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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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日付が変わる10分前、マルコの机に未提出書類をすべて叩きつけてきたアンは、軽い足取りで食堂へと向かった。
思えば昼に少し食べただけで、今日は食事らしい食事をしていなかったことを思い出す。
べこりとお腹がえぐれてしまうんじゃないだろうかという恐怖と闘いながらもなんとか書類を仕上げた自分を心の中で盛大に褒めながら、船内を進んでいった。
 
 
 
 
食堂の扉を少し開けて、中に人がいないことを確かめる。
しかしアンはこっそりと覗き込んでいる今の自分の姿を想像して、せっかくマルコがかばってくれると言っていたのにこれじゃ水の泡なんじゃ、と不意に動きを止めた。
現にいま、盗み食いをする気満々である。
 
 
(…ま、いっか)
 
 
あっさりと天秤が空腹の方に傾き、サッチに怒られるとかそういう嫌なことは得意の『後で考える』を発動することにした。
 
 
 
 
 
この船で一番大きな空間である食堂には、縦に4つの大きなテーブルが並んでいる。
誰もいないとは知りつつなんとなく雰囲気で息を詰めたアンは真ん中の二つのテーブルの間を進んでいき、正面にあるカウンターまで近づいた。
はじめ真っ暗だったそこも、次第に目が慣れてきてぼんやりと風景の輪郭を描き出す。
カウンターを乗り越えて厨房へと入り込もうとしたアンは、ふと自分が足をかけているそこから少し離れたところに鎮座する背の高い物体を目に捉えた。
 
 
(・・・なにこれ)
 
 
行儀悪くカウンターテーブルについていた膝を戻し、その物体の方へと歩み寄る。
しかし一歩そちらへ踏み出した瞬間それが何であるか気づいたアンは、飛びつくようにその物体の方へと駆け寄った。
 
 
大きな皿の上で山、もしくは塔のように積まれたパスタは、乾くことのないようしっかりとラッピングされてそこにいた。
スパイスの効いたその香りが鼻腔をくすぐり、そわそわとアンはパスタに手を伸ばす。
 
 
(これ、食べていいかな、いいかな)
 
 
よしいい、と自分にゴーサインを出したアンはちょうどその皿の横にあったフォークを掴みとってラッピングを外し、折り重なるように積まれたパスタをフォークに絡ませた。
拳骨ほどの大きさでパスタがフォークの先端に絡まりつき、明らかに口より大きなそれを事もなげに口の中に押し込む。
 

 
 
(んまい)
 
 

 
もぐもぐと、ヒトに備わっているはずのない頬袋を盛大に活用して咀嚼し、パスタを口へと運ぶ動作を何度も繰り返した。
 

 
 
「んまい」
 
「おう、そりゃサッチ様の愛が入ってっからな」
 
「ほっかなるほど・・・・・・・!?」
 
 
驚きのあまりパスタが口からはみ出しそうになり、アンは慌てて手でそれを封じ込めた。
声の方へと顔を向けると同時に大きな灯りがともり、眩しさにアンは目を細める。
 
 
「ふぁっ・・・ふぁっひ!」
 
「おうよ」
 
「ひょ、ひょっとまって…!ほれは…!」
 
 
口の中のもとを慌てて飲み下そうとするが、焦りすぎて絡まったパスタが上手に呑み込めずもがもがと一人あがく。
そんなアンを見て小さく笑ったサッチは、アンが腰かけるカウンター席の隣に腰を下ろした。
 
 
「んな慌てねぇでも逃げねぇよ」
 
「…ん?…怒らないの?」
 
 
口の端からぴょろりと飛び出た麺をもう一度口の中に押し込みつつ恐る恐るそう言えば、サッチはカウンターに肘をついたまま手の甲でアンの額を小突いた。
 
 
「お馬鹿さんかお前は」
 
「んなっ」
 
「アンのためじゃなかったら誰がこんなとこに山積みのパスタにフォーク添えて置くかよ」
 
 
ごもっともな科白に、確かにと納得したアンは、初めから遠慮なんかしてなかったくせにじゃあ遠慮せずと呟いて、再びバキュームよろしくパスタを口に詰め始めた。
その様子をサッチは肘をついた手の上に顔を乗せて満足げに見遣る。
 
 
「サッチ何しに来たの?」
 
「ん?オレァずっとここにいたけど」
 
「!?うそ」
 
「うそじゃねぇよ、残りの食料の確認してた」
 
「ふーん…こんな遅くに?」
 
「…おうよ」
 
 
白ひげさんちのサッチ君は働き者だからねぇ、と冗談っぽく言ってアンが笑ったのを確認してから、サッチも少し笑う。
まさかマルコの部屋に行ったっきりの妹が心配でキッチンで待ち構えていたなんて言えない。
 
 
 
 
 
それからしばらくもきゅもきゅと口を動かしていたアンが、唐突にあ、と声を漏らした。
 
 
「ねぇサッチ」
 
「はいよ」
 
「あたしのことすき?」
 
 
ぱちくりと丸くなった目でアンを見つめれば、てらてらと光る口元のままアンも見つめ返す。
 
 
「…あー…そりゃあいつかの科白を思い出して大変心苦しいんですが」
 
「?」
 
「…まぁいいや、」
 
 
何の最終確認なのか知らないが、答えの出ていること、それに本人もわかっているはずのことを聞いてくるのは、アンにもそれなりに考えるところがあるのだろう。
減るもんじゃない、何度だって言ってやる。
減ったって出し惜しみなんてするもんか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あいしてるぜアン」
 
 
 
 
 
 
 
 
汚れた口元を手の甲で拭ったアンは、フォークを口にくわえたままにしゃりと笑った。
 
 
 
 
 
 
「だいすき」
 
 

拍手[27回]

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“血”












その日は抜けるような晴天で、海をずっと薄く引き伸ばしたような青が空高くどこまでも続いていた。
エースは見張り台の上、狭いスペースではあるが壁に背中を預けて空を仰いでいた。
 
 
(…すっげぇ、あったか…)
 
 
じんわりと体温が上がっていく。
温かいと眠くなる性質は誰だって子供の頃から変わらず、勿論エースもそれに洩れない。
重たくなってきた瞼に逆らわず目を閉じようとしたそのとき、今その瞬間までエースを包んでいた日差しが一瞬だけ消えた。
 
 
「お?」
 
 
ぱちりと目を開けば、ひゅんと鋭く風を切る音が後ろから聞こえた。
それが導くままに振り返れば、大きな青が金色を反射させながら後甲板の方へと羽ばたいていく。
 
 
 
(…マルコだ)
 
 
 
 
次の島への偵察は、たいてい単体行動の効くマルコかエースが行くことになっていて、今回はマルコの番だった。
そのマルコが帰ってきたらしい。
 
 
 
 
金の尾がふわりと波のように浮かんで、それから透き通るような、それでいて深い青色の羽が再び上下する。
 
 
 
エースは身を起こしてその姿が船の上を旋回しながら高度を落としていくのを見ていた。
 
相変わらず、綺麗だ。
以前、本当にそう思ったから『綺麗だなマルコ』と言ったら何故か殴られたからもう言わないが、本当は出し惜しみすること自体もったいないと思うほど、綺麗だと思う。
 
マルコは不死鳥で、それは誰もが知っていて、それがあいつの強みであって。
美しく、気高く、強く。
 
それなのに、本当にたまにだが、マルコが炎に変わった自身の腕を眺めているときにその瞳が無機質な色を宿すことがエースは気がかりだった。
 
 
 
「…綺麗なのになあ」
 
 
誰にともなくそう呟いて、揺れる金の尾を眺めていれば、後甲板へと降りていくマルコが突如一気に高度を落としたように見えた。
 
(!)
 
エースは思わず身を乗り出したが、すぐにマルコが何事もなかったかのように形成を立て直すので、気のせいかと詰めていた息を吐き出した。
それから見張り台の手すりに足をかけ、エースはとんと軽くその足場を蹴る。
ひゅんと甲板床に下り立ったエースは2週間ぶりに帰ってきたマルコを労わろうかと後甲板へと駆けだしたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「マールコッ」
 
 
甲板に下り立つと同時に人の姿に戻っていたマルコは、エースの声に素早く振り返った。
その様子にエースは首をかしげる。
 
「? おかえりマルコ」
 
「…あぁ、エース…ただいま、」
 
 
テンガロンハットのてっぺんを押さえてエースがにっと笑えば、マルコもいつものように少しだけ口角を上げて応えてくれる。
 
 
「…オヤジに、報告行くよい」
 
「ああそっか、じゃあ今日は宴だなっ!一番隊の奴ら喜ぶぞ!」
 
「…あぁ、じゃあ…」
 
 
朗らかに笑うエースにもう一度笑い返して、その横を通り過ぎる。
だがそれは、マルコがエースの隣に一歩を踏み出す前にマルコの身体が崩れ落ちたことによって叶わなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…え…?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ぐしゃりと、音もなく崩れ落ちたその身体を、エースは数秒の間呆然と見下ろしていた。
重なるように倒れた体はぴくりとも動かない。
白いシャツの下から盛り上がった肩甲骨がやけに目についた。
 
 
 
 
 
 
 
「…マ、ルコ…?っ、マルコ!!」
 
 
 
我に返ったエースが慌ててその肩を揺すり、俯いたマルコの顔を上向かせる。
 
 
「っ!!」
 
 
 
赤黒く酸化した血液がマルコの口から滴り甲板を染めていく。
一度大きくその身体が波を打ったかと思えば、またどろりとした血液を吐き出した。
 
 
 
 
 
「っあっ…!!だ、誰か!!マルコが!マルコが!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
じゃがいもが所狭しとひしめき合う籠を二つ両手に抱えて倉庫から出てきたサッチは、薄暗い倉庫に目が慣れていたため、一気に収縮する瞳孔に一瞬痛みすら覚える。
 
 
(おーおー今日もいい天気ってか)
 
 
 
グランドラインもやるじゃねぇかと言わざるを得ない青空ににやりと笑って、サッチはじゃがいもの籠を抱えなおす。
 
今日の昼飯用にこのジャガイモ全部を湯剥きして、家畜小屋から鳥四羽裁いて…と頭の中で今後の算段をしていると、ひらりと、ひと際眩しい光が目を刺した。
その方向へ顔を向ければ、大きく広がった羽がちょうど太陽を隠すところだった。
 
 
 
 
本日も無事不死鳥様ご帰還っと、
一人呟いたサッチは鼻歌を歌いながらマルコが飛んで行ったほうに背を向けキッチンへと歩き出す。
 
 
 
 
 
 
(…そういやあいつ、なんでわざわざ後甲板に)
 
 
 
普通偵察から帰ればすぐにオヤジに報告に行くわけで、それならば表甲板に降り立てば早いわけで。
たとえそうでなくてもわざわざ遠回りして後甲板に降り立つ意味はない。
それは、合理的なマルコの行動にしては不似合いなように思えた。
 
 
 
(…いっちょお迎えしてやるか、)
 
 
 
 
 
 
昔から、それはもう本当に昔から。
兄弟が帰ってきたならば出迎えるのが当たり前となっていた。
それは十年経っても二十年経っても、いつまでも当たり前であり続けたし、そうすることがサッチも好きだった。
 
 
 
おかえりと言えば、ただいまと言う。
こんなにも簡単に幸せになる方法が転がっているのだ。
捨てていてはもったいない。
 
 
 
 
 
 
 
 
くるりと身体を反転させたサッチは、籠の中のじゃがいもたちが落ちないよう軽く揺すりながら後甲板へと足を向けたのだった。
 
 
 
 
その数秒後引き攣った悲痛な声が進む方向から聞こえ、一瞬で宙に浮いたじゃがいもはサッチが跳ぶように駆け出すその後ろで雨音のような重たい音を立てて落ちた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ナースと船医の足音が重なり合う騒音は、いつの間にか止んでいた。。
その部屋の中にはひとりナースがいたが、他のナースに呼ばれて部屋を出ていく。
その際部屋の中にいたエースはじゃあマルコ隊長をよろしくと言われたが、何をどうよろしくすればいいのかわからない。
エースの脳内には未だ慌ただしい船医たちの悲鳴のような声が飛び交っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「エース」
 
 
座っていた回転椅子を少し回して振り返れば、膳をふたつ抱えたサッチがドアの傍に立っていた。
 
 
「マルコ、どうだって」
 
「…わか、ない…言ってること、よくわかんなくて…」
 
「…そか、」
 
 
まぁ食え、と差し出された膳の上にはまだ湯気をのぼらせるスープとピラフ。
半ば条件反射でスプーンを掴みそれを口へと運んだが、味なんかなかった。
サッチが珍しく失敗している。
 
「…なんか、まじぃぞ」
 
「…そりゃオレのせいじゃねぇよ」
 
 
確かに今砂を食べても同じ味がする気がする。
もう一つ椅子を持ってきたサッチは、エースと並んでベッドの前に座った。
その膝の上には、エースと同じ膳が置かれている。
二人は黙々と手を動かした。
 
 
「…ほんと、まじぃな」
 
「…だろ、」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
カツン、とスプーンがさらにぶつかった音がやけに響いた。
 
 
 
 
 
 
 
「…マルコの奴、帰ってきたとき、傷なんかなかったんだ」
 
「…」
 
「…外からじゃ、全然、普通の身体で…」
 
 
 
 
半分以上なくなった膝の上の食べ物を見つめたまま、エースがぽつりぽつりと零し始めた。
カランッ、と皿の上にスプーンが放り出される。
 
 
 
「…ッこいつっ、再生追いつかなかったくせに、外側だけ治して帰ってきたんだ…!
オレらに、気づかれねぇようにっ…!
だから傷口がどこかわかんねぇって、船医たちが焦ってて…
…だけど腹開けてみたら、内臓破れて、血の海だったって…!
…オレ、オレッ…全然気づかなくて…!!」
 
「当たり前だ馬鹿。しょうがねぇよ」
 
「…っどうしよう、サッチ…!マルコが死んだら、オレ…!!」
 
 
 
マルコは死なねぇよと、以前ならもっと軽く言えたのだろう。
だけど今、虫の息の兄弟を目の前にしてどうしてもその言葉が出なかった。
 
 
 
 
 
 
「…不死鳥も、不死身じゃあねぇんだな…」
 
 
息とともに吐き出すようにそう言ってから、その言葉が形になると想像以上に重たくてサッチは顔をしかめた。
 
わかっているはずのことだった。
マルコは不死鳥だが、不死身ではない。
傷は治るが痛みは残る人間の身体だ。
 
 
 
不死鳥の能力を手に入れて、無茶をするようになったマルコを何度もたしなめた。
 
 
 
 
(お前あんま突っ込んでくなよ、いくらなんでも危ねぇだろ)
 
(…オヤジのためなら、オレにしかできねぇこと、したいんだよい)
 
 
 
いいんだよいすぐに治るから。
そういってマルコは不敵に笑った。




 
 
いつだってそうだ。
今日のように外から見える部分の傷は綺麗に治して、痛みの形で残った傷は静かに蓄積させて、ひとりのときそれに耐える。
 
 
 
 
賢いフリしたとんだ馬鹿野郎の鳥頭は、わかっていない。
マルコが血を流せば痛いように、オレたちだって痛いんだ。
その血が繋がってなくても、たとえ赤の他人だろうと、苦しいときはいつだって一緒だ。
 
 
 
隠さないでほしい。
馬鹿げた矜持なんて腐らせて捨てちまえ。
いつだって一緒に苦しむ準備はできている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…エースほら、泣くな」
 
 
自分の髪をひっつかんでぎゅっと固く閉じた目の隙間からほろほろと涙をこぼすエースを、サッチが椅子ごと抱き寄せた。
目の前のコックコートにしがみつき、エースは恐怖に堪えるように震えながら泣いた。
 
 
 
そのとき、エースが鼻をすする音の隙間からごそりと布擦れの音が唐突に耳を打つ。
 
 
 
 
「…ん…」
 
 
 
ぴくっと眉を動かしたマルコは、いつものように眉間に皺を寄せてうっすらと目を開けた。
 
 
 
 
 
 
 
「…マルコ…?マルコ!!」
 
 
 
エースが飛びつくようにベッドの端に手をつくと、そこに寝そべっている当のマルコはいつものごとく鬱陶しそうにぐちゃぐちゃといろいろ入り混じったエースの顔を見上げた。
 
 
「なんだよい…きったねぇ顔しやがって…」
 
「きっ…!お前なぁ!」
 
 
絶句したエースがマルコに食って掛かろうとしたそのとき、唐突に部屋の扉が開いた。
 
 
「あ、マルコ隊長置きました?」
 
 
先ほど出て行ったナースは、目の前の出来事に特に動じることもなく間延びした声で良かったですねぇと笑った。
 



 
 
「…っておいおい、いいのか!?オヤジに知らせたり、その、なんかまだどっか診たりしなくて」
 
「え?はい、船長さんには知らせましたし」
 
「知らせましたって…」
 
 
ナースのあまりの冷静ぶりにサッチが言葉を失っていると、ナースは固まった二人の隊長を前に首をかしげる。
 
 
 



 
 
「私エース隊長に、マルコ隊長はそのうち起きますよ、って言いましたよね?」
 
 
 


 
 
 
サッチが答えを求めてエースの方を振り向けば、エースは呆けた顔でサッチを見つめて、それからナースを見つめた。
 
 
 
 
「…言われたっけ、」
 
「はい、『あぁ』って返事されましたよ」
 
「・・・」
 
「お前呆けてて聞いてなかっただろ!!」
 
 
つ、と一本エースの額に汗が流れた。
 
 
 
「…じゃあマルコは、」
 
「えぇ、はい。それも一応言いましたけど、もう大丈夫ですよ。マルコ隊長、私たちが治療してる傍からボウボウ燃えだして勝手に再生してくんだもの」
 
 
そうやってできるなら最初っからそうしてくださいよねぇ、と尻込みすることもなくあっけらかんとそう言い再び部屋を出ていくナースに、すまねぇよいとマルコが礼を返す。
 


 
淡々と進んでいく目の前の話に、サッチとエースはただ立ち尽くして目を丸めた。
 
 


 
 
 
「…こんの、バカマルコがぁ!!オレの美しい涙を返せ!!」
 
「痛っ!」
 
エースの平手がばしっとマルコの腹を叩くと、マルコは大仰に顔をしかめた。
 
 
「おまっ…!怪我人に手ぇ上げるんじゃねぇよい!それにてめぇが大事な話聞かねぇで、どうせ勝手な想像したただけだろい!」
 
「そうだとしても許さん!」
 
 
 
未だ寝ている状態のマルコの腹をびしばしと遠慮なく叩くエースに、マルコは軽く上体を起こして、その額を押し返したりそばかすの乗った頬をひっぱったりと怪我人らしからぬ応戦を始めた。
 
だがそれは、マルコがある一点に目を止めたことでぴたりと終わった。
 
 



 
 
 
 
 
「…サッ、チ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
下がり気味の眉をいつも以上に頼りなく下げたまま、それでも口はぎこちない笑みを浮かべるサッチの顔には、安堵に交じって未だ少しの恐怖が滲んでいた。
 
 
いつもふざけた風なサッチの初めて見る顔に、マルコもエースもぴたりとその動きを止めた。
 
 
 
 
「…サッチ、」
 
「…へへ…んとに、なんだってんだよ…」
 
 
 
カツ、と一歩踏み出したサッチは、唐突にマルコの額にチョップをかました。
あまりの不意打ちにマルコの上体は再びベッドへと沈む。
 
 
 
 
「痛ぁっ!!サッチてめぇ!!」
 
「アホウドリが!心配かけおって!反省なさい!!」
 
 
 
 
倒れ伏したマルコが額を押さえる手の隙間からサッチを除くと、その顔はいつものようで。
 
 
 
 
(…あぁ、嫌なもんを見た)
 
 
 
 
あんな顔をしたコイツなど二度と見たくないと、マルコは手のひらの下でこっそり笑う。
 
 
 
「…悪かったよい」
 
「ほんとにだぜ!」
 
「まったくだ」
 
 
偉そうに憤慨するエースとサッチを見上げて、マルコはいつものごとく口角を上げた。
 
 
 
 
「オレァそう簡単に死なねぇよい」
 
 
「はっ、どうだか」
 
 
 
今日のその姿じゃ説得力がねぇですぜマルコさん、と吐き捨てにやりと笑うサッチに、マルコも確かにと笑い返した。
 
 
 
 
「ま、一回くらい死にかけるのもいいんじゃね、マルコは」
 
「違いねぇ」
 
 
 
一瞬の間があいて、ふっと三人が同時に笑いを漏らす。
さっきまでの凍りついた空気が嘘のようで、あまりに嘘っぽすぎて今この時さえも嘘か、はたまた夢なんじゃないかと心配になる。
 
ただこの時が現実であることを、今さっき触れ合った場所からリアルに伝わる体温が告げていた。
 
 



 
 
 






(((・・・あぁ、)))









失いたくないと、心の底から叫んだ。 
 

 

拍手[14回]

*会話文のみ










夕焼け小焼けにはみ出た長ネギ










 


「おー、見ろよでっけぇー!」


「エース!!感動していちいち荷物下ろすな!また忘れるよい!」


「だってマルコほら、後ろ見てみ!なあ、ジョズ!」


「ああ、すごいな。だがオヤジが待ってるぞ、とりあえず歩こう」


「お、そうだな。言われてみれば腹減ってきた。サッチ今日飯何?」


「今日はこの島で採れた野菜をたんまり仕入れたので、それぶちこんでグラタンにします。あとスープ」


「うお!グラタンとかいつぶりだよ!」


「…涎拭けよい、汚ぇ」


「しかしエース君は昨日燻製中のベーコンを食っちゃったので、今日は野菜のスープのみです」


「…!………!!」


(((…絶句してる…)))


「…サッチ、ラクヨウの衣装箪笥の下から二番目の引き出しにある例のアレで手を打ちませんか」


「よし乗った。エースにもグラタンを支給してやる」


「にししっ、やった」



「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「なー久しぶりじゃねー?」


「何が」


「1・2・3・4番隊が一緒に下船すんの」


「ああ、言われてみればそうかもな。俺の3番隊は荷運びが多いし」


「おれっちんとこは食糧確保だし」


「オレは倉庫の整理か船番か街の探索!」


「という名の食い逃げ」


「っ、うるせぇぞサッチ・・・!たまには金払う!」


「いやいつも払えよい」


「そういうマルコは部屋篭ってばっかで腐ってるくせに」


「じゃあてめぇが書類の整理やれよい」



「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「あ」


「なんだいエース君」


「影、超長ぇ」


「おお、」



「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「なあ!背の順で並んでみようぜ!ほら、こっちジョズ!」


「子供か」


「いーじゃん、あ、サッチとマルコどっちが背ぇ高ぇの?」


「「オレ」」



「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「はい、背中くっつけてー。あ、サッチ」


「ほれみろマルコ!!」


「リーゼントのぶんだろい」


「喧嘩すんなよー」


「あ、着いた」













「「「「ただいまー」」」」



 

拍手[12回]

 
甲板掃除をしていた一人の隊員を捕まえて強引に肩を組み、嬉々として喋りまくるラクヨウをアンは苦笑を交えた呆れ顔で見ていた。
 
「ところでアン」
 
「ん?」
 
「まだどこが残ってんだ?」
 
「?」
 
何やら真剣な顔つきで問いかけるサッチに、何のこと?とアンは首をかしげる。
膝でにじり寄ってきたサッチは、ふうと一息ついてからアンの肩に手を乗せた。
 
 
「まだどこキスされてないんだ?もちろんオレっちのぶんは、空けといてくれてんだろ?」
 
「はあ!?」
 
 
また何を突然、と目を丸くするアンに構わず、サッチはがばちょっとアンに覆いかぶさるように抱き着いた。
 
「うわっ!」
 
「サッチ兄ちゃんは悲しいぞ!妹が、妹が汚ェ野郎どもに汚されるなんたぁ!」
 
「バッカ、あんたの兄弟たちだろ!」
 
 
ぎゅうぎゅうと遠慮なく締め付けてくる腕に初めは抵抗していたものの、この素面で酔っ払い並みのタチの悪さであるサッチを相手にするのは相当の徒労であり、アンは早々と諦めて体の力を抜いた。
腕の中でアンの力が抜けたのを感じたサッチは、さらに機嫌をよくして胡坐をかいた自分の膝の間にアンを入れた。
 
通り過ぎる隊員たちはくっつきあう隊長二人に一瞬目を丸め、それからすぐに苦笑の色を浮かべる。
なにやってんすか、サッチ隊長マルコ隊長に見つかったらやべぇっすよ、等々の声がかけられるがサッチからしたらむしろこんなチャンス逃してなるもんか、マルコがいねぇ今だからこそ、とここぞとばかりにアンを腕の中に閉じ込めた。



 
 
 
「あ、ねぇサッチ」
 
腕の中でアンがひょっこりと顔を上げ、間近にあるサッチの顔を見上げる。
おぉ可愛い、と顔を蕩けさせつつもなんだと返す。
 
 
「ビスタがね、キスは場所によって意味が違うって言ってたんだけど」
 
知ってる?と漆黒の瞳が見上げてきた。
キスの意味ぃ?とサッチは頭をひねる。
 
「…あー、なんか聞いたことあるな」
 
「教えて!」
 
「んん、あんまり覚えてねぇけど…確かデコが、『友情』?だったかねぇ」
 
 
首筋をさすりながら記憶を探るサッチの膝の上で、アンは自分の額に手を持って行った。
額にキスをしたのは、ジョズとナミュールだ。
 
「あ、こめかみは?」
 
「こめかみぃ?そんなとこにもされたのか。知らねぇよこめかみとか」
 
こめかみにキスしてきたのはクリエルとスピード・ジルだ。
ふーんと相槌を打ちながらその箇所を指先で辿る。
 
 
「あとなんだったっけなぁ…あぁ、手のひらが『懇願』、だっけ」
 
「コンガン?」
 
「おぉ、まぁ意味なんて知ってるやつぁいねぇだろうがな」
 
確かに、とアンが同意するとサッチがにひっと笑みをこぼした。
手のひらにキスをしたブレンハイムとフォッサがそんなことを知っているとは到底思えない。
 
 
「あとは?」
 
「んむ、あ、手の甲が『尊敬』、だったか」
 
 
尊敬?とアンが言葉を返すと、尊敬。とさらにサッチがオウム返しをする。
手の甲にしたのは、アトモスと、ビスタ。
 

 
 
「…そんけい…」

 
 
 
たとえそのキスに意味なんかなくたって、遊びの一環だとしても。
その行為が尊敬を示していることに、アンは自然と頬を緩めた。
 
子ども扱いされてあやすように宥めすかされることがあっても、ちゃんと自分のことを一人のクルーで隊長だと認めてくれているのだと思わずにはいられない。
それに、キスに意味があることを教えてくれたのはビスタだ。
 

 
ふぅっと吐息と一緒に笑えば、サッチの手のひらがくしゃりと黒髪を撫でた。
 
 
 

 
 
「あ、そういえばここは?」
 
そう言って先ほどラクヨウが口づけた頬を指させば、サッチはにしゃりと笑ってその頬を撫でた。
 
 
「頬は、『厚意』」
 
「コウイ?」
 
「好意じゃなくて、厚意な。思いやりとかそゆこと」
 
「ふーん…」
 
「ま、どっちにしろお前のことが好きだっつー意味」
 
 
と適当な訳を当てておいて、サッチはにやりと口角をあげた。
 
「まぁな、オレァ唇でも一向に構わねぇんだが。さすがのサッチ様も命は惜しい。っつーことで、」
 


 
 
見上げてくるアンの顔に影を落として、手を添えていない右の頬へとちゅっと音を立てて唇を落とした。
 
 
 




 
 
「オレもここにしとくよ」
 
 
 
 
 
 
 




 
 
 
 
 
 
Please kiss me!
 
(…そこハルタもしたよ)
 
(なんっ…!)
 

拍手[12回]

 
「…あのね。待っててもしないからね」
 
呆れを全面に滲ませながらそう言えば、サッチはまたまたあ~と白ひげの巨体にひっつくアンに歩み寄った。
 
 
「知ってんだぜー、アン、今日は隊長たちに熱い口付けプレゼントキャンペーン実施中なんだろ?」
 
「はっ!?何それ違うし!みんなが勝手にあたしにしてくるんだよ!」
 
 
いつのまにかこの話が手を替え品を替え、おかしな噂になってしまったらしい。
サッチは、あれーおかしいなあそうだっけ?とでも言うように首を傾げていたのだが。
 
 
(…こいつ、絶対確信犯…!)
 
 
 
 
 
そこに突如響いた独特の笑い声と小さな揺れ。
ふわりと、アンは白ひげの身体から、サッチの足は地面から離れた。
 
 
「グララララ!人の身体の上で兄妹喧嘩してんじゃねぇぞハナタレがぁ!!」
 
 
その大きな手に襟首を掴まれた2人は、ぶんと顔が風を切ったかと思えば次の瞬間、サッチが入ってきた時のまま開け放たれてある大きな扉の外へと身体を放りだされた。
 
 
 
ドサッ、ゴツッ、と鈍い音が鳴り響き、背後からは豪快な笑い声。
 
 
「いってぇー…、くそ、オヤジのやつ、手加減しろよな…」
 
 
サッチが倒れた上体を起こしながらも手櫛でリーゼントを整え、同じく投げ飛ばされたアンの方を見遣る。
アンはうつ伏せのまま床で呻いていた。
 
 
「いったぁー…!」
 
「おいアン大丈夫か。なんか鈍器がぶつかったみてぇな音したぞ」
 
つーかお前痛いのかよとロギアという特殊能力を持つはずの妹に問いかければ、あろうことかアンの下にある床がむずりと動いた。
 
 
「お?」
 
「う?」
 
むくりと上体を起こしたアンが自らの着地点に視線を落とす。
と、そこには痛々しく額を腫らしたキングデューの姿があった。
 
 
「…アン、お前、物質的石頭…」
 
「うわわわわ!ご、ごめんキングデュー!下敷きに!!」
 
 
アンが慌てて身体を退ければ、額を摩りながらキングデューが身を起こす。
 
 
「なんで二人して飛んできたんだ」
 
「「オヤジに投げ飛ばされた」」
 
飛ばされた二人が口を揃えてそう言えば、キングデューは少し呆れを滲ませた顔をしながら立ち上がった。
 
「悪さもほどほどにしとけよ。マルコが帰ってきたらその分制裁も増えるぞ」
 
「失敬な!悪いことなんてしてないもん」
 
ただちょっとオヤジの上だってこと忘れてサッチと言い合いになっただけで、とその場にぺたんと座り込んだままのアンがごにょごにょと言い訳じみたことを口にする。
気まずそうに前髪をくしゃりと掴んだアンは、髪の毛のほかに別のものの感触があることに首をかしげて、それを梳くようにして手に取った。
 
「…頭に埃、ついてた」
 
「あ、さっきまでオレ酒蔵の整理してて結構古いやつ掘り出したりしてたからな。オレについてたのかもしれねぇ」
 
「うわほんとだ、アンまだついてんぞー」
 
 
サッチが左隣から膝ですり歩くように寄ってきて、動物の毛づくろいのようにアンの髪についた埃をひとつずつ取り払っていく。
キングデューも同じようにアンの頭頂部についた大きな埃を取ろうと身をかがめたその時、どどどっと重たい騒音が数回響き、次の瞬間にはアンの身体が大きく前に押し出された。
 
 
「わっ!」
 
「アン見つけた!!」
 
後ろからがばっと抱き着いたラクヨウの衝撃によって、アンの身体がぐんと前に傾く。
そしてアンの頭は、ちょうど腰を曲げてアンの頭を覗き込んでいたキングデューに再び衝突した。
 
がつ、と嫌な音がして、キングデューが口元を抑えながらふらふらと後ずさる。
アンも右目の上を手のひらで押さえてキッと後ろを振り返った。
 
「ラクヨウ!イッタイなぁもう!!」
 
キングデューに謝れ!と目くじらを立てると、アンの肩からぶら下がるようにして抱き着いていたラクヨウは多少きまり悪そうに笑った。
 
「いやワリィ。大丈夫かキングデュー」
 
「あ、あぁ…口打った…、アンも大丈夫か」
 
「あたしは大丈夫、あんまり硬くなかったんだもん」
 
そういえば、アンの肩口から顔をのぞかせていたラクヨウがピクリと反応し、そしてぎりりと奥歯をかんだ。
 
「…なんで悔しそうにしてんの、ラクヨウ」
 
「くそ、図らずとはいえ、キングデューにキスさせちまった!」
 
その言葉に、純情丸出しのキングデューは火がついたように赤くなった。
オレとしたことが!と悶え悔しがるラクヨウに、アンは肩に乗せられたラクヨウの腕を外しながら心底呆れたといった顔を見せる。
 
「…ラクヨウいいかげんそれから離れれば?」
 
「おぉ…なんかよくわかんねぇけどラクヨウすっげぇ頭悪そうに見える」
 
 
アンの言葉にサッチが同調すれば、ラクヨウはうるせえうるせえと激しく首を振った。
 
「ほっぺたでいいからオレにもキスさせろ!」
 
「いいよ」
 
 
 
さらっとそう答えたアンに、ラクヨウはぱくりと口を開けた。
 
「…おまっ…じゃぁなんで今まで逃げてたんだ」
 
「だって追いかけられたら逃げちゃうんだもん」
 
ラクヨウすっごい怖い顔してたし、とアンが顔をしかめれば、ラクヨウはがくりと膝をついた。
 
「…最初から普通に頼めばよかった…!」
 
「お前絶対頭悪いだろ」
 
サッチの罵倒に構わずそうしてひとしきり悲しむと、ラクヨウは唐突に身を起こした。
 
「では失礼!」
 
えいやっ、という掛け声とともに、未だ座り込んでいるアンの頬にラクヨウが唇を寄せる。
アンがきゅっと目を瞑ると、ふにっと頬にやわらかい感覚があって、それはすぐに離れた。
 
 
「…ひひっ、やった、」
 
 
アンの横にしゃがみこんだままラクヨウがあんまり嬉しそうに笑うので、アンはさっきまで気持ち悪いとまで思って逃げていたのに、途端に可愛く思える。
これだからうちのおっさんたちは困るんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Please kiss me!
 
(おおそこの一隊員のお前ちょっと聞けよ、オレアンにキスしちまった!)
 
(…やっぱちょっとアレかも)
 

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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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