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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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板作りの床にぺたりと座り込む。
冷えた感覚がゆっくりと下から登ってきた。
この部屋に広がる暗闇の様に、それは丸ごとあたしを包んだ。
 
このまま、溶け込んでしまえれば。
どんなにか楽だろう。
常に押し寄せてくる痛みも、哀しみも、全部ここに残して旅立つ。
 
 




沈下
 
 



 
徐に手を伸ばし、床の木目を撫でるとそこはまだしっとりとしているような気がしないでもない。
でもさすがにもう一日立ってしまったから、それは気のせいだろう。
 
色の違う、その場所。
消えることなく、この家のひとつの歴史としてそこにあり続けるのだろう。
 
 
 
顔を上げ、部屋を見渡す。
乱れたベッドはこの部屋の主が昨日まで使っていた証。
開けたままの書類は次に書かれる文字を待っている。
乱雑に積まれた雑誌はこのまま埃をかぶってしまうんだろうか。
 
 
 
 




 
 
 
 
 
「…アン」
 
音もなく、あたしの背後にマルコがいた。
気配にも気づかないほど、あたしはこの部屋の空気に沈んでいた。
それともすでにあたしのどこかは壊れてしまったんだろうか。
 
 
「…そんなとこに座ってると、身体冷えるよい」
 
 
ねぇマルコ、忘れちゃったの?
あたし、炎なの。
寒くなんかないんだよ。
寒くなんか、
それともマルコも壊れちゃったんだろうか。
 
 
「…サッチがいないの」
 
 
開いたままの窓から流れ込んだ風がカーテンをはためかせる。
あたしの髪も小さく揺れた。
 
 
「どうしよう、サッチがいない」
 
「アン、」
 
「いないの、もう、全部、何も、ない」
 
「…オレがいる、」
 
 
 
後ろから抱き込んできた温度はひどく冷たくて、あたしの冷たさと同調して溶け込んでくる。
 
 
「まだオレがいるよい」
 
 
 
 
そうだね。
まだマルコがいたね。
でも、サッチはいないの。
もう、いない。
 
 
へにゃりと緩んだ目元も
笑うたびに引きつる目の上の傷も
毎日気合とともに作り上げられるリーゼントも
だいすきな料理をあっという間に作ってしまう乾いた手のひらも
もう、全部、全部。
 
 
 
 
 
 
身体を反転させ、その身体に沈み込む。
いつもの匂いがあたしの心をどこまでもさらっていった。
 
 
 
 
「大丈夫だ」
 
サッチは帰っただけだ、だから大丈夫だと。
小さくあたしをゆすりながら穏やかな言葉が紡がれる。
 
 
「…でも、サッチはひとりだよ…淋しいよ…」
 
「あいつは強いから大丈夫だよい」
 
「…でもきっと寒いよ…サッチ寒いの嫌いだもん…」
 
「お前が照らしてやれば大丈夫だよい」
 
 
 
 
マルコはそう言うけど、届かない。
届かないよ。
それくらい遠くに、サッチは行ってしまった。
 
 
 






 
 
 
「…あ、ああっ…!」
 
黒い闇が、白い無が、侵食する。
すがりつくように目の前のシャツを掴むと、飛んで行ってしまいそうなあたしを繋ぎとめるようにさらに強い力が締め付けた。
 
 
 
「ああっ…!…サッ、チ…!」
 
「大丈夫、大丈夫だ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 





 
 
あたしをゆっくり、ゆっくりと闇から引っ張り上げてくれるマルコは、強い。
その証拠に、顔を上げるとあたしを見下ろしたその口元は緩い弧さえ描いていて。
やっと気づいた。
 
 
マルコは絶対的に強いんじゃない。
弱いあたしがいるから、強くなければと自分を保っている。
彼は自分より弱い者がいる限り、それを守るために自分の強さを崩さない。
そんな人だ。
 
 
 
 
サッチ。
サッチの無二の親友は、仲間は、兄弟は、サッチに似て優しすぎたよ。
 
 
 
 
 
 
 
「…マルコ…泣いてる」
 
「…馬鹿言え。オレは泣いてねぇだろい」
 
「泣いてるよ」
 
 
痛いいたいイタイと、悲鳴を上げる心が聴こえる。
それは紛れもなくマルコの、
 
 
「マルコには、あたしがいるよ。あたしは絶対、どこにもいかない」
 
 
 
ぎゅっと、怒ったように眉根を寄せたマルコはさらにあたしを抱き寄せた。
 
 
「…もう、信じねぇよい…信じられるか、そんな言葉」
 
「信じて、あたしは」
 
「嘘だ。お前もいつかいなくなる」
 
「ならない。あたしはマルコを置いてなんかいかない」
 
「嘘だ…っ、嘘だ…!」
 
 
子供のように首を振ったマルコは、あたしの肩に噛み付く勢いで顔を沈めた。
 
 
「大丈夫。あたしがいるよ」
 
「…っ、」
 
あたしからぼろぼろと零れる液体はマルコの首筋を伝いシャツ一枚羽織っただけの背中を滑り落ちて行く。
あたしの背中は、マルコのそれが濡らしていった。
だけどあたしはそれをどこまでも気付かないフリをする。
 
 
互いに騙して、欺き合って、痛みをすり抜けようともがいていた。
 
 
 
 



 
 
この家族に落ちた大きな闇を、失った平和を、消えることのない黒い歴史を。
 
残されたあたしたちは救われない。
 
 
 

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



我が家は同人サイト様かつ検索避け済みサイト様のみリンクフリーとなっております。
一声いただければ喜んで遊びに行きます。

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