OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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つらい、とだだ漏れの感情を呟くとナミさんは初めて共感するように黙ってうなずいた。
ふたりだけのキッチンで、9人分の料理が並ぶ大きなダイニングテーブルを挟んで向かい合って座るおれたちはちょうど手を伸ばせば触れ合えるけれど、そうしようとしなければ触れ合うこともできなくて、お互いに伸ばすことのない手を胸の前に折りたたんでうつむいていた。
「こんなふうに終わるなら」
ナミさんが言う。
「始めなきゃよかった」
強く芯の通った声が、今ばかりはわずかにふるえている。おれにはわかる。
「あんたもそう思ってるでしょう」
答えることができず、言葉を探す時間をかせぐようにたばこに火を付ける。
船の揺れに合わせるみたいに、煙も不規則にただよう。
始めなきゃよかったのかもしれない。でも、今までの時間が全部無駄だったのかと言うとそうではない。絶対に違う。
どうしようもなくおれたちはそばにいたかったし、必要だったから求めたのだ。
なくてもよかった時間は思い返すほど一寸たりともなかったはずだと思えるのに、その時間をこれ以上つむぐことができないのはどうしてだろう。
「少なくとも」
声がふるえそうになる。みっともなくて、息を継ぐようにたばこを吸う。
「おれは本当にナミさんが」
「わかってる」
強く彼女が言った。
「そんなことはわかってるのよ」
だからもう言ってくれるなと封じられた気がして、口をつぐんだ。
「私だって」
ナミさんもそれ以上言わなかった。聞きたくてたまらないのに、いつものように気安くねだることができない。
ナミさんは一度顔を手のひらで覆い、振り切るように立ち上がった。音もなく、急に時間が進みページがめくられたような感覚になり不安が押し寄せる。
「なんの話し合いをしてるんだろうね、わたしたち」
見上げると少し笑っていた。見たい見たいといつだってほしがっていた笑顔ではなかった。
「もう遅いから、寝るわね」
はっと顔を上げる。甲板へ続く窓は黒く、海は静かだ。そうか今は夜か。
おやすみなさい。
ナミさんがそっと押し込むように言う。踵を返し、テーブルを離れる。ドアノブに手をかけて、空いたドアの隙間から潮の匂いが流れ込み、入れ替わりに彼女が外に出ていく。
ひび割れた空気がさっと入れ替わり、ひび割れていたっていいからもっと彼女と一緒にいたかった、と思っていたことに気づく。
ひとりきりになったキッチンでひとりきりだと強く思う。
会いたい。明日の朝には会えるのに、その彼女はもう、今死ぬほど会いたいナミさんではない。
*
どでかいくしゃみをして目が覚めた。
驚いて跳ね起きて、したたかに額を天井にぶつけた。
いってェ、クソがと悪態づいたところでふと部屋が明るいことに気がついた。さーっと血の気と額の痛みが引いていく。
部屋を飛び出し、扉を開ける前から香ばしい匂いが甲板にまで漏れていたのでなおさらちくしょーと思いながらドアを開けた。
テーブルを4,5人が囲み、ナミさんとウソップがこちらに背を向けてコンロのあたりで手元を覗き込んでいる。カウンターではロビンちゃんがコーヒーを入れていて、まるでいつもの朝を俯瞰しているような錯覚を覚える。
「あ、サンジだ」
「おう起きたか、サンジも寝坊なんてすんだなー」
からかう男たちの声を一切無視してまっすぐにナミさんの方を見つめると、振り返った彼女が「あ」とつぶやきどこか誇らしげに少し顎を上げたまま「おはよ」と笑った。
盛大に寝坊をかましたおれがキッチンに駆け込んだのは既にクルーが食事を終えようとしていた頃で、ナミさんが有料で作った朝食を平らげた野郎どもはあっというまに船のどこかにそれぞれ散っていった。
「そんなに落ち込まないで、サンジ。たまにはいいじゃない」
肩を落とすおれに慰めの言葉をかけて、何杯目かのコーヒーを入れたロビンちゃんが部屋を出ていく。
ナミさんが作ったハムと卵の朝食をありがたくいただきながら、向かいの席で海図を開くナミさんをチラチラと盗み見る。やがて鬱陶しそうに「なに?」とナミさんが顔を上げた。
「寝坊はもういいじゃない。お金ももらったし」
「そうだけど、そうじゃなくて」
「体調悪いの?」
不意にナミさんが手を伸ばす。ぺたりと薄い手のひらがおれの額に張り付いて、離れる。つめたい、と一言。
胸の前へと戻っていくその手をすがるように掴んだ。掴めるときに、後悔する前に掴んでおかなければと思った。
ぎょっと目を丸めたナミさんが「なによ」と問う。
「ナミさんと別れる夢見た……」
はあ? と大きく口を開いたナミさんは一拍考える間をおいて、あははっと朗らかに笑った。
「あんたそれでそんなに落ち込んで、寝坊までして、ばかみたい」くくっとあくまでおかしそうにナミさんは笑い続ける。
「すげぇ、すげぇつらい夢だった。怖ェ……」
「あのねぇ、そういう夢見るんだったら、付き合ってからにしてくれる」
ちらりとナミさんを見上げると、おれの手を振り払った彼女も不敵におれを一瞬見てからコーヒーに手を伸ばした。
「予知夢だったらどうしよう」
「だからね、その前にあんた私たち踏むべき段階踏んでないから。要らぬ皮算用しなくていいの」
「これから踏むのかも」
ごくりとコーヒーを飲み下して、ナミさんは肩をすくめて答えない。
食べ終えた皿を脇に避けて、下から覗き込むように彼女の顔を見上げる。
「『私も』って言ってた、ナミさん」
「何がよ」かたくなにナミさんは海図から目をあげない。
「『私だって』だったかな」
「だからなにが」
「おれが好きだって言ったら」
あれ、言ったんだっけ。結局言えなかったんだっけ。あんなにも胸を刺したあの時間が、今や既に輪郭もおぼろにしか把握できない。
「夢でしょ。願望でしょ、あんたの」
「そうだけど、おれもつらかったけど、ナミさんもつらそうだったよ」
ナミさんはふと顔を上げ、「そりゃあつらいでしょうね」と妙にまっすぐおれを見て言った。
適当にあしらわれたような気もしたが不意に深くて熱い部分に触れたような気もして、すぐに次の言葉が継げない。
代わりに手を伸ばし、するすると彼女の指を撫でる。好きにさせてくれるナミさんはやはりおれの会いたかったナミさんだ。
あとで金取られるんだろうなあとわかりながら、すべらかな指先を少しこちらに引き寄せた。
ふたりだけのキッチンで、9人分の料理が並ぶ大きなダイニングテーブルを挟んで向かい合って座るおれたちはちょうど手を伸ばせば触れ合えるけれど、そうしようとしなければ触れ合うこともできなくて、お互いに伸ばすことのない手を胸の前に折りたたんでうつむいていた。
「こんなふうに終わるなら」
ナミさんが言う。
「始めなきゃよかった」
強く芯の通った声が、今ばかりはわずかにふるえている。おれにはわかる。
「あんたもそう思ってるでしょう」
答えることができず、言葉を探す時間をかせぐようにたばこに火を付ける。
船の揺れに合わせるみたいに、煙も不規則にただよう。
始めなきゃよかったのかもしれない。でも、今までの時間が全部無駄だったのかと言うとそうではない。絶対に違う。
どうしようもなくおれたちはそばにいたかったし、必要だったから求めたのだ。
なくてもよかった時間は思い返すほど一寸たりともなかったはずだと思えるのに、その時間をこれ以上つむぐことができないのはどうしてだろう。
「少なくとも」
声がふるえそうになる。みっともなくて、息を継ぐようにたばこを吸う。
「おれは本当にナミさんが」
「わかってる」
強く彼女が言った。
「そんなことはわかってるのよ」
だからもう言ってくれるなと封じられた気がして、口をつぐんだ。
「私だって」
ナミさんもそれ以上言わなかった。聞きたくてたまらないのに、いつものように気安くねだることができない。
ナミさんは一度顔を手のひらで覆い、振り切るように立ち上がった。音もなく、急に時間が進みページがめくられたような感覚になり不安が押し寄せる。
「なんの話し合いをしてるんだろうね、わたしたち」
見上げると少し笑っていた。見たい見たいといつだってほしがっていた笑顔ではなかった。
「もう遅いから、寝るわね」
はっと顔を上げる。甲板へ続く窓は黒く、海は静かだ。そうか今は夜か。
おやすみなさい。
ナミさんがそっと押し込むように言う。踵を返し、テーブルを離れる。ドアノブに手をかけて、空いたドアの隙間から潮の匂いが流れ込み、入れ替わりに彼女が外に出ていく。
ひび割れた空気がさっと入れ替わり、ひび割れていたっていいからもっと彼女と一緒にいたかった、と思っていたことに気づく。
ひとりきりになったキッチンでひとりきりだと強く思う。
会いたい。明日の朝には会えるのに、その彼女はもう、今死ぬほど会いたいナミさんではない。
*
どでかいくしゃみをして目が覚めた。
驚いて跳ね起きて、したたかに額を天井にぶつけた。
いってェ、クソがと悪態づいたところでふと部屋が明るいことに気がついた。さーっと血の気と額の痛みが引いていく。
部屋を飛び出し、扉を開ける前から香ばしい匂いが甲板にまで漏れていたのでなおさらちくしょーと思いながらドアを開けた。
テーブルを4,5人が囲み、ナミさんとウソップがこちらに背を向けてコンロのあたりで手元を覗き込んでいる。カウンターではロビンちゃんがコーヒーを入れていて、まるでいつもの朝を俯瞰しているような錯覚を覚える。
「あ、サンジだ」
「おう起きたか、サンジも寝坊なんてすんだなー」
からかう男たちの声を一切無視してまっすぐにナミさんの方を見つめると、振り返った彼女が「あ」とつぶやきどこか誇らしげに少し顎を上げたまま「おはよ」と笑った。
盛大に寝坊をかましたおれがキッチンに駆け込んだのは既にクルーが食事を終えようとしていた頃で、ナミさんが有料で作った朝食を平らげた野郎どもはあっというまに船のどこかにそれぞれ散っていった。
「そんなに落ち込まないで、サンジ。たまにはいいじゃない」
肩を落とすおれに慰めの言葉をかけて、何杯目かのコーヒーを入れたロビンちゃんが部屋を出ていく。
ナミさんが作ったハムと卵の朝食をありがたくいただきながら、向かいの席で海図を開くナミさんをチラチラと盗み見る。やがて鬱陶しそうに「なに?」とナミさんが顔を上げた。
「寝坊はもういいじゃない。お金ももらったし」
「そうだけど、そうじゃなくて」
「体調悪いの?」
不意にナミさんが手を伸ばす。ぺたりと薄い手のひらがおれの額に張り付いて、離れる。つめたい、と一言。
胸の前へと戻っていくその手をすがるように掴んだ。掴めるときに、後悔する前に掴んでおかなければと思った。
ぎょっと目を丸めたナミさんが「なによ」と問う。
「ナミさんと別れる夢見た……」
はあ? と大きく口を開いたナミさんは一拍考える間をおいて、あははっと朗らかに笑った。
「あんたそれでそんなに落ち込んで、寝坊までして、ばかみたい」くくっとあくまでおかしそうにナミさんは笑い続ける。
「すげぇ、すげぇつらい夢だった。怖ェ……」
「あのねぇ、そういう夢見るんだったら、付き合ってからにしてくれる」
ちらりとナミさんを見上げると、おれの手を振り払った彼女も不敵におれを一瞬見てからコーヒーに手を伸ばした。
「予知夢だったらどうしよう」
「だからね、その前にあんた私たち踏むべき段階踏んでないから。要らぬ皮算用しなくていいの」
「これから踏むのかも」
ごくりとコーヒーを飲み下して、ナミさんは肩をすくめて答えない。
食べ終えた皿を脇に避けて、下から覗き込むように彼女の顔を見上げる。
「『私も』って言ってた、ナミさん」
「何がよ」かたくなにナミさんは海図から目をあげない。
「『私だって』だったかな」
「だからなにが」
「おれが好きだって言ったら」
あれ、言ったんだっけ。結局言えなかったんだっけ。あんなにも胸を刺したあの時間が、今や既に輪郭もおぼろにしか把握できない。
「夢でしょ。願望でしょ、あんたの」
「そうだけど、おれもつらかったけど、ナミさんもつらそうだったよ」
ナミさんはふと顔を上げ、「そりゃあつらいでしょうね」と妙にまっすぐおれを見て言った。
適当にあしらわれたような気もしたが不意に深くて熱い部分に触れたような気もして、すぐに次の言葉が継げない。
代わりに手を伸ばし、するすると彼女の指を撫でる。好きにさせてくれるナミさんはやはりおれの会いたかったナミさんだ。
あとで金取られるんだろうなあとわかりながら、すべらかな指先を少しこちらに引き寄せた。
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