OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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頭がぐちゃぐちゃして、身体と頭がバラバラになったかのようなわけのわからない感覚に襲われて、アンはただひた走った。
角をいくつか曲がってやっと目に飛び込んできた扉を掴みかかるようにして開け、中に飛び込んだ。
長く走ったはずなのに誰にも会わなかったのは幸いというもの。
甲板からは賑やかな笑い声や怒号のような叫びが聞こえてきたので、きっと毎夜の如く至る所で酒盛りが行われているのだろう。
そんな中、自分だけがものすごい非日常に浸っているような気がした。
「…う、ぁっ…!」
ドアに背中を預けると自然と口からは呻き声が漏れ出る。
膝がわななくように震えて、ドアを背にずるずるとしゃがみこんだ。
「っは、ぁ」
喉の奥から鋭い空気が昇ってきて思わずむせ返る。すると呼吸がままならなくなり肺がきゅっとすぼまるのがわかった。ひゅー、ひゅー、と呼吸音が頭の中で響き続ける。酸素を求めて息をすればするほど苦しくなり、徐々に視界は霞んでいった。
「ぁ、っか…はっ」
ばさばさと雑な音を立てて抱き込んでいた書類が床に落ちる。くらりと頭に靄がかかり、気付けば横に倒れこんでいた。
(あ、苦し、い)
喉を引っ掻き頭を反らせ、自ら気道を確保しようともがくが一向に楽になる気配はない。
なにこれなにこれ、とショートを起こした脳内が悲鳴を上げたそのとき、控え目にノックが響いた。
「…アン隊長、いるんでしょう…?」
ユリアの澄んだ声が耳に滑り込んできた。
「っか、…りあっ…!」
掠れた声は届かなかったようで、再びこんこんと木の優しい音が響く。
「…いないのかしら、」
溜息と共に吐き出されたその言葉が諦めを含んでいたことに焦り、なんとかして自分の存在を知らせなければと思ったアンは、痺れ始めた脚を思いっきりドアにぶつけた。
どかんという荒っぽい音と共に激しくドアが軋む。
「…隊長?アン隊長!?」
鍵のかかっていない扉が開き、その先にうずくまるアンの背中にすぐにぶつかった。
「隊長!!どうしたの!?ちょ、誰か!!あぁっ、ジョズ隊長!早く来て!!」
ユリアが力強くドアを押し開け、アンの身体をずりずりと動かして行く。
その間もずっとアンの不気味なほどの呼吸音は止まらない。
やっとのことで人が入れるほど開いたドアの隙間から、ユリアの身体が室内に滑り込んだ。
「アン隊長!…過呼吸だわ!ジョズ隊長このドアをもっと開けて!!あと他のナースを!」
そういうや否やものすごい勢いでドアが開き、アンは危うく吹っ飛びかける。しかしおかげでドアは大きく開き、ジョズの巨体が廊下を行ったり来たりするのをアンの目は捉えた。
すっとアンの顔全体を影が覆う。そのままひゅーはーとおかしな呼吸を続けると、かすかに甘ったるい匂いが鼻腔をくすぐり、自分の吐いた暖かな息が再び気道に戻ってきた。
その匂いが夕食後ビスタにもらったチョコレートの香りだと、アンの五感が告げる。
駆け込んできた寝巻き姿のナースがうずくまっていたアンの身体をゆるやかに伸ばして重たいベルトを抜き取った。
すると、掠れた呼吸音が次第に穏やかなものと変わり、アンの瞳を覆っていた涙の膜が崩壊して一粒ほろりと頬を滑った。
ぴりぴりと痺れていた指先にゆっくりと感覚が戻ってくる。
「…もう、大丈夫よ」
ユリアの柔らかい声が発せられると、辺りからほうっと安堵の吐息が漏れる。
隊長の異変を聞きつけた二番隊に始まりその他隊長たちまで、このときばかりは役に立たない立派な身体を持て余して廊下に立ち尽くしていた。
「念の為医務室に運びましょう。ジョズ隊長、お願いします」
「あぁ」
アンの身体の下にしっかりと腕を差し込んだジョズは、しなやかにしかし力強くアンを抱き上げた。
その腕の中から重力に従うようにしてアンの腕がたらりと垂れると、部屋を取り囲む男たちは苦々しく顔を歪めた。
海賊だとはよもや思えないような弱々しいいくつもの声が、愛しい妹の名を呼ぶ。
ぱさりとアンの胸に布が載せられ、ユリアがアンの口元に袋を固定したまま視線で道を開けるよう示した。
男たちは巨体を縮こませて道を開けたが、やはりどうしてもアンの顔が見たくて、みんな一様に首だけ伸ばすといった珍妙な格好をする。
ジョズによって速やかに廊下を進んで行くアンの目は先程の荒々しい呼吸が嘘だったかと思うほど静かで、流れすぎて行く景色を只々眺めていた。
仕事机で朝を迎えたオレは軋む身体を反らせて背中の骨を鳴らし、倒れるようにしてベッドに横たわった。
時計に目を遣ると起きるには早すぎひと眠りするには遅すぎる、腹が立つほど微妙な時間。
しかし一睡もせずに一晩越したというのに眠気は一向にやってこず、結局こうしてうだうだといつもの起床時間までの時を過ごすのだろう。
「あぁー…」
意味もなく声を発して、それからちくしょう、と呟いてみる。
虚しくなって寝返りを打ったときノックの音が飛び込んだ。
「よう、起きてたのか」
ドアを開けると現れたのはサッチで、いつもの如く目元の傷を上げるようにしてにっと笑っていた。
「あぁ、まぁねい」
室内に戻り、朝日が滲み出した窓辺のカーテンを開きながら何の用だと問うてみて、出てきた言葉に耳を疑った。
「アンが過呼吸で倒れた」
「…は?」
振り返り聞き直したが、サッチの目が言葉のとおりだと告げている。
「お前に襲われて、パニックで過呼吸んなったんだよ」
とんとん、と己の首筋を指し示しながらそう言うサッチを見て否応なしに昨夜の記憶がぶり返し軽く吐き気がしたが、それどころではない。
「…いつの話だよい」
「昨日の9時くらい」
アンがオレの部屋を飛び出してすぐだ。
「…なんで、なんでもっと早く言わねぇんだよい!!」
噛み付くようにサッチに詰め寄るとサッチは顔色一つ変えず、ただ近づいてきたオレを鬱陶しそうに押し返した。
「言ったらどうするつもりだよ」
「っ、」
その通りだ。オレのせいで取り乱したアンがオレの姿を見て安心するはずがない。
胸の内で小さく舌を打ち、ベッドに深く腰を下ろした。
やり場のない思いが隠しきれず、膝に肘を付き顔を手で覆う。
サッチが仕事机の椅子に腰掛けて木の椅子が軋んだ。
「…あいつは」
「落ち着いて、医務室で爆睡中」
そうかい、と呟くと今度はサッチが息を吐いた。
「オレァよ、別にお前を責めに来たわけじゃねぇぜ」
俯いていた顔を上げると、サッチはリーゼントになる前の伸びた髪を弄くっていた。
だってお前の言い分も結構わかるし、と。
「マルコが好きだ好きだ好きだ言いながらいざお前が一歩踏み込むとそれ以上はダメ、みたいなことするだろ、あいつ」
「…」
「お前はそれがなんでかわかんねぇ。で、アンは言おうとしない。そりゃねぇわな」
「…だがオレァ、」
「待てるってんだろ?おっさんだしなー」
わかるわかると感慨深げに頷くサッチは、つと動きを止めてオレを見据えた。
「でも、男だ」
ただのエゴってわけでもなくね?
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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