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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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喜んでいるんだろうと、その小さく縮こまった肩を見て思った。
全身を小刻みに震わせて、マルコの脚の上でそのシャツの裾を握りしめ、ただ俯いて静かに涙を流していたが、その涙は歓喜に染まっていた。
 
感情がすぐ顔に出るガキのような女のくせに、痛みばかりは隠す技術があるのはよくわかった。
きっとまだ深く深くアンの奥底で眠っている苦痛は山ほどあるのだろう。
その全部を自分が救ってやれるとは到底思わない。
ただ神だかなんだか得体の知れないものが救いの手を差し伸べるとかいうのなら、そんなものはクソくらえだ。
祈って救われるなら何故もっと早くアンを救わない。
だから自分はアンが崩れかけた際には誰よりも早く支えに行こうと、マルコは心中で強く思った。
そんなときが来るかはわからないが、崩壊ギリギリまではアンが自力で頑張ればいい。
できることなら自分で何とかしようとする強さを持つ女だ。
 
(オレの女だ)
 
負けるわけがない。
 
 
 
 
 
 








 
 
 
 
 
アンの顎を二本の指先でつまみあげ、潤んだ瞳を自分の顔へと向けさせる。
 
「…ぐっちゃぐちゃ、だよい」
 
「…っ…るさいっ…」
 
ぱっと視線をそらして、ずずっと鼻をすすった。
そのせいでまた鼻も赤くなる。
その様に笑いがこみあげてきてふっとマルコが頬を緩めると、なんで笑ってんのと言いたげにアンが顔をしかめた。
それがさらにおかしくて、ふっと鼻から抜けるように笑うと、アンが抗議しようと口を開いた。
が、言葉が声に乗る前にマルコが口でふさいだ。
 
固まるアンに数秒唇を押し付けて、名残惜しいと思わせるほどゆっくりと離れる。
 
 
 
 
「お前が、自分で整理つけるまで手は出さねぇよい」
 
「…あぇ…?」
 
「抱かねぇっつってんだ」
 
 
 
しばらく口を開けたままその言葉の意味を考えて、意味を捉えてからはなんとなく気まずくて目が合わせられず、アンはただあっちこっちと視線を彷徨わせる。
 
「…あ、う…ん。わ、わかった」
 
「…本当にわかってんのかい」
 
「わかってるよ!」
 
 
 
半ばむきになってそう返せば、マルコはへぇというように片眉と口角をあげた。
 
 


 
 
「したくなったら、お前から来いって言ってんだがよい、」
 
 




 
 
わかってんのかい?と覗き込むように顔を寄せれば、そばかすの散った頬にカッと赤が広がった。
 
 
「わわわわかってる!!」
 
「動揺しまくりじゃねぇかよい」
 
 
くっく、と喉を鳴らして笑うと、アンは眉根を寄せてマルコの顔を憎らしげに見やった。
そんなアンにお構いなしに、そんじゃ、とマルコはアンを抱き上げたまま立ち上がる。
すとんと木の床に立たされたアンは、自然とマルコと対峙するようになった。
 
 
 
「武器庫の整理の報告書がまだ上がってないねい。
それからこないだの寄港のときの換金リストも二番隊だけ未提出だい。
んでもって一週間前に渡した手配書のリストは目ぇ通したんだろうねい。
あとサッチの野郎から二日分の肉類が全て消えたとかいう報告があったんだが」
 
 
ニヤリと、効果音が付きそうなほど口端を上げたマルコに反して、アンは急に現実を突きつけられて途端に青ざめた。
 
 
「…ひっ、ひとでなし…!」
 
「なんとでも言え。明日までに溜まった書類全部出せなかったらサッチに突き出すよい。
今日中に仕上がったらバレたときかばってやる」
 
 
その言葉にぴくりと反応したアンは、ぱっと顔をほころばせてマルコを見上げた。
 
「ほんと!?」
 
 
マルコがひとつ頷けばさらに笑みを深くして、アンはつむじ風の如くだかだかとブーツを鳴らして自室へと駆けていった。
 
 
その背中を苦笑交じりで見送って、マルコは再びベッドへ腰を下ろした。
 









 
 
 
アンが出向くか自分が折れるか。
まぁ後者はありえねぇな、と内心頷いた。
 
 
今はやらなければいけないことがたくさんあったほうがいい。
余計なことを考えずに済むだろうし、考えることが苦手なアンのことだ、いつか面倒になって放棄されたりしたらたまったもんじゃない。
 
ただ今は、手に入れた喜びに身を任せて目の前のことに打ち込めばいいと、そう思う。
アンが思っているより、きっと、世界はもっと簡単に回っているのだから。
 
 






 
 
 
 
「…いつ、来るかねい…」
 
 
ひとり呟いて、馬鹿馬鹿しいと思いつつもくっと笑いがこぼれた。
 
 
(…まぁ、どちらにしろ)
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

拍手[35回]

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寒かった怖かった寂しかった。
本当は拒んでなんてほしくなかった。
 
大丈夫、血縁なんて関係ない。
 
ただ一言、そういってもらえたらただそれだけで救われたのに。
誰も、誰もそんなこと言ってくれなくて。
 
 
 
 
 
 


 
 
 
ずっと昔、お腹がすいて道を歩いていると、優しい女の人が声をかけてくれた。
嬉しくて嬉しくて、あたしはその手に導かれるまま歩いて行って、ご飯をもらって。
 
『親はいないの?』
 
いないと答えれば、彼女は花のように笑った。
 
『じゃぁここにいればいいわ。私も一人なの』
 
居場所が、できたと思った。
思ったのに。
 
『商人だった夫がね、海賊に殺されたの。こんな時代のせいで。
…私はあの男を許さない』
 
それを聞いた瞬間、あたしは走り出した。
倒れた椅子にもあたしを呼ぶ女の人の声にも構わず、逃げるように走った。
やっぱり居場所なんてなかった。
 
 
後にも先にも他人の優しさに靡いたのはそれきりで、それ以来信じることが怖くなった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
『ねぇ、あのおっさん、』
 
『あぁ、マルコ隊長?一番隊の隊長だよ。なんだアン、気になんのか』
 
『…別に、なんでもない、です』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
この感情が、人を好きになることだと教えてもらって、
マルコの言動ひとつで右へ左へとあっちこっちへ動く自分の気持ちがくすぐったくて、
でもあたしが揺らいだときは支えてくれたり、押し戻してくれる家族がいた。
 
 
 
 
 
『お前、可愛いなあ』
 
『…アン、悲しい?』
 
『…泣いても、いいんだぞ』
 
『なんか、あったのかい』
 
『このバカ娘が。心配しただろ』
 
『だって私もあなたをとても愛してる』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
嬉しくないわけがない。
でも手放しで喜べるほど素直じゃなかった。
 
あたしのことをもっと知ったら、みんなはどんな顔をするんだろう。
そもそも命を取り合った敵の子供が、家族としてここにいると知ったら。
 
なじられて、蔑まれて、出てけと言われることなんてないのはわかっていた。
そんなことより、今まで隠し通してきたことを知られるのが怖かった。
でも明言できるほど大人じゃなくて、ずるずる、ずるずると。
 
 
 
 
 
 

 
 
マルコに求められていると知って、嬉しかった。
でもそれと同時に、応えられないという答えも出ていた。
 
血が混じる。
 
もし、もしも新しい命が宿ったら。
その命までもが鎖でつながれて、たとえどんなに鎖が細くなったって、絶対に千切れはしないから。
あたしの身勝手のせいで新しい命がまた枷に繋がれてあたしと同じ目にさらされたら。
そう考えて、ぞっとした。
だから拒んだのに。
 
 
 


 
 
 
 
『オレが他のモン背負ってやる』
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
思えば、いつも崖っぷちだった。
一歩踏み出せば堕ちるだけで、後ろを振り返っても真っ暗で、どこにも行けないまま危うい均衡を保ってゆらゆら揺れていた。
 
でも背中を押されて、一歩進んで堕ちてみたら、マルコが掬い上げてくれた。
そうだ、マルコには翼があったんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
とん、とん、と子供をあやすようにアンの背中を分厚い掌が叩く。
そのリズムに合わせて絡まるように抱き合う二人分の身体も揺れる。
しゃくりあげるアンの黒髪が涙で頬にぺたりと張り付くが、その都度マルコがそれを指先で払いのけた。
 
アンの慟哭がゆっくりと静まって、少し荒い呼吸音と背中を叩く音だけが部屋に響く。
泣き疲れてアンがマルコの肩に額を預けても、マルコはそれをさも当たり前のこととして受け入れた。
どちらも話そうとはしなかったが、離れようともしなかった。
 
 
すっと心が凪いでいく。
それに比例して胸のあたりがほっこりと温かい。
それはアンに対しても、マルコに対しても同じだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…なぁ、アン」
 
耳の後ろでぽそりと、まるで内緒話のようにささやかれた声にアンがぴくりと反応する。
 
「お前の名前、誰が決めたか知ってるかい」
 
「…な、まえ…?…たぶん、母親…」
 
未だぼんやりと霞がかった頭を働かせてそういえば、頭の後ろでマルコがふっと笑った。
 
「オヤジに聞いたんだがねい、その名前、ロジャーが決めていたんだとよい」
 
「…え、」
 
別にだからって嬉しくない、とアンの心の声が聞こえてきた気がしてマルコはくつりと喉で笑ってから、アンを抱きしめたままよいっという掛け声とともに腕を伸ばしてサイドテーブルに立ててあった一冊の本をとった。
 
マルコはゆっくりとアンを引きはがし、二人の間に隙間を作る。
離れたことでさっきまでくっついていた部分が急に寒くなって、アンはへにゃりと眉を下げた。
それを見てマルコは苦笑して、ベッドからぶら下がっているアンの膝下に手を差し込んだ。
 
「わっ」
 
ふわりと一瞬身体が浮かび、ぎゅっと目をつぶればすぐにとさりと落とされる。
次に目を開ければ見えたのはマルコの横顔で、アンはあぐらをかいたマルコの膝の上で横抱きにされていた。
 
「えっ、えっ、」
 
慌てふためくアンをよそに、マルコはアンの腹の上に先ほど取り出した本を置いた。
 
 
「…何?」
 
「ビスタが置いてったんだがねい、南の海で使われていた言葉のずっと昔の辞書らしい」
 
適度にアバウトな説明をしてから、とりあえず開いてみろとアンを促す。
促されるままページをめくってみれば、細かい文字の羅列がびっしりと虫のように紙を埋め尽くしていた。
 
「うわっ、文字ばっか!」
 
「そりゃぁ辞書、だからねい」
 
マルコはくくっと喉を鳴らしたが、アンは未だマルコの意図がつかめず、ただぺらりぺらりとページを捲っていく。
 
「左上に、文字がかいてあるだろい」
 
「あ、うん」
 
言われた通りページの左上には、Aの文字。
 
「自分の名前、引いてみろい」
 
「あ、あたしの名前?」
 
何を唐突に、とでも言わんばかりの顔でマルコを見つめても、マルコは少し口角をあげているだけで何も言わない。
 
(…辞書って、どうやって引くんだろ)
 
ぽかんとそんなことを考えながら、たぶんこうかな?ととりあえずぱらぱらとAのページを探していった。
 
「…過ぎたよい」
 
「えっ」
 
ぬっとマルコの手が伸びて、アンが捲っていったページを逆に戻していく。
それは数枚捲って止まった。
 
 
【Ann】
 
 
これ?と不安げに指差してマルコを見れば、ただ頷かれる。
文字が小っちゃくて見にくいぞ、と思いながらも本に顔を寄せて、【Ann】の欄に書かれている文字列を指でたどっていった。
そしてそれは、すぐに止まった。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
【Ann】
愛される者
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…ロジャーの奴が、こんなしゃれたこと知ってたかどうかは知らねぇが…
お前は潜在的に、ロジャーがこの名前を選んだ時から。
他の誰よりも愛される資格は持ってるんじゃねぇか?」
 
 
 
名前ってのぁ案外調べてみると面白れぇもんだよい、と小さく笑いながらマルコはアンの腹の上に乗せた本のページを捲っていく。
その間もアンは微動だにせず、ただ本に添えた手をそのままに固まっていた。
 
マルコがもう一枚ページを捲ったとき、本に添えられていたアンの手の甲にひとつ、水滴が落ちた。
マルコの視線もそれを捉えたが、あえて触れずにもう一枚ページを捲る。
 
 
 
「…あ、たし…」
 
掠れた声に導かれてマルコが顔を上げると、不安げに滲んで揺れるアンの瞳とぶつかった。
 
 
 
 
 
「生まれてきて、よかった…?」
 
 
 
 
 
 





 
 
 
 
もう答えは自分の中でも出ている、まるで最終確認のように問われたそれに、マルコはアンの頭の上に手を置いてその髪をくしゃりと掴むようにして撫でた。
 
 
 







 
 
「お前がいない世の中なんて、考えたくねぇな」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

拍手[28回]

肩越しに振り返って見えたのは、薄紫のドレッドヘアの隙間からにやりと笑うラクヨウの顔。
ぎゃっと叫んだアンを逃がすまいと、ラクヨウがアンの肩をさらに強く掴んだ。
 
「さあ!俺にもキスさせろ!」
「だから別にあたし誰にも許可してないんだけど!」
「そんなもん知るか、他の野郎どもがしてるってのになんで俺は駄目なんだ!」
 
ふんっと鼻息荒くそう言うラクヨウに、必死すぎて怖いなどアンが言えるはずもなく。
嫌だとかなんだとかそういう次元を超えているのである。
 
アンは最後の抵抗手段とばかりに、心の中でラクヨウに謝りつつも、えいっと肩に火を灯した。
 
「あつぅっ!」
 
ばっとラクヨウの手が離れた隙に、アンは一目散に甲板を駆け出す。
 
「あっ、クソ、アンずりぃぞ!」
 
なんとでも言え!と叫びながらアンが目指すのは、最後の砦。
 
 
 
「オヤジィィィィィ!!」
 
 
 
 
 
 
 
遠慮なしにこの船で一番大きな扉を開けば、突然のことに細い目を丸めている白ひげに出会った。
アンは必死にそこまで駆け寄りその陰に身を隠す。
 
「かくまって!」
「グララララ!なんだあ、アン。かくれんぼでもしてんのか」
「そんなもん」
 
適当な返事を返すと、再びグララと独特の笑い声が腹に響いた。
しかしすぐに大きな音ともに先ほどと同じ扉が開く。
 
「オヤジっ!アンかくまってねぇか!?」
「あぁん?知らねぇなぁ…」
 
呼吸を荒げるラクヨウの問いにすっとぼける白ひげに、アンは内心でガッツポーズをかました。
じとりと探るように白ひげを見上げるラクヨウに、白ひげはにやりと笑い返す。
 
「なに、なんでアンを探してるってんだ?」
「それがよ、アンが俺にはキスさせてくんねぇんだよ」
 
要点をついているとも言うがいまいち説明の足らないラクヨウの言葉にも、白ひげはほぉと相槌を打った。
 
「んなことしてっと、マルコにどやされるんじゃねぇか?」
「わかってねぇなぁオヤジ。マルコがいない今だからこそ、こうして追っかけてるんじゃねぇか」
 
俺らだって妹可愛がりたい!と高らかに宣言するラクヨウに、白ひげはさらに相好を崩した。
 
「そりゃぁいい心がけだ。さっさとアン探してきな」
「おうよっ!邪魔したなぁオヤジ!」
 
さっと手を上げ礼を告げたラクヨウは再び甲板向いて走り去っていく。
ふう、とアンが息をついた。
 
「ありがとオヤジーっ!!ブラメンコとかさ、ちゃんとあたしをかくまってくれる人いなくってさあ」
 
助かった!と朗らかに笑う小さな娘を見下ろして、白ひげもふっと笑う。
よじよじと白ひげの巨体を上ったアンは、その首に抱き着いて、これでもかというほどの笑顔を見せた。
 
「やっぱオヤジは頼りになる!大好き!!」
「グララララ!んなこと知ってらぁ!!」
 
白ひげが地を揺るがして笑うと、それに顔を寄せてアンも破顔した。
そしてアンは、思いつきのまま目の前にある皺の多いその頬に唇を寄せた。
ちゅっと音を立てて唇を離すと、アンの方へと首を曲げぱちくりと瞬く白ひげの顔。
途端に恥ずかしくなったアンは、照れ隠しとばかりにへらりと笑った。
 
「…へへっ、なんか、したくなっちゃった」
 
そう言えば、見開いていた白ひげの目は徐々に徐々に細くなっていき、大きな掌がぼすんとアンの頭上に着地した。
そのままがしがしと乱暴に撫でられる。
 
「グララララ!こりゃぁ悪くねぇなぁ!!」
 
白ひげが嬉しそうに笑うから、アンも釣られるようにして笑う
ふふっと肩を揺らせば、同じようにしてアンがしがみついている白ひげの肩も揺れた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「…で、いつまでんなとこにいるつもりだ、サッチ」
「あちゃー、ばれてましたか」
 
唐突に白ひげが視線を送った方へとアンも驚いて顔を向ければ、そこには扉の隙間からひょいっと顔をのぞかせるサッチ。
 
「このアホ息子が。外仕事終わったならさっさと報告しねぇか」
「んなこと言ったって、溺愛娘とイチャコラしてたくせに」
 
オヤジもやるなぁ、なんて軽口をたたきながら部屋に入ってきたサッチは白ひげが座るベッドのサイドテーブルに書類をばさりと置くと、さも当たり前のように白ひげの横に並ぶようにして立った。
 
「…何してんの?サッチ」
 
未だ白ひげにしがみついたままのアンが、白ひげと共に訝しげな顔をして見せれば、サッチは腕を組んだまま当然とばかりに言い放った。
 
 
「アンのキスの、順番待ち」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Please kiss me
 
(…また面倒なのが来た)
 
 

拍手[11回]


*マルアン連載【それは狂気に満ちている】の【2 こういう馬鹿はタチが悪い】でアンが夜這うに至るまでの小ネタです。
















「オレァ先戻るよい、まだ書類終わってねぇ」
「んだよー!オレの酒飲めねぇってかぁ!?」
「そうだそうだー!まだ帰っちゃだめマルコー!」


きゃぁきゃぁと喚き立てるおっさんと小娘が片方ずつマルコの腕を掴む。
しかしマルコは立ち上がりながら両方の手を振り払った。

「酔っ払いの世話なんかしてられっかよい。オレァ仕事あるんだ」
「けちー!」
「けちー!」


けちだけちだと復唱するサッチとアンに辟易して、もう無視することにしてマルコは部屋へと戻って行った。
残されたふたりはその背中めがけてぶーたれていたが、しばらくするとそれも忘れてまた二人で酒を飲み始める。
甲板の隅に座る二人の周りには十数本にもなろうかというほどの酒瓶がごろごろと無造作に転がっており、それは宴の後甲板でそのまま眠りこける男たちの姿に重なった。
言うなればだらしのない姿である。



「んぅー、サッチぃ、あたしもう酔ったぁ」
「馬鹿言えぇ、オヤジの娘たるものがこんくらいで酔うわけあるかぁ!!」
「でもサッチも酔ってるー」
「ああーん?オレァまだまだ酔ってねぇよぉー?」

緩慢な手つきで開けたばかりの瓶を持ち上げゆらゆらと揺らすサッチ。
その姿にアンは特に面白くもないのにへにょりと笑い、サッチもにたりと笑い返す。
にゃっはっはーと意味もなく笑う酔っ払い二人、完全に出来上がっていた。









「ねー、マルコはぁ、なんであんなに仕事ばっかしてんのぉ?」
「ああー?あいつぁなぁ、仕事が恋人って奴なんだろうよー」
「ふぅーん」
「おや?アンちゃんご機嫌斜めかぁーい?」

覗き込むようにしたサッチに、アンはふるふると首を振った。

「べっつにぃー。いいもーん、あたしが勝手にすきなんだからぁ、いいもーん」

そう言ってサッチの手からウォッカをもぎ取ったアンはそれをためらいもなくごきゅりと喉に通す。
それによってさらに酔いが回ったが、既にアウトコントロールした脳はそれさえもわからない。

大人だからか男だからかつまりはおっさんだからか、アンほど酔いの回っていないサッチはアンの酔っぱらいっぷりを見てこりゃぁやべぇかなぁとのんびりと思う。
あんまり酔わせるとアンは次の日二日酔いで仕事どころじゃなくなる。
しかし面白そうなことが始まりそうな予感に身体がうずうずするのも事実である。
だって腐っても酔っ払い、その口火を切るのは自分自身なのである。


「アンはほんっとぉーにマルコがすきだなぁー」
「んぅー?んぅ。」


当たり前のことに首を傾げてから、それを肯定するようにひとつ頷く。


「アンはどうやってマルコを落とすってんだぁー?」
「んー?マルコがどっから落ちるってぇ?」
「ばっかそうじゃねぇよー。どうやって振り向かせるかって聞いてんだ」


蕩けた瞳をぱちりとまたたかせたアンは不思議そうに首をかしげた。

「ふり、むかー?」
「だってこのまんまじゃよぉ、アン。マルコの奴ぁいつまでたってもお前に惚れたりぁしねぇぜぇ?」

サッチがそう言うと、アンはそれはいやだぁと顔をしかめる。

「だろぉ?他の女にかっ攫われたらどうすんだよー」
「ぬぅーん。でもさぁ、あったしどうすればとかわかんないよー…」
「にゅっふっふっー。そんなアンのために、オレがいいこと教えちゃろうよ」
「えぇー?なにぃー?」


ちょいちょいと人差し指を曲げ顔を寄せるように示すサッチに、アンは示されるまま顔を寄せた。
すると耳元で内緒話のように囁かれた言葉。












「夜這ってこい」



顔を遠ざけると、にんまりと笑う酔っ払い。
しかしアンは再び首をかしげる。


「夜這…ってなにぃ?」
「んー?そうだなぁー・・・寝てる相手のベッドに忍び込んでだなぁ、ほらさぁ、その、イイコト、しちゃうわけよ」
「イイコト?」
「そう、イイコト」

わかる?と問うサッチに、アンは曖昧に頷いた。
イイコト。ベッドでするイイコトと言えば、「寝る」。
それしかないだろう。

アンなりの精いっぱいの解釈が成されたところで、アンはすくっと立ち上がった。


「んじゃぁー、白ひげ海賊団二番隊たいちょー、火拳のアン!ちょっくら夜這ってきまぁす!」
「おぉー!頑張ってこいよぉー!」


へらへらと笑いながらサッチに見送られ、アンはおぼつかない足取りでマルコの部屋を目指したのだった。













マルコー、と呼びかけながら部屋の扉を開けようとして、アンはあわてて口をつぐんだ。
サッチの言葉を思い出したからだ。
夜這いと言うのは、寝てる相手に行うものらしい。

(・・・じゃぁ、起こしちゃだめ、ってことかぁ)

ということで、黙って静かに扉を引いた。












(…寝てる)

書類をするって言ってなかったっけと首をかしげて見たが、マルコの仕事机に置いてある懐中時計を見て納得した。
いい気分で飲んでいたので意識しなかったが、マルコが酒盛りから抜けてから相当な時間がたっていた。
そしてマルコは適度にしか飲んでいない。
そのおかげで酒がちょうどいい睡眠薬になったようで、いつもは人の気配で起きるマルコがぴくりとも動かなかった。
浅く被ったシーツがマルコの呼吸に合わせて小さく上下する。


すすす、とベッドの脇に近づく。
来てはみたものの、夜這う=寝るしかわからないアンは、具体的にどうすればいいのか皆目見当がつかなかった。

(・・・ただ寝ればいいのかなぁ)

そう思い立ち、よいせとマルコのベッドに乗り上げそのままごろんと横になってみた。
ちょうどベッドの中心でマルコが寝ているためなんとなく落ちそうで危ういが、アンは必死にマルコの方へ身体を寄せて落ちまいとする。
アンの方に顔を向けマルコが寝ているので、アンはここぞとばかりにマルコの顔を眺めた。

まつ毛が短いだとか唇が分厚いだとか、これといって新しい発見はなくつまらない。


(…あぁ、なんか本当に、眠くなってきた…)


じんわりと伝わるマルコの体温だとか、内側から身体を温める酒の力のせいでうとうとしだしたアンは、ゆっくりと目を細めていった。
が、慌ててここで寝たらだめだと目を見開いた。

マルコの布団で寝て発火して、怒られたばかりじゃないか。
マルコが目覚めてあたしが寝てたら、今度こそ口きいてもらえない・・・!

そのあたりはきちんと理性的に考えられたらしく、アンは慌てて身体を起こそうとベッドに手をついた。
しかしその動きは隣でマルコが身じろいだことでぴたりと止まってしまう。


「…ん…」

小さな呻きと共にマルコが寝がえりを打つ。
起きてしまったかと冷や汗だらだらなアンは、寝そべったままベッドに手をついて上体を持ち上げるという恰好のまま固まってしまった。
マルコは寝心地のいい場所を探すかのようにごそごそと動いていたかと思うと、不意にアンの方へ腕を伸ばした。

















(・・・これは、どういう、こと?)

不意に伸ばされた手はしっかりとアンの腰を抱き込み、自らの体に引き寄せた。
マルコの左手はアンの腰を上から抱き、右腕は上手いことアンの首の下に回してそのままアンの肩を抱き込んでいる。

アンの体温が高く抱き心地がいいからか、マルコは満足な寝場所を得たとでも言わんばかりの安らかな顔で再び動きを止め寝入ってしまった。


がっちりと掴まれた全身は身動きもとれず、アンの目の前にはマルコの鎖骨しか目に入らない。
そして眠い。
アンは限界に近い眠気と戦っていた。


(あー…駄目だー…寝るー…)



怒られるだろうかとちらりと思ったが、離さないのはマルコのほうなのだし自分は悪くない。
そう結論付けたアンは、そうだそうに決まっていると自分が夜這いに来たことも棚に上げて納得し、安心してそのまま眠りについた。

翌日アンは、マルコにベッドから落とされて目覚めることになる。


 

そしてサッチは、まさか一番隊隊長の部屋でこんな健全な光景が繰り広げられているなど夢にも思っていなかった。

拍手[17回]

言うだけ言って去ってしまったビスタの背中を恨みがましく見ていると、背後から不敵な声。
 ふっふっふと低く笑う声の正体に思い当たったアンは、素早く振り返りその姿を確認した。
 
「げっ!」
 
「ふっふーん、見つけたぜ、アンー…」
 
 
わきわきと両手の指を動かすラクヨウは、怪しい顔付きでアンとの距離を縮めた。
変態である。
 
 
「ラクヨウ!バカなことばっかり広めないでよ!」
 
「いーや、ありゃあ仕様ねぇ。ジョズにだけいい思いさせてたまるかよ」
 
特権は平等に、だろ?とニヤリと笑うラクヨウにアンは顔を引き攣らせた。
 
「…ラクヨウ、気持ち悪い」
 
「悪ぃな、オレァそんな言葉でへこたれるようなヤワな心臓持ち合わせてねぇんでな」
 
ということで、とラクヨウは大きく息を吸った。
 
 


「オレにもキスさせろやオラァァァ!!」
 
「ぎやぁぁぁぁっ!!」
 
 
あまりの剣幕で迫り来たラクヨウに、アンは悲鳴を挙げて逃げ出した。
 


 
「なんで逃げんだこの野郎がぁ!!」
 
「逃げんに決まってんでしょーが!!」
 
 
鬼気迫る勢いで追いかけてくるラクヨウから逃げるべく、アンも必死の形相で逃げ惑う。
遊んでいるようであって当人たちは至って本気である。
隊長クラスの甲板鬼ごっこに、隊員たちは血相変えて道をあける。
ラクヨウは必死すぎて覇気が漏れ出しモビーの床がみしみしと軋んでいるが、本人は全く気づいていない。
 
 
 
「あ!ブラメンコ!!」
 
アンはちょうど梯子から登ってきたばかりのブラメンコの姿を捉え、その名を呼んだ。
ブラメンコはなんだなんだと距離をあけて走ってくる2人の姿を確認して目を白黒させる。
 
 
「かくまって!!」
 
言うが早いか、アンはするんとブラメンコの大きなポケットに滑り込んだ。

「おわっ!」

ぐんっと腹のあたりに重みが加わりよろけるものの、ブラメンコは踏ん張り何とかこたえる。
その前に、息を切らしたラクヨウが立ち止まった。


「~っ、くっそー…!おいアン出てこい!ブラメンコのポケットはな!超汚ェんだぞ!!」

「おいっ!いい加減なこと言うんじゃねぇ!」

 「…うわっ…ほんと、クサ…」
 

もごもごとポケットから聞こえたアンのくぐもった声に、ブラメンコは大きく顔をしかめて実に悲しげである。
いくら男所帯とはいえ、可愛い妹には知られなくなかった衛生面というものもある。


「てかブラメンコてめぇのポケットは四次元か。なんでアンがまるごと入れんだ」

「酒樽とか入れてたからな、伸びた」


そういう話かよ…と呆れ顔のラクヨウに、そういやなんでアンを追ってたんだ?とブラメンコが尋ねる。
かくかくしかじか、というふうにラクヨウが説明すると、そりゃいけねぇとブラメンコは再び顔をしかめ、なにがいけねぇんだと問うラクヨウにお構いなく突如ポケットに手を突っ込みもぞもぞと探り始めた。


「おーい、アーン、どこだぁ?」

ブラメンコの手が右へ左へと彷徨うがアンは見当たらないらしく、おかしいなぁと首をかしげる。


「いやまずなんでお前の手が届かねぇ場所にアンが入りこめるんだよ」

「あ、いた」

「ぎゃっ」


小さなアンの悲鳴とともに、右腕を引きあげられてアンがずるりとポケットから現れた。
ブラメンコはアンの両脇を両手で支え、まるで幼子をあやしているように自身の前まで持ち上げる。


「ブラメンコよくやった!」


ラクヨウが嬉々として、さぁアンを渡せと言わんばかりに両腕を差し出した。
アンはうぅと呻りながらブラメンコに非難の色を含む視線を送る。


「…かくまってって言ったのに…」

「アンそりゃぁ駄目だ。まだオレがしていねぇ」



え、とアンが目を丸め、うぁ、とラクヨウが眉を寄せたときには既に、ブラメンコはアンの右瞼に口づけていた。
反射でぎゅっと目を固く閉ざしていたアンは、ふわりと軽い浮遊感を感じて、それからすぐに地に足がついた。
そして今さっき自分が口付けられた箇所を思い出し、ぱっとそこに手をやる。


「目っ…!ブラメンコそこ目だから!!」

「目じゃない。瞼だ」


堂々とそう言い切ったブラメンコはにっと満足げに笑ってから、さっきまでアンが入っていたポケットから書類の束を取り出した。


「そろそろサッチも帰ってくるだろ。オレァ食糧管理のことであいつに用があってな。じゃ、」


ひらりと身を返したブラメンコは、彼らしからぬ軽い足取りでその場を後にしてしまった。
思わぬ場所へのキスに驚きつつ、そろそろ不意打ちに慣てきたアンはなんだか本当におかしなことになってきた、と先程キスが落ちた瞼を指の腹でなぞる。


(…でもやっぱり、)


嫌じゃないなぁ、なんて考えてから少し照れくさくなって、知らず知らずのうちに口角が上がって笑みが浮かんだ。
しかしその笑みも、ガッと背後から肩を掴まれたことによって一瞬で凍りつく。


「アーン~…、オレのときばっかりちょこまか逃げやがって…」


もう逃がさねぇぜ、と頭の後ろから聞こえた声に、アンの危険信号が一斉に鳴り響いた(とアンは思った)。













Please kiss me!


(ラクヨウの愛情表現はクッセツしてる!)

 

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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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