OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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「これこっちでいいのー?」
「ああ、そこに置いてくれ」
「んー、」
よっこいしょ、と年寄り臭い掛け声と共に数個の木箱を持ち上げたアンは、それをジョズが指し示す方向に持っていく。
寄港している今、ジョズ率いる3番隊は積荷の管理、アン率いる2番隊は見張りとして船に残っている。
ジョズは自身の隊員にあらゆる指示を飛ばして忙しいが、見張りというのは100人の隊員でするものでもない。
よって隊長であるアンに実際のところ今仕事はないのだ。
暇だから変わるよと隊員に声をかけてみても滅相もないと断られるし、見張りといってもまっすぐに続く海を眺めるか遠くから聞こえる喧騒を恋しく思いながら陸を眺めるかしかすることがないので、どっちにしろ暇であることには変わりない。
時間を持て余したアンは、ジョズに手伝いを申し出たのだ。
「悪いなアン、手伝わせて」
「何言ってんの、あたしから言ったんだよ」
どかどかっと積荷を重ねていると、後ろからジョズの詫びる声。アンはからからと笑って受け流す。
「後で菓子、やるからな」
「やった!」
こういうご褒美があるからという下心がなかったと言えば嘘になるが。
アンは荷物を抱えながらもちらりと横目でジョズを流し見た。
巨体を自由自在に操り狭い倉庫を行ったり来たり。
寡黙で穏和な彼だが内には熱いものを秘めた三番隊隊長。
振り返ったジョズはアンが自分を見つめていることに気づいて少しわたついた。
「…な、なんだアン」
「ううん、ジョズなんか格好イイね」
「!?」
カッと顔に血が上り、口をぱくぱくさせる大男にアンはあれ、と苦笑する。
「…な、にを突然…」
「いやー、ただ思っただけ」
ふふ、と肩を揺らす小娘に返すべき言葉もなく、ジョズはあーとかうーとか唸って後頭部を所在なくさする。
この小さな妹の前だとどうも調子が狂って仕方がない。
じっと見返すと、アンは ん? と首を傾げた。
自分の落とす爆弾がどれだけ兄たちを困らせるか(喜ばせるか)分かっていないのだから、本当に本当にタチが悪いにも程がある。
しかし誰がそれを言ったところでアンが理解できるとは到底思っていないし、それ以前にまず落とされる爆弾に内心ホクホクしている兄たちがいるため、誰も口にしようとはしない。
困ったものだと思いながら、ジョズ自身も悪くないと思っていた。
いつもはマルコを筆頭に可愛がられる末っ子。
クルーの少ない今くらい、独り占めに目を瞑ってもらいたい。
「隊長ー!これリストと違うんすけどー!」
「お、呼んでるよジョズ」
「あ、あぁ」
樽にとんと背をもたれさせて、じゃああたしの仕事は終わりかなー、と伸びをするアンをちょいちょいと手招く。
何?とアンは首を傾げつつもその顔は期待で輝いている。
ジョズはおもむろに鎧の一部をごそごそと探り、対アン用に購入しておいた飴玉の袋詰めをアンに差し出した。
ジョズからしたら指先で摘まむほどの大きさだが、アンの片手のひらに乗せられると結構ずしりと重量がある。
「御礼だ」
「やった!!ありがと!」
少し期待していた通りのモノが与えられて、アンは満面の笑みを咲かせてジョズを見上げた。
するとふっと頭上が翳る。
あれ?と思う間もなく、額に異変を感じた。
すぐにアンを覆っていた陰は消え、見えたジョズの顔はこれでもかというほど赤に染まっていて。
「ジョズ?」
「…御礼だ」
くるりと背を向けたジョズは、どしどしと重い足音を鳴らして隊員たちのほうへと歩いていった。
なんだったんだ?とアンがその大きな後ろ姿を見送っていると、横からあーーーっ!!とかうぁーーーっ!!という雄叫び。
突然の絶叫にアンが目を丸めてそちらを見遣ると、アンを指差して口をわななかせるハルタとラクヨウの姿。
「えっ、な、なにっ!?」
「ジョ、ジョズが!アンにキスした!」
え?と聞き返すアンに構わず、ラクヨウは「あのむっつり野郎…」と悪態をつく。
あぁ、さっきのはおデコにキスされたんだ、とようやく納得のいったアンはきょろりと辺りを見渡したがジョズの姿はない。
そそくさと一早く立ち去ったらしい。
そうかそうかそうだったのかと額に手をやっていると、ハルタにびしっ!と指差された。
「アン!」
「お、おぉっ?」
「ズルいぞ!」
オレもアンにキスしたい!と少し低い目線からハルタが宣言する。
「はぁっ!?」
「てめぇ何言ってやがるハルタ!そんなの…そんなのオレもしてぇよ!!」
ラクヨウまでもがびしっとアンを指差した。
はあぁぁ!?と訳のわからないアンは呆れたように二人を見るが、二人はじりじりとアンとの間を詰めてくる。
「…ちょ、待ってよ」
「「待たん!!」」
言うが早いか、二人の脚が一斉に駆け出す。
その姿を捉えたアンは、ひぇと思わず顔を顰めて逃げ出した。
Please kiss me!
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「ほらエース、こぼしてる」
「お、いけね」
「マルココーヒー飲むかー」
「よい」
「…お前それ全然可愛くねェんだかんな」
馬鹿馬鹿しいけど愛してる
棚に行儀よく並ぶカップを二つ手に取り、もう片方の手でコーヒーメーカーに豆をぶち込む。
ゆるやかに品のいい香りが立ち上った。
こぽこぽと茶色いしずくが落ち始めた頃、テーブルのほうではばたんぐちゃっぐーという三重奏が聞こえてきて、はぁとため息をつく。
入れたてのコーヒー二つを片手で持ち、よっという掛け声とともに壁に掛けてある布巾を手に取りテーブルへと戻った。
エースは誰よりも早く食事をはじめ、誰よりも長く食べ続ける。そしてその合間に小休憩が入るのだ。
突然死ならぬ突然睡眠。本日はナポリタンの中に顔を突っ込んでぐーすかやっている。
オレは末っ子が起きてトマトソースを乗せた顔のまま出歩かないよう、スプーンを握っていないほうの手に布巾を持たせてやった。
「ん」
「ありがとよい」
新聞片手にあくびをかますマルコのわきにカップを置き、向かいに腰掛ける。
眼鏡を外したマルコは再びあくびし、コーヒーに手を伸ばした。
「お前眼鏡ねぇと新聞読めねぇの?」
「読みにくいだけだい」
「老眼じゃね」
そう軽口をたたくと、マルコは嫌そうに顔をしかめた。
うへっ、怖。
「食堂は薄暗ぇんだよい」
「だから?」
「…鳥目なんだよい」
「ウソつけ」
くくっと笑いを零すと、マルコはきまり悪そうにずずっとコーヒーをすすった。
オレはこの匂いが好きだ。
みんなのために飯を作って、野郎どもがそれを食べて、食べ物と人いきれが混じったような。そんな匂い。
そして人もまばらになった頃、マルコの隣で皿に顔を突っ込む末っ子を眺めて、マルコが読む新聞を裏面から読むときに香る、二人分のコーヒーの匂いも。
「今日宴するってよい」
「なんの?」
「確か8番隊の誰かの誕生日だろい」
「あぁ、そりゃいいや」
そうと聞いたらじっとしていても仕方がない。
この時間が終わることに少しの名残惜しさを感じながらも、オレは宴のためのつまみの準備に取り掛かろうと厨房へと向かった。
「宴だァ!!」
ガチャンッといくつものジョッキがぶつかる音が船内を駆け回る。
オレたちの騒々しさに負けて夜の海の陰鬱さはどこかへ弾き飛ばされてしまったようだ。
モビーの明るさがその暗い海のど真ん中にぽっかりと浮かび上がっていた。
「オヤジー、つまみ持ってきたぜー」
「グララララ!悪りィなサッチ!」
「今日のは新作だぜ」
ウインク一つかましてオヤジの酒びんのわきにつまみの皿を置く。
オヤジは嬉しそうに目を細めてから喉を鳴らして酒を呷った。
すると騒々しい甲板の遠くで、わぁっと声が上がる。焦ったような、それでいて喜んでいるような。
「エースが海に落ちたー!!」
酔いどれたちはそれさえも嬉しそうで、ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てている。
「ったくしょうがねェの」
素面のおれが行くしかねェじゃねぇか、とひとつため息をつき足を踏み出した時、オヤジの低い声がオレを呼びとめた。
「後でまたオレのとこに来いよ」
「? わかった」
妙な誘いに首をかしげながら、本日もキマっていたリーゼントにサヨナラを告げてオレは黒い海に飛び込んだ。
だらしなく垂れ下がりぽたぽたとしょっぱい水滴を垂らす髪を絞りながら、再びオヤジの座る椅子へと向かう。
が、その道中14番隊の奴らが『つまみが足りねぇ!』と騒いでいるのを聞いて、オヤジは後でいっかと結論付けたオレは厨房へと方向転換した。
「ほらよ」
本当はつまみなんかなくたって飲み続けられるくせに、と思いながら野郎どもの前に皿をいくつか並べると、おおおお!と歓声が上がった。
「あざーっすサッチ隊長!」
「やべぇ!マジ旨ェ!」
「そりゃよかったよい」
ひとつマルコの真似でもしてみるとこれまた爆笑の渦が起こる。
これだけでネタになるマルコも素晴らしいと思うが、この酔っ払いたちも相当キているのだろう。
きっと箸を転がしても笑う。
そいつらの一人がオレにジョッキを手渡そうとしてきたが、オヤジに用があると断ってそこを立ち去った。
「オヤジー」
「おう、サッチ、…なんだオメェまだ飲んでねぇじゃねぇか」
「あぁ、忙しくってよー」
少し長くオレを見つめたオヤジは、ふっと目元を和らげた。
そしてぽんぽん、と自身の膝を叩く。
「え、あ、」
「なんだ、来ねぇのか」
膝に乗れと促されていることはわかるんだが。
いかんせんこの私サッチ君、悔しいが自他とも認めるおっさんである。
そんなおっさんがオヤジの膝の上と言うのは幾分寒くないか?
エースあたりがオヤジにじゃれついているのは違和感ないし可愛くもあるが。
あれ、そういやこないだマルコもオヤジの膝乗ってたな…
オヤジは諦め悪く膝をたたき続けるもんで、根負けしたオレはじゃぁ失礼とばかりによっと膝へ乗った。
「ほらよ」
オヤジがなみなみと酒が注がれたジョッキを手渡してきたのでそれを受け取る。
きっとオヤジの酒だ、キッツイんだろうなーと思いつつも一口飲んでみると、やはり喉がカッと熱くなった。
「…えらく働きモンじゃねぇかサッチ」
「ははっ、それマルコに聞かせてやりてぇ」
おどけた風にそう言ってもう一口酒を飲む。
オヤジはグララと小さく笑った。
「…いつもオメェは飲み始めが遅ェ。メシ作ってるからだろうが、少々サボリも必要だぜ」
「そ、りゃぁ仕事だし…それにオレ他のとこでサボってるからさ」
ひひ、と笑ってみるとオヤジも目だけで笑い返す。
「メシ作って回って、空いた皿がねぇか見て回って、またメシ作って。この船にゃぁザルばっかだからなぁ、つまみなんてもん作り始めりゃキリがねぇ。…ありがとよ」
ぼすんと重たい衝撃が頭に落ちてきて、崩れた髪形をさらにかき混ぜるようにしてオヤジの手が頭を撫でまわした。
久しぶりの感触に軽く頬に熱が上がったが酒のせいだとごまかす。
それでも緩む頬は隠せない。
オレは、人が飯を食う顔が好きで。旨いとでも呟く声を聞けばなおよし。
だからまさかオヤジに礼を言われるなんて微塵も考えていなかったわけで、オレは俯くばかりでまともな返事さえできなかった。
(あぁ、久しぶりだこの感じ)
いつから、オヤジの膝に先に登るのをマルコと競争しなくなったのだろう。
いつのまに、オヤジに撫でて欲しいとねだらなくなったのだろう。
それでもオヤジはオレの欲しいものをちゃんとわかっていた。
「…へっ、でも好きなんだよなぁ、メシ作るの」
「あぁ、知ってるよ」
やっぱりか。
そう言って笑うとするりとオヤジの手がオレの頭を離れて、くしゃりと顔を歪めて笑うオヤジの姿が見えた。
太い喉にくっついた喉仏がこくりと動いた。
「…何、言ってんだい」
視線を掛け布団に固定したままじっと待つ。とても長い時間だった。
さっきの一言でマルコは全部わかってしまっただろう。
マルコの論理的な頭が今必死で整理をつけているのが感じ取れた。
「へ、へ…笑っちゃう…実は敵の娘でしたー、なんて」
乾いた笑い声は行き着く場所もなく、拡散して消えていった。
マルコはさっきから黙ったまま、じっとあたしの横顔を眺めている。
その視線があたしから「アイツ」の面影を探しているようで、いたたまれなくて口を開いた。
「オ、オヤジは知ってるんだ、言ったから…ほら、でも敵だったんでしょ?やっぱその、殺し合いとかしただろうし…あたしは顔も知らないんだけど、似てる?似てたらやだなぁ、なんて…」
空回りし続ける言葉が紡がれる間もマルコは黙ったままで、ついにあたしの口も閉じてしまった。
ほたり、と手の甲にひとつ水滴が落ちた。
「い、いまさら敵の娘だなんて言え、なくて」
「…アン」
「止まらないの、血、が、止まらない」
「アン」
「…あたしは鬼の子だ…!」
鬼の子だと、小さい身体を震わしてそう言った。
知っている。オレはその男、ゴール・D・ロジャーという男を知っている。
20年以上前、オレはその男に殺されかけたことだってある。
時代を開いた大悪党、この世界を変えた男。
それは一般人からしたら恐怖の幕開け以外の何物でもない。
ちっぽけなアンがその世界に突然放り出された時、世間の空気はどれだけ鋭かったかなんて想像も容易い。いや、もしかするとオレなんかの想像も及ばない…
「アン」
「…?」
「お前は誰の娘だって?」
「…だから、海賊お」
「じゃあお前がその背中にしょってるモンはなんだってんだい」
「…オ、オヤジ…!」
「ああそうだい、お前はオヤジの娘で、オレたちの妹だ。それ以上の肩書きがいるかい」
「ううぅ」
ぶんぶんと激しく首を振ったアンは、額をオレの肩にぶつけた。
「あ、あたしの血、汚い…!」
「バカタレ。それを言うならオレもこの船に乗る奴らみんなそうじゃねぇかよい」
囚われるな、縛られるな。
お前が思っているより世界はもっと広いことをどうかわかってくれ。
コンコン、と柔らかく木の音が響いた。
ゆっくりと開いたドアの向こうからナースが顔をのぞかせる。
「ごめんなさい、ちょっといいかしら」
「あぁ、」
「来てほしいの。アン隊長に、マルコ隊長にも」
オレの肩から顔をあげたアンは、崩れた顔で不思議そうにユリアを見つめた。
片やオレも同じく、ユリアの意図はわからなかったのだが。
連れてこられた部屋はめったに用のない女部屋、つまりはナースたちの寝床。
少し憚られたが促されるままアンとそこへ入る。
ナースの部屋にしてはやたらとこざっぱりしたそこのベッドには、一人の若いナースが腰掛けていた。
そいつはオレたちを見上げて少しだけ目を見張り、それから柔らかく笑った。
「彼女、船を降りるのよ」
オレたちに続いて部屋に入ってきたユリアはごく淡々とそう言った。
「え!?」
「…ほう」
そうなのかいと座るナースに問いかけると、彼女は穏やかに笑って頷いた。
「ごめんなさい、パパさんには言ったんですけど」
「いや、構わねぇがよい」
この船のナースたちも、他のクルー同様オヤジに惚れて乗ったも同然の奴らばかりで、めったにナースが入れ替わることはなかったため半ば驚いた。
「…なんで?」
遠慮がちにアンがそう問うと、ナースは軽く頬を染めて笑った。
「結婚するんです」
「え!?」
大声出して驚くアンを尻目に、ナースはゆるりと自身の腹部を撫でた。
「…子供が、ね」
それにはオレも目を丸めた。
聞くところによると、以前立ち寄った島で再会した男とそういうことになり、次の島で船を下りたらその男が迎えに来てくれるのだそうだ。
「…そりゃ、めでたいよい」
「ありがとうございます、マルコ隊長」
いつもの身体の線がはっきり出るようなナース服とはうってかわって、ゆったりとしたワンピースを着た彼女はお世辞なく綺麗だった。
「…ミラ、」
掠れた声でナースの名を呼んだアンの横顔は、何かが零れそうに揺れていた。
「…嬉しい…?」
一瞬きょとんとしたナースは、小さく笑ってからアンを手招いた。
「マルコ隊長も」
そう呼ばれアンと彼女に近づくと、ナースは一言失礼、と断ってからオレとアンの手をとった。
「わわっ」
ナースがアンの手を引っ張り自身の腹部に添えさせる。そしてその上にオレの手が重ねられた。
アンの薄っぺらい手を通して熱が伝わる。
「暖かいでしょう」
「…うん」
「まだぺったんこなんですけどね、生きてるのよ、ここに」
すごいでしょうとほほ笑むナースを、オレとアンは固まったまま見つめた。
「…嬉しくないわけがない。だって私の子ですもの」
理由なんかない、今ここに存在している、ただそれだけで愛しいんです。
そう言ってナースは笑った。
「ごめんなさい、ちょっと聞いちゃったから」
「…あぁ…別にいいんじゃねぇかい」
ユリアと二人、ナース部屋から戻る際ユリアが謝罪した。
しかし彼女一人知ったからと言って、いやおそらくこの船の誰が知ったとしても何一つ変わるものなどないだろう。
アンはまだあのナースと二人でいる。
静かに涙を零しながら、よかったねと呟いてナースを抱き締めていた。
「お節介だったかしら」
「いや…ありがとよい」
ユリアは声を出さずに笑った。
優しい鼓動は愛の音
小さく身をよじって寝返りを打つ。いつもは被らない掛け布団のつるりとした生地が適度に心地よくて、頭まで布を引っ張りあげた。
「いつまで寝てるの、ねぼすけさん」
再び夢の中にゆるゆると思考が落ちかけたとき、べりりと掛け布団が身体から剥がされた。
「…うわっ!」
驚いて上体を起こすと、呆れたようにこちらを見遣るナイスバディ、もといユリア。
「調子はどう?」
「ちょう、し…?あ、あたし…」
昨日の夜自室で呼吸のコントロールができなくなったことを思い出した。
確かユリアやジョズ、他のクルーたちが心配げに自分を覗き込んでいた。
手を目の前に持ってきてにぎにぎと開いたり握ったりを繰り返すが、昨夜のようなぴりぴりとした感覚は消えている。思わずほっと息が漏れた。
「…も、大丈夫…」
「そう、よかったわ」
今日はあまり無理しないでねと釘を刺され、一応愛想笑いで頷いておいたらじとりと睨まれた。
「みんな心配してたわよ」
「…うん、知ってる…」
「一人になりたいかしら、」
そう言ったユリアの顔をぱっと見上げると、オヤジと同じ金の瞳がまっすぐあたしを捉えていた。
「考えること、あるでしょう」
それはまるでちゃんと考えなさいと言われているようで、あたしはおずおずと頷いたのだった。
ひとり残された医務室はいつもの景色より幾分白くて、つんと鼻をつく消毒液の匂いが慣れなかった。
身体が頭がバラバラ、なんて、自制が効かないもいいとこだ。
仮にもこの船に居て、背中には誇りを背負うひとりの海賊が、なんてザマ。
それもひとりの男のせいで。
「もうやだ…」
弱々しく零れ出た自分の声にも辟易する。
怖かったと口に出してしまえばあまりに簡単だ。
逃げ出そうと力を込めた際に微動だにしなかった腕も、見下ろしてきた細い目の隙間からぎらつく瞳も、知らない人のようだった。
そして何より本能的に危機を感じた。
あのあと続いていたかもしれない行為の意味がわからないほど子供じゃないし、その結果起こりうることも知っている。
それが何よりのタブーだ。
絶対に、それだけはあってはならない。
無限ループに陥ってしまう。ぐるぐるぐるぐる回り続けるのだ。どす黒い血は薄くなっても消えはしないから、あたしで最後にしなきゃならない。
「あーあ、終わったなー…」
ぱたりと後ろに倒れこみ、四肢を伸ばす。白い天井が眩しかった。
嬉しかった、単純に。
ただいまと言える場所があることも、おかえりと言ってくれる家族がいることも。
(アンは可愛いなぁ、)
(ほらもっとこっちこい)
(好きだぜ、アン)
ひとをすきになるのはなんてすてきなんだろう。
生まれて初めて、そう思った。
「だあぁぁー…」
「何奇声発してんだい」
「っわっ!?」
声の方向に頭をのけぞらせると、呆れたような眠そうな顔で立っている男。
「マッ、マル…」
「座ってもいいかい」
視線であたしが寝転ぶベッドを示されて、おずおずと頷く。ぼすんと重たい音とともにベッドが軋んだ。
「…もう大丈夫なのかい」
「…あ、うん、全然…」
「そうかい」
海よりも深い沈黙が落ちた。
上体を起こしたあたしは所在なく掛け布団の端を指先でもてあそぶ。
マルコは何を考えているのか、膝の上で組んだ両手をじっと見つめていた。
「あっ、のさ、」「オレァよい、」
高低差のある音が綺麗にかぶった。
きょとんと二人で視線を交わし、マルコがふっと鼻から抜けるように笑ったのであたしも釣られて少し笑う。
「…なに?」
「…いや、おめぇこそなんだい」
「マルコが先言ってよ」
「お前が先に言え」
「…」
「…」
「…頑固者」
「意地っ張り」
「っ、パイナップルのくせに…」
「うるせぇガキが」
「…よいよい魔人め…」
「ああん?」
ぴくりと片眉をあげてから、マルコはふうと息をついた。
意味のない応酬も、マルコのため息も、いつもと同じだ。
それなのになんでこんな気分になるんだろう。
「っ…、」
「…なんで泣いてんだよい…」
「…泣いてないっ…」
「、そうかい」
いつもなら嘘つけ、と追及してくるマルコが何も言わなかったことに甘んじて、あたしは手の甲で目をぎゅっと押さえた。
もう逃げられない。
逃がさないよう、マルコはここに来たんだ。
「…マルコ…」
「あぁ?」
「…もし、海賊王に子供がいたらどうする…?」
昔話をしよう
夢も希望もすべて失った頃の話
声の方向に頭をのけぞらせると、呆れたような眠そうな顔で立っている男。
「マッ、マル…」
「座ってもいいかい」
視線であたしが寝転ぶベッドを示されて、おずおずと頷く。ぼすんと重たい音とともにベッドが軋んだ。
「…もう大丈夫なのかい」
「…あ、うん、全然…」
「そうかい」
海よりも深い沈黙が落ちた。
上体を起こしたあたしは所在なく掛け布団の端を指先でもてあそぶ。
マルコは何を考えているのか、膝の上で組んだ両手をじっと見つめていた。
「あっ、のさ、」「オレァよい、」
高低差のある音が綺麗にかぶった。
きょとんと二人で視線を交わし、マルコがふっと鼻から抜けるように笑ったのであたしも釣られて少し笑う。
「…なに?」
「…いや、おめぇこそなんだい」
「マルコが先言ってよ」
「お前が先に言え」
「…」
「…」
「…頑固者」
「意地っ張り」
「っ、パイナップルのくせに…」
「うるせぇガキが」
「…よいよい魔人め…」
「ああん?」
ぴくりと片眉をあげてから、マルコはふうと息をついた。
意味のない応酬も、マルコのため息も、いつもと同じだ。
それなのになんでこんな気分になるんだろう。
「っ…、」
「…なんで泣いてんだよい…」
「…泣いてないっ…」
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いつもなら嘘つけ、と追及してくるマルコが何も言わなかったことに甘んじて、あたしは手の甲で目をぎゅっと押さえた。
もう逃げられない。
逃がさないよう、マルコはここに来たんだ。
「…マルコ…」
「あぁ?」
「…もし、海賊王に子供がいたらどうする…?」
昔話をしよう
夢も希望もすべて失った頃の話
ナミ→→サンジ 注意!
うっとりとするほど温かい唇が幾度も落ちてきて、その隙間からは蕩けるほど甘い愛の言葉がほろほろとこぼれ出る。
「可愛い、ナミさん」
綺麗だね、好きだよ、愛してる。
歌のように彼の口から溢れでるそれらは、とてつもなく薄っぺらい。
それは彼が言い慣れた言葉だから。その言葉で何人もの女の子を腰砕けにさせてきたから。
それでもやっぱり甘い言葉がべっとりとあたしの体に張り付いてくるのは、あたしがそれを喜んでいるから。
(バカみたい)
こめかみに落ちてきたキスを受け止めて、眠気に似た気怠さを感じたあたしは目を閉じた。
バカよ。
あんたも、あたしも。
もう戻れない。
戻れないんだから。
「…やめて、」
「ナミさん?」
「やめて」
「どうかした?」
あたしの胸元から顔をあげたサンジくんは、まさにきょとんとしたふうにあたしを見つめる。
蒼い瞳は海みたいだ。
その向こうにはきっと、未知の海、宝石箱のように食材が詰まった夢の海オールブルーが。
今は欲情にゆらゆらと揺れているせいでよくは見えないけど。
サンジくんの海はあたしを捉えて離さない。
穏やかに凪いでいるように見せかけて、本当は濁流のように荒ぶる海。
その波にあたしはのまれてしまった。
あたしも、行けるのかしら。
あんたの夢の果てにあたしも行けるの、
「ねぇサンジくん」
好きよ、
ふっと彼が笑った。
「オレも」
ねぇそこに愛はあるの
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麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
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