OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
翌日の正午を少し過ぎたあたり、船内すべてのスピーカーが島が見えたことを伝えた。
スピーカー越しであろうと、ひさしぶりの寄港に興奮した見張りが声を張り上げる。
寄港準備に追われるクルーたちも懐かしい陸が恋しくて、ますます準備に精が出た。
息子たちの興奮と熱気にあおられるように、白ひげも嬉々とした顔で自室から甲板へと顔を出す。
白ひげが存在を無視して引きずるあらゆる医療機器を、ナースたちが慌てて甲板にセッティングし直した。
「…見るからに無人島じゃねぇの」
サッチが遠く見える緑の塊を目を細めて見ながら呟いた。
隣でイゾウが咥えた煙管をひょこひょこと動かした。
二人の視線の先には、半球型の緑の塊がぷっかり海に浮いているように見えた。
ほとんどが、いや、白浜以外すべてが森だった。
ライトブルーの海と雪のように真っ白な浜はどうかするとリゾート地のようだが、この島には人間の開発の手が伸びなかったらしい。
おそらく昨日マルコによって説明された『ある民族集団』が、自らの居住地を守っているのだろう。
白ひげ海賊団は、白ひげが気に入ってリゾート地にしている白ひげ海賊団のテリトリーを持っている。
それと似たようなこの島を見てクルーたちが浮足立つのもいたしかたないか、とサッチは先ほどから嬉々として海水浴の準備をする自隊のクルーを横目で流し見た。
本日4番隊は、幸運なことに休暇日であった。
先ほどから、遠慮など生まれたところにおいてきましたという顔をして風上で煙管を吸うイゾウにむかってわざとらしく咳き込んで、サッチは甲板前方へ目を向けた。
可愛い可愛い末っ子が、船の縁に両足をつけてしゃがみこんでいる。
視線はもちろん向かう先、到着予定の島。ドラウン・カクス。
後方斜め45度から見る顔だけではわからないが、おそらく漆黒の瞳は期待に濡れて存分に輝いていることだろう。
本当はその顔を覗き込んで堪能したいところだが、そんなことをすればマルコに襟首とっ掴まれて問答無用で何らかの仕事を言い渡される。
そこでサッチが男の嫉妬はなんとやらだとか余計なひと言を言うため仕事は増える一方だ。
またたとえマルコの目がなかったとしても、顔を覗き込まれたアンが少し照れながら「なんだよー、サッチ」とはにかんだりしたら、もう、心臓に悪い。
そろそろ歳を自覚してきたサッチは、そういった自殺行為は自粛した。
サッチはアンから視線を外し、再び今度は少し大きくなってきた緑の塊を見遣った。
火の島。
どういう云われかわからないが、自分の分身の島だと言われたらアンの期待が膨らむのも必然だろうと、サッチの頬は自然と緩む。
おそらくアンは、火の島だと言われるそこで自分の能力に何らかの力がプラスされる機会を、期待しているのだろう。
どんなもんかね、とサッチはぺろりと自分の首筋を撫でた。
アンが強くなれるのなら、それでいい。
ただ、とサッチは緩んだ頬を引き締めた。
なにが、どこが、とはサッチにもわからない。
本能に近い部分、この稼業を初めて研ぎ澄まされたであろういわゆる第六感、とでもいうものが何かを告げる。
それが白ひげ海賊団にプラスをもたらすのかはたまたマイナスをもたらすのかすらわからない。
この島が、どこか、なにか、ひっかかるのだ。
昨晩ひとりマルコの部屋を訪れ、マルコも何か感づいてやいないか探りを入れるような真似をした。
サッチが気付いたことがこの海賊団に何らかの影響を与えるものであるとすれば、マルコはきっとサッチよりもはやく、気付いているはずだと思った。
しかし、マルコはまったくその気を匂わせなかった。
「どこにでも民族の伝統ってもんはあるんだろうよい、伝統料理でも伝授してもらえよい」
そうねー、とサッチは気のない返事を返した。
マルコがそうなら、そうでいい。
これまでサッチが訝しく思ったことでも、マルコがGOと言えばそれに従った。
それによって困ったことは一度もない。
だから今回も、例にもれずサッチは素直に、極端に言えば従順なほどあっさりと引き下がった。
「まあ気は抜かねぇがよい」
マルコはすでにサッチに背を向けていた。
しかしサッチは、マルコがしっかりとサッチの布石を受け取ったのだとわかり、ほんの少し目元を緩めた。
そして猫背気味な背中にひらりと手を振って、サッチは部屋を後にした。
(休みっつーのも考えすぎていけねぇな)
サッチは見えない苦笑を漏らす。
ふと気づいたころには、緑の塊は眼前まで迫っていた。
*
今回の寄港は何よりも、島の住民たちとの交渉がカギになる。
いつもはさっさと船を飛び出すアンも、心なしか神妙な顔つきでじっとしていた。
一番に船を下りたのはマルコの1番隊。
船べりではジョズの隊がいつでも降りられるよう、言ってしまえば交戦準備をして構えていた。
寄港の少し前、航海士による説明があった。
島の構図は見ての通り白浜と森。
しかしこの森はドーナツ状になっていて、真ん中の空洞部分が住民たちの居住地域となっている。
よって島の外からはただの無人島にしか見えないのだという。
中心に行くにつれて高度は緩やかに上がっていく。
その高さは平地と丘ほどの差で、人はその丘の部分に住んでいる。
マルコ率いる1番隊は、そこへ向かって白浜を歩き出した。
大勢で行けばいいというものでもないので、残りのクルーは心なしかやきもきしながら1番隊の帰りを待つことになる。
数十分後、鬱蒼と茂る木々の間から戻ってきた一番隊たちの嬉々とした顔を見て、待機していたクルーたちはほうっと安堵の息をつき、そしてすぐさま歓声をあげたのだった。
帰ってきた一番隊には、背の高い老人がついてきた。
短い白髪で肌は日に焼け、黒い瞳が知的そうなその老人はこの島の住人の長だった。
麻のような涼しそうな布を器用に巻き付けた衣服と、首には大きな丸い木のビーズでできた首飾り。
マルコの交渉に静かに耳を傾け、海賊という言葉にも臆することなく、必要な物資と食料を積んでログがたまるまで4日間の停泊を承諾してくれた。
「その代わりというわけではないが、島の中心の神殿には手を出さんでほしい」
長は真摯な瞳でそう言ったが、無論白ひげ海賊団にこの島を荒らす気は毛頭ない。
約束するよい、とマルコは固く頷いた。
白ひげが船上から老人を見下ろす。
長も、すっと目を細めて白ひげを見上げた。
二人の老人がほんの数秒の間、視線を交わす。
考えの読めない長の顔に、白ひげはにぃと口端を上げた。
長は白ひげから視線を外すと、船員たちに指示を始めたマルコを呼び止めた。
「どうせなら宴は私たちの村でやるといい。食料を運ぶ手間が省けるだろう」
「あー…ありがてぇがよい。そっちにゃ女子供いるだろい、海賊が入り込んで困るのはそっちじゃねぇのかよい」
「…海賊には慣れている。夕餉を一緒にするなら、ついでの力仕事も頼みたい」
「海賊を使う気かよい」とマルコが好戦的な目を向けても、長は揺れない瞳のまま「慣れていると言った」と静かに言い返した。
肝の座った老人は嫌いじゃない。
マルコはにやりと笑って、宴の準備を村へと運ぶよう手配し、指示した。
*
太く乾いた木々が高く組み上げられていく。
村の広場の中心にあるそれを、村人たちは遠巻きに見守っていた。
長は海賊に慣れているとはいったが、馴れ馴れしいわけではなかった。
この村の、この集団の人間は大人しく寡黙というのが持ち合わせた民族性らしい。
村人たちは海賊たちを臆するそぶりこそ見せなかったが、馴れ合おうとするのは無邪気な子供たちだけだった。
一番子供たちと歳の近いアンに至っては、既に少女をひとり膝の上に乗せて楽しそうに口を動かしている。
能力のせいで木材を燃やしてしまうアンはこのとき仕事がない。
組み木造りを男たちに任せることはいつも気がひけていたが、今日は懐かれた子供のお守をすることで暇が潰せた。
「アン!組めたぜ、頼む!!」
「お、了解」
4メートルほど、常識はずれな高さに積み上げられた木々の傍らでクルーがアンに声をかけた。
アンにも宴を始めるための仕事がようやく回ってきた。
しかもこれは、アンにしかできない。
アンは膝に乗った少女に一言断りひょいと退かし、立ち上がった。
寄港1日目の仕事を終えた男たちがわらわらと集まり、組み木を囲むように腰を下ろし始める。
クルーに手招かれて村人たちがおずおずと寄って来た。
手には酒。
いつのまにか日は落ちていて、空は紫色から紺へと変わろうという曖昧な色合い。
組み木に近づいたアンに、一本のボトルが投げ渡された。
アンは難なくそれを受け取る。
村の中での宴ということで予定とは違い船を下りた白ひげと、クルーが期待を込めた眼差しでアンを見守る。
村人たちは酒を持たされ、何もない枯れ木の積み重ねを怪訝な顔で見つめていた。
白ひげ海賊団流キャンプファイアーは、アンのショーから始まる。
アンは組み木の2メートルほど手前で立ち止まった。
そして4メートルある組み木の頂点に向かって、一本のボトル、酒瓶を振りかぶって投げた。
村人から控えめなどよめきが上がる。
代わりに白ひげクルーからははやし立てる声が上がった。
栓のされた酒瓶は、くるくると回りながらまっすぐ組み木の頂点へと飛んで行った。
アンの右腕が上がり、細い人差し指が狙いを定める。
人の目が追い付かないスピードで閃光がアンの指先から放たれ、瓶は激しい音ともに砕け散った。
今度は村人から悲鳴のような声が上がった。
アンの火銃は酒瓶を砕くだけではなく、その中身のアルコールに火をつける。
燃え盛った液体は、覆いかぶさるように組み木に降りかかった。
そしてすぐさま、組み木の中心からは吹き上がるような炎が上がった。
豪華なショーの成功に、クルーは歓声を上げて乾杯を始めた。
アンが満足げな顔で白ひげにVサインを送ると白ひげも特別嬉しそうな顔を見せた。
代わりに、島の住人たちだけが動きを止めた。
彼らと乾杯をしようとしたクルーたちが少しずつその異様な様子に気づき始める。
住人たちは呼吸を忘れたようにアンを見つめた。
少しずつ、クルーたちの歓声が減っていく。
様子に気づいたマルコも、サッチも、そしてアンも首をかしげた。
そしてついに広場からはすべての音が消え去った。
「…えー、と。なに?」
アンが肩をすくめた。
口を開いたのは誰かわからない、住人の一人だった。
「…神、」
違うと言えない
スピーカー越しであろうと、ひさしぶりの寄港に興奮した見張りが声を張り上げる。
寄港準備に追われるクルーたちも懐かしい陸が恋しくて、ますます準備に精が出た。
息子たちの興奮と熱気にあおられるように、白ひげも嬉々とした顔で自室から甲板へと顔を出す。
白ひげが存在を無視して引きずるあらゆる医療機器を、ナースたちが慌てて甲板にセッティングし直した。
「…見るからに無人島じゃねぇの」
サッチが遠く見える緑の塊を目を細めて見ながら呟いた。
隣でイゾウが咥えた煙管をひょこひょこと動かした。
二人の視線の先には、半球型の緑の塊がぷっかり海に浮いているように見えた。
ほとんどが、いや、白浜以外すべてが森だった。
ライトブルーの海と雪のように真っ白な浜はどうかするとリゾート地のようだが、この島には人間の開発の手が伸びなかったらしい。
おそらく昨日マルコによって説明された『ある民族集団』が、自らの居住地を守っているのだろう。
白ひげ海賊団は、白ひげが気に入ってリゾート地にしている白ひげ海賊団のテリトリーを持っている。
それと似たようなこの島を見てクルーたちが浮足立つのもいたしかたないか、とサッチは先ほどから嬉々として海水浴の準備をする自隊のクルーを横目で流し見た。
本日4番隊は、幸運なことに休暇日であった。
先ほどから、遠慮など生まれたところにおいてきましたという顔をして風上で煙管を吸うイゾウにむかってわざとらしく咳き込んで、サッチは甲板前方へ目を向けた。
可愛い可愛い末っ子が、船の縁に両足をつけてしゃがみこんでいる。
視線はもちろん向かう先、到着予定の島。ドラウン・カクス。
後方斜め45度から見る顔だけではわからないが、おそらく漆黒の瞳は期待に濡れて存分に輝いていることだろう。
本当はその顔を覗き込んで堪能したいところだが、そんなことをすればマルコに襟首とっ掴まれて問答無用で何らかの仕事を言い渡される。
そこでサッチが男の嫉妬はなんとやらだとか余計なひと言を言うため仕事は増える一方だ。
またたとえマルコの目がなかったとしても、顔を覗き込まれたアンが少し照れながら「なんだよー、サッチ」とはにかんだりしたら、もう、心臓に悪い。
そろそろ歳を自覚してきたサッチは、そういった自殺行為は自粛した。
サッチはアンから視線を外し、再び今度は少し大きくなってきた緑の塊を見遣った。
火の島。
どういう云われかわからないが、自分の分身の島だと言われたらアンの期待が膨らむのも必然だろうと、サッチの頬は自然と緩む。
おそらくアンは、火の島だと言われるそこで自分の能力に何らかの力がプラスされる機会を、期待しているのだろう。
どんなもんかね、とサッチはぺろりと自分の首筋を撫でた。
アンが強くなれるのなら、それでいい。
ただ、とサッチは緩んだ頬を引き締めた。
なにが、どこが、とはサッチにもわからない。
本能に近い部分、この稼業を初めて研ぎ澄まされたであろういわゆる第六感、とでもいうものが何かを告げる。
それが白ひげ海賊団にプラスをもたらすのかはたまたマイナスをもたらすのかすらわからない。
この島が、どこか、なにか、ひっかかるのだ。
昨晩ひとりマルコの部屋を訪れ、マルコも何か感づいてやいないか探りを入れるような真似をした。
サッチが気付いたことがこの海賊団に何らかの影響を与えるものであるとすれば、マルコはきっとサッチよりもはやく、気付いているはずだと思った。
しかし、マルコはまったくその気を匂わせなかった。
「どこにでも民族の伝統ってもんはあるんだろうよい、伝統料理でも伝授してもらえよい」
そうねー、とサッチは気のない返事を返した。
マルコがそうなら、そうでいい。
これまでサッチが訝しく思ったことでも、マルコがGOと言えばそれに従った。
それによって困ったことは一度もない。
だから今回も、例にもれずサッチは素直に、極端に言えば従順なほどあっさりと引き下がった。
「まあ気は抜かねぇがよい」
マルコはすでにサッチに背を向けていた。
しかしサッチは、マルコがしっかりとサッチの布石を受け取ったのだとわかり、ほんの少し目元を緩めた。
そして猫背気味な背中にひらりと手を振って、サッチは部屋を後にした。
(休みっつーのも考えすぎていけねぇな)
サッチは見えない苦笑を漏らす。
ふと気づいたころには、緑の塊は眼前まで迫っていた。
*
今回の寄港は何よりも、島の住民たちとの交渉がカギになる。
いつもはさっさと船を飛び出すアンも、心なしか神妙な顔つきでじっとしていた。
一番に船を下りたのはマルコの1番隊。
船べりではジョズの隊がいつでも降りられるよう、言ってしまえば交戦準備をして構えていた。
寄港の少し前、航海士による説明があった。
島の構図は見ての通り白浜と森。
しかしこの森はドーナツ状になっていて、真ん中の空洞部分が住民たちの居住地域となっている。
よって島の外からはただの無人島にしか見えないのだという。
中心に行くにつれて高度は緩やかに上がっていく。
その高さは平地と丘ほどの差で、人はその丘の部分に住んでいる。
マルコ率いる1番隊は、そこへ向かって白浜を歩き出した。
大勢で行けばいいというものでもないので、残りのクルーは心なしかやきもきしながら1番隊の帰りを待つことになる。
数十分後、鬱蒼と茂る木々の間から戻ってきた一番隊たちの嬉々とした顔を見て、待機していたクルーたちはほうっと安堵の息をつき、そしてすぐさま歓声をあげたのだった。
帰ってきた一番隊には、背の高い老人がついてきた。
短い白髪で肌は日に焼け、黒い瞳が知的そうなその老人はこの島の住人の長だった。
麻のような涼しそうな布を器用に巻き付けた衣服と、首には大きな丸い木のビーズでできた首飾り。
マルコの交渉に静かに耳を傾け、海賊という言葉にも臆することなく、必要な物資と食料を積んでログがたまるまで4日間の停泊を承諾してくれた。
「その代わりというわけではないが、島の中心の神殿には手を出さんでほしい」
長は真摯な瞳でそう言ったが、無論白ひげ海賊団にこの島を荒らす気は毛頭ない。
約束するよい、とマルコは固く頷いた。
白ひげが船上から老人を見下ろす。
長も、すっと目を細めて白ひげを見上げた。
二人の老人がほんの数秒の間、視線を交わす。
考えの読めない長の顔に、白ひげはにぃと口端を上げた。
長は白ひげから視線を外すと、船員たちに指示を始めたマルコを呼び止めた。
「どうせなら宴は私たちの村でやるといい。食料を運ぶ手間が省けるだろう」
「あー…ありがてぇがよい。そっちにゃ女子供いるだろい、海賊が入り込んで困るのはそっちじゃねぇのかよい」
「…海賊には慣れている。夕餉を一緒にするなら、ついでの力仕事も頼みたい」
「海賊を使う気かよい」とマルコが好戦的な目を向けても、長は揺れない瞳のまま「慣れていると言った」と静かに言い返した。
肝の座った老人は嫌いじゃない。
マルコはにやりと笑って、宴の準備を村へと運ぶよう手配し、指示した。
*
太く乾いた木々が高く組み上げられていく。
村の広場の中心にあるそれを、村人たちは遠巻きに見守っていた。
長は海賊に慣れているとはいったが、馴れ馴れしいわけではなかった。
この村の、この集団の人間は大人しく寡黙というのが持ち合わせた民族性らしい。
村人たちは海賊たちを臆するそぶりこそ見せなかったが、馴れ合おうとするのは無邪気な子供たちだけだった。
一番子供たちと歳の近いアンに至っては、既に少女をひとり膝の上に乗せて楽しそうに口を動かしている。
能力のせいで木材を燃やしてしまうアンはこのとき仕事がない。
組み木造りを男たちに任せることはいつも気がひけていたが、今日は懐かれた子供のお守をすることで暇が潰せた。
「アン!組めたぜ、頼む!!」
「お、了解」
4メートルほど、常識はずれな高さに積み上げられた木々の傍らでクルーがアンに声をかけた。
アンにも宴を始めるための仕事がようやく回ってきた。
しかもこれは、アンにしかできない。
アンは膝に乗った少女に一言断りひょいと退かし、立ち上がった。
寄港1日目の仕事を終えた男たちがわらわらと集まり、組み木を囲むように腰を下ろし始める。
クルーに手招かれて村人たちがおずおずと寄って来た。
手には酒。
いつのまにか日は落ちていて、空は紫色から紺へと変わろうという曖昧な色合い。
組み木に近づいたアンに、一本のボトルが投げ渡された。
アンは難なくそれを受け取る。
村の中での宴ということで予定とは違い船を下りた白ひげと、クルーが期待を込めた眼差しでアンを見守る。
村人たちは酒を持たされ、何もない枯れ木の積み重ねを怪訝な顔で見つめていた。
白ひげ海賊団流キャンプファイアーは、アンのショーから始まる。
アンは組み木の2メートルほど手前で立ち止まった。
そして4メートルある組み木の頂点に向かって、一本のボトル、酒瓶を振りかぶって投げた。
村人から控えめなどよめきが上がる。
代わりに白ひげクルーからははやし立てる声が上がった。
栓のされた酒瓶は、くるくると回りながらまっすぐ組み木の頂点へと飛んで行った。
アンの右腕が上がり、細い人差し指が狙いを定める。
人の目が追い付かないスピードで閃光がアンの指先から放たれ、瓶は激しい音ともに砕け散った。
今度は村人から悲鳴のような声が上がった。
アンの火銃は酒瓶を砕くだけではなく、その中身のアルコールに火をつける。
燃え盛った液体は、覆いかぶさるように組み木に降りかかった。
そしてすぐさま、組み木の中心からは吹き上がるような炎が上がった。
豪華なショーの成功に、クルーは歓声を上げて乾杯を始めた。
アンが満足げな顔で白ひげにVサインを送ると白ひげも特別嬉しそうな顔を見せた。
代わりに、島の住人たちだけが動きを止めた。
彼らと乾杯をしようとしたクルーたちが少しずつその異様な様子に気づき始める。
住人たちは呼吸を忘れたようにアンを見つめた。
少しずつ、クルーたちの歓声が減っていく。
様子に気づいたマルコも、サッチも、そしてアンも首をかしげた。
そしてついに広場からはすべての音が消え去った。
「…えー、と。なに?」
アンが肩をすくめた。
口を開いたのは誰かわからない、住人の一人だった。
「…神、」
違うと言えない
PR
あ、えーっと。
開いた扉の前で立ち往生を強いられたこの船のコックは、件の者たちから視線を外すこともできずに先のような声を発した。
ベッドに男と女が二人。
その位置関係は言わずもがな。
そうとなれば無粋なことはできない、おっと失礼とばかりに一つからかいでもしてドアを閉めればいいことなのだけれど。
サッチからは二人のつむじが見えていた。
それが同時に動き、アンは仰向けのまま顔を後ろへと反らす。
マルコはひそめた眉をそのままに顔を上げる(げんなりしているように見えないでもない)。
サッチは虚を突かれた顔にやんわりと苦笑を浮かべた。
「あー、稽古付けてるとか、そういうアレ?」
*
翌朝、食堂へと向かうマルコの足取りは重かった。
マルコの朝は遅い。
よってすれ違う隊員たちがすでに朝食を済ませていることも少なくない。
その隊員たちが、マルコに生暖かい視線を送っていた。
食堂まで一本道の廊下に出てから、適当な間隔ごとに爆笑と思われる声が聞こえることも気にかかる。
あのクソリーゼント、と悪態ついてからマルコは食堂の扉を開けた。
「…っだっはっはっは!!!」
一番奥のテーブルで、フォークを握りしめて震えるラクヨウの横顔が見えた。
その向かいでイゾウは目の端に小さく水滴まで浮かべてヒーヒー言っている。
隣に座るハルタが顔をこちらに向けて、あ、と声を漏らした。
いつもであれば、『楽しそうじゃねぇかい』とでも言って青筋を浮かべれば黙らせることなど造作もなかったのだが。
今日は眠たげな眼をさらに細めて、じとりと睨むことしかできなかった。
笑いのタネがタネである。
据え膳を食い損ねた長男は、モビー内におけるネタの格好の餌食となっていた。
「おはよ、マルコ」
「…おぉ」
言い返さないマルコに、ハルタが苦笑を向けつつ声をかけた。
その隣でやっと顔を上げたイゾウは未だはぁはぁと荒い呼吸を繰り返しており、マルコを視界に捉えてもおぉマルコと言うだけで止まらなかった。
くい、と長く白い指が厨房を指さした。
「サッチ」
「…わかってるよい」
マルコは二人の後ろを通り過ぎ、重たい足取りを一変させて厨房へと歩いていく。
数秒後、聞きたくもない男の断末魔の叫びをBGMにイゾウはやっとのことで煎茶をすすった。
*
例によって寝坊したアンは、朝食の皿を抱えての隊長会議参加となった。
昨日あのままアンの上で脱力したマルコは、ゆっくりと起き上った。
ドア付近へ視線を運ぶと、ドア前の床に紙束が一つ。
サッチの姿はなくなっていた。
そして無言でアンが寝ころぶベッドをメイキングして、ぽかんとしたままのアンをそこに再び転がした。
「寝ろ」
その一言と、ぽんぽんと布団の上からお腹辺りを叩かれる、それだけのことでアンは拍子抜けする暇もなく引きずり込まれるように寝てしまった。
マルコの部屋のにおいと布団の気持ちよさがあいまって、この部屋に来た目的などその瞬間に忘れた。
よって、ぐっすりと、気持ちよく、寝すぎた。
朝起きたそこは見慣れた部屋(しかし自室ではない)とすぐにわかったが、部屋の持ち主の姿はなかった。
というより寝入ってからマルコの気配を感じていない。
(……)
マルコはどこに、えっと、っていうよりあたしはなんでこの部屋に、あ、そういや久しぶりだなここで寝るの…
働きがいいとは言えない頭が、寝起きのせいでますますスロー運転だ。
アンはぬいぐるみのようにベッドの上に座って、ぼんやりと宙を眺めた。
かさかさと手が動いてマルコの気配、マルコが寝ていた気配を探したがすぐに微塵もないことに気付いた。
(…ベッド、取っちゃったんだな…また)
逆の立場(あればの話だが)だったとしたらアンは迷わずベッドを取った張本人のベッドを陣取るだろうが、まさかマルコがアンの部屋まで寝に行ったとは考えられない。
ということは寝ていないのだろう。
マルコの仕事机の上はいつも通り片付いていたが、椅子が引いたままだ。
夜通し仕事をしていたらしい。
これはまた出会い頭に説教コースだな、とアンは自分で自分の額をぺちんと音を立てて叩いた。
そのとき、さあっと窓から入り込む光の量が一気に増えた。
どうやら本日は快晴で、今まで太陽を覆っていた雲が立ち去ったらしい。
はあ、眩しい。
アンは目を細めて窓の外、薄い青を眺めて数秒、スプリングが悲鳴を上げる勢いでベッドから飛び退いた。
窓の外、大分上から光を差し込む太陽は起床時間にしては高すぎたのだ。
慌てて食堂に駆け込んだころには食後の安息をむさぼる隊員たちしかいなくて、見慣れた15人の姿がすでにないことに気付いてアンは慌てて会議室へと走ったのだった。
腰かける15人の隊長に囲まれ、マルコは本日の仕事を言い渡した。
寝坊・遅刻に関するアンへの負荷は忘れない。
不平の声を上げるアンを人睨みによって制して、マルコは抱える書類を一枚捲った。
「…と、今日の仕事は以上だよい。あと今日はもう一つ、次の寄港が近い」
「!! 何島!?何島!?」
「飯を飛ばすな。夏島だ」
おぉ!とアンが顔を綻ばせる。
それと同時にポロポロと口端からご飯をこぼすので、隣でサッチが甲斐甲斐しく世話を焼いていた。
「次の島には、街がない」
隊長たちが書類から目を離し、怪訝な顔を見せた。
「無人島ってことか」
「いや違う、人はいる。だが一民族の集団だ。自給自足生活ってとこか」
「へぇ、それはまた」
イゾウが楽しげに資料を捲った。
「食料調達は現地の奴らとの直接交渉になる。交渉にはオレが行くが、万一渋られたら、まぁ準備しとけよい」
「了解」
「もちろん花街もねぇからよい、クルーたちもほとんど船で過ごすだろい。飯は頼むよい」
「あいよ」
その島ジャガイモ生えてっかなー、と呟くサッチの隣で、アンがはいはい!と手を上げた。
「なんだよい」
「夜!夜の宴は!?」
島に着いたらするやつ!とアンはそわそわ身体を動かした。
ああー、とマルコは人差し指でこめかみを掻く。
「うまくいきゃあする予定だがよい、何しろ食料も酒もねぇんじゃどうにもなんねぇだろい」
「あ、そか…」
「マルコ、ログは」
「ああ、4日だ」
まあ、4日なら…と男たちは頷いた。
食料はともかく、酒なしの日々は船乗りにはキツイ。
4日、ログがたまったらすぐに出航し、次の島で酒の調達をすればいい。
マルコがばさりと音を立てて資料を閉じた。
「なんにせよ、今回の目的は食料の調達、あと医術班ができれば薬草の採取もってとこだ。今回は短ェ寄港だからオヤジは降りねぇ。
民族集団は外を排他する意識が強ェか、呑気で平和かどっちかだ。
その辺の情報がまだねぇから、気ぃ抜かねぇように言っとけよい」
やっとスプーンを置いたアンも含め、全員が頷いた。
ああそう、とマルコが首筋に手をやった。
「言い忘れてたが、島の名前はドラウン・カクス」
火の島、だそうだよい。
マルコがほんの少し口角を上げて、アンに視線を移した。
隊長たちの視線も否応なしに集まる。
ほ、とアンが口をすぼめた。
火を司る娘なら
(うちにひとりいますけど)
ドアを開ければ、そこにアンがいた。
「おっ、おかえり!」
マルコはドアを閉めた。
数歩下がり、目の前のドアを眺める。
そこから離れ、隣の部屋のドアをノックした。
「はい?」
顔を出したのは1番隊クルーだ。
「なんかあったっすか」
「…いや?」
「?」
内側からドアを開けたクルーと、もう一人、彼と相部屋のクルーも奥の椅子から不思議そうにマルコを振り返っている。
「…わりぃ、なんでもねぇよい」
「? そうっすか、じゃあおやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
目の前でドアが閉まり、マルコは自然とあごひげに手が伸びていた。
そこを数回擦って、小さく首をひねる。
そしてもう一度、自分の部屋だと思った、いやそうであるはずの部屋のドアを開けた。
「おっ、おかえり!ねえなんでさっきドア閉め」
「…お前なんでここにいるんだよい…」
マルコのベッドの上に鎮座していたアンは、居心地悪そうにもぞもぞ尻を動かした。
白ひげに書類を提出しに行く、数分の隙。
存在するだけで使うことはない鍵は、このときも使われなかった。
ゆえに猫が一匹入り込んでいたというわけか。
「待ってた」
「…ほう」
マルコは後ろ手でドアを閉め、忘れていたがその手に持っていた2冊のファイルを本棚に収めた。
「随分と久しぶりじゃねぇかい」
マルコの言うとおり、アンがこの部屋を訪れなくなって久しい。
自分の立場を、女という立場をわきまえてから、アンは『慎み』というものを覚えた。
面積の少ない布を纏っているだけという服装な時点で通常の慎み方からは逸脱しているかもしれないが、アンにしては、である。
相変わらず寝るときだろうがなんだろうが自室にカギはかけないし、宴があれば男どもと一緒になって甲板でごろ寝する(朝を迎える前にマルコによって部屋まで運ばれていることをアンは知らない)。
しかし、夜、暇さえあればマルコの部屋で、それもベッドの上でゴロゴロするという習慣だけはなくなった。
自分の身は自分で守れ。
ナースに言われたのだろう。
アンはその言葉をしっかりと遵守しているらしい。
単純なやつだと笑うことはしない。
アンらしい、素直でまっすぐな回答だ。
夜に恋人の部屋を訪れることが何を意味するか、ようやくわかったのだ。
無邪気であることが裏を返せばどれだけ残酷なことかも。
マルコは自室に置いてあるコーヒーメーカーのスイッチを入れた。
「コーヒーしかねぇけど、飲むかよい」
「あー、うん…あ、やっぱいいや。マルコ飲むの?寝られんの?」
「ああ、慣れてもう効かねぇよい」
「ふーん…」
ベッドの上でかしこまって正座していたアンは、カップの準備をするマルコの背中を盗み見るようにしながら少し足を崩した。
コポコポと水泡の音が心地よく響く。
こういう景色、というより雰囲気は本当に久しぶりだ。
波は静かで、窓の外は暗くて、少し遠くから酒盛りをする男たちの騒ぎ声が聞こえる。
部屋の中は静かで、どちらが話すということもなく、マルコは常に何らかの動作(おもに仕事)をしているのだけど、慌ただしくはない。
ここにいると、アンはすぐに眠たくなる。
マルコが発する独特の空気が眠気に似た快感となり、アンに自由を与える。
ここにいるときはなにをしてもいい。
話したいことがあれば口を開くままに話す。
ただじっと黙っていて、うずくまっていることもある。
マルコは何をするでもなく、アンの好きにさせてくれる。
この船の中で唯一アンに甘くない、無条件では甘えさせないマルコだが、このときだけは甘えさせてくれているのだとアンにもわかっていた。
だからこそ、この数か月それをアン自身が許さなかったことはアンの中ではとても大きい。
頑張ったじゃん、と自分を褒めたくなる気持ちも少々、しかしそれ以上に『許す』ときの覚悟も相当のものだった。
マルコは湯気の立つコーヒーをすすりながらベッドに歩み寄り、そこに腰かけた。
視線はまっすぐ、部屋の壁、本棚へと向けられている。
アンはベッドの真ん中でその背中を眺めた。
頭がぐるぐるする。
頬は発火している時ほど熱いし、目は緊張でちかちかする。
気を抜くと倒れてしまいそうだった。
先ほどこの部屋で感じた安心感は、マルコがベッドに座った瞬間つむじ風に巻き込まれるように一瞬にして飛んで行ってしまった。
唐突にマルコが振り返った。
「なんて顔してんだい」
くっと笑ったことによって目じりに寄った皺を見て、アンの肩から少しだけ力が抜ける。
しかし、別に捕って喰やしねぇよいという言葉ですぐに肩に力が戻った。
そんなアンを目の端で見て、マルコはからかうようにもう一度笑った。
アンが何か言いたそうに口を開き、そしてまた閉じる。
マルコはサイドテーブルにカップを置いた。
「マ、ルコ、」
「おう」
「あた、あたし、」
アンは膝の上で拳を握り、俯いたまま瞳を何度も動かした。
マルコはじっと、アンの言葉を待っている。
「マルコが、すごい、すき」
振り返ったマルコは少しの間アンの額辺りを見つめ、そしてふっと笑った。
それが空気越しにアンにも伝わった。
「…だか、らぁ、その…」
「アン」
呼ばれた声に反応し、ほとんど反射で顔を上げた。
顔が上がりきる前に、下から掬い上げられるように唇同士がぶつかった。
その衝撃でアンが思わず後ろに肘をつくと、それにあやかるかのようにマルコから力がかかりアンは背中から倒れた。
「思ったより早かったよい」
天井を背景に、マルコが見える。
悪そうな顔、と口をついて出そうになった言葉を慌てて飲み込んだ。
「だ、って」
「ん?」
欲しくなった。
どことなく寂しい夜は隣で寝ていてほしいし、寝付くときは頭を撫でてもらいたい。
マルコのことを考えて眠れないなんてそんなかわいらしいことは一切なかったが、アンにとってはそれに近い。
これが俗に言う『疼く』ということだと、アンにはまだわからなかった。
わかったとしてもそんなこと言えるはずもない。
だって、から後の続かないアンを見下ろして、マルコは右手でアンの前髪を掻き上げた。
アンはぎゅっと固く目を瞑る。
しかしすぐに、カッと見開いた。
「よし来い!!」
いろんな意味で
(気が抜けた)
3/15 blackforest さん
はじめまして!お返事が遅くなってごめんなさいね。
いやはや、マルアンに目覚めたとのことで。
待ってました。その言葉、待ってました。
嬉しいかぎりです。
マルアン40話読破、ありがとうございますうう。
その40話の時間を心地よく過ごせたことを願ってやまない、うん。
さらにはサンナミ好きともなると、これはもう私と仲良くなるしかない(やめろ)
いやもう、ほんとう、単純にうれしいのです。
マルアンもサンナミも種類は違えど同じ愛をもって書いているので、わかちあえたなら至福であります。
マルコがかっこいいのはあなたの目が素晴らしいからであります。
黒森(勝手に訳すな)さんのときめきを再びかっさらうべく、ぼちぼち更新も再開しますので
よろしければお付き合いくださいね。
コメント本当にうれしかったです、ありがとうございました!
3/2 夜鳩 さん
はじめまして、お返事が遅くなってごめんなさい。
サンナミバレンタインをサンジくん誕生日というなんとも素敵な日に読んで頂けたのですね!
サン誕を華麗にスルーしたものとして、とてもありがた…うれしかったです。はい。
しあわせなのはわたしのほうなのですよ。ほんとうに。
バレンタインは、へたれへたれなサンジくんとかっこいいサンジくんの同居具合にゴロゴロしていただけるとうれしい。
コメントいただけて、とてもうれしかったです。あああありがとうございます!
サンナミの更新は頼りないほどぽつぽつですが、よかったらまたぜひ^^
1/26,29 mochaさん
ようこそ!!そして!ようこそおおおおうおう!
お返事が遅くなってごめんなさいね。
遅くなった分頂いたコメントは腐るほど読み返しました。
サッチ好きを前面に押していただいてありがとうございます。同志です。
そしてなにより、サイト開設おめでとうございます!どんどんぱふぱふーひらひら(紙吹雪)
ちまたで人気の(←)夢というやつですね。
いやいやそんな謙遜しないで。
もちろんお邪魔させていただきます。させていただきました。(帰ってきた)
行って帰ってきただけでお話はまだ拝見していないので、これからゆっくり読ませていただきますねー。
そしてなんとリンク。ありがとうございます。よそ様のお宅に我が家の住所があるというのはなんとも恥ずかしい。しかしうれしい。
どんどん更新してぜひぜひサッチの輪を広げたってくださいな。
コメントもご報告も、ありがとうございましたーっ!
不憫であることがサッチがサッチたるゆえんだと思っているこまつなでした。
1/2 wanさん
あけましておめでとうございます。
可愛いサンタほしいですって…そんなの、そんなの、わたしもほしい!(こら)
うちに来てくれたなら捕まえてうちの子にします。
マルコがどれだけオレ得か、身に沁みますね。
いやはやこんなこまつなとうちのマルアンですが今年もなにとぞよろしくお願いしまする。ぺこり
*現パロ注意!(【ハロー隣の~】+サンナミ設定です)
夏、女が薄着になっていくこの季節、男としては目に嬉しいものだと思っていた。
それがどうだ。
クーラーが壊れ熱風を噴き出すたった7、8畳ばかりの部屋の中。
熱にやられたパソコンの前で頭を抱えた男がせめてもの目の保養とばかりに同じ部屋にいる自身の彼女に目をやっても、そこには男の皺の寄ったTシャツにすっぽりくるまって暑さにうだる女の姿。
だらしがないうえに楽しくないことこの上ない。
「…お前オレの服勝手に着るのやめろい…」
「だってこれだと下履かなくていいから涼しーんだもん」
そういって、アンはベッドの上で俯せになったまま足をパタパタ動かした。
翻るTシャツの隙間から一瞬覗いた内股に免じて、これ以上追及するのはやめることにした。
ああそれにしても。
「暑ィ…」
首元を滴る汗がシャツの襟に吸い込まれていく。
熱に弱いパソコンはさっさと仕事を諦めたままブラックアウト。
大量の氷を投入したせいで薄くなったコーヒーはクソまずい。
アンはベッドの上でだらりと四肢を伸ばしたまま、ねぇマルコーとハリのない声を出した。
「アイス買いに行こうってばあ」
「お前朝も食ってたじゃねぇか。腹壊すよい」
「へっぷーん、あたし生まれてこの方お腹壊したことなんてありませーん」
「冷凍庫に氷入ってんだろい。食っとけ」
「氷はいやだってば!」
ねぇマルコ、アイス、アイス、コンビニ、コンビニ、とアンがせがむ。
しばらく無視を続けてパソコンの復旧作業を続けていれば、諦めたのかアンが静かになった。
やっと大人しくなった、とマルコが額の汗をぬぐったその時。
突然ぐいっとマルコの襟が後ろに引っ張られ首が締まり、ガラガラガラっと耳元で響く轟音。
大量の氷がマルコの背中を伝っていった。
「うおっ!!おまっ、なにすんだよい!!」
「ね、涼し?涼しくなった?コンビニ行く気になった?」
驚いたマルコが立ち上がると、背中からゴトゴトと十数個の氷が床へ落ちる。
製氷機片手ににんまり笑顔のアンはさも『してあげた』顏だ。
「馬鹿言ってんじゃねぇよい!見ろ床ビッタビタじゃねぇか!」
「いーじゃん涼しいじゃん。もう一回いっとく?」
「…」
絶句したマルコに、アンは氷の詰まった製氷機を机に置いて、はいっ、はいっ、と財布と部屋の鍵を持たせた。
「こっんっびっにっ!」
もうマルコには、氷のおかげで濡れた服を着替えコンビニに赴く以外道はなかった。
*
「うはー!暑いねー!」
部屋の外に出るなり、うっと顔をしかめたマルコとは対照的に、アンは両腕を広げて暑い暑い!と叫んだ。
「…夏、好きかよい…」
「うん!でも冬もすき!」
セミの鳴き声がわんわんと鳴り響く。
なにが悲しくて午後二時という一日の中で最も暑い時間帯に、熱されたフライパン状態のコンクリートの上を歩かねばならないのか。
それを口に出そうにも、それは一瞬でアンのはしゃぐ声に飲み込まれる。
「セミいっぱいいる!ルフィとよく捕ったなー」
アンは電信柱や余所の家の樹を見上げながら前を歩いていく。
こういうところで歳の差が顕著に表れるもんだ、とマルコは隠すことなく大きなため息をついた。
「マルコ歩くの遅い!」
マルコの数歩先を歩いていたアンは、振り返ってマルコを待ち、その隣に並んだ。
「…これ以上老体に無理させんじゃねェよい」
「いっつも年寄扱いすんなって怒るくせに」
「…夏は別だ」
なにそれ、とアンがカラカラと笑う。
夏の似合う女だと思った。
*
たらたらと歩くマルコと、それを励ましながら歩くアンの向かいから二人の男女が歩いてきた。
アンは喋るのに夢中で気づいてはいないが、マルコは遠目に一瞥をくれた。
男は片方の手に大きめのビニール袋、おそらくスーパーの袋を持ち、もう片方の手は女の手と繋がっていた。
男が冗談でも言ったのだろう、女は笑いながら空いている方の手でこめかみあたりを拭った。
不意にアンの言葉が途切れた。
視線を隣に落とすと、アンも向かいの男女を見ていた。
「アン?」
「え?あ、うん、それでね…あれ、なんのはなしだっけ」
忘れちゃった、とアンは俯いた。
そのつむじを見下ろして、マルコはもう一度、自分たちとすれ違おうとしている男女を見た。
楽しげにお喋りをやめず、手を繋いだふたりはマルコたちが来た方へと歩いていく。
男のほうが一瞬こちらを見た。
ふたりを、というより視線はアンに向かっていた気がする。
完全にすれ違ってから、アンは少し首を捻じってすれ違ったばかりの男女を振り返った。
「…知り合いかよい?」
「や、ちがう…」
しらないひと、と呟いたアンはさっきの元気はどこへ行ったのか、押し黙って俯いた。
マルコが怪訝な顔でアンを見下ろすと、アンは一瞬マルコの顔を仰ぎ見たがすぐに目を逸らし、また俯く。
「…マルコ」
「なんだよい」
「あの、さあ…」
煮え切らない言い方で、アンの視線は宙をさまよう。
「あの…、て…」
「あ?」
「…手を、さあ…」
手?と繰り返し、ああとマルコは再び若いカップルを振り返った。
なるほど、とアンの言葉が腑に落ちた。
「こうかよい」
揺れていたアンの手を取って握ると、アンは目を丸めてマルコを見上げた。
しかしそれはすぐに嬉しそうな顔に変わる。
アンは笑顔で頷いた。
「こんなおっさんと手ェ繋ぎたいとかお前も酔狂な奴だよい」
「おっさんじゃないもん、マルコだもん」
「…お前常日頃オレをおっさん呼ばわりしといて…」
まあいい、とマルコは少し湿ったアンの手を握り直す。
少し強く握ると、同じ力が返ってきた。
角を曲がると、眼前にはコンビニの看板。
「ねぇマルコ」
「なんだよい」
「帰りもしたい」
「…しょうがないねい」
***
「はい」
「ありがと」
伸びてきた手に中身の詰まった袋を手渡す。
サンジはそれをナミから遠い方の手にぶら下げ、スーパーの自動ドアをくぐると同時に空いている方の手をナミのそれと繋いだ。
「うわ、あつ…」
「冷房との温度差で鳥肌立つわ」
「ほんとだ、ナミさん鳥肌立ってる」
焼けるからちゃんと帽子かぶって、とサンジはナミの頭に手をかざして帽子を深く被せた。
ナミは大人しくその手に頭を任せる。
「もうみんな来てるかな」
「ウソップからさっき着いたっつってメール来てた」
「ゾロは間違いなくまだね」
「あいつぁ出不精だからまだ着いてねぇとすりゃ家か迷子だな」
たしかに、とナミが笑う。
こめかみに汗が伝い、目に入る前にそれを拭った。
20メートルほど先、向かいから1組の男女が歩いてくる。
すらりと背の高い女の方は、激しい身振り手振りをつけておしゃべりに夢中らしい。
そのスタイルに反して子供っぽい笑顔の可愛い人だと、ナミはこっそり覗き見ながら思う。
男の方は煙草をふかした完全なる中年。
女の方の話に適当な相槌を打っているように見えた。
「どうする?このまま店行ってもいいけど。ゾロ迎えに行ってあげる?」
「そうだな…ああ、でも野菜。悪くなっちまう」
「ああ、そっか。じゃあ一回店に戻ってからもう一度でよっか」
「んー…」
おざなりな返事。
訝しく思いナミが視線を上げると、サンジの視線はすれ違ったふたりから戻ってきたところだった。
コイツ、と少しの制裁をこめて繋がった手を動かし手のひらをつねってやる。
「ぃたっ!なに?」
「やらしい目で見てんじゃないわよ」
途端に目を泳がせ始めたサンジは、そんなんじゃないよと裏返った声で否定した。
やだなあナミさん、と笑う声がひきつっている。
サンジは少し顔を捻じり後ろを振り返ると、でもさあと腰をかがめた。
「今の二人、親子かな。それにしちゃ仲良くね?」
「ばか。どうみても恋人同士じゃない」
「え!?でも歳…」
「そう、あんたはわかんないのねー」
まるで達観した様子でため息をつくナミを見下ろして、それから再び件のふたりを振り返ったサンジは、あ、と呟いた。
「ナミさん、見て」
「え?」
振り返れば、先の二人。
先程より少し身を寄せて、二人の間で揺れていたはずの手が今はしっかりと繋がっている。
「ナミさん、すげぇ」
「でしょ」
ふふっと得意げに笑ったナミに、サンジは感心して息をつく。
「…なんか、いいな」
「ね。いいね」
サンジが握った手にきゅっと小さく力を込めると、サンジの手に包まれていたナミの手がもぞりと動く。
ナミはサンジの指に自分のそれを絡ませた。
「暑いね」
「暑いな」
しあわせなら手を繋ごう
カレンダー
| 01 | 2026/02 | 03 |
| S | M | T | W | T | F | S |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
| 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
| 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
カテゴリー
フリーエリア
麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
@kmtn_05 からのツイート
我が家は同人サイト様かつ検索避け済みサイト様のみリンクフリーとなっております。
一声いただければ喜んで遊びに行きます。
足りん
URL;http;//legend.en-grey.com/
管理人:こまつな
Twitter
災害マニュアル
プロフィール
HN:
こまつな
性別:
女性
ブログ内検索
カウンター
