OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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「はい、水」
「……ありがとハルタ」
船縁の手摺りに上半身をだらりとぶら下げていると、ひやりと頬に冷たい感触。
ハルタが背伸びしながらあたしに水の入ったグラスを差し出していた。
それを受け取り一口飲むと、ひんやりと甘い。
ハルタはとんと手摺りにもたれ、少し笑った。
「ちょっとは落ち着いた?」
「…うん」
「あれじゃマルコが可哀相だよ」
「だって!」
勢い込んでがばっと起き上がると隣でハルタの肩が小さく跳ねた。
「マルコの顔見たら昨日のこといろいろ思い出して!そうじゃなくてもマルコかっこいいし!!気付いたら顔から火が!っていうか顔が火に!!」
「わ、わかったから!アン水沸騰してる!」
「あ、」
ごぽごぽと手の中で水が茹だっていた。
少し考えただけでこのザマで。
あの眠そうな顔を見てしまったら最後平常心ではいられないのだ。
ハルタは眉を下げて苦笑した。
「前はあんなに突っ込んで行ってたのに」
それは自分でも思う。
でもそれはそれで、これはこれというやつなのだ。
しゅんと俯いたあたしを下からちらりと覗いてから、ハルタはぽつりと零した。
「…でもよかった」
「え?」
「…ほら、アンが落ち込んだとき。どうしようかと思った」
元気になってよかったよ、と。
にこりと笑うハルタにぐっと言葉がつまる。
ずっと、見ててくれたんだ。
「…ごめん、ありがと」
へへっとハルタは鼻を鳴らした。
「マルコも大人になったってことだよ!」
「?マルコは最初から大人じゃん」
「マルコはね、大人すぎて素直になれないんだよ。本当は自分だってアンに構ってもらいたいくせに」
「そんなわけ・・・あ、」
あたしはハルタの背後で渦巻くどす黒いなにかに目が止まった。
だけどハルタはそんな雰囲気に気づいた風もなく喋り続ける。
「だいたいマルコはさあ、かっこつけなんだよ。
おっさんだからかなあ。
知ってた?マルコ自身無意識みたいだけどいっつもアンのこと目で「なにベラベラ喋ってんだい」
おっさんだからかなあ。
知ってた?マルコ自身無意識みたいだけどいっつもアンのこと目で「なにベラベラ喋ってんだい」
節くれだった大きな手がハルタの頭をぐわしっと掴んだ。
片手で楽々と頭を鷲掴みされたハルタはさっと顔色を変え、顔を歪める。
「っマルコ‼痛い‼痛いよ‼」
「ここぞとばかりに話してんじゃねえよい」
「だってマルコが」
「ガキが首突っ込むことじゃねえ」
「俺はもう大人だ‼」
そんな騒ぎをぽかんと見ていると、マルコの視線がハルタからあたしに移った。
「ちょっと来い」
そう言いあっさりとハルタの頭を離したため、ハルタはバランスを崩しつんのめる。
綺麗な髪がぐしゃぐしゃだ。
黙って踵を返したマルコはスタスタと船の中へと歩いていった。
「アン行っておいで」
「う、ん」
髪を整えながらそうハルタが促すので、あたしは言われるがままに歩を進めた。
マルコは一度も振り返ることなくたったかと歩いて行く。
船内の廊下を進み幾つも角を曲がった。
その突き当たりは、マルコの部屋。
マルコは一度も話さなかった。
まあ怒ってるんだろうな、というのはあたしだってわかる。
ハルタに好き放題あることないこと言われ、さっきのあたしの態度も原因だろう。
やっぱり行き着いたのはマルコの部屋で、マルコが黙って入ったのであたしもその後に続く。
あたしのすぐうしろでドアが遠慮したような音を立てて閉じた。
マルコは室内を数歩進んだところで、突然振り返った。
びくりと肩が跳ねてしまう。
「あのよい、」
「ご、ごめん」
何故か自然と口をついたのは謝罪の言葉で、マルコはそれを聞くとすぐに目を細めた。
「なんで謝る」
「だって、あたしさっき変な」
「おれは、よい」
あたしの言葉を遮ったマルコは一拍おいてからまた口を開いた。
「おっさんだからよい、お前がどうしたいとかどうしてほしいとか、わかんねえんだよい。
もしそういうのが言えなくてさっきみたいに能力制御できねえなら、言えよい。溜め込むんじゃねえ」
マルコはまっすぐにあたしをみたままそう静かに言い切った。
あたしはただぽかんとそれを聞いていたのだが、はっとして、それから慌ててしどろもどろになりつつさっきハルタに話したようなことを説明する。
するとマルコは首元を摩りながらあーとかうーとか言った言葉を発した。
「それならよい、いいんだが」
いや、いいのか?とか自問するマルコをあっけに取られてみていると、マルコは眉間に皺をよせてなに見てんだいとあたしを見下ろした。
「いや、だってマルコがそんなこと考えてるなんて、びっくりっていうか、その、いろいろ慣れて、そうだから」
視線を泳がせたままそう言うと、マルコは呆れたように口元を歪めた。
「そこらの女と同じなわけねえだろい」
…んん?
…んんん?
真意を図り兼ねて固まってしまったあたしにマルコは不審な目を向け、どうしたよいと顔を覗きこむ。
働きの悪いあたしの脳細胞がさっきの言葉をやっと理解した瞬間、かっと顔に熱が灯った。
あたしに爆弾を投下するのがうまいらしい。
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まっすぐ、ますっぐ。
ただひたすらに。
愛した世界は美しい
「エースー!!!」
「ぐはぁっ!」
ごすっと冗談にならない音を立て、ルフィはオレの背に飛びついてきた。
もはや突進だ。
「お前なっ、ルフィ!後ろから突然飛びつくのやめろよ!普通なら背骨数本いってるぞ!」
「しししっ!なあエース!今日の夕飯知ってるか!?」
「あ?知らねぇ」
「さっき台所にでっっけぇ肉置いてあったんだ!あれ多分焼くんだ!!」
「本当かっ!?」
「ああっ!だから早く帰ろう!」
「おうっ!」
オレの手を自然と握ったルフィのそれは温かく少し湿っていて、ぶんぶんと元気に繋いだ手を振りながらオレたちは家路についた。
「なーエースー。さっきあそこで何してたんだー?」
「んー、ルフィが来るちょっと前まで寝てた」
「それからは?」
「んー、早く海出てぇなーって考えてた」
「…ふーん」
急に俯きがちになった弟の顔を覗き見ると、似合わない難しい顔をしている。
「…オレがいなくなったら寂しいとか考えてんのか?」
「違う」
いやにはっきりそう言い切ったことに少なからず衝撃を受けていると、ルフィは少し考えてから首を振った。
「寂しいのは寂しいけど、ちょっと違ェんだ」
「なんだそれ」
珍しくわからないことを言う。
でも自分でもよくわかってないらしく、ううんと頭を捻っていたが結局考えはまとまらなかったらしい。
「いいんだ。オレもいつか海に出て、エースより強くなる」
「はっ、一生ムリだ」
「そんなことねぇっ」
ムキになるルフィを鼻で笑うと、ルフィもくしゃりと笑い返した。
でっかい太陽がオレたちを照らし、不格好に伸びた影が後を引く。
オレンジに照らされたルフィの鼻先は何故か泥汚れが付いていて、手で擦り落としてやるとルフィはくすぐったそうに肩を揺らした。
「エースー」
「なんだよ」
「しししっ!オレエースだいすきだ!」
「……あっそ」
馬鹿野郎、オレもに決まってる。
「…エ…ス…?」
暖かい。
胴体は焼けるように熱いのに、いや実際焼けているんだが、直に触れたルフィの体温だけが妙にリアルだった。
なあルフィ。
ひとはあったかいんだな。
お前に会えて、やっとわかったよ。
「…ス、…のか?」
「…前の…なに…伝え…」
会話をしているはずなのに、自分が発した声もどこか遠くに聞こえる。
この、広い海で。
ルフィ、お前はこれからどんな未来を見るんだろう。
つよく、つよく。
ひとりで立てなくてもいい。
誰の前で泣いたっていい。
支えてくれる仲間たちと、オレの知らない世界を作っていけばいい。
瞼を下ろすと、自然と口元は笑みを形作る。
ほら、オレはこんなにもしあわせだ。
まっすぐ、まっすぐ。
ただひたすらに。
オレは愛された。
お前が教えてくれたんだ。
世界はこんなにも美しいんだと。
※あてんしょんぷりっ※
今後のおはなしについて。
今後はアンちゃんとマルコがもだもだする予定(予定は未定であり決定ではない)なわけで、あだるてぃなことをするかもしれないししないかもしれない。
そういうお話には!がつきますが、いちいち注意は設けませんので。
以上です。
よいよいと言うかたはスクロールでどうぞ↓
「ああアン、おはようさん」
「マ、ルコっ、おはよ!じゃ!」
「アン、次の島なんだが…」
「あああああたしごめん仕事がっ」
「おいアンてめ」
「ハルタアアアアア!ちょっと話があああああ!」
なんなんだ、一体。
オレが不機嫌を隠そうともしないまま食堂の席に着くと、隣でイゾウが気持ちよさ気に煙管を吸い、ちらりとこちらに目をやった。
「おうマルコさんよ、ご機嫌ななめかい」
「…はんっ」
「アンとなんかあったんだろ」
…だからこいつはイヤなんだ。
「何がご不満なんだかねぇ。生娘捕まえといて」
「生娘言うな」
「で、何があったんだ」
「…アンが、オレを避けるんだよい」
そう言うと、イゾウは珍しく目をぱちくりとさせる。
「昨日の今日じゃねぇか」
その通り、昨日、まぁ、その、そういうことになったのだが。
今日の朝特に変わり映えもなく挨拶したら、逃げられた。
そのときは逃げられたとは思わなかったのだが、今日一日過ごしてよくわかった。
あいつはオレを避けている。
隣からふわりふわりと紫煙がくゆる。
「なんだ、昨日無理矢理でもしたのか」
「ばっ…!そんなことしてねぇよい!」
そうかいそうかいと、イゾウはくつくつと笑い肩を揺らす。
またこいつの話術というかそういう類の何かに嵌められたような気分になり、オレはますます眉間の皺を深くした。
キィ、と食堂のドアが音を立てる。
「あ、アン」
イゾウの声に釣られるようにしてそちらに顔を向ければ、確かにドアを引くアンの姿が。
だがアンはおれにパチリと視線を合わしたその刹那、無言でドアを閉めた。
「……」
「…くっ…ははっ…!本気で避けられてんのかっ…!あぁ腹いて」
イゾウが爆笑し続けるその横で、オレは思わず深い溜め息をついたがすぐにそれを飲み込んだ。
出してしまったものはどうしようもないのだが。
…別にアンがオレを避けようと、オレにゃぁなんの被害もねぇじゃねぇかい。
そう、そうだ。
アンの奴がまたくだらないことを考えているだけのこと。
…しかし、だ。
理由もわからず避けられ続けるというのは、大層気分がよろしくない。
それだけの理由だ、と言い訳めいたことを考えながらオレは席を立ち食堂の入り口へと歩を進めた。
もう部屋へ戻っただろうと思いドアを開けたのだが、驚くことにまだアンはその場に突っ立っていた。
「わっ」
「ちょい待てい!」
慌てて逃げようとしたその腕を掴むと、ぴたりとアンは動かなくなった。
「おいテメェなんでオレを避けてる」
「…べ…つに、」
「嘘付けそっぽ向くな」
「…リ…」
「あ?なんて言っ…」
「もうムリっ!!」
そう絶叫したかと思うと、次の瞬間、ゴウッとすさまじい音と熱風が巻き起こった。
「熱っ…!」
激しい熱の中薄く目を開けると、あろうことか、アンの顔が、無い。
つまり、炎となっている。
その、首から上の部分が。
それはもうメラメラと。
「おまっ…!」
オレが口を開いたときにはもうアンは廊下を走り出していて、もちろんその状態のままで。
「ア、アン隊長!?」
「うぉおっ!服に引火したァッ!!」
「おい誰かアンを消火しろォォ!!」
すれ違う隊員はその姿に目を剥き、奴が走り去った廊下は何故か地獄と化していた。
ぽつんとその場に残されたオレは、食堂から聞こえるイゾウの爆笑にただ眉を潜めるばかりだった。
超自然発火現象
(だってなんかもうムリなんだもん!)
Thanks to さくら様!/三つ葉様!
今後のおはなしについて。
今後はアンちゃんとマルコがもだもだする予定(予定は未定であり決定ではない)なわけで、あだるてぃなことをするかもしれないししないかもしれない。
そういうお話には!がつきますが、いちいち注意は設けませんので。
以上です。
よいよいと言うかたはスクロールでどうぞ↓
「ああアン、おはようさん」
「マ、ルコっ、おはよ!じゃ!」
「アン、次の島なんだが…」
「あああああたしごめん仕事がっ」
「おいアンてめ」
「ハルタアアアアア!ちょっと話があああああ!」
なんなんだ、一体。
オレが不機嫌を隠そうともしないまま食堂の席に着くと、隣でイゾウが気持ちよさ気に煙管を吸い、ちらりとこちらに目をやった。
「おうマルコさんよ、ご機嫌ななめかい」
「…はんっ」
「アンとなんかあったんだろ」
…だからこいつはイヤなんだ。
「何がご不満なんだかねぇ。生娘捕まえといて」
「生娘言うな」
「で、何があったんだ」
「…アンが、オレを避けるんだよい」
そう言うと、イゾウは珍しく目をぱちくりとさせる。
「昨日の今日じゃねぇか」
その通り、昨日、まぁ、その、そういうことになったのだが。
今日の朝特に変わり映えもなく挨拶したら、逃げられた。
そのときは逃げられたとは思わなかったのだが、今日一日過ごしてよくわかった。
あいつはオレを避けている。
隣からふわりふわりと紫煙がくゆる。
「なんだ、昨日無理矢理でもしたのか」
「ばっ…!そんなことしてねぇよい!」
そうかいそうかいと、イゾウはくつくつと笑い肩を揺らす。
またこいつの話術というかそういう類の何かに嵌められたような気分になり、オレはますます眉間の皺を深くした。
キィ、と食堂のドアが音を立てる。
「あ、アン」
イゾウの声に釣られるようにしてそちらに顔を向ければ、確かにドアを引くアンの姿が。
だがアンはおれにパチリと視線を合わしたその刹那、無言でドアを閉めた。
「……」
「…くっ…ははっ…!本気で避けられてんのかっ…!あぁ腹いて」
イゾウが爆笑し続けるその横で、オレは思わず深い溜め息をついたがすぐにそれを飲み込んだ。
出してしまったものはどうしようもないのだが。
…別にアンがオレを避けようと、オレにゃぁなんの被害もねぇじゃねぇかい。
そう、そうだ。
アンの奴がまたくだらないことを考えているだけのこと。
…しかし、だ。
理由もわからず避けられ続けるというのは、大層気分がよろしくない。
それだけの理由だ、と言い訳めいたことを考えながらオレは席を立ち食堂の入り口へと歩を進めた。
もう部屋へ戻っただろうと思いドアを開けたのだが、驚くことにまだアンはその場に突っ立っていた。
「わっ」
「ちょい待てい!」
慌てて逃げようとしたその腕を掴むと、ぴたりとアンは動かなくなった。
「おいテメェなんでオレを避けてる」
「…べ…つに、」
「嘘付けそっぽ向くな」
「…リ…」
「あ?なんて言っ…」
「もうムリっ!!」
そう絶叫したかと思うと、次の瞬間、ゴウッとすさまじい音と熱風が巻き起こった。
「熱っ…!」
激しい熱の中薄く目を開けると、あろうことか、アンの顔が、無い。
つまり、炎となっている。
その、首から上の部分が。
それはもうメラメラと。
「おまっ…!」
オレが口を開いたときにはもうアンは廊下を走り出していて、もちろんその状態のままで。
「ア、アン隊長!?」
「うぉおっ!服に引火したァッ!!」
「おい誰かアンを消火しろォォ!!」
すれ違う隊員はその姿に目を剥き、奴が走り去った廊下は何故か地獄と化していた。
ぽつんとその場に残されたオレは、食堂から聞こえるイゾウの爆笑にただ眉を潜めるばかりだった。
超自然発火現象
(だってなんかもうムリなんだもん!)
Thanks to さくら様!/三つ葉様!
カツカツと自分の足音がやけに大きく耳を打つ。
オレと目があった隊員はすぐに目を反らすか、青ざめた顔で固まりやがった。
それがますます気に障り、唸るように威嚇すると知らず知らずに覇気が出ていて後ろでばたりと倒れる音がした。
食堂の戸を開けると中は人も疎らで、イゾウがひとり離れたところ新聞を読んでいた。
オレを見つけて、おっと声をあげたイゾウはすぐにぶっと噴き出した。
「…何笑ってんだい」
「…くくっ…お前さんなんて顔してんだ」
人の顔見て笑うとは失礼極まりない奴だ。
憮然としてオレはイゾウの向かいに腰を下ろした。
「…そんな顔して、何があった」
「どんな顔してるってんだい」
「そうさなあ…言うなれば、般若、だな」
「…」
イゾウはばさりと新聞を畳み、陶器の湯飲みから茶をすする。
「珍しいんじゃねぇの、お前ェにそんな顔させるったァ」
「…はんっ」
「オレの目星じゃあ…アンかサッチ辺りだな」
「!!」
「はっ、当たりか」
思わず息を呑んでしまい、それがまたこいつの笑いを誘う。ちっと舌打ちが漏れた。
「お前さんあの夜からいろいろ考えてんだろ」
「…」
「大人っつーのはよ、本当に面倒なもんだなァ」
まったくだ。このぐつぐつと煮えるはらわたを抑える術を知っているが、あえてそれを使わず忘れる狡さを持っている。
…サッチの考えていることなど、わかっていた。何年の付き合いだってんだ。
サッチなら、オヤジだって文句ないだろう。
この船の兄たちだって、サッチをいいかげんな奴だがいざとなれば頼りになるとわかっている。だからこそ、あいつは今も4番隊を背負っているのだ。
わかっている、わかっているのに。
何故こうも腹が立つ?
サッチにではない。アンにだ。
ムカつく。いらつく。アイツ。
何より、さっきオレを見たときのあいつの目がオレを苛立たせる。言わば諦念、のような。
カシャンと目の前で何かが音を立てた。
顔を上げると、机にはゆらゆらと湯気を立てるコーヒー。
どかりとサッチが横に座った。
サッチは自分のコーヒーを音を立てて啜る。
イゾウはじゃあオレはこれで、と新聞を持ち席を立った。
沈黙が落ちる。
目の前に置かれたコーヒーに手を付ける気にもならなくて、それが冷めていく様子を眺めていた。
「…お前何してんだよ」
突如発せられた不可解な言葉。
眉を寄せてサッチを振り向くと、奴はいっそ憐れんだような顔でオレを見ていた。
「…お前本当ムカつくわ」
「…」
「ったく、変な顔しやがって」
先程からオレの容姿について失礼な言葉が飛び交っているが、手元のコーヒーを覗き込むとそこに写った自分は成る程醜い顔だった。
「…やだね、おっさんは。歳は取りたくねぇよ」
「…ああ」
「…大人んなるとさァ、欲しいもんも欲しいって言えずにさァ、大人ぶって」
「…」
「で、本当に失くす瞬間に駄々こねんの」
いやだ欲しい、って。
オレはこいつの考えていることくらいわかる。
何年の付き合いだと思ってんだ。
だが裏を返せば、こいつにとっても同じこと。
「…早く行けよ」
オレは腰を上げた。
木の扉を叩くと、少し間があってから誰?と返ってきた。
「オレだよい」
息を呑む音が聞こえて返事がないので勝手にドアを開けた。
アンはベッドの隅で壁に背を付けて座っていた。
オレと目が合うとすぐにえへへと無意味な笑い声をあげたが、その目は赤い。
「あっ、包帯!包帯持ってきてくれたんだっけ?今日の朝さあ、ステファンに飛び付かれたとき血が滲んできちゃっ」
「オレは」
思いの外低く出た声に、アンの言葉が途切れた。
「お前に惚れるこたァねェ」
そう言うとアンは少し驚いてから目を伏せた。
「知ってる」
「だが」
カツ、と一歩歩み寄るとアンは視線を上げオレの顔を見た。
泣きそうな顔。
もしかするとオレもかもしれない。
「お前ェが他の誰かのモンなのは、すげぇ嫌だよい」
っ、とアンは息を呑んだ。
ゆっくりと口を開く。
「…マ、ルコは…あたしが好きなの?」
どうしようもないガキだと思った。
言うことは聞かねぇ、仕事はしねぇ、よく食べよく飲みよく寝る本能に忠実なガキ。
少し成長したと思えばやっかいごとを笑顔で持ち帰ってくるし、人の気も知らず好きだと思えば好きだと口にする。
うるせぇ黙れ向こう行け、とオレは何度口にしただろう。
だが本当にアンがオレから離れようとしている今、オレは非常に焦っている。
大馬鹿野郎だ。救いようがない。
黙ったままのオレに、アンは口を開いた。
「…ねぇ、さっき、見てた?あたしと、さ、サッチ」
「ああ」
「…き、きす、した」
「…初めてかい」
こくりと頷く頭。
舌打ちが漏れた。
あのリーゼント、あーだこーだ言いつつ奪うもんはちゃっかり奪いやがって。
今頃オレはあいつやイゾウたちの笑いの種になっているに違いない。
ベッドの側まで足早に歩み寄ると、アンはオレを見上げる角度を上げた。
膝立ちでベッドに乗り上げると、ふたりぶんの重さにスプリングが悲鳴をあげる。
足だけでサンダルを抜き取った。
「…マ、ル…」
壁にぺったり背を付けて動かないアンは掠れた声を絞り出した。
とんとアンの顔の横に肘をつく。
アンは壊れてしまったかのようにオレしか見ない。
それでいい。
息がかかるほど近くで。
「…あの野郎のは、忘れろ」
唇を重ねた。
薄く開いた目の間から見たアンは、これでもかと言うほど目を見開き、それからぎゅっと閉ざされた。しかし閉じた目の隙間からほろほろと液体が零れ出る。
オレは壁に着いた腕を離しアンの背に回した。
ゆっくりと、アンの腕が伸びてきてオレの背中のシャツを掴んだ。
触れるだけだったキスをゆっくりと深いものにする。
上唇を軽く噛み、少し離してはまた口付ける。
少し開いたままの口に舌を差し込むと、アンの身体が震えた。
アンは膝立ちのまま上から口付けるオレにすがりつくよう抱き着いている。
奥に引っ込んでいた舌を見つけて吸い上げると、やわやわと答えるように絡み付いてきた。
唇を離すと銀が糸を引き、二つの唇を繋いだ。
一度べろりとアンの唇を舐め、その肩に顔を埋めた。
オレの胸元に押し付けたアンが流す涙がシャツを湿らせていく。
「…マルコ、」
マルコマルコ、とオレの名を呼び続けるその声に心臓が痛いほど高鳴っているのがわかった。
「アン」
とりあえず、この気持ちに名前を付けようか。
「好きだ」
狂おしい恋
オレと目があった隊員はすぐに目を反らすか、青ざめた顔で固まりやがった。
それがますます気に障り、唸るように威嚇すると知らず知らずに覇気が出ていて後ろでばたりと倒れる音がした。
食堂の戸を開けると中は人も疎らで、イゾウがひとり離れたところ新聞を読んでいた。
オレを見つけて、おっと声をあげたイゾウはすぐにぶっと噴き出した。
「…何笑ってんだい」
「…くくっ…お前さんなんて顔してんだ」
人の顔見て笑うとは失礼極まりない奴だ。
憮然としてオレはイゾウの向かいに腰を下ろした。
「…そんな顔して、何があった」
「どんな顔してるってんだい」
「そうさなあ…言うなれば、般若、だな」
「…」
イゾウはばさりと新聞を畳み、陶器の湯飲みから茶をすする。
「珍しいんじゃねぇの、お前ェにそんな顔させるったァ」
「…はんっ」
「オレの目星じゃあ…アンかサッチ辺りだな」
「!!」
「はっ、当たりか」
思わず息を呑んでしまい、それがまたこいつの笑いを誘う。ちっと舌打ちが漏れた。
「お前さんあの夜からいろいろ考えてんだろ」
「…」
「大人っつーのはよ、本当に面倒なもんだなァ」
まったくだ。このぐつぐつと煮えるはらわたを抑える術を知っているが、あえてそれを使わず忘れる狡さを持っている。
…サッチの考えていることなど、わかっていた。何年の付き合いだってんだ。
サッチなら、オヤジだって文句ないだろう。
この船の兄たちだって、サッチをいいかげんな奴だがいざとなれば頼りになるとわかっている。だからこそ、あいつは今も4番隊を背負っているのだ。
わかっている、わかっているのに。
何故こうも腹が立つ?
サッチにではない。アンにだ。
ムカつく。いらつく。アイツ。
何より、さっきオレを見たときのあいつの目がオレを苛立たせる。言わば諦念、のような。
カシャンと目の前で何かが音を立てた。
顔を上げると、机にはゆらゆらと湯気を立てるコーヒー。
どかりとサッチが横に座った。
サッチは自分のコーヒーを音を立てて啜る。
イゾウはじゃあオレはこれで、と新聞を持ち席を立った。
沈黙が落ちる。
目の前に置かれたコーヒーに手を付ける気にもならなくて、それが冷めていく様子を眺めていた。
「…お前何してんだよ」
突如発せられた不可解な言葉。
眉を寄せてサッチを振り向くと、奴はいっそ憐れんだような顔でオレを見ていた。
「…お前本当ムカつくわ」
「…」
「ったく、変な顔しやがって」
先程からオレの容姿について失礼な言葉が飛び交っているが、手元のコーヒーを覗き込むとそこに写った自分は成る程醜い顔だった。
「…やだね、おっさんは。歳は取りたくねぇよ」
「…ああ」
「…大人んなるとさァ、欲しいもんも欲しいって言えずにさァ、大人ぶって」
「…」
「で、本当に失くす瞬間に駄々こねんの」
いやだ欲しい、って。
オレはこいつの考えていることくらいわかる。
何年の付き合いだと思ってんだ。
だが裏を返せば、こいつにとっても同じこと。
「…早く行けよ」
オレは腰を上げた。
木の扉を叩くと、少し間があってから誰?と返ってきた。
「オレだよい」
息を呑む音が聞こえて返事がないので勝手にドアを開けた。
アンはベッドの隅で壁に背を付けて座っていた。
オレと目が合うとすぐにえへへと無意味な笑い声をあげたが、その目は赤い。
「あっ、包帯!包帯持ってきてくれたんだっけ?今日の朝さあ、ステファンに飛び付かれたとき血が滲んできちゃっ」
「オレは」
思いの外低く出た声に、アンの言葉が途切れた。
「お前に惚れるこたァねェ」
そう言うとアンは少し驚いてから目を伏せた。
「知ってる」
「だが」
カツ、と一歩歩み寄るとアンは視線を上げオレの顔を見た。
泣きそうな顔。
もしかするとオレもかもしれない。
「お前ェが他の誰かのモンなのは、すげぇ嫌だよい」
っ、とアンは息を呑んだ。
ゆっくりと口を開く。
「…マ、ルコは…あたしが好きなの?」
どうしようもないガキだと思った。
言うことは聞かねぇ、仕事はしねぇ、よく食べよく飲みよく寝る本能に忠実なガキ。
少し成長したと思えばやっかいごとを笑顔で持ち帰ってくるし、人の気も知らず好きだと思えば好きだと口にする。
うるせぇ黙れ向こう行け、とオレは何度口にしただろう。
だが本当にアンがオレから離れようとしている今、オレは非常に焦っている。
大馬鹿野郎だ。救いようがない。
黙ったままのオレに、アンは口を開いた。
「…ねぇ、さっき、見てた?あたしと、さ、サッチ」
「ああ」
「…き、きす、した」
「…初めてかい」
こくりと頷く頭。
舌打ちが漏れた。
あのリーゼント、あーだこーだ言いつつ奪うもんはちゃっかり奪いやがって。
今頃オレはあいつやイゾウたちの笑いの種になっているに違いない。
ベッドの側まで足早に歩み寄ると、アンはオレを見上げる角度を上げた。
膝立ちでベッドに乗り上げると、ふたりぶんの重さにスプリングが悲鳴をあげる。
足だけでサンダルを抜き取った。
「…マ、ル…」
壁にぺったり背を付けて動かないアンは掠れた声を絞り出した。
とんとアンの顔の横に肘をつく。
アンは壊れてしまったかのようにオレしか見ない。
それでいい。
息がかかるほど近くで。
「…あの野郎のは、忘れろ」
唇を重ねた。
薄く開いた目の間から見たアンは、これでもかと言うほど目を見開き、それからぎゅっと閉ざされた。しかし閉じた目の隙間からほろほろと液体が零れ出る。
オレは壁に着いた腕を離しアンの背に回した。
ゆっくりと、アンの腕が伸びてきてオレの背中のシャツを掴んだ。
触れるだけだったキスをゆっくりと深いものにする。
上唇を軽く噛み、少し離してはまた口付ける。
少し開いたままの口に舌を差し込むと、アンの身体が震えた。
アンは膝立ちのまま上から口付けるオレにすがりつくよう抱き着いている。
奥に引っ込んでいた舌を見つけて吸い上げると、やわやわと答えるように絡み付いてきた。
唇を離すと銀が糸を引き、二つの唇を繋いだ。
一度べろりとアンの唇を舐め、その肩に顔を埋めた。
オレの胸元に押し付けたアンが流す涙がシャツを湿らせていく。
「…マルコ、」
マルコマルコ、とオレの名を呼び続けるその声に心臓が痛いほど高鳴っているのがわかった。
「アン」
とりあえず、この気持ちに名前を付けようか。
「好きだ」
狂おしい恋
オレは消えたアンを探して町中を徘徊した。
この街には山賊という面倒な奴らがいる。
海賊なら白ひげと聞いただけで逃げてくれるからいいのだが、無知というのは恐ろしいもんだ。山賊はオレたちを知らない。
アンのことだからあまり心配することもねぇだろとは思うが、まあ一応女の子なわけで、オレとマルコはこうして探しているのだ。
「…いねぇな」
メシ屋のごみ箱の蓋を開け中を覗き込んだとき、頭上からばさりと羽音がひとつ。
どうやら姫の御帰還のようだ。
降り立ったアンは足から血を流し白い顔をして、頬には涙の痕がある。たまらずぐっと抱き寄せた。
「このバカ娘が。心配しただろ」
ごめんなさいと弱々しく返ってきた返事に、オレはさらに抱き寄せる力を強めたのだった。
モビーに戻り、船に残るナースにアンの手当てを頼んだ。
傷はまだ浅いほうだが範囲が広く、しばしは安静とのこと。
不安やらいろいろ感じていたんだろう、処置が終わった途端そのまま医務室でアンはことんと寝てしまった。
健やかな寝息を立てるアンの顔をオレはなんともなしに見ていると、ふわりとアンが浮かび上がった。
アンを抱き上げたマルコは、部屋に戻してくるよいとひとこと。
助かりますとナースが答えた。
医務室をあとにするマルコの背中を、オレはぼんやり眺めていた。
「ごめんねサッチ」
「んー?なにがー?」
「酒、飲みに行く約束」
「ああ、アンこの島のログがどんだけで溜まるか知ってるか?」
「ううん」
「4ヶ月だとさ。ログが書き換えられる前に出航しなきゃなんねぇけどさ、まだ100日以上いられるんだぜここに」
読んでいた雑誌を置きニヤリと笑うと、寝たままのアンもつられるようにして笑った。
あれから丸一日寝て、まだ歩けないアンのために、こうして部屋に来て喋り相手をしているのだ。
怪我をしようとも食欲は衰えないので大量の食事も運ばねばならん。
「サッチ、街行ってきていいよ」
「んー、オレァ別に行くとこねぇし」
「ほら、ナンパしなくていいの?」
「…ああー、今は、ね」
正直目の前に転がるこいつに手を出すわけにはいかない今、ものすげぇ女が恋しい。
スタイル抜群で柔らかい女に触れたくてしょうがねぇのは事実だ。
実際、昨日の夜は女を買いに夜の街へ出た。
しかし俗に言う「そういうところ」に入ったはいいが、目の前に裸で転がる好みの女を見てもどうも気分が乗らず金を置いてすぐに出てしまった。
寝転んだまま鼻歌を歌うアンにちらりと目をやる。
ああ、オレは末期だ。
ガキだし、胸もケツも乏しいこいつにしかもう欲情しないらしい。
まったくおっさんのくせに、何盛ってやがるんだ。
「なあ」
ぎしりとベッドが軋む。
オレの重みでさらにアンが沈んだ。
「まだマルコが好きか?」
俯せのアンの表情は見えないまま、オレはアンの両肩の横辺りに手を着いた。
しばらく間があって、こくりと頭が縦に振られた。
ふっと笑いが口から漏れる。
オレはアンの足の傷を痛めないよう気配りつつアンをひっくり返した。
オレのほうを向いたアンは案外近くにいるオレに驚いたように目をぱちくりさせた。
「なあアン、オレのこと好きか」
え、と小さく口が開いたあと、いつものようにアンは目を細めた。
「すき!」
予想通りの返事に内心苦笑する。
でもな、それじゃダメなんだよ。
マルコのときはオレが言うまで気付かなかったくせに。
なんでオレのときは簡単に好きだなんていうんだよ。
その意味合いが違うことなんて、わかっている。
「オレもアンが好きだよ」
頭の中では危険信号がビンビン鳴っている。
ダメだやめろ、いやしてしまえと葛藤するのに疲れたオレはそのままアンの口を口で塞いだ。
この部屋に近づいてくる足音になんて、気付いていた。
「アン入るよい。替えの包帯…を…」
手元に落としたままだった視線をあげたマルコは、目の前のこの光景をどう捉えただろう。
アンのこれでもかというほど開かれた目がマルコを捉えた。
助けを求めるだろうかという予想は外れ、アンは何もしないし言わない。
「…邪魔したねい」
ぱたんと閉じられたドアを、アンは冷めた目で見ていた。
まだオレとアンの唇は繋がったままだ。
アンの背中とベッドの間に手を滑り込ませると、近すぎてぼやける視界の中でもアンの目がさらに見開かれるのがわかった。
胸に巻かれた布の中に手を入れ、下から肩甲骨を撫で上げる。
ぶるりとアンが震えた。
「…んんぅー!!!」
オレとの間に入り込んだ細い腕がオレの胸板を押し返す。
その代わりに、固く閉ざされた唇を割るようにして、自分の舌を差し込んだ。
そのとき、
ごすっ
「くっ…はっ…て、てめぇ…容赦しろよ…」
「…っはあっ…」
すっかり気の抜けていたオレの鳩尾に刺さるような拳が入った。
うずくまるオレの下からはい出たアンはベッドの隅で壁に背を付けこちらを見ている。
「アン」
びくりと細い肩が揺れた。
にじり寄ると、いやいやと言うように首を振った。
「もう何もしねぇよ」
ぐいと手を引っ張ると、簡単にこちらに倒れ込んで来た。
そのままその細い身体をこれでもかというほど抱きしめる。
「好きだ、好きなんだ、アン」
お前これであたしも、とか言ったらぶん殴るぜと言うと、こくりと頷きが帰ってきた。
オレたちの妹は、いつからこんなに女になったんだろう。
「おれが嫌いになったか?」
恐る恐る尋ねると、ゆっくりと背中に腕が回された。
その手がやわやわと背を撫でる。
「嫌いになんて、なれないよ」
アンの首元に顔を埋め、そっかと呟く。
顔をあげてアンと目を合わせると、その目には涙がにじんでいた。
なにが優しいお兄ちゃんだ。
とんだ狼じゃねぇか。
ぐいとその水滴を拭ってやり、ベッドから降りる。
この部屋に持ってきていた雑誌を手に取りドアノブに手をかけた。
「サッチ」
背を向けたまま、オレは部屋を後にした。
聞こえないふりなんて子供染みたこと、
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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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