OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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眠っていたような、そうでもないような、淡い場所をいったりきたりしていた。
硬い床に横たえた身体がきしんだ。少しずつ目覚めていく頭が、今寝返ったら腰骨が床にあたって痛いはず、とか、下に敷いている方の肩がこわばっている、とかささいなことを考え出す。
ゆっくりと目を開けた。
明かりは消えていた。ダイニングテーブルの脚が見える。そこにつっぷすように眠る誰かの身体がぼんやりと見えた。
昨日は私の誕生日だったのだ。そのお祝いを、ここ、サンジくんの家でしてもらった。
ルフィやウソップやゾロなどいつもの仲間が集まって、それぞれ持ち寄るのはお酒ばかりで、ビビだけがルームウェアと香水をくれた。
そのビビも夜が更けると帰ってしまい、結局男たちばかりの中で日が変わるまで飲み続けた。
サンジくんはずっと立ちっぱなしでくるくるとキッチンとテーブルを行き来し、次々と私の好物ばかりを並べて最後には巨大なケーキまで出てきた。
そのケーキにルフィが私より先にフォークを突き刺したのでサンジくんがひどく怒り、私の代わりに泣き出しそうな勢いでルフィを罵りながら制裁を加えるので私はそれを見て腹を抱えて笑った。
あれは何時頃の話だったんだろう。
ゆっくりと横向きだった身体を回転させ、天井を仰ぐ。首のあたりにものが挟まっている感じがしたが、何を枕にしたのだったか忘れてしまった。
酔いはすっかり抜けてしまった。あー楽しかった、ちょっと疲れたな、という輪郭だけの感想が浮かぶ。
周りを見渡さなくてもわかる、一緒に飲んでいた彼らもきっと酔いつぶれて、そこかしこで雑魚寝しているのだろう。テーブルに突っ伏しているのはどうやらウソップのようだ。
サンジくんの家はきれいだ。リビングは広くて物がない。
掃除が行き届いているというより、忙しくて全然帰ってきていないからという感じがした。
水、もらおうかな。
起き上がろうと腕を動かしたら、思いの外近くに寝転がっていたらしい誰かの身体に触れ、びくりと手を引いた。
ぎこちなくこわばった首をそちらに動かしたら、つるりとしたサテン生地のシャツが見えてぎょっとした。
すぐそこにサンジくんが寝ている。気付いた途端、彼の体温が私にまで届いてくる。
まさか、と思い彼の身体をたどるように目線を上げると、仰向けに倒れたサンジくんの腕は私の方に伸びていて、私が首の下に敷いていたのは彼の腕だった。
おっと。なにがどうなってるの。
ここで寝転がった経緯は残念ながら覚えていない。最後に飲み干したのが白ワインで、最後の一本を惜しいと思ったことしか記憶がなかった。
サンジくんはきっと最後までつまみを作ったり甲斐甲斐しく片付けたり立ち働いていたはずで、私のほうが先に転がったはず。
でも、彼の腕を下に敷いているということは私がここに寝転がってしまったんだろうか。あえて、こんなにも近くで、まるで恋人みたいに?
ありえない。
サンジくんがいそいそと私の隣に横たわり、私の頭を持ち上げて自分の腕の上に乗せたというほうがずっと真実味があった。
ああ、きっとそうだ。この男ならやりかねない。
真意はともかく好きだ好きだとつきまとってくるし、たとえ私じゃなくても女が寝転がっていたら自分も隣に転がりそうな男だ。
でも今は彼も深く眠っているように見えた。遮光性のないカーテン越しに、街灯の光が薄く室内を照らしている。そのぼんやりとした灯りがサンジくんの顔を浮かび上がらせていた。
私からは彼の顎から見上げる形になるが、サンジくんは仰向けで、唇は薄く開いて細く寝息が聞こえているのが見えた。
私変な顔して寝てなかっただろうか。まじまじと見られてたらやだなぁ。
もう一度起き上がろうと肘に力を込めて床を押したとき、今度は急にサンジくんがみじろいだ。
ぎょっとして動きを止めた私の方にぐりんと寝返りをうち、私の頭の下に敷いている方の左腕がぐいと動いて持ち上がる。
え、え、と戸惑っているうちに、私の頭はサンジくんの左手にがっちりと抱え込まれた。
「ちょっ……」
思わず声を上げる。さいわいというかあいにくというか、サンジくんも周りに寝転がる誰も、なんの反応もしなかった。
腕に囲われるように頭が固定されたせいで顔を上げることができなくなったけれど、サンジくんの寝息は相変わらず続いている。枕か布団でも抱いているつもりか、さっきより落ち着いた寝息のようにさえ聞こえる。
急に顔が熱くなった。恥ずかしいとか照れてるわけじゃない。サンジくんの体温が高くて、暑いのだ。
もーどうしよ、と目だけを動かすも、サンジくんの喉元が暗く見えるだけであたりの様子は伺えない。部屋は高低差のある男たちのいびきでどちらかといえばうるさいくらいなのに、空気はしんと沈んでいる。
「ねぇ、ちょっと。ねえっ」
ひそめた空気だけの声で呼びかけてみる。サンジくんが驚いて跳ね起きれば、そう気まずさもなく済むだろうと思ったのだ。
でもサンジくんは起きない。ゆっくりと上下する胸の動きが伝わってくるだけだ。
んもー! と心で声を上げて、こみ上げるいらだちを押さえつける。どうして苛立っているのかわからないまま、でも「まあいっか」と再び眠る気には到底なれない。
今度はそっと腕を頭に伸ばし、サンジくんの指に手をかけてみた。
私の髪も頭もまるごと抱え込んだような彼の指を一本ずつほどいて、抜け出すことを試みる。
手に触れてみても、サンジくんの様子に変わりはなかった。いける、と確信し、そっと指を頭から離していく。
最後の一本が頭から浮かび上がり、髪の毛がするんと滑り落ちた。ほっとして頭を引き抜こうとしたそのとき、掴んでいた彼の指にぎゅっと力がこもったのが分かった。
「えっ」
思わず普通に声を上げた私の手をぐいと掴んで、なぜか頭上に持ち上げられる。さらには反対側の腕が私の腰のあたりにどさりと乗って、背中を押すように引き寄せられた。お互いの膝頭がぶつかって、サンジくんは動きを止めた。
私は片腕をバンザイした奇妙な格好で、より固く抱きかかえられてしまった。
──なんてこと。
繋いだ手を頭上に上げて、まるで伸びをしているみたいな体勢でサンジくんは変わらずすこすこと寝ている。
彼の寝相に巻き込まれ、私はなすすべもなく固まった。
暑いし、なんなのこいつ。人のことを抱き枕かなんかだと思ってる。
私はこのまま朝を迎えるんだろうか。他の誰かが起きて発見されるのが先か、サンジくんが起きて解放されるのが先か。後者であれと願わずにはいられない。なにやってんだお前らと笑われるのも、妙な勘ぐりをされるのも御免だ。
「ねぇ、起きてよもう……」
ダメ元で期待のない呼びかけをしてみる。と、ふいに寝息が吸い込まれたような気配を感じた。
ん、ともぐ、ともつかない呻き声が小さく彼の口から漏れた。
起きた!
私は握りしめられた手をゆらゆらとゆすり、「サンジくん、サンジくん」と小声で何度か呼びかける。背中に回されていた腕が動き、腰のあたりまでするっと滑った。
固く抱き寄せられていた力が緩み、彼と私の間に余裕ができる。ぱっと顔を上げると、薄目を開けたサンジくんがぼんやりとこちらを見下ろしていた。
「あ、あんたね」
「……ナミさ……」
薄目が再び閉じていく。ああだめだめ、寝ちゃだめだって。強めに手をゆすってみたら、握りしめられていた力がぱらっとほどけた。はっと期待に目をひらく。
ところが私の手を離したサンジくんの腕が大きく動いたかと思えば、私の肩をぐいと持ち上げて首の下に敷かれた腕は私の両肩を抱き込んだ。腰に乗っていた腕は再び背中まで滑って、再び強い力で抱きしめられる。
「いー夢……」
サンジくんが寝言のように呟く。
夢じゃないって!
寝ているとは思えないほど強い力で私を締め付け、サンジくんは頭をもぞもぞと動かしては身じろいだ。
撫でるように背中の手が動き、暑いのに鳥肌が立つ。
額になにか触れた。
サンジくんの鼻先が、私の前髪をかき分けて額に触れる。やわらかなものについばまれた。
咄嗟に顔をうつむかせる。逃げるみたいになった、と思うが後悔する暇もなく抱きかかえられた身体全体が彼の腕でぐいと持ち上げられる。
顔の高さがおなじになり、真正面からサンジくんの顔を捉えた。
目の前の薄い唇から私の名前がこぼれる。
「ナミ……」
思わずまじまじと彼の顔を眺めた。それ以上の何かが続くこともなく、半開きの唇からは寝息のような薄い呼吸が行き来する。
観念するように、身体の力を抜いた。すると不思議とサンジくんが私を抱き込む力も弱くなり、ほどよい安定感で身体を包まれる。
サンジくんの腕に頭をあずけて、彼の顔を眺めながら、薄暗闇の中静かに他人の体温を味わう。不意打ちの事故みたいなものなのに、どうしてかほんの少しの罪悪感を感じる。
誰かにこんなふうに包まれたのは久しぶりだった。
サンジくんの恋人はこうやって眠るのだろう。自分から眠る彼の腕の中に収まることだってできる。
今まで一度だってそんなこと望んだことはないはずなのに、まるでずっとそれが羨ましかったかのように私は目を閉じた。
起きたとき一体どうなるのか、いまも戦々恐々としている。騒がれるのは鬱陶しいし、変な勘違いも御免だ。
でもちょっとだけ、あと少し、日が昇るまで、誰も起きないでこのまま。
この体温の心地よさを知ってしまってこれから、どうやって一人で眠ることができるだろう。
本当はそのことのほうがずっとおそろしい気がするのだと、淡く霞んでいく頭でうっすらとわかっていた。
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