち上がる。肘でリビングの明かりを消した。
幸い廊下には誰もいなかった。誰かが風呂を使っているのか、水の音が小さく響いている。
三階まで登るあいだ、ナミさんはおとなしくおれの肩に掴まっていた。
自室に律儀に鍵をかけていたせいで、入るのに少々手間取る。
「下ろしてよ」
小さな声で彼女が言ったが、無視して片手で鍵を開ける。
下ろしてしまえば、とたんに彼女が逃げてしまうような気がした。窓の隙間から漏れる夜風みたいに、するりと薄いその身をかわして逃げ去ってしまうような気がしていた。
部屋に入ると、自室の気の置けない空気に包まれる。そんなところへ彼女を連れ込むことに成功したのだと思うと、より一層浮遊感が増す。いい意味で歯の根が噛み合わないような、喜びで浮足立つ一歩手前のような。
一度ベッドに腰を下ろした。ナミさんはおれの腿の上に腰掛けて、暗がりの中ぐるりと部屋を見渡した。ぼんやりとした窓の灯で、部屋の中は深い紺色に落ちている。
「初めて入った」
サンジくんの部屋、とナミさんは声を潜める。前髪をかきあげ、美しい額に唇を付けた。
「もう出なくていいよ」
本心だった。このまま二人で、ずっとここにいられたらと子供のように思う。
誰にも見られることはない。おれだけの彼女を手に入れる。
「おなかすいちゃうわよ」
ナミさんがまたおれの鎖骨を撫でる。骨をたどるように、ゆっくりと指を動かす。その指が下に落ち、おれの胸に手のひらを乗せた。
ずるんと皮が剥けるように、欲望が顔を出す。
小さな顔を両手で持ち上げ、飲み込むみたいに口付けた。シャツをしたからすくい上げ、ナミさんが少し慌てて手を上げてくれるよりも早く布切れを引っ張り上げて取り去る。
彼女の体を強く自分に押し付けて、苦しげな息が漏れるのも無視して、少し浮かせた腰から長いスカートを抜き取った。脱げきらなかったそれがナミさんの足首辺りに絡まっていたが、構うことなく太ももの裏を掴む。下着の隙間から指を差し込んで、布の切れ目に沿うように撫でると堪え切れない息が彼女の唇の隙間から漏れた。
うれしくなり、力を緩めるとナミさんが脱力したようにおれから少し離れた。その顔に、今すぐ残りの衣服も取り去ってすぐにでも入ってしまいたい気持ちが爆発しそうになる。
だが、ここはおれの部屋だ。共用のリビングではない。時間もまだ遅くない。急ぐ必要なんざないのだと自分を落ち着かせる。しかしそれがうれしくて、ますます気がはやる。
ナミさんの息が整うのを待って、訊いた。
「ナミさん、昨日もおれとしたくて待っててくれた?」
ナミさんがしたように、おれも彼女の細い鎖骨に指を這わせる。つまむだけで折れてしまいそうな頼りなさの下、今にも下着からこぼれそうな胸が彼女の呼吸で上下する。
「そういう、わけじゃ」
ないけど、と声が途切れる。
片手で彼女の胸を包むように持ち上げる。下着の上から指を先端に滑らせる。
「でも」と彼女が言う。
「そろそろ帰ってくるかなって、思って」
それだけ。
下着をずり下げる。柔らかな肌に唇を付ける。持ち上げて、掴んで、離して、撫でて、唇で吸う。
胸が苦しいほど喜びに満たされる。堪えていないと叫びだしそうなほど、そうでなければ彼女の体を強く掴んで握りつぶしてしまいかねないほど、力のようなものが体の奥から充足する。
とんでもないひとだ。
下着を取り去ったとき、彼女の手がおれの下に伸びて触れた。
不意を突かれ、思わず「う」とみっともなく呻いた。
しなやかな手がおれのものに触れようとうごめいている様子が見なくても想像でき、とたんに視界がちかちかと爆ぜそうになる。
このまま身を任せてしまいたい欲望を振り払うように、ナミさんをベッドに下ろして体を横たえた。
手が離れ、ほっとするのと名残惜しいのと両方の気持ちを抱えたまま彼女を抱きしめる。重、とナミさんがつぶやく。
下も抜き取ってすべて剥いてしまったものの、なぜだか惜しいような気にもなる。少しの布をまとった姿が余計にそそるのだろうが、正直もうそんな余裕はなかった。
膝で脚を割り、その間に触れる。ぬるりとすぐに指が滑って沈んだ。
ふ、と小さな息が愛らしい唇から漏れる。ゆっくりとナミさんがおれのシャツを掴んで引き寄せ、億劫そうに緩慢な仕草でボタンを一つずつ外していく。脱がされて、背中に直に空気が触れて汗をかいているのだと気付いた。
指で入り口を擦って、かき混ぜて、そのたびに細い悲鳴みたいな声が上がるのを、一つずつ飲み込んでいく。
滴った何かがシーツを濡らし、どんどんおれたちの間の温度と湿度も上がっていく。
ナミさんの手がおれの下に伸び、ジッパーを引き下げる。うわ、と声を上げそうになるのを堪えて彼女の手をベッドに縫い付けた。
なんで、というようにナミさんがおれを見上げる。そんな事をさせるくらいなら、もう入れてしまいたかった。繋がって、ずぶずぶに飲み込んでもらいたい。
「入れてい」と訊くとかすかに頷いたので、ベッドのそばの衣装ケースに手を伸ばし、手探りで目的のものを取り出す。
ナミさんの体に毛布をかけてからゴムの封を破いていると、そっと背中に柔らかな重みがのしかかってきた。
毛布を体に包んだナミさんが、おれの背中から前を覗き込む。
「つけてあげる」
両手がおれのものを包むように、少しずつゴムを引き上げる。指がきゅ、と締まるたびに目を瞑りそうになる。が、もったいなくてずっと見ていた。背徳感に似た何かがぞわぞわと坐骨のあたりから這い上がる。
付け終わるやいなや、もう紳士的に礼を言うこともできず彼女の足を持ち上げた。
勢いよく貫きそうになるのを鼻から呼吸で抜いて、ゆっくりと腰を沈める。
「ん、う」
食いしばるような彼女の声に不安になり、「痛い?」と尋ねるがナミさんはすぐに首を振る。何度も立ち止まりながら奥まで沈めきると、はあとおれたちは同時に息を吐いた。
熱く、吸い付くように飲み込まれている。そのまま持っていかれそうになる。どうかするとじっとしていても果ててしまいそうなほど、気持ちが良かった。
理性が残っているうちにと彼女の顔を見下ろすと、堪えるように眉間に皺を寄せている。
痛いわけでもないようなので、その皺のあたりに唇を付けて、浅く腰を動かした。
「ひ、あ、サンジく」
ナミさんの指が、はっしとおれの肩を掴んだ。その目が霞がかったように宙を見る。乾きかけた唇が小さく震えている。
おれを飲み込むそこは湿り続けていて、彼女の腰を持ち上げて動かすと肌を伝った液体がぬるりと触れた。
無心で動いた。離れたくなくて、ずっと彼女の肩や腰を抱きしめていた。
ナミさんもおれの肩を掴み、その手は首へと滑り、すがるようにおれの頭を抱え込む。
肌がぶつかる音も聞こえず、ナミさんの息遣いだけが耳に直接響いて頭の芯を痺れさせる。
「や、」とひときわ高い声でナミさんがないたのと同時に頭の裏が熱くなり、快感に押し流されるようにして果てた。
温かく湿った空気が部屋にこもる。ナミさんを潰さないよう、ベッドに四肢をついて体の力を抜いた。
ぐったりと手足を伸ばしたナミさんは上方を見上げたまま動かないので心配になってその頬に触れると、今おれの存在に気付いたようにこちらを見て少し笑った。
その顔があまりに可愛く、また意識を手放しそうになる。なんとか堪えて頬に、唇に、無数にキスをする。
黙って受け入れていたナミさんは、やがて「もういいって」と笑いながらおれの顔を押しのけた。
「お風呂」
ナミさんが身体を起こそうとする。それを遮るようにナミさんの身体に腕を絡ませて、抱き込んだ。
「待って、もうちょっとこうしてたい」
我ながら女々しいなと思ったが、離れたくなかった。このまま二人で疲れた身体を横たえて、気絶するように眠ってしまいたかった。朝、白くて健康的な光に照らされて目が覚めるまで。
しかしナミさんはおれの手をぺちぺちと叩いて、「もう離して」と身をよじる。
本気で嫌がっているようではなかったが、仕方なく力を緩めるとナミさんはけだるそうに身体を起こし、ふうとひとつ息をついた。
「ねむた……」
「ここで寝たらいいさ」
「お風呂に入りたいんだって」
ナミさんはベッドの下に散らばった下着を集め、身につけ始めた。仕方がないのでおれも身体を起こし、自分のパンツを探して身につける。
ぬるいお湯に長く身体を浸けていたように、身体が重く心地よい眠気が波のようにやってくる。
ナミさんも同じようで、ふわあとあくびをした。それでも、風呂に入るというのは本気のようで、彼女は立ち上がってしまう。
「先に入っていい?」
「一緒には?」
「だめ」
うなだれるおれを見下ろして小さく笑い、ナミさんは手早く衣服も身に着けた。
ついに出ていってしまいそうになったので、とっさにその手を取ってすがるように唇を付けた。
そのまま彼女を見上げると、ナミさんは「なんて顔すんのよ」と困ったように笑っている。
「また来てよ」
ナミさんは不意を突かれたように少し目を丸くして、おれに口付けられた指先を見た。
気持ちよかっただろ?
問われたことの意味を少し考えるようにかたまってから、ナミさんはおれの目を見つめ、「うん」と言った。
「すごくね」
「おれも」
指先から手のひら、手首まで唇を這わせてから、その手を離した。
ナミさんは手首を反対の手でぎゅっと握って、踵を返した。
「おやすみ」
部屋を出るとき、少し口元に笑みを乗せてそう言うと、ナミさんは暗い廊下に溶け込むようにさっと消えた。
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夜はほとんどの住人が集まった。ルフィだけがいなかった。
「サンジくんの夕飯珍しいのに、聞いたらがっかりするわねあいつ」
ナミさんが焼いた手羽先にかじりつきながら言う。あふい、と目をぎゅっと瞑る仕草が愛らしい。立ったまま彼女の表情に目を走らせつつ、何食わぬ顔で手を動かした。
ナミさんとロビンちゃんの取皿に野菜やらいろいろを取り分けてから、下味をつけた別の肉をホットプレートに並べていく。
ゾロは、時間になったら何でもなかったみたいに降りてきて「おう、飯か」とダイニングを覗き込んで、パントリーから酒を取り出した。
ナミさんから「ボトルから直接飲まないでよ。みんなのぶんグラス持ってきなさいよ」と小言を言われてもどこ吹く風で、飲みたきゃてめぇでもってこいとボトルを傾げている。
「魚はねぇのか」とおれに注文までつけて、「貝ならある。あとイカ」と応えると「いいな」とにやっと笑った。
随分さっぱりとした性格というか、一度寝たら寝る前のことなんざ忘れてしまったみたいだ。
くやしいような、ほっとするような、色の違う煙が混ざり合って淀むような心地でおれはもくもくと肉野菜を焼く。
「サンジ、焼いてばかりいないであなたも食べて頂戴」
ひとりだけ優雅にワインを開け、ときどき野菜をついばむように食べるロビンちゃんがおれを気遣う。
やさしいなぁとやに下がって、言われたとおり肉を口に運んだ。
「サンジくん、そろそろ豚肉も焼いてー」
はぁい、と豚を包んだラップを剥がす。
するとナミさんがおれからその肉を取り上げて、「やっぱいいわ。私がやる」とおれの手からトングも奪った。
「いいよ、食べてなよ」
「いいって。それよりあんたも一度座って食べなさいよ。お酒も全然飲んでない」
そういうナミさんは、すでに二本目のビールを開けようとしていた。
少し悩み、言われたとおり腰を下ろして皿に放り込まれた肉と野菜に手を付ける。酒は、正直気が進まなかった。雰囲気で飲みたくなるもので、開けたはいいが連日の仕事で胃と肝臓はぐったりしている。
「ゾロ、お前次の仕事決まってんの?」ウソップが尋ねた。
「いや」
「家賃、遅れたらすぐ追い出すわよ」
まんざら冗談でもない調子でナミさんが言う。おれも気をつけねばと思う。
「前の仕事にほぼ毎日入ってたから金ならある」
「前って工事だろ? お前くらいしか毎日入れねーよ」
「体力なら売るほどあるもんね」
しかし次どうすっかな、とゾロは顎を撫でた。
するとウソップが思いつきをそのまま口に乗せたような軽い調子で、「サンジんとこ、バイトとか新しいホストとか募集してねーの?」と肉をかじりながらおれを見た。
「おれんとこぉ?」
思わず嫌悪感がにじみ出る。この緑頭が黒いスーツに身を包み、レディの横に座りおとなしく笑ったり酒を作ったりしている様子なんぞ、一ミリも想像できない。
「いやいや無理だろこいつに接客業は」
「わかんねーぞ、意外と人気出るかも」
「ぶ、ゾロがホストって」
周囲の反応をよそに、ゾロが考えるように視線を遠くにやった。おいおい、とおれが口を挟むより早く「アリだな」とゾロが言う。
「酒が飲める」
おま、とげんなりし、落ち着こうと手元の酒を飲み下す。
「おまえね、簡単に言うけど酒飲んでるだけの仕事じゃねぇからな。レディ方のお出迎えからお帰りまで神経張り巡らせて、朝起きたときからまめにメールやら電話やらで連絡取って、自分のお客の趣味やら好きなもんやら逐一覚えて、ぜってぇお前にゃできねぇ」
「やってみなきゃわかんねぇだろ」
それはそうだ。「ぜってぇ無理」念押しのように言ってから、たしか黒服がこないだ一人やめたな、とも考えている。ホストはともかくとして、黒服くらいならやってやれないこともないかもしれない。
「本気かよ」
「ん? ああ」
酒瓶を垂直に立て、最後の一滴まで飲み干して口元を拭うゾロが果たして本気で職を求めているようにはまったく見えない。が、黒服がひとり足らないだけで店の周りは悪くなる。だいたい黒服は学生くらいの若いやつがやるもんだが、多少とうが立っていても問題はない。
「しゃーねぇな、聞いといてやるよ」
「ああ、頼む」
「黒服な。雑用係なら空きがあったはずだ。黒服も客に気に入られりゃー酒も飲める」
「飲めるならなんでもいい」
すんなりとゾロが言うので幾分拍子抜けする。ウソップが「んじゃゾロの再就職にもっかい乾杯しよーぜ」とグラスを持ち上げるので、腑に落ちない気持ちのままグラスをぶつけた。
テーブルの上を片付ける頃、おれは立つことも億劫になっていた。赤い顔で息をつき、ソファに沈むと体から水が抜けるようにずるりと体が緩む。伸び切ったゴムのような心地だ。しかし片付けをせねば、と気合を入れて体を起こすと、柔らかな声でロビンちゃんに制された。
「いいわよサンジ、横になってなさい。片付けは私達がやるから」
「や、レディにやらせるわけには」
「いいって。結局あんた立ちっぱなし焼きっぱなしだったし。にしても本当弱いのね」
家だからという気安さのせいか、仕事のときと違って気を張る必要がなかったせいか、缶ビールとワイン少しでぐるぐると回りだした。
ソファの背に体を預け、天井を仰ぐと余計に体が波に揺れるような感覚がする。
結局レディたちのお言葉に甘え、片付けは任せることにした。遠くから、彼女たちの楽しげな声がこまかく聞こえてくるのもいいもんだ。
二人のどちらかがリビングの窓を開けたのか、煙たい空気がさっと流れていき、新鮮な夜の匂いがした。冷えた空気が心地よく、知らないうちにそのまままどろむ。
夢と現実の間のようなところで、淡い水彩画のような色がまぶたのうらに浮かんでは消える。
ぐぁ、と自分のいびきで目が覚めた。
跳ねるように体を起こす。もともと少量だった酒はすぐに抜けたようで、もう目が回るようなことはない。
キッチンは暗く静かで、おれのいるリビングの明かりだけがついている。
ぷあーっと遠くでクラクションのような音が鳴り響き、その音を目で追うように窓の方を見たらソファの端っこにナミさんがゆるりと座っている。こちらに足を伸ばしてパソコンを見つめていた。
「うわ、ごめんすげえ寝てた」
「うん、よく寝てた。いいわよ別に」
画面から目を離さずに言って、マグカップの中身をごくりと飲んだ。その喉の動きを思わず見つめている。
しまったな、と前髪をかきあげた。
「今何時?」
「22時半」
「うわ、やっべ。そんなに?」
「いいじゃない別に」
ナミさんは細いフレームのメガネをかけていた。細い鼻先にメガネを乗せた横顔は精緻な機械みたいに見える。
思わず手を伸ばし、彼女のこちらに伸ばしたつま先をそっとつまんだ。
怪訝そうにナミさんがおれを見る。
つ、と手を滑らして足の甲に触れる。細い骨が浮き出たそこは川の水みたいに冷えていた。
まだ酔いの欠片が残っているのだろうか。脳みその浅いところをさらうようにしかものを考えることができない。
短く切りそろえられた足の爪。薄いガラスのようなそこを指の腹で撫でる。ナミさんは動かなかった。おれの手の動きをじっと見ている。
足の甲をたどり、足裏に指を伸ばし、冷えたかかとを包む。筋張った足首を掴んだとき、ナミさんがパソコンを閉じた。
手が伸びてくる。おれの顔に触れるのかと思いきや、指先は顎の下に落ちる。
シャツの襟を、まるでカーテンの隙間から外を覗くときみたいに細い指がそっと払い、おれの鎖骨に触れた。
火が煙草の先を削るときに一瞬赤く灯るように、触れられた場所が熱を持つ。
おれはずっと彼女の足首を見ていた。丹念にそこを温めるように握り続けていた。
ナミさんの指はおれの鎖骨をたどり、シャツの下、肌の上を這い、肩の方に伸びていく。
するり、唐突にナミさんがおれの肩に手をかけた。
引き寄せられたような、自分から寄っていったような、どっちつかずのまま唇が重なる。
足首からふくらはぎに手を滑らせる。意味がないほど薄くて軽いスカートの中に、たやすく侵入する。
ナミさんの両手はおれの首を掴んでいた。そのままするするとシャツの中を出たり入ったりする。背中を這う冷たいその感触に矢も盾もたまらず、腰を引き寄せて深く舌を差し込んだ。
んう、とナミさんが小さく呻く。
触れたふくらはぎは頼りないほど細く、なのにやわらかくはりつめている。もっと奥へ、奥へ、と手がはやり、同時に彼女を引き寄せるように強く舌を吸う。太腿の裏に湿度を感じたとき、不意に我に返ったような心地で唇を離した。
スカートの中から手を出して、彼女の顔にかかった髪を払う。水面みたいに揺れた目がおれを見上げる。
「部屋に来てよ」
ささやくように言うと、ナミさんは少し視線を外し、小さな声で「いいけど」と言った。
「その前にお風呂入りたい。煙くさいし、服も髪も」
「無理、待てねぇ」
よいしょもなく彼女の腰を持ち上げた。
うわ、と声を上げ、とっさに彼女がおれの肩を掴む。一度自分の膝の上に座らせてから、勢いをつけて立ち上がる。肘でリビングの明かりを消した。
幸い廊下には誰もいなかった。誰かが風呂を使っているのか、水の音が小さく響いている。
三階まで登るあいだ、ナミさんはおとなしくおれの肩に掴まっていた。
自室に律儀に鍵をかけていたせいで、入るのに少々手間取る。
「下ろしてよ」
小さな声で彼女が言ったが、無視して片手で鍵を開ける。
下ろしてしまえば、とたんに彼女が逃げてしまうような気がした。窓の隙間から漏れる夜風みたいに、するりと薄いその身をかわして逃げ去ってしまうような気がしていた。
部屋に入ると、自室の気の置けない空気に包まれる。そんなところへ彼女を連れ込むことに成功したのだと思うと、より一層浮遊感が増す。いい意味で歯の根が噛み合わないような、喜びで浮足立つ一歩手前のような。
一度ベッドに腰を下ろした。ナミさんはおれの腿の上に腰掛けて、暗がりの中ぐるりと部屋を見渡した。ぼんやりとした窓の灯で、部屋の中は深い紺色に落ちている。
「初めて入った」
サンジくんの部屋、とナミさんは声を潜める。前髪をかきあげ、美しい額に唇を付けた。
「もう出なくていいよ」
本心だった。このまま二人で、ずっとここにいられたらと子供のように思う。
誰にも見られることはない。おれだけの彼女を手に入れる。
「おなかすいちゃうわよ」
ナミさんがまたおれの鎖骨を撫でる。骨をたどるように、ゆっくりと指を動かす。その指が下に落ち、おれの胸に手のひらを乗せた。
ずるんと皮が剥けるように、欲望が顔を出す。
小さな顔を両手で持ち上げ、飲み込むみたいに口付けた。シャツをしたからすくい上げ、ナミさんが少し慌てて手を上げてくれるよりも早く布切れを引っ張り上げて取り去る。
彼女の体を強く自分に押し付けて、苦しげな息が漏れるのも無視して、少し浮かせた腰から長いスカートを抜き取った。脱げきらなかったそれがナミさんの足首辺りに絡まっていたが、構うことなく太ももの裏を掴む。下着の隙間から指を差し込んで、布の切れ目に沿うように撫でると堪え切れない息が彼女の唇の隙間から漏れた。
うれしくなり、力を緩めるとナミさんが脱力したようにおれから少し離れた。その顔に、今すぐ残りの衣服も取り去ってすぐにでも入ってしまいたい気持ちが爆発しそうになる。
だが、ここはおれの部屋だ。共用のリビングではない。時間もまだ遅くない。急ぐ必要なんざないのだと自分を落ち着かせる。しかしそれがうれしくて、ますます気がはやる。
ナミさんの息が整うのを待って、訊いた。
「ナミさん、昨日もおれとしたくて待っててくれた?」
ナミさんがしたように、おれも彼女の細い鎖骨に指を這わせる。つまむだけで折れてしまいそうな頼りなさの下、今にも下着からこぼれそうな胸が彼女の呼吸で上下する。
「そういう、わけじゃ」
ないけど、と声が途切れる。
片手で彼女の胸を包むように持ち上げる。下着の上から指を先端に滑らせる。
「でも」と彼女が言う。
「そろそろ帰ってくるかなって、思って」
それだけ。
下着をずり下げる。柔らかな肌に唇を付ける。持ち上げて、掴んで、離して、撫でて、唇で吸う。
胸が苦しいほど喜びに満たされる。堪えていないと叫びだしそうなほど、そうでなければ彼女の体を強く掴んで握りつぶしてしまいかねないほど、力のようなものが体の奥から充足する。
とんでもないひとだ。
下着を取り去ったとき、彼女の手がおれの下に伸びて触れた。
不意を突かれ、思わず「う」とみっともなく呻いた。
しなやかな手がおれのものに触れようとうごめいている様子が見なくても想像でき、とたんに視界がちかちかと爆ぜそうになる。
このまま身を任せてしまいたい欲望を振り払うように、ナミさんをベッドに下ろして体を横たえた。
手が離れ、ほっとするのと名残惜しいのと両方の気持ちを抱えたまま彼女を抱きしめる。重、とナミさんがつぶやく。
下も抜き取ってすべて剥いてしまったものの、なぜだか惜しいような気にもなる。少しの布をまとった姿が余計にそそるのだろうが、正直もうそんな余裕はなかった。
膝で脚を割り、その間に触れる。ぬるりとすぐに指が滑って沈んだ。
ふ、と小さな息が愛らしい唇から漏れる。ゆっくりとナミさんがおれのシャツを掴んで引き寄せ、億劫そうに緩慢な仕草でボタンを一つずつ外していく。脱がされて、背中に直に空気が触れて汗をかいているのだと気付いた。
指で入り口を擦って、かき混ぜて、そのたびに細い悲鳴みたいな声が上がるのを、一つずつ飲み込んでいく。
滴った何かがシーツを濡らし、どんどんおれたちの間の温度と湿度も上がっていく。
ナミさんの手がおれの下に伸び、ジッパーを引き下げる。うわ、と声を上げそうになるのを堪えて彼女の手をベッドに縫い付けた。
なんで、というようにナミさんがおれを見上げる。そんな事をさせるくらいなら、もう入れてしまいたかった。繋がって、ずぶずぶに飲み込んでもらいたい。
「入れてい」と訊くとかすかに頷いたので、ベッドのそばの衣装ケースに手を伸ばし、手探りで目的のものを取り出す。
ナミさんの体に毛布をかけてからゴムの封を破いていると、そっと背中に柔らかな重みがのしかかってきた。
毛布を体に包んだナミさんが、おれの背中から前を覗き込む。
「つけてあげる」
両手がおれのものを包むように、少しずつゴムを引き上げる。指がきゅ、と締まるたびに目を瞑りそうになる。が、もったいなくてずっと見ていた。背徳感に似た何かがぞわぞわと坐骨のあたりから這い上がる。
付け終わるやいなや、もう紳士的に礼を言うこともできず彼女の足を持ち上げた。
勢いよく貫きそうになるのを鼻から呼吸で抜いて、ゆっくりと腰を沈める。
「ん、う」
食いしばるような彼女の声に不安になり、「痛い?」と尋ねるがナミさんはすぐに首を振る。何度も立ち止まりながら奥まで沈めきると、はあとおれたちは同時に息を吐いた。
熱く、吸い付くように飲み込まれている。そのまま持っていかれそうになる。どうかするとじっとしていても果ててしまいそうなほど、気持ちが良かった。
理性が残っているうちにと彼女の顔を見下ろすと、堪えるように眉間に皺を寄せている。
痛いわけでもないようなので、その皺のあたりに唇を付けて、浅く腰を動かした。
「ひ、あ、サンジく」
ナミさんの指が、はっしとおれの肩を掴んだ。その目が霞がかったように宙を見る。乾きかけた唇が小さく震えている。
おれを飲み込むそこは湿り続けていて、彼女の腰を持ち上げて動かすと肌を伝った液体がぬるりと触れた。
無心で動いた。離れたくなくて、ずっと彼女の肩や腰を抱きしめていた。
ナミさんもおれの肩を掴み、その手は首へと滑り、すがるようにおれの頭を抱え込む。
肌がぶつかる音も聞こえず、ナミさんの息遣いだけが耳に直接響いて頭の芯を痺れさせる。
「や、」とひときわ高い声でナミさんがないたのと同時に頭の裏が熱くなり、快感に押し流されるようにして果てた。
温かく湿った空気が部屋にこもる。ナミさんを潰さないよう、ベッドに四肢をついて体の力を抜いた。
ぐったりと手足を伸ばしたナミさんは上方を見上げたまま動かないので心配になってその頬に触れると、今おれの存在に気付いたようにこちらを見て少し笑った。
その顔があまりに可愛く、また意識を手放しそうになる。なんとか堪えて頬に、唇に、無数にキスをする。
黙って受け入れていたナミさんは、やがて「もういいって」と笑いながらおれの顔を押しのけた。
「お風呂」
ナミさんが身体を起こそうとする。それを遮るようにナミさんの身体に腕を絡ませて、抱き込んだ。
「待って、もうちょっとこうしてたい」
我ながら女々しいなと思ったが、離れたくなかった。このまま二人で疲れた身体を横たえて、気絶するように眠ってしまいたかった。朝、白くて健康的な光に照らされて目が覚めるまで。
しかしナミさんはおれの手をぺちぺちと叩いて、「もう離して」と身をよじる。
本気で嫌がっているようではなかったが、仕方なく力を緩めるとナミさんはけだるそうに身体を起こし、ふうとひとつ息をついた。
「ねむた……」
「ここで寝たらいいさ」
「お風呂に入りたいんだって」
ナミさんはベッドの下に散らばった下着を集め、身につけ始めた。仕方がないのでおれも身体を起こし、自分のパンツを探して身につける。
ぬるいお湯に長く身体を浸けていたように、身体が重く心地よい眠気が波のようにやってくる。
ナミさんも同じようで、ふわあとあくびをした。それでも、風呂に入るというのは本気のようで、彼女は立ち上がってしまう。
「先に入っていい?」
「一緒には?」
「だめ」
うなだれるおれを見下ろして小さく笑い、ナミさんは手早く衣服も身に着けた。
ついに出ていってしまいそうになったので、とっさにその手を取ってすがるように唇を付けた。
そのまま彼女を見上げると、ナミさんは「なんて顔すんのよ」と困ったように笑っている。
「また来てよ」
ナミさんは不意を突かれたように少し目を丸くして、おれに口付けられた指先を見た。
気持ちよかっただろ?
問われたことの意味を少し考えるようにかたまってから、ナミさんはおれの目を見つめ、「うん」と言った。
「すごくね」
「おれも」
指先から手のひら、手首まで唇を這わせてから、その手を離した。
ナミさんは手首を反対の手でぎゅっと握って、踵を返した。
「おやすみ」
部屋を出るとき、少し口元に笑みを乗せてそう言うと、ナミさんは暗い廊下に溶け込むようにさっと消えた。
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