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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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平和なモビーディック号では、世界一の海賊白ひげ海賊団の、それも隊長たちが雁首揃えて頭を抱えていた。
強面の男達はうんうんと唸り、責任転嫁に始まり状況の打開策まであれやこれやと話し合っている。
 
「誰だよアンのニワトリ喰った奴!」
 
「みんな喰ったわ!」
 
という具合に。
 
 
ことの始まりは昨日の昼食。
メニューはチキンのソテー。
アンの大好物だ。
ご機嫌でぺろりとたいらげたアンは、近頃日課になっていた船底の家畜小屋へと向かった。
1600人の胃袋を支える為に、モビーの船底には豚とニワトリを数匹飼っている。
中でもニワトリは貴重だ。卵や肉といったタンパク源の宝庫。
 
そのうち一匹のニワトリをアンはいたく気に入ってしまったのだ。
理由は
 
『なんとなく顔が弟に似ているから』
 
らしい。
 
 
「オレ言ったんだぜ?あんま懐かせると情が移るからやめとけって」
「なんでもっとキツく言っとかねぇんだよい!」
「だってまさかこんなに落ち込むとは思わねぇじゃん!」
 
はあ、と重い溜息が食堂を包んだ。
 
 
 
 
そして食事後家畜小屋に向かったアンは、お気に入りのニワトリの姿が無いことに戸惑う。
急いで食堂に戻りサッチを問い詰めた。
 
「14の札のついたニワトリ?ああ、それならさっきのソテーに…あ、」
 
気づいたもののすでに遅く、アンはまさしく真っ青な顔で固まった。
食べてしまったのだ。
あんなに可愛がっていたニワトリを。
しかもものすごくおいしく。
 
 
 
ふら、とよろめいたアンはよたよたと食堂を後にして、部屋へと閉じこもってしまった。
泣きも喚きもしなかったのがこれまた恐ろしい。
その背中を、食堂にいたクルーたちは何とも言えぬ表情で見守っていた。
もちろん、誰がそのニワトリを食べたかなどわからないが、言いようの無い罪悪感にかられた。
それから丸一日、アンは部屋から出てこない。
 
 
 
「なんであのトリにしたんだよいっ!」
「仕方ねぇじゃん!どうせ食うための家畜だったんだから!…ちょ、みんなしてそんな目で見るのやめて!」
 
まるであのニワトリを捌いたサッチに非があるかのような棘のある視線が集まり、サッチは肩をすぼめた。
このマルコを除くクルーたちは、アンを責めるという思考は持ち合わせていないらしい。
 
 
「…仕方ないねい」
 
「お、マルコさん出動!?」
 
「仕事進まねぇだろい」
 
そういいマルコをが腰を上げると、何故か他の隊長たちも一様に腰を上げる。
男たちはぞろぞろとアンの部屋へと向かった。
 
 
 
 
 
 
目的の部屋の扉を囲む様にして男たちは佇む。
 
「ア、」
 
「ちょっと待てマルコ!お前そのままじゃ説教モードだろ!」
 
「優しくな!や、さ、し、く!!」
 
隊長たちはあわあわと、身振り手振りをつけてマルコを諭す。
とうのマルコはまさに説教しようと口を開いたところで、むっとして眉根を寄せた。
 
「…わかってるよい」
 
 
とんとん、と小さくその扉をノックする。
全員が耳をそばだたせるも、無音。
 
「…アン、その、」
 
「っうあぁぁぁぁっ!」
 
マルコの声が発せられた瞬間、爆発するような泣き声。
マルコは目を丸め、何事かと尋ねる様に隊長たちを振り返った。
イゾウは微かな苦笑を浮かべている。
 
「あれだろ、マルコ→トリ→ニワトリ→喰っちまった、っていう」
 
ああー、と納得する様な嘆息が皆から漏れる。
 
選手交代だな、と心なしか打ちひしがれたような顔をするマルコの肩を、サッチが掴んだ。
 
 
 
 
「アンー。ほら、またさ、別のにしたらいいじゃん。あんなに一杯いるんだぜ?弟に似た奴なんてまだいるって」
 
「あの子がよかったの!」
 
 
絶叫の後、ぶびーっと鼻をかむ音までご丁寧に届いてきた。
サッチはぽり、と頬を掻いたのち、ぱちんと指を鳴らした。豆電球が光ったようである。
 
「アンはもうトリ飼ってるだろ?一匹で我慢しなさい!」
 
「…?」
 
「サッチ、」
 
 
がしっと大きな手がリーゼントを鷲掴み、握り潰す。
いやぁぁぁぁとアンより酷い叫びが響いた。
そこにぽつりと落とされた、小さな声。
 
「ぐすっ…マルコよりあの子がいい」
 
だって不死鳥はルフィに似てないんだもん、と。
 
 
今だリーゼントの緊急事態に悲鳴をあげるサッチと、サッチの頭についた物体を握り潰したままポーカーフェイスでさらなる悲しみに沈むマルコを他所に、じゃあ、とジョズが進みでた。
 
 
 
「…ア、アン。今なら仕事の手伝いしなくても、オレの持ってる菓子をやろう」
 
おお!物で釣る作戦か!ジョズ賢い!と賞賛が上がる。
これは出てくる、と誰もが思った、が。
 
 
「…今いらない…」
 
 
海王類もびっくり、というやつである。
 
「アンが食い物をいらないと言った!」
「アンがジョズのお菓子を!」
「夏島に雪が降るぞ!」
「冬島に桜が!!」
 
 
これは相当だ…!と隊長たちはさらに頭を抱えた。
前代未聞の非常事態である。
 
 
 
「じゃあちぃとばかしオレが出ようかねぇ」
 
そう言って進み出たのはイゾウ。
 
 
 
「アン、こんなときになんだがオレァお前さんに話がある」
 
「っ、あの子の話はやだ」
 
「いや、オレの話だ。アン、実はオレはマルコが好きなんだ」
 
「「!!」」
 
 
同時にアンとマルコが息を呑む。
何言ってんだと食い付くマルコを慌てて他の隊長が抑えた。
イゾウは至極楽しげに、袂に手を入れたままアンの反応を待った。
 
 
「…ほんとに…?」
 
どうしようとでも言いたげな弱弱しい返事に、イゾウの喉がくつりと鳴る。
マルコは、想像も及ばぬアンの思考回路に目眩がした。
 
 
「ああ、もちろん家族としてじゃねぇ。黙ってて悪かったな。だがオレァお前さんがこの船に乗る前から…」
 
「…うそ、」
 
役者モード全開のイゾウは、はぁ、と深く息を吐く。
 
「お前さんとマルコが出来ちまってオレァ身を引いたつもりだったが…このままお前さんが出てこねぇっつうならオレァ攻めちまうかもなぁ」
 
 
ふうっと紫煙を吐き出せば、返事が帰ってこなくなった。
これは考えている。
ぱくぱくとマルコは口を開いたり閉じたりと落ち着かない。
そのうち出てくるぜ、とイゾウが口だけ動かした。
しかしアンは悉く予想を裏切ってくれる。
 
 
 
 
 
「…今だけ貸してあげる…」
 
 
これにはイゾウもぶっ飛んだ。
マルコは何故か目頭を抑えている。
 
「おいおいいいのか?オレァお前さんのマルコ取って喰っちまおうってんだぜ?」
 
お前が喰っちまうのかよ!と小声で突っ込む隊長たちを他所にイゾウが慌ててそう言うが、アンはさらさら意味を解していない。
 
 
「全部食っちゃやだけど、ちょっとならいいよ…」
 
 
 
会話の不成立を悟ったイゾウは、お手上げとばかりに肩を竦めた。
 
「よしマルコ、許可ももらったことだしちょいと一発やろうかい」
「ふざけんじゃねぇよい…!」
 
 
 
 
 
 
それからはまさしく攻防戦である。
ハルタは非常食を分けてやろうと持ち出し、ビスタは次の島で奢ってやろうと提案し、その他隊長たちは必死でアンを引っ張り出そうと試みたが、どれもばっさり切り捨てられる。
しかしもう放っておこうとは誰も言わない。
一日でも可愛い妹の顔が見られないのは辛いものだ。
 
そこへ突如、どすんと響いた大きな足音。
 
 
 
「オヤジ!」
 
「グララララ!アンの奴がへそ曲げてるらしいじゃねぇか!」
 
白ひげは巨体を巧みに動かし部屋の扉の前まで来ると、一言言い放った。
 
 
 
「おいアン、今日は一緒に寝るかァ!」
 
「寝る」
 
 
すぐさま答えが帰ってきたかと思えば、この数時間隊長たちがあれやこれやと手を尽くして開けようとしていた扉が容易く開いた。
 
真っ赤な目を腫れぼったくしたアンは、よたよたと白ひげに歩み寄るとその胸に飛び込んだ。
グララと小さな笑いがあがり、アンを抱き込んだ白ひげは愉快そうに自室へと戻って行く。
 
 
残された隊長たちはというと、誰もが心の中で叫んだ。
つもりだったが、全員声に出ていた。
 
 
 
「何このお約束!!」
 
 
 
 
我等が父は最強
 
 
 
 
(こらマルコ羨ましそうな顔すんな!)
 
(お前どっちが羨ましいんだ?)
 
 
 

拍手[15回]

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橙色の焔が上がったそこは未だ燻る煙がもやもやと立ち上がり目印となっていたので、迷うことなく行けた。
ばくりと刻む心音を抑え、一つ旋回して高度を下げる。
白く曇るその中で見えたのは、ゴミの様に倒れ伏した住民たち。
おそらくもなにも、アンがやったんだろう。
しかし肝心のあいつがいない。
鼓動がさらに早くなった。
 
突如、じゃばんっと波の音とはまた違うそれが耳を打つ。
視界の悪い中目を凝らすと、ぼんやりと見えた男の背中。
穴の空いたウッドデッキから上半身を覗かせ、はあはあと呼吸を整えている。
 
アンの攻撃の、生き残りかと思った。
だがその男の脇から覗いた細い腕を見た刹那、目の奥が真っ赤に染まった気がした。
 
 
 
 
 
 
風を切り男に迫ると、その頭部を鉤爪で掴み持ち上げた。
突然のことに男から叫びが上がる。
そのまま数十メートル上昇し、翼を人の腕へと戻した。
揚力を失った男2人ぶんの身体は、当然下へと落ちて行く。
その落下速度で男を地面に叩きつけた。
 
「…っかはっ!!」
 
肺が潰れ無様な呻きを立てた男を再び鉤爪で持ち上げ、崩れた石の塊に投げつけるとそれこそゴミのように飛んで行った。
 
ぐつぐつと、血が沸騰する。
原型をとどめない顔を歪ませて喘ぐ男を見ると、笑みさえ浮かんだ。
海賊らしいとも言えるが、人を痛めつけて興奮するなどとんだ悪党だ。
だが、男の萎びた腕がアンに触れていたのだと思うと吐き気がして、気づいた。
 
興奮?
違う、オレは腹が立っているのだ。
まさしく腸が煮えくりかえるほどに。
 
 
 
突如、背後でぼちゃんと水が跳ねる音がしてハッとした。
振り返ると、アンの身体がズルズルと海水の中に落ちて行く。
慌てて走り寄り、力ないその腕を掴み引き上げた。
 
 
「おいっ!しっかりし…!!」
 
 
引き上げた身体を見て、息が止まった。
あろうことか、上半身がさらけ出されている。
ふよふよと、ちぎれた布の断片が浮かんでいるのが目の端に映った。
 
 
「くそっ…!」
 
自身のシャツを脱ぎその身体に被せ、アンの全身を引き上げる。
木の床に横たえると、朧な視線が俺を捉えた。
 
「…はぁっ…マル、コ…」
「っ、何もされてねぇだろうねい…」
 
微かに首が縦に振られ、ほっと安堵の息が漏れる。
だが、何もされていないわけではないのは一目で見て取れた。
 
片頬は赤く腫れ、口端が切れている。
何より服を引きちぎられているのだ。何もなかったわけがない。
 
「ちくしょっ…!」
 
力の入らないだろう身体を抱き起こし、上半身を腕の中に閉じ込める。
海水で冷えた身体があり得ない程頼りなく思えた。
 
 
「…マルコ…、海軍…」
「ああ、聞いたよい。どのみち海軍もこっちに向かってんだ。海上で一戦やることになんだろい」
「...ごめ、」
「…なに謝ってんだい。帰んぞ」
 
そう言ってアンの身体を引き剥がし、膝裏に手を差し込もうとしたとき、アンの足元でじゃらりと金属の重い音が。
 
「…んだこれ…海楼石かっ!?」
「…う、ん…」
「鍵は」
「…わかんない…多分、あの男…」
「くそっ」
 
再びアンを寝かせ、ぶっ飛んだ男の元へ行こうとしたが、ふと思い立ってしゅるりと腰布を引き抜く。
 
「巻いとけ」
 
何のことだと言うようにしばらくぼうっとしていたアンは、はたと自分の身なりに気づいたようで慌ててそれを受け取った。
 
 
 
元来丈夫らしく、幸い意識の飛んでいなかった男のもとへ歩み寄りその髪をひっつかむ。
 
「おいてめぇ、手錠の鍵は」
「ひっ!ふ、ふしちょ」
「ああそりゃオレのことだい。だがんなこた聞いちゃいねぇ。アンにかけた手錠の鍵よこせっつってんだ」
「わ、わかんねぇ!たぶ、地下の中っ」
「地下ぁ?」
 
震える男の指先が指し示す方へ目を遣ると、無残な瓦礫の山が。
 
「あそこに地下があるってのかい」
 
壊れた玩具のようにこくこくと首を振る男にそうかいという返事を送り、再びその後頭部をおさえ顔面を地に叩きつける。さすがに動かなくなった。
 
 
 
瓦礫ばかりかと思えば、一部にぽっかりといかにも怪しいですよと言わんばかりの穴を見つけた。
口の狭いそこに滑り込むよう身体を落とすと、中は案外広く、閑散とした一室となっていた。
薄暗く視界が悪いので自らを燃やし光を灯す。ぼんやりと、机、椅子、本棚などが現れた。
乱雑に積まれた書類、埃くさい土壁はぼろぼろと削れている。
おおかたここで住民が待機し、この上に閉じ込めていた海賊共を下から外から、と一度に捕らえようという感じだろう。
この海で、新世界という億越えのゴロツキばかりのこの海でよくもそんな単純な方法で今までやってこれたものだ。
しかし単純な作戦は美しい、そして成功率は高い。
近頃の海軍はしっかり頭の方も使うらしい。
 
 
古ぼけたひとつのデスクの引き出しを漁り、目当てのものを探すがいっこうに見つからない。
急がなければ海軍がこの島にやって来る。
どのみち海の上で会うだろうが、応援を寄越す時間をやると少しばかり面倒だ。
 
一番下の立て付けの悪い引き出しを引くと、そこにはぎっしりとファイリングされた手配書が敷き詰められており吐き気さえした。
一般人と海軍が手を組むというのはどうもやりにくくて困る。
 
 
「…ったくめんどくせぇ…」
 
 
屈めていた腰を伸ばしばきばきと伸ばすと、ふと目に入ったのは壁にかかる鍵。
あっけない、壁にかかっていたのだ。
 
「…あんじゃねぇか」
 
ひとりぼやき、先ほどから引っ掻き回しぐちゃぐちゃになった室内を縫うようにそちらへと向かう。
 
鍵に手を伸ばしたとき、その横に数枚の紙切れが貼り付けられているのが目に付いた。
まだ新しい手配書。
 
薄暗さのためよくはみえないが、真っ赤な髪に真っ赤に塗られた唇。男のくせに化粧なんてしてやがる(似たようなのはうちにもいるが)。
その隣の男はなんとも可愛らしい帽子を目深に被り、その目の下には濃い隈。
どちらもまだ若く、こちらからしたら子供だ。アンくらいだろうか。ルーキーという奴だろう。
 
そしてその隣にもう一枚。
大きくかざした手のひらに、はっきりとはしないが誰かを彷彿とさせる眩しい笑顔。
仕事の上でもあらかたの手配書には目を通すが、これほどまで楽しげに『生死問わず』と賞金首にさらされる海賊は見たことがない。
 
「つーかまだほんとのガキじゃねぇか…」
 
アンどころではない。
おそらく16、17といったところか。
しかしその首にかけられるのは3000ベリーといった、ルーキーにしてはそこそこの値。
 
 
その下に記された名前を見て、今度こそ数秒息が止まった。
 
 
モンキー・D・ルフィ
 
 
 
今までどこかに行ってはいたものの、頭の中に巣作りしたかのように居座り続けた男の名前が、いとも簡単にそこにあった。
 
 
いやにゆっくりと手を伸ばし、それを壁から剥がす。
近くで見るとますます幼い。
これがアンの、夢にまで見る男。
人違いだとは何故か思えなかった。それがまた気に障った。
 
「…マルコ?」
 
じゃらりと金属の擦れる音がしてはっとする。
振り返ると同時に手配書をポケットにねじ込んだ。
 
「もう動けるのかい」
「うん、あった?」
「ああ、」
 
散乱する書物を踏み越えてアンのもとへ行き、足の錠を外す。
一度アンがぶるりと震え、ぱちりとひとつ、炎が爆ぜた。
 
「…さっさと帰るぞ」
「あ、うん」
 
くるりと背を向けて地上へと続く梯子を登るアンの後ろで、オレは再びポケットの中のものをさらにしっかりと押し込んだのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
思ったより早く当の島へ来ていた海軍とは、島の沖で鉢合わせた。
しかしその軍船にオレたちが手を出すことはなかった。
オヤジが出たのだ。
 
「グララララ!一般人使うったァ賢くなったじゃねぇか!!
だがオレの一人娘に手ェ出させるってのぁ感心しねぇな!」
 
あの長刀一振りで軍艦三隻は大破。ものの数秒だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「マルコこれー」
「…」
 
ノックくらいと言いかけて、その言葉の効果の無さを身に染みているオレは振り返るだけで言いとどまった。
 
 
「あの島にあった。手配書と、海図と、次の島の地図と」
「ああ、結構盗ってこれたのかよい」
「ん、隊員たちが」
「そうかい」
 
受け取ったそれに目を通している間、アンは所在なさげに室内を見渡し、結局オレのベッドに辿り着きそこに倒れ込んだ。
 
 
「寝るなら自分の部屋で寝ろよい」
「寝ないもーん」
 
ふーんと鼻を鳴らして、ベッドの上で両手両足を広げばさばさと動かす。
島に着く前にメイキングしたシーツはすでに残念なことになっている。
 
わざとらしくため息をついたとき、ふとアンのふくらはぎ下部に目が行った。
 
 
「…おい、跡付いてんじゃねぇかよい」
「ん?あ、足?ほんとだ、引っ張られたからなぁ」
「さっさと医務室行ってこい」
「えー」
「行け」
「…ほーい」
 
何様のつもりか知らないが、まったくしょうがないなぁとでも言うようにアンは渋々とベッドから降りた。
しかしアンは、あ、とひとつ声をあげオレを振り返った。
 
「そういえばマルコ、あそこから何取ってきたの?なんか入れてたよね、そこ」
 
そういって指差すのは、椅子に座るオレの腰元。
無意識に手がそこに伸び、布の上から小さな膨らみをなぞるとかさりと乾いた音がした。
 
 
つとアンに視線を戻すと、アンは小さく小首をかしげる。
 
 
「…オレも、お前に聞きたいことがあったよい」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(どんとこい!)
(…いや、張り切らなくてもいいよい)

拍手[15回]

あなたがいなくなり、もうすぐ季節が変わろうとしています。
相変わらず騒がしい僕たちは、騒ぐことであなたがいない穴を必死に埋めようとしているのです。
 
 
 
残響
 
 
 
 
あなたのいないキッチンは、コック長の怒鳴り声と器具がぶつかる音ばかりが響きます。
見習いの僕はその音にさえ、寂しさを感じています。
 
コック長は、金曜の夜になると一人で食堂に座り、料理用の白ワインを口にします。
それはいつもあなたとこっそりそうしていたように。
その姿を扉の外から思わず見つけてしまった僕は、声をかけることも立ち去ることもできず、ただ身体だけをそこに置いていました。
コック長は自分のグラスの隣にもう一つグラスを置き、それにもワインを注ぎました。
あなたが大好きだったお酒です。
 
 
 
4番隊の僕は、あなたがいなくなってしまった4番隊隊員の一人として、今でも料理の勉強に勤しんでいます。
僕がこの船に乗るきっかけを作ったのはあなたなのに、そのあなたがおらず僕がいるというのは、なんとも可笑しな話です。
 
穏やかすぎる、海賊のコックなどやっていけるものかと故郷の人に止められ立ち止まっていた僕を、あなたはいとも容易く攫ってくれました。
確かにこの騒々しさは僕には似つかわしくないでしょうが、それでもこの海が、この船が僕の居場所だと、あなたは教えてくれました。
 
 
4番隊のみんなと話していると、いつもあなたの話に辿り着きます。
あんなことで怒られた、こんなことで笑わされた、思い出せばキリがなく、まるで張り合うように僕たちはあなたの話をするのです。
そうして話を終え床に入る頃にはあなたの思い出で一杯で、僕たちは誰一人眠れやしません。
こんな日々に慣れてしまう時が来ると思うととても恐ろしい。
 
 
 
 
午後2時ごろ、僕たちは耳を澄ます様になりました。
数ヶ月前なら、この時間が近づくと一番隊隊長の彼の怒号が聞こえてきたからです。
以前は気にもしなかった、いいえ当然と思い込んでいたその声が、今は懐かしくてたまりません。
だから僕たちは耳を澄ますのです。
もしかして、とありえない期待をかけて、耳を澄ますのです。
 
あなたがいなくなって、書類の提出期限を破る人がめったにいなくなってしまったからです。
 
 
 
二番隊隊長の彼は、今この船にはいません。
あなたの敵をと、僕たちが進んできた航路を逆走していたようです。
 
この船の太陽を一度にふたつも失った僕たちは、あまりの寒さに震えるばかりです。
底抜けに明るい笑い声がどこを探したって見つからないことが、こんなにも淋しい。
 
 
 
 
一番隊隊長の彼は、あなたがいなくなってからこの船で変わっていないものの一つです。
彼が変わらないことが僕たちの主軸となり、指針となり、そうして僕たちはやっとのことで立っているのです。
 
でもそんなはずはないことを僕は、僕たちは知っています。
誰よりもあなたに近く、誰よりもあなたを知り、人一倍あなたを愛していたはずの彼が涙一つ流さないことに、僕たちは涙を流しました。
彼の強さに甘えて、僕たちは存分に悲しむことができたのです。
 
あの日から彼が笑うことも怒ることも多々あります。
それでも時々、何かを探すように彼の視線が彷徨う度に僕は言いようのない感情の波に浚われるのです。
僕にはあなたのように、彼を笑わせることも、あまつ怒らせることさえできません。
 
 
 
 
そして僕たちの父は、あなたがいなくなったその日だけ、いつもより多く酒を飲みました。
多かったのはその日だけで、次の日からはむしろほんの少しだけ、飲む量が少なくなった気がします。
それはあなたが作るつまみがないからか、息子が生きるはずだった時間を少しでも長く味わうためか。
僕にはわかりません。
 
 
 
 
 
 
 
隊長。
もうすぐ戦争が始まります。
2番隊隊長の彼を救いに行くのです。
この戦争でどれだけの命を失うことになるのでしょう。
自分たちの命を失わないために人のそれを奪うことは、正義なのでしょうか。
大多数の、陸に生きる人間のために海に浮かぶ僕たちが死ぬことが、正義なのでしょうか。
僕にはわかりません。
ただ血統のために彼を殺すことが、正義なのでしょうか。
 
 
失うことはとても恐ろしい。
僕たちは失うかもしれないという恐怖に慄きながら、彼のもとへと進んでいます。
 
そんな今だからこそ、あなたの暖かい笑顔が必要だと、僕は思うのです。
 
 
どうか僕たちに、あなたのいない未来を生きる力を。
 
 

拍手[19回]

「イゾウ」
「お、アン。久しいじゃねェか、オレの部屋ァ来るった」
 
ぱかぱかぱか、と独特の音を鳴らしてオレの部屋へ入ってきたアンは、丁寧にブーツを脱ぐとスライディングするようにオレの前に座り込んだのだった。
 
 
 
 
燻る紫煙とともに煽れ
 
 
 
 
オレの部屋の一角には、フローリングに畳が敷いてある。
ワの国と趣きの似たある島で、ふと懐かしい藺草の香りを感じたと思えば、まさにそのもの、畳があったというわけだ。
郷愁なんてもんオレァ持ち合わせているつもりはねぇが、惹かれるようにしてそれを購入してしまった。
だからつまり、オレはその畳が敷いてある地べたに座り、愛しい奴の世話をしていたところだったのだが。
 
まさしく畳の上を正座でスライディングし、オレの前に到達したアンがぶっぱなった一言に、オレは噴き出すこととなった。
 
 
「イゾウ」
「はいよ」
「どうしたらおっぱいが大きくなりますか」
「ぶっ!!」
 
 
えらく真面目な顔つきで口を開いたと思ったら、なんとまぁけったいなことを聞いてくれる。
 
 
「…逆に聞くがァ…なんでナースじゃなくてオレに聞いた?」
「…あ、なんでだろ」
 
 
イゾウに聞いたらわかる気がして、と。
 
…これは頼られたことを喜んでおくべきか、潜在的に選び抜かれたことを嘆くべきか。
 
 
すると突然、ぺたりとオレの胸板の上にアンの薄い手のひらが貼り付けられた。
 
ぺた、ぺたぺた、と。
 
「やっぱイゾウは無いよねぇ、おっぱい」
「…お前さんなぁ…」
 
 
半ば絶句してその顔を見遣ると、アンはふぅ、と悩ましげな息をつく。
 
…まぁ男の視点から言わせてもらうと、確かに胸は大きい方ではない。
ついでに言うとケツもぺったんこだ。
しかしそれをクセにしないだけのモンをこいつぁ持っている。
引き締まった腰回りは思わず口笛を吹いてしまいそうなほど魅惑的だ。
すらりと真っ直ぐに伸びた細い足は、ナースの程よい肉付きとはまた一味違っていい、と思う。
だからアンが、その、胸の大きさなんてモンを気にしているとは思わなかった。
 
 
「なんでまた突然でかくしてぇと思うんだ?誰かになんか言われたか」
「…そうじゃないけど…っていうか、サッチが」
「サッチ?」
 
弄っていた愛用銃の細かな部品を端に押しやりアンを見遣ると、ごにょごにょと言葉を濁して話そうとしない。
まぁなんとなく見当はつくというモンだが。
 
「サッチの野郎がまたバカ言ってんのか」
「…サッチとマルコが、はなしてて」
 
 
“あー、あの子マジで胸でけぇよなー、いーなー、”
 
"おめぇそんなことばっか言ってっからナースに嫌がられるんだよい”
 
“なんだよ!マルコだってしっかり見てんじゃねぇか!あぁ、アレか。アンはねぇからなー。ナースで目の保養ってか”
 
“んなことしてねぇよいっ!つーかあいつぁなぁっ、小せぇが形がいいんだよいっ”
 
“じゃあでかかったら完璧じゃん”
 
“…まぁ、そうだねい…”
 
 
 
 
「…」
 
かける言葉が無いってのァ、このことか。
 
 
「…どうすればいいと思う?」
「…あぁー、そうさなぁ…知られた方法ってのはあるが…」
「なに!?」
 
身を乗り出して尋ねるアンに思わず苦笑を漏らしてから、口を開いた。
 
 
「揉んでもらえ」
「…は?」
「揉んでもらうんだよ、マルコに」
 
 
ぱかっと、いや、あんぐりとでも言おうか。
そういったふうに口を開けたアンは、しばらくしてから突如、ぼうっと肩から焔を放った。
 
「うおっ!熱っ」
「あ、ごめ!っていうか、も、もも揉んで、って、」
「マルコに言ってみろよ、大きくしてって」
「…いっ…!」
「女ってのァな、抱かれりゃぁ別嬪になるってもんだ。だからお前さんも心配しなさんな。そのうちだ」
 
するとアンは、俯きがちにもごもごと口を動かす。
 
「…たいんだけど…」
「あ?」
「そういうことをする前に!大きくしたいの!」
 
 
次に口をあんぐりと開けたのは、オレのほうだった。
 
 
「…おめぇら…まさかたぁ思うが…まだしてねぇのか?」
「…」
「…なるほどねぇ…」
 
手探りで煙管を探し当て、口元に持っていくとアンが指から火をくれた。
一口吸い、気を沈める。
 
(マルコの奴、まだ手ェ出してなかったのか)
 
くっ、と知らず知らずのうちに笑いが零れでた。
ガキだバカだと言いながら、しっかり大事にしてんじゃねぇか。
 
(あの不死鳥が、ねぇ)
 
 
「…まぁ、アレだ、アン。マルコの奴が、お前さんにそこまで求めてると思うか?そりゃあいつも男だ。それなりの希望もあるかもしれねぇが、お前がマルコのためにそこまで考えてるってだけであいつぁ幸せモンだろうがよ」
「…そう、かな…」
「あぁ」
 
ふうーっと紫煙を吐き出せば、曇る視界の向こうでアンがはにかむ姿が目に映った。
 
 
(あぁ、)
 
 
女の顔をするようになった。
綺麗だと、心底思う。
 
アンはぱっと顔を上げると、いつものように眩しい笑顔を見せた。
 
「ありがとイゾウ!だいすき!」
 
あぁオレもだよ、と答える前にアンが胸に飛び込んできたので慌てて支える。
 
(さて、どうしようか)
 
 
腕の中のこの子猫を可愛がってやろうか、それとも今この部屋の前で立ち尽くしている男に声をかけようか。
 
焚き付けるのもまた一興、ってな。
 
 

拍手[30回]

だかだかだかっ、と今日も重たいブーツが鳴る。
その足音の主は、廊下を曲がったところでオレを見つけると日向のような笑顔を見せた。
 
 
 
 
ゲームオーバー
 
 
 
 
「サッチ!!どこ行くの?陸上がるの?あたしも行ってい?」
 
いいよ、一緒に行こう、と。そんな返事を期待してキラキラと輝く瞳を見ると、おれはどうしても裏切ってやりたくて仕方なくなるのだ。
嫌な奴だろう。
愛ゆえというやつだ、許してくれ。
 
「アンはダメ」
「えっ!なんで!!」
「おれ今から浮気にしに行くんだよ」
 
 
その瞬間、かくっと落ちた顎を見て内心ほくそ笑む。が、それは必死に押さえつけて顔には出さない。
おれはマルコのようにポーカーフェイスはうまくないからどうだろう。アンの顔を見るところによると、大丈夫だ。顔には出ていない。
 
 
「じゃな」
 
 
ひらりと手を振って隣を通り過ぎる。
数歩歩いてから、忘れていたが隣にいたイゾウがくくっと抑えた笑い声をはみ出させた。
 
 
「お前さんは悪い男だなァ。見たか、天災と人災がいっぺんに来てこの世が終わったかの様なあのツラ」
「見たさ。そのためにやってんだ」
 
そう言うとイゾウは飽きれた様に、しかし至極楽しげに肩を揺らして笑った。
 
 
「で、本当は何しに行くって?」
「ん?コショウ買いに行くってんだよ」
 
それを聞いてイゾウは、こんな男に捕まっちゃ災難だ、と戯けた様に肩を竦めたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
言ったとおりコショウとの浮気を終えたおれは、目的の場所へ向かう。
目的も何もそこはおれの部屋なのだが。
 
部屋の戸を開けると、主がいない布団がこんもりと盛り上がっていて、やっぱりと息を吐く。
いつもこうだ。
おれがアンを邪険に扱い、アンはヘソを曲げ、何故かおれの布団へ潜り込むのだ。
 
しかし今日はその有様より、おれの机にうず高く積まれたものに目が行った。
 
 
「あああっ!!おれのエロ本!!」
 
慌てて走り寄ると、それは全て本の中心が真っ黒に焼け焦げて、無惨にも綺麗なおねえさんのナイスバディが消えてしまっていた。
まさかとページを捲れば、中のべっぴんさんもすべて同じ状態で。
 
 
「くっそ〜!!おいアン!!てめぇなんてことしてくれんだ!!
おれの…おれの心のオアシスを!!」
 
特にこれお気に入りだったのにぃぃぃ!と積まれた本の一つを指さして叫んでも、布団はぴくりとも動かない。
 
 
「おいアンッ!聞いてんのかよ!」
「うるさいバカッチ」
「バッ…!」
 
再び怒鳴ろうと口を開いたが、ぐすっと鼻をすする音が聞こえたもんでその意思はしゅるしゅると縮んでいってしまった。
 
ちなみに説明すると、このゲームはアンが泣いたら終わりだ。
何故かって、泣かれたら慰めるのが男の役目だろ。
たとえ泣かせたのがそのオトコだとしても。
 
 
 
「…アーン、」
 
山になった布団の隣に腰を下ろすとおれの重みでベッドが揺れたが、アンはかたくなに出てこない。
 
 
「アン、おれが悪かったよ。浮気なんてするわけねぇだろ?ほら、出てこいよ」
「…」
「本当だって。おれコショウ買いにいっただけなんだよ」
「…サッチと浮気してくれる女の人なんていないもんね」
「にゃんだとう」
 
 
娼館のねぇちゃんは相手してくれるわ!と言おうとしたがやめた。また蒸し返してどうする。
 
 
「ほら、ごめんって。出て来てくれよ」
 
とんとん、とあやすように布団を叩くと、ぴらりと布団の裾が捲れてアンの目より上が覗いた。
 
「…サッチのバカ」
「そーだなおれはバカッチだ」
「ふふ」
 
ああ、やっと笑った。
未だ布団に隠れる身体に被さるようにして、見えている目元に唇を落とす。
 
「こんな可愛いの置いてなんて行けるわけねぇだろ」
「そのわりにはエロ本のおねぇさんと仲良しじゃん」
「もうそのねぇちゃんもいねぇよ。アンが燃やしたからな」
「…怒った?」
「…いいや、」
 
 
ちらりとさらに布団を捲り、現れた唇に唇を当てる。
 
 
こうやって、イジメ泣かせた後に思いっきり甘やかしてとろっとろに溶かすのが、いいのだ。
アンだって、こうやって甘やかされるのが好きだから、内心またいつもの意地悪だとわかっていながらも拗ねておくのである。とおれは密かに思っている。
ううんかわい。
 
 
いそいそと布団を捲りあげ、その中に潜り込み布団の中でアンの上に乗る。
 
「…なに」
「いや、本のねぇちゃんは燃えちゃったからさ、」
「あたしはその代わり?」
「ばっか、逆に決まってんだろ」
 
 
やっぱバカッチだ、という呟きは聞かなかったことにして、おれは再びその唇を塞ぐのだ。
 
ゲームオーバーとは、まさにこのことである。
 
 

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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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