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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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猫だ。
いうならば、猫。
でも犬のようにきゃんきゃんうるさいときもある。
それでもやっぱり、猫だ。
気まぐれで、登りたい木には登るだけ登って自分では降りられないような、猫。
手を伸ばせば高飛車な風にするりとかわされるのに、思いも寄らないときに擦り寄ってきたりする。
それにオレはいちいち翻弄されるわけで・・・








「さっちゃん」

「アンー、その呼び方やめろっつっただろー」

「お腹すいた」

「さっき食ったろ」

「でもすいたんだもん」

「お前の四次元胃袋に付き合ってられるほどオレは暇じゃないの」

「マルコはさっきお菓子くれたのに」



こうやってマルコの名前を出して、オレを揺さぶる。
わざとか無意識かなんて考えるのもばかばかしい。


「サッチはくれないんだ」

「マルコは自分が食わねぇのにもらったからお前にやったんだろ」

「ふーん、じゃあマルコのとこにいたほうが貰えそうだ」

「・・・」



すでに文字を追うことをやめていたものの見つめ続けていた書類たちから目を離し、首だけを回す。
つまらなさそうにベッドに腰掛けていたアンは、視線だけをちらりとこっちに寄こした。


「なぁ、それわざとやってんの?」

「なにが?」

「・・・オレ、お前のそういうとこすっげぇ嫌い」

「わけわかんない」



ぷい、とそっぽを向いたアンは不機嫌そうに床を見つめていたが、だからって出て行く気配もない。

机の上に羽ペンを落とすとカツンと乾いた音がした。アンの肩が小さく揺れる。
オレはアンが腰掛けるすぐそばに腰を下ろした。


「構って欲しかった?」

「お腹すいたんだってば」

「よしよしごめんな」

「・・・」


アンは大人しく頭を撫でられる。
顎の下を触られた猫のように、徐々に徐々に目を細めていく。








「オレ、お前のそういうとこすっげぇ好き」




黒猫は一瞬ふわりと顔を蕩けさせた。



「じゃぁなんか食べさせて」

「アンを食わせてくれるなら」

「・・・馬鹿、変態、おっさん」

「上等、」




だってこれって





利害一致ってヤツ





(あたしのほうが先に言ったんだから先に食べさせてよ)

(あ、「オレ」ならいつでもテイクアウトオーケー!)

(・・・)

(ごめ、ごめんなさい)






拍手[4回]

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だっだっだっだっと高くブーツの音が鳴る。
遠くで闇を切り裂くような明るい笑い声が響く。
この船の至る所にその光は落ちていて、いやあいつが落としているのに、あの日から、あいつが素っ頓狂な宣言を致したあの日から、オレの周りにだけ落とされなくなった。
ゆえに真っ暗である。
















「アン隊長」

「・・・ユリア、マルコなら甲板に・・・」

「違うわ。用があるのはあなたよ」

ユリアは細長い指をあたしの手首に絡ませるように、ぐっと掴んだ。
あたしは小さく息をついて、持っていた書類を近くにいた2番隊隊員に預ける。

「・・・マルコ隊長が言ってたわ。近頃あなたがよく仕事するって」

「でしょ、今日の分もさっきので終わったんだ」

きしし、と笑ってみてもユリアはいつものように微笑んではくれなかった。その眼はあたしを通してどこか違うところを見ている。サッチもそうだ。最近。イゾウも、ビスタも。
あたしを介して、『あたし』でありながらあたしじゃない部分を見ている。
あたしはそれが嫌で・・・嫌っていうか、落ち着かなくて、隠すように目を逸らした。



「どうして隊長を避けるの?」


いきなり核心を突いてきた。でもその言葉には誤謬がある。


「・・・避けてなんかないよ。さっきだって甲板で話してきたし、朝ご飯だって一緒に食べた」

「そうじゃないでしょ」


そう、そうじゃない。ユリアの言いたいことなんて分かってる。
でもまだあたしはマルコにも彼女にも自分を上手く伝える技術はないとわかっているし、実際話してみても上手く言えない。
だからまだ、笑っておくしかできないんだと思う。


「・・・マルコがさ、仕事仕事ってぶいぶい言うんだ。だから夜も自分の部屋籠もってガリガリ書いてんのにさ。そしたらそれはそれで心配してくるし」

なんなんだろねと笑うと、ユリアは諦めたように目を伏せた。



















午後8時、オレの部屋の扉が控えめに誰かの来訪を告げた。
返事を返すと扉が開く気配はしたが入ってくる様子はない。机に向かっていた身体を反転させると、案の定数枚の書類を持ったアンが薄く開いたドアの隙間から顔をのぞかせていた。
オレは再び身体を机へと戻す。

「何やってんだ。早く持ってこいよい」

「・・・う・・・ん、」


うんと言ったにもかかわらずなかなか入ってこない。
ここ数日、こういったやり取りが続いていた。


「もう終わったのかい。はえぇな」

「・・・う・・・ん、」


褒めてみても飛びついてこない。これが昼間だったら、甲板だったらまた違う。
夜で、オレの部屋というのがいけないんだ。


「書類」

椅子に座ったまま後ろ手に手を伸ばすと、アンはカサカサカサッとまるでゴキブリのような音を出して寄ってきて、素早くオレの手に書類を乗せた。
そしてそのままドアへと一目散に駆けだそうとする身体を、腕を掴んで引きとめた。


「マッ・・・マルッ・・・!」

「オレァますますお前のことがわからねぇ」


アンの手首を掴んだのとは逆の手で眼鏡をはずす。アンは気まずそうにオレのその動作を目で追った。



「オレの部屋にいたら襲われるとでも思ったか?前のがそんなに嫌だったか?それともオレに抱かれるのが嫌か、」

「っ、」

「前はオレのほうが襲われてたように思ったがねい」


少し前のことを持ち出して見ても、アンは視線を逸らしたまま何も言わない。
駄目だ、イラついてきた。
ぐいと腕を引くと一瞬強い抵抗を感じたが、さらに力を強めると簡単にオレとアンの距離が縮まった。
バランスを崩したアンは、オレの足と足の間、椅子の上の狭い面積に膝をついた。

アンは分かっていない。
逃げられたら追いかけたくなるし、避けられると近づきたくなる。
今までのオレたちの攻防戦で、それをこいつも学習したと思ったがどうやら違ったらしい。

さらに腕を引き寄せ、アンの顔にオレのそれを近づける。息をのむ音が聞こえた。


「煽るだけ煽っといてはいさようならってか。確かにオレァがっつく歳じゃねぇっつったがな、それなりの欲もある」

「っ」

「だがてめぇが自分でしたくねぇっつーなら話は別だ。オレは待てるって言ってんだい」

「違っ」

「あぁ?」


オレが怪訝な顔をして力を緩めた隙に、アンはオレの手を振りほどいた。
そしてひきつった顔を横に振って、ごめんと呟く。
しかしそれではなんの解決にもならない。


「何が違うってんだい」

「…あ、あたし…そういうの、その、雰囲気?とか、わかんない、から…あんまりマル、コに寄っちゃ駄目だって…その、流され…」


支離滅裂。
そもそも何が違うのかの答えになっていない。
するとアンは、俺が掴んでいた手首を自分で掴みながら、ぽつりと零した。


「・・・ま、待ってもらっても、出来ない・・・から、」


その答えに訝しんで目を細めると、アンはまずいものを飲み込んだような顔をした。
理由なんて聞きたいとは思わない、が。それはオレの大人としての体裁みたいなもんで、本当は知りたくてたまらない。
オレがこいつを抱いてはいけない理由なんてあってたまるか。


「何度も言うがオレァ別にやりてぇばっかじゃねぇよい。だがお前がいつもみてぇにくっついてきたり横に寝てたりしたらオレだって何思うかわかったもんじゃねぇ。・・・お前もわかってるから最近オレの部屋来なかったんだろい」

こくりと、頷きが一つ。

「だったら理由くらい聞かせろ。そしたら歯止めくらい掛けられる」


オレはずるい。
大人なふりをして馬鹿なこいつを丸めこんで、あたかも自分が正しいことを言っているように思わせる。
こんなことを聞くのは、本当はオレのエゴだ。
アンのことでオレが知らないことがあるという事実に耐えられないだけだ。
知りたい、全部。



しかしアンは、口元を震わせたまま首を横に振った。


「・・・ごめ・・・ん、」











亀裂の音が聞こえる





拍手[30回]

敵襲かと思った。
見張りの隙を狙って船内に侵入した敵がとりあえず転がり込んだのがオレの部屋だった、とかそういう話かと思った。
だが転がり込んできたのは、寝巻き姿のサッチだった。
 
 
 
些細なことが大事件!
 
 
 
 
「なにしてんだよい。てめぇだけの部屋じゃねぇんだ、ドア壊れたらどうする気だよい」
 
「…マッ、マッ、マルッ!」
 
 
扉が開くのと同じ勢いで部屋に飛び込み、床に這いつくばってぜぇぜぇ言ってるところをみると、どうも走ってきたらしい。
野郎の喘ぐ姿など、就寝前に見るもんじゃない。
 
 
 
「しっかり喋れよい」
 
「…っ、マルコ!!…どうしようオレ恋しちゃった!!」
 
「…」
 
「ちょ、なんで追い出そうとすんの!?蹴らないで!蹴らないで!」
 
「どうでもいいよい。おやすみ。灯り消すよい」
 
「え、ちょ、話聞けよ!うお真っ暗!本当に消すなよ!」
 
「じゃあ燃やしてやるから自分で照らせ」
 
「辛辣!!」
 
 
聞けー!オレの話を聞けー!と、どったんばったんするサッチはうざったくて、本当にうざったくて、オレは無視を決め込み自分の布団に潜り込んだ。
すると突如止んだ騒音。
諦めたか、と息を吐いたそのとき。そう、まるでぬるりとでもいうようにサッチがオレの布団の中に滑り込んできた。
 
 
「うおっ!てめぇ何してやがる!!入ってくんじゃねぇよい!」
 
「いいじゃん!聞けよ!」
 
「おまっ…!布団に男二人入った図想像してみろよい!気持ち悪りぃにもほどがあるだろい!」
 
「聞くか?オレの話聞くか?」
 
「わかった、わかったから早く出てけ!」
 
「よし」
 
 
頷いたサッチは、オレの掛け布団を剥ぎ取りながらベッドから降りた。
 
 
「…おい、てめぇ何布団取ってんだい」
 
「だってマルコオレを追い出してまた寝るつもりだっただろ!今日は寒いぞー、布団無いと寒いぞー」
 
だからオレの話を聞け、と鼻の穴を膨らませるサッチ。
疲れた。オヤジ、オレもう疲れたよい。
 
オレはベッドの上に胡座をかき、地べたに座り込むサッチを見下ろした。
 
 
「…話すなら簡潔に要点だけ述べろ」
 
「頑張る!あのな、」
 
 
 
 
 
 
 
 
結局話は数時間に及んだため、オレが要約しておく。
要するにこうだ。
 
 
寝る前に飲んだ、まだ慣れない強い酒のせいで水が欲しくなったサッチは、食堂へと向かった。
食堂で水を貰ったサッチは、どうせなら風に当たろうと、甲板に出た。
そこで、見たのだという。
 
船縁に肘を突き手の甲に顎を乗せ、この世の闇をすべてぶちまけたような夜の海を眺める、女。
 
 
「もー…やべぇよ!なんか変わった服着てたなー…、新しいナースなんだろうけど」
 
 
暗闇の中に浮かび上がるように白い肌と、高い鼻。
切れ長の目元はまっすぐに前を見据えていた…らしい。
 
 
「にしても今まで言ってたようなオンナとだいぶ違うじゃねぇかよい」
 
「そうなんだよなー、よく見えなかったけど胸もなさそうだし、キツそうだし」
 
オレ優しいおねぇさんがいいんだけどなー…と言いながらも、渦中の女を思い出しでもしたのか頬を赤らめるサッチは、見ていて本当に楽しくない。
 
「今日寄った島から乗ったんだろうなぁー、名前聞きてぇなぁー」
 
「…」
 
 
どうでもいい。激しくどうでもいい。
オレはサッチが包まっているオレの掛け布団を剥ぎ取った。
 
 
「あっ!」
 
「もう寝るよい。灯り消せよい」
 
「ちぇっ、もうちょっとさ、なんかないわけ?親友に恋のアドバイス」
 
「誰と誰が何だって?」
 
「あのさ、泣くよオレ。マルコさん酷いよいろいろ」
 
 
ぶつぶついいながらもオレの向かいにあるベッドに身体を滑り込ませたサッチは、しばらく一人でその女について喋り倒していた。
 
「なーマルコー、明日オヤジから紹介あるよなー?オレ彼女にカクテル持ってちゃろう」
 
「もう寝ろよい!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「新しい兄弟だ!野郎どもォ!!」
 
「兄弟!?」
 
隣でサッチが、オレと目の前の奴を交互に見やりながらオレの肩をバンバン叩く。
 
「なに!?ナースじゃねぇの!?戦闘員なわけ!?」
 
「…いや、つーかあいつ…」
 
「てことは強いわけ!?うわ、やべぇなんかぞくっときた」
 
「…いや、サッチあいつぁ…」
 
「何番隊かな!?一緒だといいなぁ…!女が隊にいるなんて最高じゃん!」
 
「…」
 
 
ノンストップなサッチに告げる言葉もなく押し黙ると、その「女」が艶やかに口角を上げて歩み寄ってきた。
 
 
「うわわっ!」
 
サッチは動転してさらにオレの肩を叩く。
「女」は黙ったままサッチの肩に手を置くと、するりとその腕を首に回した。
近づくと、サッチと同じくらいの背丈である。
サッチは、その「女」のある一点に釘付けになっていた。
 
 
喉仏。喉仏がある。
 
 
 
その喉仏が上下に動き、そいつはくっと笑いを漏らした。
 
 
 
「オレでよけりゃぁ、お相手やりんしょうか?」
 
 
 
 
 
後れ毛がサッチの頬を撫で、真っ赤な紅が乗った唇がそこに軽く触れる。
オレは、サッチの血の気がするすると引いて行く音を聞いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
(…お、おとっ…)
 
(…サッチ、息しろよい)
 
 




 

拍手[12回]

ナースのねぇちゃんと、お話中だったオレ。
いや、口説いてたわけじゃなくて、仕事の話。ほんとほんと。
そこへ突如どかんというに等しい物音と、うあぁぁぁぁぁと高いのか低いのか分からないような絶叫。
どかどかという足音がこちらへ近づいてきた。



「はい、アン隊長スト―ップ」


ナースがしなやかに腕を動かし、持っていたカルテでアンの行く手をふさぐ。アンはブレーキよろしく音を立てて止まった。


「落ち着いてー、深呼吸深呼吸」

ナースはまるで子供にするように身振り手振りでアンに指図する。アンは言われた通り、すーはーと呼吸を繰り返した。それに伴い静まって行くアンの炎。お見事だ。


「どうしたアン、真っ赤な顔して」


分かっているが聞きたくなるのはオレがこういう人間だから。
アンはオレとナースを交互に見やり、あわあわと口を開くが何も言わない。


「マルコ隊長に押し倒された?」


さらりと言ってのけた隣のべっぴんさんにアンはぎょっと目をむき、一度首を縦に振ってから今度は横にひねり、それからぶんぶんと横に振った。
オレとナースは同時に吹き出す。

「どっちだよ」

「あああたし、足、怪我、まっ、マルコ、なっなめ・・・!」

「んだそりゃ」

くくっと笑いを漏らすと、いつもは笑うなとくってかかるアンがへにゃりとなんとも弱弱しい顔をした。
ナースはやっぱり、と呟く。


「まだ致してないのねぇ、隊長たち」

「あったりめぇってもんよ、ユリアちゃん。マルコの野郎がこんなぴっちぴちむっちむちの若さ溢れる生娘、『じゃあいただきます』とか言って食えるか?」

「無理ね」

「ああ無理だ」

「・・・サ、サッチとユリアの言ってること、よくわかんない・・・」


ナースはアンに向き直ると、にっこりとほほ笑んだ。美女の笑顔というのはそそる何かと恐ろしい何かが相混ぜになっている気がする。


「どうだった?」

「・・・へ?な、なにが・・・」

「隊長に、押し倒されて」

「たっ・・・!」


再び顔に熱を取り戻したアンは、そうじゃなくて、とかあたしが乗って・・・てそうじゃないけど、とかいうような大変興味深いことを呟いていたが、少しの間むぅうと考えるように唸ってから口を開いた。


「・・・よ、くわかんないよ・・・マ、マルコが何したいのか、な、に考えてるのか・・・」


ナースとオレは再び視線を絡ませて、ぱちりとまたたきをひとつ。
何って、ナニだろう。



「アン隊長、赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんじゃないのよ」


今それ!?ねぇユリアちゃん今それ言う!?
アンはさらにわけがわからなくなったようで、はてなを飛ばしまくっている。

「・・・まぁ、あれだ、アン。マルコもさぁ、いろいろやりたいわけよ。だから、サ。お前がそんな気ないのにあんまり煽ると、ますます可哀相ってこと。わかる?」

「わかんない」

ガクッと、思わず肩が落ちた。
すると突然、ナースはきゅっと口元を引き締める。


「わかんないじゃ駄目よ」

「・・・え、」

「わからなきゃダメ。もし本当にその時がきたらどうするの?わからないままことに及んで、流されて、終わってアン隊長が何もわかってないままだったら、マルコ隊長はどう思うかしら。彼はきっと、後悔する」

「・・・そ、のとき・・・?」

「セックスよ。意味くらいわかるでしょう」


ぴしり、とアンの顔がこわばった。ナースもそれに気付いたが、構わず続ける。


「アン隊長が嫌なら嫌と言うこと。それを言うにはそういう雰囲気にまず気付かなきゃ。じゃないとア」

「あたし」


真っ赤だった顔をすっと通常に戻したアンは、真っ直ぐナースを見据えたままその言葉を遮った。

「しないから」

「え?」

「そういうこと、しないから」


だから大丈夫、とそう言ったアンは、ごめんと呟くとくるりと背を向け駆けていく。
オヤジの顔がどんどん遠くなっていった。



「・・・変ね」

「そう思う?」

「えぇ、とても」

「・・・わっかんないねー」

「アン隊長が?それとも女が?」

「どっちも。でもアンはわかりやすいようでものすっげぇわかりにくい」

ナースは何も言わず、ただ少し笑っただけだった。













「マルコ」



先程オレの部屋を飛び出して行ったアンが、なぜか再び戻ってきた。
顔もいつものごとく戻っていて、慌てた風もない。
アンが持ってきた書類を整理していたオレは、思わず動きを止めて振り返った。


「ごめん、あたし」

「・・・」

「できない、から」

「は?」

「できないから、そういうこと」


そういうこと。どういうことだ。
少しの間口を開いたままという間の抜けた面をさらしていたが、ふと気付いた。あぁそういうこと。
また馬鹿に何か吹き込まれたか。


「あぁ、あのなぁ。オレァ別にがっつくような歳でもねェし、今すぐやりてぇわけでもねェ」

「違う」


いやにはっきり言い切ったアンの目は静かで、逆にざわりとオレの中が揺れた。


「できないから。・・・しない、から。ごめん」


アンはそれだけ言って、すぐにオレに背を向けて扉の向こうへ消えた。







背中のオヤジが虚しく笑う




拍手[29回]

手配書をゆっくりとオレの手から受け取ったアンは、その紙切れを日に焼けない拳でふるふると握りしめ、そして凝視していた。
 
「…前に、お前が寝言で言ったんだよい、そいつの名前を」
「…ル、フィ…」
 
 
アンの口からその名を聞くのは二度目だが、やはり心穏やかではない。
あぁ、という嘆息が薄い唇から漏れ、震える指先がその紙面に映る男の頬をなぞる。
目はかっちりと見開いて、唇は小さく開いたままだったが、そのどちらの端も微かに弧を描いていた。
 
そいつはお前のなんなんだ、と素直に聞けるほど若くなく、ずけずけと聞ける程肝の座った大人でもない。
中途半端なおっさんだと心底思った。
 
 
「…こいつ、ルフィっていうんだ…」
 
未だ写真から視線を外さないアンが、掠れる声でまたそいつの名を言った。
 
「いっつもこうやって笑ってて…あぁ、やっと海賊になったんだ…」
 
 
ということは、だ。
昔から知ってる奴。昔の男。
 
「…そっか、へへ…もう海にいるんだ…」
 
柔らかな視線が、その男を貫く。
あぁ、わかった。
この男の笑顔は、アンに似ている。
 
 
「マルコありがと」
「…何がだい」
「手配書、教えてくれて。すっごい嬉しい」
 
紙を掻き抱いてへへっと笑みを零すアンは、ここ最近で一番幸せそうな顔をした。

「こいつさぁ、悪魔の実食ってて泳げないくせにやたらと海に落ちるんだ。あたしいっつも助けててさぁ。あ、もう一人兄弟がいるんだけどさ、そいつといっつも一緒に助けてたんだー」

それにさぁ、と突然饒舌になったアンがぺらぺらと一人話し始めた。
男の話をこんなにも楽しげに告げるアンを、俺はこのかた見た事がない。
しかしそのときどこかアンの言葉に引っかかるような部分を感じたが、それが何処かわからなかった。
アンは二人並んで腰を下ろしたオレのベッドに後ろ手で手を突き、未だべらべらと喋っている。

「こいつ本当に弱虫でさ、夜とか眠れないって言ってあたしの布団に入ってくんの。最初は入れてやってたんだけど寝てるうちにくっついてくるからさー、邪魔で邪魔で」

タチの悪い野郎だ。布団にもぐりこむとは。

「蹴っ飛ばしても、一緒に寝たいって聞かないから大変でさ。それにこいつすっごい食べるの!おかずはいっつも取り合いでさあ」

どことなく上から目線と言うか、年上気取りのようなアンの口調。こいつが年下だからか。
幼さを楯にするとはふてェ野郎だ。悪かったなおっさんで。

「一緒に山登っても絶対迷子になるし、本当手のかかる弟なんだけど・・・そっか、3000ベリーの賞金首かぁ・・・」

感慨深いとでも言うように、アンはひとりうんうんとうなずいていたのだが。


「・・・ちょっと待て、今なんてった」
「え?3000ベリーの賞金・・・」
「違うその前」
「前・・・?・・・手のかかる弟だって・・・」
「弟ォ!?」




なんてこった。
穴があったら入りたい。自分を燃やし尽くしてしまいたい。
口には出してないとはいえやりきれない。



「・・・はっ、・・・くくっ・・・!」

目元を覆い自嘲の笑いを漏らすと、隣でアンが焦ったように手を動かしたのがわかった。

「ちょ、何笑ってんの!?」
「いいやなんでもねぇよい・・・くっ、ああそういうこと、弟!」



笑ったまま後ろに倒れこむと、未だわからないといった顔でアンがオレを覗き込む。

「マルコ変だ」
「気にしないでくれ」
「その話し方が既に変。ついでに口癖も」
「今更それを追求するのかお前は」


変なの、とむくれたアンの腕をくいと引っ張る。
うわ、と支えを失った体は引かれた力の方向へと倒れこんだ。


「もう発火しねぇんだな」
「っ!・・・しないよ、もう」


みんなに怒られたもん、とオレの胸板の上でしゅんとうなだれる。
そこにむくむくと起き上がってきた悪戯心と言うか、加虐心。
オレがこんだけ振り回されたんだからしょうがねぇだろとなんとも勝手な理由をつけておく。


「そういやコレ、オレのだったねい」

背中に回した手で、アンの身体に纏われた空色の布切れをつんと引っ張った。
するとアンは、げ、と顔をしかめる。

「思い出させないでよ!気持ち悪かったんだから!」

ほんと最悪最悪最悪格好悪いあたし!と毒を吐いたアンは、仕舞いにはうぇ、と舌を出す。
しかしよじよじとオレの胸板を這い登ってきて、オレの顔の高さまで来るとにぱりと笑った。

「でもほんと助かった。ありがとマルコ!」



そんな風に笑われてしまうと、自分がものすごい悪い男のように思えてしまう。そういうトコロがこいつのタチの悪いところだ。


「・・・返してもらおうかねい」

背中に手を回したまま、身体をくるりと反転させる。
ほぇ、と気の抜ける声がアンから漏れた。
突然回った視界についていけないらしい。

顔の横に片腕をついて、もう片方の手は背中に入れたまま。
押し倒されるという状況を味わうのは本日二度目だというのに、なんとも危機感のない顔をしている。




「脱ぐのと脱がされるの、どっちがいい」




な、と口を開いたが、声を発する前にそれはわなわなと震えだした。何をと聞かずとも自分で気づいたらしい。


「どっちもいいよ!返して欲しいならあとですぐに他の代わり見つけてくるから・・・!」

耳まで真っ赤になったアンはオレから逃れようと身をよじった。
が、そのせいでオレの手とアンの身体によって引っ張られた布が少しずれる。
それに気づいたアンは、慌てて動きを止め、今度は俺の体を押し返し始めた。


「ああああたし医務室いかなきゃ!マルコが行けっていったんだよ!どいて!」

あぁ、とこいつの足の傷のことを思い出し、口角を上げたままアンの耳元に顔を寄せた。



「舐めて治してやろうかい」


オレァ不死鳥だからねい、ちょっとは効くかもしれねぇよい。
そう口にすると、今度こそアンはどんっとオレを突き飛ばした。しかも発火つき。
すばやく立ち上がったアンは、震える拳から炎を吹き出し、真っ赤な顔で叫んだ。


「バカマルコ!そんな効果ないくせに!!」



己の許容範囲を超えたらしく、うあぁぁぁぁと奇声を発しながら部屋を飛び出した。









その姿、まさしく脱兎







(うぁぁぁぁあぁあぁあ!!)

(はい、アン隊長ストーップ)


 

 

拍手[17回]

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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