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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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つい今しがた背中で聞いた音は、どうとっても施錠の音。
 
 
「あーあ、どうりで気前のいい奴らだと思ったよ」
 
「こりゃ2日どころじゃねぇかもな」
 
「くそ、女買う暇も無しかよ」
 
「食料と資料だけは取ってかねぇと」
 
「まぁとりあえず」
 
「壊そうか、ここ」
 
 
 
柄の悪い笑みを浮かべた男たちは、揃って中央に背を向けた。
すらりと取り出した刀や棍棒を一斉に振りかぶる。
あたしは鍵がかけられたと思わしき扉に脚を叩きつけた。
 
 
「うわっ…!!」
 
外からは十数人と思われる驚きの声。
ガラガラと崩れる石の音でよくは聞こえなかった。
 
 
砂埃が少しづつ引いていった先に見えたのは、あたしたちをぐるりと囲む人人人。
どうも大柄の奴が多い。
 
「さすがと言うべきか、そうやすやすとは行かないね」
 
穏やかな表情を崩さないおじいさんは人の群れの中心でにっこりと微笑んだ。
さっきと同じ笑顔のはずが、もうどう見ても悪そうにしか見えない。
まぁそれはこっちも同じか。
 
「じーさんどういうつもりだよ」
 
「知る必要はない。あんたらはもうここからは出れん」
 
「はっ、あんたたち1600人捕まえる気かよ」
 
「まさか。わしらは白ひげクルー数人捕らえればいいと言われている」
 
 
あたしの隣で刀を構えていた隊員が舌を打った。
 
「てめぇら海軍の回しモンか」
 
「…知る必要はないと言った」
 
 
 
それならそれでいい。
とりあえずこの状況をなんとか船に伝えなければ。
きっと自由行動のクルーたちは酒場にいてこのことを知らない。
きっとこの島のすべてがあたしたちの敵だ。
 
 
「ねぇ、あんたらこの資料持って、あそこ突破して船行って伝えろ」
「了解」
 
3人の隊員は自身のズボンの中(うぇ、)やポケットに海図を突っ込むと、その体を弾丸のように丸めて突進した。
突然の行動に、住民たちの陣営が少し崩れる。
所詮一般人だ。
まず鍵をかけただけであたしたちを閉じ込められると思っている時点でとろっとろに甘い。
 
 
「あんたらは街に降りて酒場にいるクルーを船に戻して」
「了解、気をつけろよアン」
「ん、」
 
 
一際大きな体の隊員が特攻し、再び陣営に大穴があく。
数人の住民を飛び越えたり薙ぎ倒しながら、6人は上手くそこをくぐり抜けた。
何人かがそれを追って行ったが、素人が追いつける様な足をあいつらは持っていない。
 
さて、とあたしは残る住民に向き直った。
多少人数は減ったが、ざっと30、いや50くらいかな?
 
 
「残ったのは一人か。長年この役を買っているがこんな失態は初めてだ」
 
「どうでもいいけど、じーさんたち、本気で白ひげ相手にするつもりなの?死ぬよ」
 
「口が減らないね、火拳のアン」
 
「…知ってんだ」
 
 
くっと笑ったじーさんは、すいと目を細めた。
海賊にも負けない悪そうな顔。
 
「知ってるとも。残ったのが火拳一人とは十分すぎるくらいだ」
 
「今にそんなこと言ってられなくしてやるよっ!」
 
 
 
ごうっと全身に焔が灯る。
さっさと片付けないと出港が遅れる。のんびりとはしてられない。
 
 
「火柱ぁ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「マルコ隊長ー!!ちょ、早く!!」
「あぁん?」
 
やけに慌てふためく隊員が、見張り台からオレを呼ぶ。
隊員がオレとある一方を交互に見やるので、その一方におれも視線を移した。
 
 
「…ありゃぁ、」
 
「アンの火じゃねぇか?」
 
ひょこっとオレの顔の隣に突き出たフランスパンもといサッチ。
 
「…なにやってんだか」
 
「てか結構激しくね?なんかあったんじゃ」
 
 
サッチの言うとおり、なにか胸騒ぎがする。
こう言う予感は、ハズレないものだ。
 
「…ちっ、あの馬鹿」
 
毒づいたとき、少し離れた波止場に続く道から三人の野郎が走ってくるのが見えたのだった。
 
 
 
 
 
 
「なにがあった」
 
ボートを出す暇も惜しみ波止場まで飛ぶと、息を切らした隊員が口々に言う。
聞こえてきた単語をつなぎ合わせると、こうだ。
 
この島は海軍の回し者。アンが住民とやりやっている。結構ヤバイ。
 
 
クセぇとは思っていた。だが寄らないわけにもいかず立ち寄った島だったが。
 
(やっぱり、ってことかい)
 
 
「てめぇらオヤジに知らせろ。出港準備だ。あと船に残ってる奴らで島の食料掻っ払ってこい」
 
 
沖から、サッチのどーしたんだー?という暢気な声が聞こえたが、それどころではない。
ぞくり、とでも言おうか。
胸騒ぎが激しくなった。
オレは迷わず空へと舞い上がった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
勝負は一瞬で着いた。
あたしが焔を出した途端じぃさんは慌ててトンズラこきやがったし、住民はやっぱりただの一般人ですぐに倒れ伏した。
所詮海軍が来るまでの時間稼ぎに、あたしたちを歓迎する振りをするだけのコマだったんだろう。
 
 
 
(…油断した、わけじゃないんだけどなぁ、)
 
 
 
ううんと唸りながら、身を捩るとじゃぶりと背筋の寒くなる音がする。
ずしりと全身にのしかかる重みは暑苦しくて気持ち悪い。
荒い息遣いから逃れるように顔をそらした。
 
 
「へへっ、本当に能力者ってのは不便な身体だよなぁ、」
 
 
見るからに脳筋っぽい男がいやらしく笑った。
 
 
 
 
 
 
 
油断したわけじゃない。それはもう絶対。
ただ、勝負がついたと思った矢先のことだった。
あたしたちが破壊した家には地下があり、そこから一人男が這い出してきた。
気づいたときには片方の足首でカシャンと嫌な音が。
 
「うぇっ!?…っくそっ!!」
 
手錠の掛かった足で男を蹴り飛ばしたが、見かけ通り丈夫そうな男はすぐさま立ち上がった。
まさかとも思い火になろうとしたが、無駄だった。
 
「へへっ、これでもう『火拳のアン』にはなれねぇ」
 
「あんた馬鹿か。それで勝てると思ってんの」
 
 
だが男は口端をにっと吊り上げ笑った。
 
「どうかな」
 
じゃらりと男が持ち上げたのは鉄の鎖。
その鎖が続く先は、紛れも無くあたしの足首。
 
「…用意周到だな」
「はっ、仕事だからな」
 
 
その刹那、ぐんっと足首を引きちぎるような勢いで鎖が引かれた。
あたしはその勢いに逆らうこと無く逆の足で男の顔目掛けて跳ぶ。
硬いブーツの底が男の顔面に当たり、うっと呻き声と共に男が後ろに倒れた。
 
(あっけない、)
 
と思ったのも束の間、倒れた男の顔面に着地したはずが、その足元がばきりと崩れた。
 
「うわっ!?」
 
 
いつのまにか戦っている内に岸に近づいていたらしく、足場は海上に作られた木の床となっていた。そこが今の衝撃で崩れたのだ。
マズイ、と思ったその瞬間、もちろん足元は海だ。
男は顔から、あたしは足から落ちて行った。
 
 
 
 
じゃばんっと全身が海水に浸かる。
岸の割にそこは深く、身体は沈む一方だ。
 
 
(やばいやばいやばいこれは本当に、)
 
 
ごぽっと口から海水が流れ込み、喉がその辛さで焼ける様に痛む。
咄嗟に口元を手で覆ったが、その手にもはや力は入らない。
 
その時、ぐっと強い力があたしを腕から引き上げた。
 
 
 
 
 
 
「っ、げほっ!…ぅ、っはぁ…!」
 
「…っは、死なせるわけにゃいかねぇからな…」
 
 
あたしを引き上げた男は、あたしの上半身を割れた木の床に乗せた。
下半身がまだ海水の中にあるせいで、あたしは呼吸を整えるので精一杯。
 
ふっと視界にあった空が消え、男の濡れた顔で一杯になった。
 
 
「…どんな荒くれモンのアマかと思やぁ、結構な上玉じゃねぇか」
 
「…くそっ…!離れろ…!」
 
「へへっ、七武海の誘い断った女が白ひげに入ったってのは聞いてたが、まさかこんないい女ったぁなぁ」
 
「っ!!」
 
 
ぶんと振り上げた右腕は自分でも子供のパンチ並のスピードだとわかるほどで、あっけなく男に掴まれ床に縫い付けられた。
 
 
「海軍に売るのも勿体無ェくらいだが…味見くらいさせてもらうぜェ」
 
「…っちくしょっ…!!」
 
急所を蹴り上げてやろうかと足に力を込めたが、非情にも脚は全く動かない。
 
男の分厚い手のひらが、へそのあたりから腹を撫で上げているのがわかり一気に鳥肌が立った。
 
「…っ触んな!!」
 
ぐっと肘に力を込めて、頭を持ち上げ男の額にぶつける。
その衝撃で思考が飛びかけたが唇を噛んで耐えた。
くらりときたのは男も同じらしく、一瞬頭に星が飛んでいたようだがすぐに持ち直し、このアマと叫んであたしの頬に拳をめり込ませた。
 
「っ!!」
 
一瞬で口内に鉄の味が広がり、痛みというより痺れが酷い。
 
(いやだいやだいやだ)
 
こんな海の中で気を失えば間違いなく良い結果など見えない。
その前にこんなブ男に襲われるなんてもってのほかだ。
 
(…くそっ)
 
ブレる視界の向こうで男を睨みつけたが、オトコはにやりと卑猥な笑みを浮かべてあたしの胸を包む布を一気に引き裂いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「っうあっ!!」
 
身体にのしかかっていた重みが一瞬で消えた。
 
その時視界一杯に広がったのは、比喩ではなく、本当に。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
…マルコ、
 
 
 

拍手[14回]

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「サッチだ。仲良くやれよ」
 
そう言ってオヤジがオレともう一人の頭の上にポンと手を落とす。
そいつが嬉しそうに笑う一方、オレはこれでもかというほど顔をしかめたのだった。
 
 
 
 
柱に刻まれた思い出
 
 
 
 
 
「オヤジっ、オヤジっ!」
「ああん?」
「なんだよい、さっきの奴!誰だよい!」
「グララッ、さっき言ったじゃねぇか。サッチだ」
「そうじゃなくてっ!なんでこの船に乗ってんだよいっ」
「そりゃああいつもオレの息子だからだ」
 
 
息子。
それはオレのことであって、あいつのことじゃない。
 
「…なん、で」
「グララララ!てめぇたちゃぁ兄弟だ。仲良くやれよ。あいつにいろいろ教えてやれ」
 
 
豪快に笑ってそういうオヤジは、何処かいつもよりも機嫌が良さそうで、それがあいつのせいかと思うとまた腸がぐつりと音を立てた。
 
 
 
 
 
 
「あんたがマルコ?おれ、サッチってんだよ!よろしくな!」
 
にかりと笑うそいつに返事は返さず、オレはじとりと睨み返す。
しかしサッチというそいつはまったく気にした風もなく、船縁に寄りかかって海を眺めるオレの隣に同じ様に寄りかかる。
 
 
「おれさぁ、さっきの島の飯屋にいたんだけどさぁ、飯屋のくせにオレに飯食わせてくんなくてさぁ、そったらオヤジが一緒に来いって言ってくれたんだ!あ、オヤジって言うのなんかいいよなぁ。おれ自分のオヤジ知んねェからさぁ、なんか最初は照れ」
「オヤジはオレのオヤジだ」
 
奴の方に視線を向けることなくそう零すと、サッチは一瞬キョトンとしたがすぐに、おう!おれのオヤジもあの人だ!と屈託なく笑った。
 
気に入らない。
オヤジはオレのオヤジで、オレだってオヤジが誘ってくれたからここにいるんだ。
 
なんで。
オレがいるのに、なんでこんな奴連れてくるんだよ。
オヤジ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あぶねぇっ!!」
 
ぐんと全身に重みがのしかかり、二人一緒に後ろへともんどり返る。
オレが今しがた居た場所には、それはもうぶすりと、ナイフが一本刺さっていた。
 
オレの上にのしかかっていたサッチは素早く立ち上がり、オレと背中を合わせる。
オレたちの周りには、オレたちよりも当然背丈のある大人が数人。
 
「んだぁ、ここにゃあガキしかいねぇのか」
 
「うるせぇ、人の船に乗り込んできて何のつもりだよい」
 
「おれたちゃぁ、エドワード・ニューゲートの船に乗り込んだつもりだったんだがなぁ、」
 
ひっひっ、と耳触りの悪い笑いをあげる。
ぐっと唾を飲み込んだ。
その音が背中にいるこいつに聞かれたらどうしようとも思った。
 
オヤジは今換金に島へ下りている。その隙に他の海賊に乗り込まれたのだ。
オレとサッチは食堂で待機中だった。
 
 
「おい、お前戦えるのかよい」
 
「…まともにやったことねぇけど、あ、そこの包丁二本取ってくれ」
 
 
こいつ包丁で戦うつもりかよとも思ったが、とりあえず言われた通りサイドテーブルに置いてあった果物ナイフと刃渡りの大きい包丁を手に取りサッチに渡す。
サッチは長さの違うそれを手の内でくるりと回した。
 
 
「お前強いの?」
 
「強いよい」
 
「そりゃいいや」
 
 
にひっと笑い、肩が揺れたのが背中越しに伝わった。
 
オレたちが2人で会話していたのが気に食わなかったらしい大人は、なにかを叫びながら一斉に斬りかかってきた。
 
 
(攻撃をかわせばこいつに当たる)
 
何故だか本能的にそう思い、近くにあったイスを持ち上げ攻撃を受け止め、その隙に男のすねを蹴り上げる。
うっと屈んだヤローの顔に一発拳をめり込ませると、鼻血を吹いてあっという間に伸びた。
 
背中からは同様にサッチが戦っている様子が振動で伝わる。
どこか妙な安心感があった。
はじめ感じていた違和感も、やりあっている内にそれはまるでダンスでも踊っているかのように息が合っているのが自分でもわかった。
 
 
 
「このガキっ…!」
 
放たれた弾丸は手元にあったステンレスの盆で受けとめはたき落とす。
そのままその盆を男に投げつけたとき、オレの後ろから別の男が飛んできてそいつの上に重なり落ちた。
すぐに二本包丁が飛んできて、重なったそいつらに突き刺さる。
そして男たちは動かなくなった。
 
 
「おーわりっ」
 
ぱんぱんっと手を払う音が聞こえ、すぐに食堂は静けさを取り戻した。
ふたりぶんの息遣いだけが伝わる。
 
「はぁ、オレ初めて戦ったよ!海賊ってすげぇな!てかお前本当に強いのな!」
 
「…っ、当たり前だろい」
 
お前もな、と言おうとしてやめた。
 
「おれさぁ、毎日飯屋のオヤジと戦争してたんだよ。包丁で。初めて役に立った」
 
へへっと鼻を鳴らすと、サッチは高々と片手を上げた。
 
「?」
 
「おつかれだぜ!兄弟!」
 
 
にっと笑うそいつの顔は、どこかオヤジの笑顔と重なった。
だからだろうか。
知らず知らずのうちにオレも同様に片手を上げ、互いの手を打ち鳴らしたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なぁ、ここなんかやたら傷ついてねぇ?」
 
エースがリスのように口を膨らませたまま、食堂にある一本の柱をさすった。
 
「ああ、そりゃ前の船で使ってた柱ぁそのまんま使ってんだよい」
 
「前の船なんてあったのか!!」
 
「エースが生まれるより前の話だぜ」
 
「へぇ、時代を感じるぅ」
 
「「喧嘩売ってんのかクソガキ」」
 
 
 
エースは口の中のものを精一杯咀嚼して飲み込んだ。
 
「にしても傷ついてんなぁ。戦闘でやったみたいな傷だ」
 
 
 
ちらりとサッチに目をやると、サッチも然り。
くっと笑いが漏れた。
 
「…なに笑いあってんだよ。気持ちわりぃおっさんたちだなおい」
 
「よし、エースくんは言葉遣いから覚え直そうか」
 
 
サッチにヘッドロックをかけられて絶叫する末っ子を目の端に映しながら、オレはグラスの酒を大きく仰ぎ、喉に流し込んだ。
 
 
 
その傷は、オレが初めて背中を預けるということを覚えた証。
 
 
 
エースの成敗を終えたサッチは、にっと笑って片手を上げた。
 
オレは片眉を上げながら、その手に自身の手のひらを叩きつけたのだった。
 

拍手[9回]

この船に乗って、わかったことがたくさんある。

人と人の肌が触れ合う喜び。
視線を合わせて微笑むときの暖かさ。

名前を呼ばれて振り向けば、誰もが笑っているなんて、そんなこと。


(一年前の私は知らなかったわ)







昼下がりのベゴニア







「ロービーン!!」

「呼んだ?」

「おうっ!なあアレ見てみろ!」

「? キッチン、でしょう」

そう言うと、まるでだめだなぁというようにルフィは首を振った。

「誰もいない」

「そうね」

「つまり?」

珍しく遠まわしなことを言う船長に、私は少し考えて、思いついたことを口にした。

「盗み食いし放題?」

「しししっ!やっぱお前賢ェな!」

「で、それが何か?またコックさんに怒られるわ」

「うむ、そこで君に相談がある」

「?」

「オレが盗むのを手伝ってくれ!」


どーん、とそれはもう効果音がつきそうなほど胸を張って彼はそう言った。
私は苦笑を零すばかり。


「どうすれば?」

「あのな・・・」





結果としてことに及ばなかったのは、作戦会議中にコックさんのかかとがルフィの頭上に落ちたから。

「テメェロビンちゃんに片棒担がせていいご身分じゃねぇか、アァン!?」

「いひゃい。はんじ、いひゃいでふ」

「ごめんなロビンちゃん、」

コックさんはぐるりと巻いた眉を少し下げて、申し訳なさそうに私を見やる。

「いいのよ」

「ひょら見ろ!ほびんはやひゃひーんだ!(ほら見ろ!ロビンは優しいんだ!)」

「黙れクソゴム」


ばちんとルフィの頬が跳ねたところで後ろからナミの声が私を呼んだ。









「ロビン、ちょっといいかしら?」

「ええ、どうかした?」

「ここなんだけど、少し古い本だから表記がわからなくて・・・」

「ああ、これはこの字と同じ意味よ」

「へぇ!ありがと、ロビン!あんたが書いてくれたこの言語の解読表のおかげでぐっと読みやすくなったわ!」

「ふふ、よかった」


彼女の大好きなみかんと同じ色の髪を揺らし、ナミは太陽のように笑う。
釣られるようにして私も微笑むと、チョッパーの焦ったような声が私を呼んだ。









「・・・うっ、うっ・・・ロビン・・・失敗した・・・」

「あらあら、泡だらけね、」

「突然爆発したんだ。劇薬じゃなくてよかった・・・」

「何を作ろうとしていたの?」

「あのな、ほら、このページなんだけど。この植物で日焼け止めができるんだ。ナミとロビン、気にするだろ?」

「あら、嬉しいわね」

「・・・失敗しちゃったけど」

「ふふっ、私も見ていていいかしら?」

「うんっ!あ、オレが間違えそうだったら止めてくれ!この植物とこっちの植物、見分けにくいんだ」

「ええ」

忙しく動くチョッパーの手をじっと眺めてしばらく経つと、それは綺麗な琥珀色の液体が出来上がった。

「・・・できた・・・!」

「すごいわ、ありがとう」

「ううん、ロビンがいてくれたからよかったんだ。間違いかけたしな、オレ!」


ふふっとふたりで笑みを零すと、じんわりと私たちを包む空気があったまった気がした。

「あ、そういえば朝からウソップとフランキーが呼んでたよ」

「あら、行ってみるわ」






二人の工房に足を踏み入れると、相変わらずな鉄の匂いと火薬の香。

「私のことを探していたと聞いて」

「ああ!そうだお前、ちょいとスーパーな頼みがある」

「いや、別に全然スーパーじゃねぇけどな?ほら、ここ。この隙間に機材が落ちちまったんだ。俺らの指じゃ太くて入らねぇから、ロビンのハナの手で取ってもらえねぇか?」

「お安い御用よ」

ふわりと機械にハナの手を咲かせ、狭い隙間にもぐりこみ、目当てのものを手探りで探し当てた。

「どうぞ」

「おっ!助かったぜ!サンキュー!」

「まったく、フランキーの奴が落としちまってよ。船大工のくせにしょうがねぇぜ」

「んだと長ッ鼻ぁ!もとはといえばテメェがだなぁ、」


やけに楽しそうに言い合いを続けるふたりを尻目にそばにあったミニメリー号の模型を撫でていると、外から私を呼ぶ声が。

「呼ばれてるみたい」









「ああっ、ロビンちゃん!探してたぜぇ!頼みがあるんだけどいいかな?」

「えぇ」

「あの棚の奥にルフィの奴がジャム隠してやがったんだけど、あいつゴムで伸びて置いたから取れねぇんだ。ロビンちゃんのハナの手でとってくんねぇかなぁ?」

「ふふっ。大変ね」

ハナの手で持ち上げた瓶は予想以上に軽くて、アラ、と声が漏れた。

「・・・空になってるわ」

「あんにゃろう」


ぴきりと青筋を立てた彼は、少し表情を緩めて、こちらに向き直った。


「ありがとうロビンちゃん。もうすぐおやつにするから、マリモの野郎起こしてきてくんねぇかな?」

「了解」









ゾロはいつも日の光が半分あたる芝生の上で寝ているはず。
そう思いキッチンのドアをあけたところで、目に入ったのはこの眩しい太陽とはあまり縁のなさそうな彼。

「ヨホホホホ!ロビンさん、今日はお忙しそうですね!」

「そうかしら。もうすぐおやつだそうよ」

「おやっ!それは嬉しいですね!サンジさんのおやつは絶品ですからね!・・・ところでパ」

「お断りするわ」

「手厳しいっ!!」


ヨホホホホ!と外見とは似ても似つかない朗らかな笑い声を上げたブルックは、どこからともなくバイオリンを取り出した。


「ロビンさんを見てそのお美しさで曲を思いつきました!」

「あら、嬉しいこと言うわね」


ゆったりとした旋律で奏でられるそれを目を閉じて聞き入っていたが、すぐに私はゾロを起こさなければならなかったのだと思い出す。

「ごめんなさい、ブルック。私ゾロを起こしてこなければ」

「いやいや引き止めてしまってすいません。どうぞ」

紳士的な手つきで先を促されて、ありがとうと言ってから甲板を見渡した。
いつもの場所で大いびきをかく彼を見つけ、ふっと笑みを零す。










「・・・ゾロ、ゾロ。起きて頂戴。おやつだそうよ」

おやつ、と聞いて飛び起きる人とは違うとわかっているけれど。
しかし彼はうっすらと目を開けた。

「・・・ん?あぁ、やけに静かな声だと思ったらテメェか」

「ふふっ、おはよう。キッチンでおやつが待ってるわ」

くああああ、と大口を開けて欠伸をする彼はまだまだ眠たそうで、思わず、起こしてごめんなさいと口をついていた。
しかしゾロは訝しげに目を細めたあと、いや、と微かに首を振る。

「クソコックにたたき起こされるよりテメェに起こされるほうが寝起きの気分がいい」



がしがしと芝生と似た色の頭をかきむしりながら、ゾロはキッチンへと歩き出す。
ちょうどいいタイミングで、キッチンの窓からコックさんの元気な声が飛び出してきた。
それと共に、絶叫とも取れるような歓声。
その声の主と格闘するコックさんの怒号。

知らず知らずのうちに、私は天を仰いでいた。


(あぁ、)



私が必要だ、と言葉にして伝える人は誰もいないけれど。
ここにいるだけでそれが全身に伝わってくる。
それがこんなにも嬉しいなんて。





「ナミすぁーん!ロビンちゅぁーん!!レディたちの分のおやつはちゃんと確保してあるからねー!!」



その言葉に、私は小さな笑いを零してキッチンへと一歩を踏み出した。







────…あのね、私今日誕生日なの。

そう伝えたら、あなたちはどんな顔を見せてくれるのかしら。







遅ればせながらロビンちゃん誕生日おめでとう!
(ベゴニア:幸福の日々)





拍手[22回]

グランと大きく身体が揺れた。ざんと聞き慣れた音がして、波が船にぶつかったのだとわかった。
それに揺り起こされるようにして意識が浮上してくる。
敷布とはまた違う暖かさが身体を包んでいて、またそれが眠気を誘う。
夢現を行ったり来たりしていると、くっと押し殺した笑い声がすぐ近くから聞こえた。
 
「半目になってるよい」
「…ん、マルコ…?」
 
薄く開いた目の隙間から見えたのは、そっちこそと言いたい程の眠そうな目。
くっと身じろぎして、あれ、と違和感を覚える。
が、すぐにそれはマルコの太い腕があたしの身体に乗っかかっているからだと気づいた。
 
 
「…なんでマルコがいるの…?」
「酔っ払いの配達ついでだよい」
「…よっぱら…イタッ、」
 
突然、頭の中で工事でもしてるんじゃないかという程の衝撃が響いた。
これは酷い。
 
「…頭いたぁ…」
「飲み過ぎだよい、アホ」
 
マルコはそう言って小さく笑ったので、ああマルコが大部屋から運んでくれたのかと漸く頭の整理がついた。
 
 
「で、なんでマルコはここで寝てるの」
「…自分の手に聞いてみろい」
 
手?
マルコの視線の先を追ってみると、そこにはしっかりとマルコのシャツを掴む手が。
 
 
「…あははー」
「あははじゃねぇよい」
 
ごつんと頭突きが降ってきた。
マルコの重い腕が乗っかって身動きの取れないあたしは防ぐ術もなくまともにくらった。
 
「…ったく、」
 
くああああ、と大きなあくびを遠慮なくかましたマルコの目の下。薄っすらと色が違う。
 
「…マルコここで寝てたんだよね?」
「ん?ああ、よい」
「寝れた?」
「……ぼちぼち、寝たよい」
「…ふーん」
 
 
その割には、昨日一睡もしてませんと主張するかのように薄く隈が出来ていた。
 
 
「…あたしがマルコのベッドで寝たときは爆睡だったんだけどな」
「おめぇと違って繊細なんだよい」
 
 
嘘だ、と笑いを零したとき、ふとマルコの細い目がさらに細くなった。
なんとなく、口元も怒っているかのように。
それを見て、昨日怒られた記憶がのっそりと上がってきた。
 
 
「…あ、…昨日、ごめん…」
 
慌ててそう口にすると、マルコは少し片眉を上げてからふっと笑ってくれた。
 
「別にもう怒っちゃいねぇよい。次したらマストから吊るすがな」
「ぎゃっ、もうやだ」
 
懐かしいが恐ろしい記憶が蘇り背筋が寒くなる。
そんなあたしを尻目に、マルコはくつくつと笑った。
 
ふいに近付いてきた顔に、またあたしは防ぐ術もなく。
生暖かいものが唇にあたった。
 
 
「おはよう」
「…あ、おは、よ…」
 
 
さも当然のように交わされたそれに目を丸めるあたしを知らんぷりで、マルコは上体を起こした。
小さく震えている背中が、また欠伸をしているのだと物語る。
 
 
「…なんか、変なの」
「…ああ?」
「マルコが優しい」
「どつくぞ」
 
 
マルコは手早くいつものグラディエーターサンダルを履き、ミーティング遅れるなよいとだけ行って立ち去ってしまった。
残されたあたしは未だに覗く違和感の正体に、首を傾げるばかりだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あ、マルコお前昨日あれから何処行ってたんだよ、探したのに」
「んー、ああ…よい、」
 
曖昧すぎる返事を返すと、まだセッティングされておらず垂れ下がった髪を弄りながらサッチがおや、と口角を上げた。
 
 
「…お泊りですかマルコさん」
「…そんなんじゃねぇよい」
 
またまたぁ、とつついてくる野郎の足を踏み潰しながら自室へと向かう。
とにかく風呂に入りたかった。
熱い湯を浴びて頭を冷やしたい。
 
じゃあアンはもう起きてんのかー、と足の甲を摩りながら呟くサッチをつと見やると、ん?と眉を上げる。
 
 
「…あー、お前、よい」
「おう、オレも好きだぜマルコ」
「黙れ沈めるぞ。
…ルフィ、って奴、知ってるかい」
 
るふぃい?と首を傾げる。
 
「いや知らねェけど」
「…そうかい、」
 
それが?と続きを求める視線を無視して、オレは自室へと入った。
 
 
(聞くだけ聞いて目の前でドア閉めるってひどくない!?)
 
 
 
 
 
 
 
ルフィ、ルフィルフィルフィ。
その名前を聞いた瞬間から頭から離れなくなった。
頭の中で連呼しすぎて、顔も知らないのにもう知り合いの気分にさえなる。
 
…どう考えても、男、だよねい…
 
ざばっと頭に湯をかけてぶるぶると水気を飛ばす。
この拍子にそいつも飛んで行ってしまえばいいのにと思うがそう上手くはいかない。
しぶといやつだ。
 
…ひとつのベッドにいながら(何もいたしてないとは言え)、他の野郎の名を呼ぶとはいい度胸だ。
しかもそのつい前までオレの名を呼んでいたというのに。
 
年甲斐もねぇ、とは自分でも思う。
だがこのざわりとうごめく胸のうちは止まらなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ってなわけで、次の島だがよい。
あまりに情報が少ねぇ。着きにくい海域ってわけでもなさそうだが…
なんかクセぇ気がするが、この海域を抜けたらしばらく長期航海になる。寄らないわけには行かねぇ。
どうせ2日の寄港だ。ハメはずさねぇよう隊員に言っとけよい」
「了解」
「各隊の持ち場は…おいアン寝るな。…持ち場は、一番隊は午前中の見張り、二番隊が次の島の情報収集、三番隊が…」
 
 
かくっと頭が落ちたところでちょうどマルコの突き出た手の骨が脳天にぶち当たった。
はっとして眠気を吹き飛ばそうとかぶりを振ると、脳みそが揺れたように痛む。(中身が少ないからだったらどうしよう!)
気付けば隊長会議はおひらきな雰囲気になっていて。
 
「あれまっ、終わった?」
「…お前な、本気でマストに吊るされてぇのかよい」
「やっ、違う違う!ちゃんと聞いてたよ!二番隊は見張りでしょ?」
「……お前本当にその頭どうにかしてこいよい」
 
あれ、ちがった?と頬を引きつらせて笑うとマルコは顔をしかめたが、不意にその目が真剣な色を帯びる。
 
(あ、また、だ)
 
さっきみたいな、言いたい事を喉元につかえさせているような。
 
「…なに?」
「…いや、」
 
 
ふいと視線を逸らしたマルコは書類をくしゃりと握って、そのまま会議室を後にした。
またまた残されたあたしはさらに疑問符を浮かべまくるのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
着いた島は入り江が狭く、モビーはどう頑張っても入りそうにない。
ということで、港から少し離れた海上で錨を降ろして、ボートで上陸した。
 
 
「じゃ、行ってきます!」
「おう、面倒起こすんじゃねぇぞ。ふらふら飯屋に入ってくなよい。腹減っても金払って飯食うんだぞ。土産とか言っておかしなモン買うんじゃねぇぞ。食いモンくれるからって知らねェ奴にほいほいついてくなよい。あと、」
「っ、マルコ!!」
「大丈夫っすよ、オレらが責任もってアン隊長をちゃんとマルコ隊長のもとまで帰しますから!」
 
あたしと共に上陸する6人の隊員たちが、何故か胸を張ってそう告げた。
そんなにガキじゃないと騒ぐと、そういう奴にかぎってガキなんだと言われ。まったく。
 
 
 
よっとボートから陸に飛び降りると、なんと丁寧なことか島の住民が数人迎えてくれた。
白髪交じりの温厚そうなおじいさんがにっこり笑っていらっしゃいと言う。
もしかして、ちょっと遠いから海賊旗が目に入らないんだろうか。
 
 
「…あのー、あたしたち海賊、なんだけど、」
 
あ、別に襲うつもりとかはなくて、と慌てて付け加えても、住民たちはそろってにこにこ顔を崩さず、知ってますよと口を揃える。
 
「白ひげ海賊団、でしょう。次の島までは少し遠いはずです。ゆっくりして行ってください」
 
本当にわかってるんだろうかと疑わざるを得ない程のおだやかさ。
 
(海賊にごゆっくりってどうよ)
 
でもそれならそれでこっちもきがねがないというものだ。
 
「あたしたち次の島の地図とか、海図とかの情報が欲しいんだけど、」
 
「ええ、案内しましょう」
 
 
そう行って歩き出す島の住民に促されるままに、あたしたちは島の中央部へと進んだのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
「…うお、すご」
 
終始にこやかな住民に連れて来られたのは、あたしたちが上陸した港とはちょうど対岸あたりの小さな家。
小さな島だからそう歩かずとも島の端から端まで行けるらしい。
その小さな石造りの家の中は、まるで本屋の様な物凄い数の蔵書。
海図からはたまたどこかの要塞の内図まで、様々な書物がうず高く積まれていた。
 
(マルコなら一日篭りそうな所だ…)
 
「ここにあるもの、すべてご自由にどうぞ」
「あ、ありがと。幾つか貰いたいんだけど…売ってくれる?」
 
未だ目の前の書物にくらりと眩暈さえ覚えながらそう提案したが、おじいさんはにこりとしたまま首を振る。
 
 
「御自由に持っていってくださって結構ですよ」
「えっ!タダ!?」
 
再び頷くおじいさん。
その言葉に、隊員たちはやたらと浮き足立った。
 
「経費余りますよ!」
「隊長!帰り飲んできましょうよ!」
 
お前らそればっかだな!と窘めるものの、あたしも知らずにゆるゆると、期待で頬が緩む。
 
 
では帰りにいい酒場を紹介しましょう、と言い残し、おじいさんはその家を出て行った。
 
 
「っはー!なんかやたらと気前のいい島っすね!」
 
「さっきいたねぇちゃんも超美人だった!」
 
「本当に2日で出るんすかー?」
 
「んー、マルコはそう言ってたけど、あ、そこの資料取って」
 
「ログが早いからって出港まで早くしなくていいのになー、うぉっ埃臭っ」
 
「ちょ、こっち飛ばすな、って、これ…」
 
 
 
隣で海図を漁っていた隊員が、ふとひとつの冊子に目を留めた。
なになに、とあたしたちも頭を寄せる。
 
まだ新しい紙の束が乱雑にまとめられたようなそれ。
隊員が目を止めたのは、その中身。
それはつらつらと並ぶいくつもの海賊団の名とその海賊旗の写真だった。
ページが進むにつれて紙は古くなり、写真も古ぼけていく。
 
「?  なんだろ」
 
「ひたすら海賊の名の旗の写真ばっかっすよ…ん、この海賊団どっかで聞いたな」
 
「ああ、あれだろ。最近まとめて海軍にとっ捕まった奴ら」
 
「ああ、新聞乗ってたな…」
 
「ん、あたしこの名前も知ってる。てか昨日の書類で見た。確かもう捕まったから手配書から抜いとけって…」
 
「…ってことは、こいつら全部御用になった海賊ばっか?」
 
 
パラパラとさらに紙をめくっていくと、最後のページに辿り着いた。
それはぎゅうぎゅうにすし詰めにされた文字の羅列。
いや、よく見るとそれは海賊団名のリスト。
タイトルのように記されているのは、『未捕獲』の文字。
 
「…なに…?」
 
その最後の列の1番端っこ、遠慮がちに記されていた。
 
 
『白ひげ海賊団』
 
 
え、あ、お、と各々の口から声が漏れたとき、あたしたちが背中を向けたドアが、がちゃんと重い音を立てた。
 
 
 
 
 
 

拍手[8回]

 拍手御礼用に書いたつもりが、長くなったうえに方向性が代わってきたのでこちらにアップ。
つまりはミニミニシリーズアンちゃん編です。
設定は拍手御礼と同様で、変なもん食ってちっちゃくなっちゃった感じです。
身体、精神共に5歳児。もともとの記憶はすべてぱー。
そんな無茶苦茶をすべて許してくれる魔法の言葉を、さんはいっ、

『グランドラインだから!!』

ということで、許してくれる方はどうぞ↓


















 
とてとてとて、と眼下を横切る小さな身体。
おれは無関心を装いつつ、その動きの細かな部分まで神経を張り巡らせていた。
ばさりとオレが新聞のページを捲るたびに顔を覗かせ、舌足らずな口調で話しかけてくる。
オレはそれを適当にあしらいつつも小さくなったアンの様子を事細かに見ていた。
 
 
 
「アンー風呂入っぞー」
 
もともと締まりがあるとは言えない顔だが、すでにそのネジを何処かに落としてきたのだろう。
それくらいでれでれとした顔をさらし、サッチはおれの周りをうろちょろしていたアンを手招いた。
 
 
「あーい」
 
元気に返事をしたアンは、ひょこりと顔を覗かせて一言、
 
 
「まるこ、おふろいってくる!」
 
「はいはい」
 
 
サッチのもとまで駆けて行き、その手と手を繋ぐ。
 
きょうはるたはー?
ハルタは仕事中だよー。
と、そんな会話が耳に届いた。
 
そうかハルタは仕事かい。
だからサッチとお風呂だと。
 
…ん?
 
 
 
 
「ちょっと待てぃ!!」
 
がたんっと仰々しい音を立てて立ち上がると、手を繋いだ2人はきょとんと可愛らしい顔を向けた。
間違えた。
1人は可愛らしくないまったく。
 
 
「おまっ、風呂ってなんだよい!一緒に入る気じゃねぇだろうな」
 
「きょうはねー!さっちとおふろ!あしたはびすたと!そのつぎはいぞーと!んで、つぎがおやじ!!」
 
 
にかりと笑い、つらつらとそう述べるアン。
ね!とサッチに同意を求めると、なーっ?と破顔する馬鹿が1人。
 
 
「…おまっ、風呂って、」
 
「なーに考えてんだよお前。アンは今ガキだぜ?一人で風呂なんて危ねぇじゃん」
 
「ナースがいるだろい!!」
 
「ナースとよりオレらとのが楽しいもんなー?」
 
「うん!さっちと、たのしい!!」
 
 
ほら見ろと言わんばかりにサッチは鼻の穴を膨らませる。
するとニヤリと口元を歪ませた。
 
 
 
「なになに、マルコさん、やらしーこと考えちゃった?」
 
マルコはすけべだなーと言うとアンまで、すけべーと復唱する。
 
 
 
「てめぇそのデコの縫い糸引っこ抜くぞ」
 
 
 
迷うことなく2人に歩み寄り、アンの腕を引きその手を引きはがした。
 
 
「てめぇ、アン、野郎となんか風呂入ってんじゃねぇよい」
 
「なんで」
 
「なんでじゃねぇ、なんでもだ」
 
「マルコさん横暴」
 
「おーぼー」
 
「てめぇこれ以上変な言葉覚えさせたら一生髭の生えねぇ顎にしてやるよい」
 
 
 
しかしアンは納得しないのか、むぅぅと唸る。
 
「おふろはいりたい」
 
「ナースと入れ」
 
「おねーさんたちおしごと」
 
「終わるまで我慢しろよい」
 
「やだあ」
 
 
ぐずるアンは風呂に入りたいとわめく。
通常のアンは風呂さえ面倒くさがる奴だというのに。
よっぽど楽しいのか。
 
 
「あ」
 
ぽんと手を打ったサッチは、オレとアンを見すえて一言。
 
 
 
「マルコお前が入れてやれよ」
 
 
 
おお!とアンが顔を綻ばせた。
 
 
「まるこ!おふろはいろ!!」
 
「はあああああ!?」
 
「だってお前、オレらがアンと風呂入るの嫌なんだろ?
じゃあてめぇで入れてやりゃあいいじゃん」
 
「…そういうわけじゃ、」
 
「照れんなよ気持ちわりぃな」
 
 
 
 
アンを見下ろすと、期待を込めた眼差しを向けてきた。
風呂くらいどうってことない。
だが何かすごく駄目な気がする。
何がって、色々だ。
 
 
 
 
「最近お前仕事ばっかで構ってやんなかったろ。淋しがってたんだから風呂くらい入ってやれよ」
 
 
サッチの言うとおり、近頃小さくなったアンをあしらってばかりだった気がする。
寝るときもオレが寝ないために他の野郎のところへ行っていたらしい。
 
 
 
「…しょうがないねい…」
 
 
首筋を摩りながらそう呟くと、ぱああっとアンの顔が明るさを増した。
 
早く早くとアンに手を引かれてサッチを通り過ぎようとしたとき、ぽんと肩に乗せられた手。
 
 
「ガキだぞ。欲情すんなよ」
 
 
回し蹴りが炸裂したことは言うまでもない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
船の中で真水ほど重要なものはない。
だが近頃冬島近海のため肌寒い日が続いているからか、オヤジがアンに甘いからか、大浴場が開放される日が増えた。
まだ夜も浅いからか湯は張られたばかりで、脱衣所まで湯けむりが広がっていた。
 
「アン、お前は向こうで…」
 
そういいアンを振り向いたそのとき、すでにアンはワンピース代わりのTシャツをすっぽーんと脱いでいた。
 
「んー?」
 
「…いや、なんでもねぇよい…」
 
 
自然と目を逸らすと、アンは構わず服を脱ぎ捨て浴槽へと走り出した。
 
「走るなよい!」
 
「おふろー!!」
 
「…ったく、」
 
 
人の気も知らないで、と呟きながらオレも衣服を脱ぎ腰にタオルを巻く。
 
大浴場は広々としていたが、湯けむりの向こうでアンのはしゃぐ声が聞こえた。
だだっ広い浴槽の真ん中で、アンはばしゃばしゃと遊んでいた。
そこは風呂と言えど、オヤジやジョズ、ブレンハイム並の大男が使う浴槽だ。
 
 
「お前そこ足着いてんのかい?」
 
「つまさき!」
 
「…危ねぇからこっち来い」
 
 
オレも浴槽に入りアンを手招くと、アンは嬉しそうに湯をかいて寄ってきた。
 
 
浴槽の淵にもたれて胡座をかいた脚の間にアンはすっぽりと収まった。
 
 
「あったかいね!」
 
「…よい」
 
 
確かに、ここ数日仕事に追われてシャワーで済ませてばかりだった。
潮にまみれた身体を湯に沈めるのはやはり落ち着く。
 
 
「ふぃー」
 
気持ち良さげに息を吐き、アンは鼻唄を歌い出す。
なんとなくのほほんとした気分になった。
 
 
 
 
 
 
突如、とんとアンがオレの腹をゆびで突いた。
 
「…なんだよい」
 
「まるこのおなかはかったいね」
 
「まあそりゃ…鍛えてるからねい」
 
「さっちはねー、ぼよぼよしててきもちよかった!」
 
「…あいつはおっさん腹だからねい」
 
「まるこは?」
 
「オレは違う」
 
 
ふーんと納得し、アンはぽすりとオレの背にもたれた。
 
 
 
 
 
 
 
なんとなく胸のあたりの黒髪を指先で弄ると、湿った感触がまとわりついた。
 
 
(…ああ、)
 
 
サッチの言葉を思い出す。
そういうのじゃない。そういうのじゃないが、それは無性に、突然。
 
 
 
「…アン…早く戻ってくれよい…」
 
頭をもたげ、こつりと小さな頭上に頭をぶつける。
アンは不思議そうに身体を反転させた。
 
 
「まるこ?なににもどるの?」
 
「…いや、いい」
 
 
しかしアンは顔をしかめ、オレの頬に手を伸ばした。
 
 
「げんきだして」
 
 
すり、とオレの頬をさする。
誰のせいだと思ってんだ。
すると突如綻んだアンの顔。
 
 
「まるこ!あらいっこしよ!」
 
じゃばりと湯から出ると、シャワーの前まで駆けて行きオレを呼んだ。
 
「まるこのあたま、あらったげる!」
 
「…頭はいいよい」
 
「じゃあせなかあらったげる!」
 
「…じゃあ頼もうかねい。だがそのまえにお前も洗っとけよい」
 
遊び始めたらこいつは自分の身体も洗わない気がする。
おれも浴槽内から立ち上がった。
 
 
「じゃあまるこあたまあらって!」
 
「…」
 
「あらいっこだよ、あたしがまるこのせなかあらうから、まるこが」
 
「わかったわかった、前向け」
 
 
そう言うと大人しくくるりと前を向いた。
シャンプーを手に垂らし無造作にアンの髪を掻き混ぜる。
 
 
「きもちいー」
 
「…そりゃよかったよい」
 
 
いかん、変な気分になってきた。
 
 
「でもハルタのほうがじょうず!」
 
「…あっそ」
 
 
かるく芽生えハルタへの殺意を抑え、アンの頭にシャワーをぶっかける。
楽しそうに小さな肩が揺れた。
 
 
「はいつぎ!まるこすわって!」
 
「はいはい」
 
 
言われたとおり腰掛けると、アンはぐしぐしと自分専用スポンジに石鹸をつけ、オレの背中をこすり始めた。
 
 
「まるこのせなかはおっきいねー」
 
「まぁハルタよりはでけぇだろうねい」
 
「でもいぞーのせなかもおっきかった!」
 
「…あっそ、」
 
 
こいつはオレの知らない間にどんだけ野郎と仲良くやってんだ。
アンが元に戻ったときにその記憶があったら、こいつは何の違和感もなくサッチあたりと風呂に入りそうで怖い。
 
 
ざーっと背中にシャワーをかけられる。
 
「できた!」
 
「ありがとよい」
 
「もうでる?」
 
「寒いからもっかいくらい湯に浸かっとけ」
 
 
ほーいと適当な返事をして浴槽に駆けて行くのを見送り、オレはざばざばと荒く頭を洗った。
 
 
腰を上げて振り返ると、空気の冷たさのためか湯気がもわもわと辺りを漂い、視界がすこぶる悪い。
だが慣れたもので視界の悪さなど苦にもならずオレは浴槽にざばりと浸かった。
 
 
 
「…アン?」
 
 
いやに静かだ。
 
(…沈んじゃいねぇだろうねい)
 
湯の中を浴槽の中心へと進んで行くと、白い靄の中でぼんやりとうかんだ頭。
こちらに背を向けて顎下まで湯に浸かっているようだった。
 
 
「…のぼせたのかい」
 
 
そう問うと、ふるふると首が揺れる。
 
 
「…どうしたんだよい、気分悪いならもう上がるぞ」
 
「…がって、」
 
「あ?なんて言っ」
 
「マルコ先上がって!」
 
 
 
ぱちくり、と思わず目を瞬かせた。
 
「…おいアン、」
 
湯の中で手を伸ばしアンの腕を掴んだ。
びくりと湯に埋もれた肩が揺れる。
 
 
…太い。
…というか、これは…
 
 
ちらりとアンの顔がこちらを向いた。
泣きそうな顔。
 
 
 
 
 
 
 
「…ア、アン…」
 
「…あたしなんでマルコとお風呂入ってんの…!?」
 
 
 
 
 
 
 
 
アンが、元に戻った。
 
 
 
 
 
まることおふろ!
 
 
 
 
 
(ぎゃあああああ!!こっち来ないでええええ!!)
 
(そういえばまだおめぇの身体、洗ってねぇよい)
 
(こンのおっさんパイナップルが!!)

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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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