OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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橙色の焔が上がったそこは未だ燻る煙がもやもやと立ち上がり目印となっていたので、迷うことなく行けた。
ばくりと刻む心音を抑え、一つ旋回して高度を下げる。
白く曇るその中で見えたのは、ゴミの様に倒れ伏した住民たち。
おそらくもなにも、アンがやったんだろう。
しかし肝心のあいつがいない。
鼓動がさらに早くなった。
突如、じゃばんっと波の音とはまた違うそれが耳を打つ。
視界の悪い中目を凝らすと、ぼんやりと見えた男の背中。
穴の空いたウッドデッキから上半身を覗かせ、はあはあと呼吸を整えている。
アンの攻撃の、生き残りかと思った。
だがその男の脇から覗いた細い腕を見た刹那、目の奥が真っ赤に染まった気がした。
風を切り男に迫ると、その頭部を鉤爪で掴み持ち上げた。
突然のことに男から叫びが上がる。
そのまま数十メートル上昇し、翼を人の腕へと戻した。
揚力を失った男2人ぶんの身体は、当然下へと落ちて行く。
その落下速度で男を地面に叩きつけた。
「…っかはっ!!」
肺が潰れ無様な呻きを立てた男を再び鉤爪で持ち上げ、崩れた石の塊に投げつけるとそれこそゴミのように飛んで行った。
ぐつぐつと、血が沸騰する。
原型をとどめない顔を歪ませて喘ぐ男を見ると、笑みさえ浮かんだ。
海賊らしいとも言えるが、人を痛めつけて興奮するなどとんだ悪党だ。
だが、男の萎びた腕がアンに触れていたのだと思うと吐き気がして、気づいた。
興奮?
違う、オレは腹が立っているのだ。
まさしく腸が煮えくりかえるほどに。
突如、背後でぼちゃんと水が跳ねる音がしてハッとした。
振り返ると、アンの身体がズルズルと海水の中に落ちて行く。
慌てて走り寄り、力ないその腕を掴み引き上げた。
「おいっ!しっかりし…!!」
引き上げた身体を見て、息が止まった。
あろうことか、上半身がさらけ出されている。
ふよふよと、ちぎれた布の断片が浮かんでいるのが目の端に映った。
「くそっ…!」
自身のシャツを脱ぎその身体に被せ、アンの全身を引き上げる。
木の床に横たえると、朧な視線が俺を捉えた。
「…はぁっ…マル、コ…」
「っ、何もされてねぇだろうねい…」
微かに首が縦に振られ、ほっと安堵の息が漏れる。
だが、何もされていないわけではないのは一目で見て取れた。
片頬は赤く腫れ、口端が切れている。
何より服を引きちぎられているのだ。何もなかったわけがない。
「ちくしょっ…!」
力の入らないだろう身体を抱き起こし、上半身を腕の中に閉じ込める。
海水で冷えた身体があり得ない程頼りなく思えた。
「…マルコ…、海軍…」
「ああ、聞いたよい。どのみち海軍もこっちに向かってんだ。海上で一戦やることになんだろい」
「...ごめ、」
「…なに謝ってんだい。帰んぞ」
そう言ってアンの身体を引き剥がし、膝裏に手を差し込もうとしたとき、アンの足元でじゃらりと金属の重い音が。
「…んだこれ…海楼石かっ!?」
「…う、ん…」
「鍵は」
「…わかんない…多分、あの男…」
「くそっ」
再びアンを寝かせ、ぶっ飛んだ男の元へ行こうとしたが、ふと思い立ってしゅるりと腰布を引き抜く。
「巻いとけ」
何のことだと言うようにしばらくぼうっとしていたアンは、はたと自分の身なりに気づいたようで慌ててそれを受け取った。
元来丈夫らしく、幸い意識の飛んでいなかった男のもとへ歩み寄りその髪をひっつかむ。
「おいてめぇ、手錠の鍵は」
「ひっ!ふ、ふしちょ」
「ああそりゃオレのことだい。だがんなこた聞いちゃいねぇ。アンにかけた手錠の鍵よこせっつってんだ」
「わ、わかんねぇ!たぶ、地下の中っ」
「地下ぁ?」
震える男の指先が指し示す方へ目を遣ると、無残な瓦礫の山が。
「あそこに地下があるってのかい」
壊れた玩具のようにこくこくと首を振る男にそうかいという返事を送り、再びその後頭部をおさえ顔面を地に叩きつける。さすがに動かなくなった。
瓦礫ばかりかと思えば、一部にぽっかりといかにも怪しいですよと言わんばかりの穴を見つけた。
口の狭いそこに滑り込むよう身体を落とすと、中は案外広く、閑散とした一室となっていた。
薄暗く視界が悪いので自らを燃やし光を灯す。ぼんやりと、机、椅子、本棚などが現れた。
乱雑に積まれた書類、埃くさい土壁はぼろぼろと削れている。
おおかたここで住民が待機し、この上に閉じ込めていた海賊共を下から外から、と一度に捕らえようという感じだろう。
この海で、新世界という億越えのゴロツキばかりのこの海でよくもそんな単純な方法で今までやってこれたものだ。
しかし単純な作戦は美しい、そして成功率は高い。
近頃の海軍はしっかり頭の方も使うらしい。
古ぼけたひとつのデスクの引き出しを漁り、目当てのものを探すがいっこうに見つからない。
急がなければ海軍がこの島にやって来る。
どのみち海の上で会うだろうが、応援を寄越す時間をやると少しばかり面倒だ。
一番下の立て付けの悪い引き出しを引くと、そこにはぎっしりとファイリングされた手配書が敷き詰められており吐き気さえした。
一般人と海軍が手を組むというのはどうもやりにくくて困る。
「…ったくめんどくせぇ…」
屈めていた腰を伸ばしばきばきと伸ばすと、ふと目に入ったのは壁にかかる鍵。
あっけない、壁にかかっていたのだ。
「…あんじゃねぇか」
ひとりぼやき、先ほどから引っ掻き回しぐちゃぐちゃになった室内を縫うようにそちらへと向かう。
鍵に手を伸ばしたとき、その横に数枚の紙切れが貼り付けられているのが目に付いた。
まだ新しい手配書。
薄暗さのためよくはみえないが、真っ赤な髪に真っ赤に塗られた唇。男のくせに化粧なんてしてやがる(似たようなのはうちにもいるが)。
その隣の男はなんとも可愛らしい帽子を目深に被り、その目の下には濃い隈。
どちらもまだ若く、こちらからしたら子供だ。アンくらいだろうか。ルーキーという奴だろう。
そしてその隣にもう一枚。
大きくかざした手のひらに、はっきりとはしないが誰かを彷彿とさせる眩しい笑顔。
仕事の上でもあらかたの手配書には目を通すが、これほどまで楽しげに『生死問わず』と賞金首にさらされる海賊は見たことがない。
「つーかまだほんとのガキじゃねぇか…」
アンどころではない。
おそらく16、17といったところか。
しかしその首にかけられるのは3000ベリーといった、ルーキーにしてはそこそこの値。
その下に記された名前を見て、今度こそ数秒息が止まった。
モンキー・D・ルフィ
今までどこかに行ってはいたものの、頭の中に巣作りしたかのように居座り続けた男の名前が、いとも簡単にそこにあった。
いやにゆっくりと手を伸ばし、それを壁から剥がす。
近くで見るとますます幼い。
これがアンの、夢にまで見る男。
人違いだとは何故か思えなかった。それがまた気に障った。
「…マルコ?」
じゃらりと金属の擦れる音がしてはっとする。
振り返ると同時に手配書をポケットにねじ込んだ。
「もう動けるのかい」
「うん、あった?」
「ああ、」
散乱する書物を踏み越えてアンのもとへ行き、足の錠を外す。
一度アンがぶるりと震え、ぱちりとひとつ、炎が爆ぜた。
「…さっさと帰るぞ」
「あ、うん」
くるりと背を向けて地上へと続く梯子を登るアンの後ろで、オレは再びポケットの中のものをさらにしっかりと押し込んだのだった。
思ったより早く当の島へ来ていた海軍とは、島の沖で鉢合わせた。
しかしその軍船にオレたちが手を出すことはなかった。
オヤジが出たのだ。
「グララララ!一般人使うったァ賢くなったじゃねぇか!!
だがオレの一人娘に手ェ出させるってのぁ感心しねぇな!」
あの長刀一振りで軍艦三隻は大破。ものの数秒だった。
「マルコこれー」
「…」
ノックくらいと言いかけて、その言葉の効果の無さを身に染みているオレは振り返るだけで言いとどまった。
「あの島にあった。手配書と、海図と、次の島の地図と」
「ああ、結構盗ってこれたのかよい」
「ん、隊員たちが」
「そうかい」
受け取ったそれに目を通している間、アンは所在なさげに室内を見渡し、結局オレのベッドに辿り着きそこに倒れ込んだ。
「寝るなら自分の部屋で寝ろよい」
「寝ないもーん」
ふーんと鼻を鳴らして、ベッドの上で両手両足を広げばさばさと動かす。
島に着く前にメイキングしたシーツはすでに残念なことになっている。
わざとらしくため息をついたとき、ふとアンのふくらはぎ下部に目が行った。
「…おい、跡付いてんじゃねぇかよい」
「ん?あ、足?ほんとだ、引っ張られたからなぁ」
「さっさと医務室行ってこい」
「えー」
「行け」
「…ほーい」
何様のつもりか知らないが、まったくしょうがないなぁとでも言うようにアンは渋々とベッドから降りた。
しかしアンは、あ、とひとつ声をあげオレを振り返った。
「そういえばマルコ、あそこから何取ってきたの?なんか入れてたよね、そこ」
そういって指差すのは、椅子に座るオレの腰元。
無意識に手がそこに伸び、布の上から小さな膨らみをなぞるとかさりと乾いた音がした。
つとアンに視線を戻すと、アンは小さく小首をかしげる。
「…オレも、お前に聞きたいことがあったよい」
(どんとこい!)
(…いや、張り切らなくてもいいよい)
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