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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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小さく島影が見えてきた頃から、アンは船べりにしがみついて、ショーが始まるのを待つ子供のような顔でそれを見つめていた。
どんと船は大きく揺れて、島の裏海岸に接岸する。
一斉に大勢の男たちが動き出し、タラップをかけ錨を下ろし、と自分たちの仕事を遂行していく。
遊びにきたわけではなく、とはいえ遊ぶなというのも海賊には無理な話で、全員どこか浮き足立っている。
アンも一日目は仕事がある。
非番のクルーが勇み足で街へ降り立っていくのを、そわそわしながら眺めていた。
 
そして待ちに待った翌日、アンは船べりの上に立ち上がって、大きく叫んだ。
 
 
「しっまーーっ!!」
「るせっ」
「…耳元で叫ぶなよい」



ぴょいと船縁から陸へと降り立つと、両脇にマルコとサッチも降りてくる。
アンはきっとマルコを横目でにらんだ。


「マルコ!昨日大変だったんだからねこのヤロウ!」
「へぇそうかい」
「昨日ってアン、二番隊は武器庫の整理だけだったろ?」


マルコはまったく気にした風もなくアンの話を聞き流すので、それも気に入らない。
あぁマルコのそっけない顔も、などと思うのはきりがないのでやめておく。
 
一昨日言い渡された仕事はサッチの言うとおり武器庫の整理、調達等。
それが終われば後は自由だと言われて素直に喜んでいたのに。
昨日の朝、じゃあ頼んだよいとマルコに渡された一枚の紙切れ。
銃が30丁、剣が10本、短剣30本、火薬が150キロ、その他まだまだ続くといったような紙。
まさかと見上げたその顔は、おなじみのニヒルな笑いを浮かべていて。


「それ調達したら全武器庫の片付け一通り、頼んだよい」
「ぜっ…全部!?二番倉庫だけじゃなくて!?」
「あたりめぇだろい、そもそもなんで今日ログが示していないこの島に立ち寄ったのかわかってんだろうねい」
「うぁ…あたしが冷蔵庫食い荒らしたから…」
「わかってんなら四の五の言わずにやるこった」


ほら行けと追い払われたアンはすごすごと甲板に戻り、二番隊を召集。
本日の仕事を言い渡すと、予想通り烈火の如き非難を浴びた。
そういうわけで、二番隊は昨日島じゅうの武器屋を駆けずり回り、埃臭さが漂うそこで一日を過ごすはめになったアンは鬱憤がたまっていた。


「ああ、昨日のせいで肩ごりごりする」
「オレが揉んでやろう」
「いいサッチはセクハラだから」


どこでそんな言葉覚えたんだ!?と歎くサッチを後ろ目に、あたしたちは街へと歩きだす。
昼前の街は明るく喧騒に溢れていて、活気あって見ごたえがある。
両脇の強面に挟まれて、とにかくいっぱい食べるのみ、と意気込んだ。
 
 

 
 
「あ!ねえアレなにかな」
「特産品?」
「いいにおい」



出店が立ち並ぶ通りはまるで祭りだ。
今日ってなんかの祭り?と街の人間に尋ねたが、いや、毎日こんなもんだと笑われた。
アンはふらふらとにおいの源泉に寄っていく。
店の初老の女性が愛想よく笑う。
鉄板の上で、こんがりと香ばしいにおいを醸しながら焼けているパンを見下ろして、アンは「これ中なに入ってんの!?」と歓喜の声を上げた。


「この島特産の牛肉だよ」



パンはうちの特製さ、と言われ、アンの緩んだ口元からよだれがこぼれそうなのをサッチが指摘した。
うまそうだねいとマルコが横から顔を覗かせる。


「おばちゃんっ、4つちょーだい」


はいよと準備するおばちゃんの手際を見つつ、自然とアンの足元は浮足立っている。
サッチが口をはさんだ。


「なんで4つ?」
「マルコとサッチとあたしとあたし!」
「…なるほど」


はいと手渡して貰ったそれに払うお金を、ズボンのポケットから引っ張り出していると、まいどー、とおばちゃんの明るい声。
顔をあげると、釣銭を受け取るマルコの無表情が見えた。


「わ、マルコあたし今日はちゃんとお金持ってる!」
「別にこれくらいいいよい」


早く受け取れよい、と女性の差しだすパンを顎で指し示す。
アンはにやっと笑い返して手を伸ばした。


「いいねぇ優しいお兄ちゃんたちで」


女性はほのぼのと3人を見渡した。
サッチが「だろーっ!?オレってばまったくいいお兄ちゃん!」と一人悶える。
サッチが買ってくれたわけではない。



「行くよい」


背を向けたマルコの背中を追いかけて、アンはまだ温かいそれに噛り付いた。






…しまった。非常にしまった。
ついふらふらとあっちやこっちに目を奪われているうちに、マルコたちと逸れてしまった。
しかもどんどん人通りも店も少なくなっていく。
木や茂みのほうが多くなってきた。
あたりは薄暗く、道もどっちがどっちだかわからない。
島の半分が山になっていると確か昨日航海士が行っていた。ここはすっかり、山の麓なんだろう。
背の高い木々が西日を遮って、あたりは薄暗い。
不気味な鳥の鳴き声が甲高く響いた。


早く合流しないと、せっかく夜は飲もうと言っていたのに。
焦るほど道もわからなくなり、日の傾きは進んでいく。
嫌な汗が肌を伝う。


アンはとりあえず坂を下れば街だろうと踏んで、微かな勾配を下っていくことにした。
おっかしいな、どこで迷ったんだろうと頭をひねりながら足を動かす。
ふと背後、そう近いわけではない背後に人の気を感じて振り返った。
同時に後ろでジャリと砂が鳴った。
 
 


舐めまわすようにアンの体をつま先からてっぺんまで見る、ヘビのようないくつもの目に囲まれて、アンは肩をすくめることも首を縮めることもなかった。
ただ、ああ鬱陶しいことになりそうな気がすると、ぼんやり思う。
ねぇちゃん迷ったのか、とねっとりとした声が尋ねた。


「うん、迷子」
「そうか、じゃあ送ってってやるよ」


その言葉に、後ろの男たちが顔を歪めて笑う。
あたしはふるりと首を振った。


「いい、帰る」
「んなこと言って、道わかんねぇんだろ?」
「じゃあ教えてよ」
「帰るより、」


オレたちに楽しいこと教えてくれよ、と男はアンの細い腰に伸びた。
その手が触れるか触れないかの寸でのところで、アンの拳があやまたず男の顔にめり込んだ。


「触んな」



ぐしゃりと崩れ倒れる男にそう吐き捨てる。
一瞬呆気にとられた男たちは、たじろぐように一歩下がったものの、次の瞬間には腰のサーベルを抜いた。
薄暗い夕方の空気の中で冷たく光る。
だから上着は嫌いなんだ、とため息をつきながらアンはその手に炎をともした。
 
 



数人が火の付いた服をそのままに逃げるように山を下って行くのを、アンは黙って見送った。
しゅう、と人が焼けた独特の臭いの中火が収まる。
自ら転んで気絶した者もいれば、顔を焼かれた痛みに悶える者もいたが、とにかく残った男たちも既に戦える状態ではなく地面に転がっていた。


「あ、もう空が」


見上げた空は、ずいぶん紺色が濃くなってきた。
無駄な時間だったと倒れる男を跨いだとき、目の端できらりと銀が光った。

刃。
最後の力とでも言わんばかりに、膝立ちの男がそれを振り下ろした。
ひょいと避けるには近すぎる、しかし飛んで避けるのは面倒だ。
どうせ刃物じゃ切れない体なのだから。
一息にそう考えて、アンはかまわず歩を進めた。
ざくりと肉の切れる音が振動で伝わった。


「え」


じんと痺れが左の足元から駆け上り、一瞬で燃えるような熱が灯った。
男がニヤリと笑う。
海楼石だ。
 
 
「クッソ」
 
 
アンは反対の足で、男の頭を踏みつぶした。
頭蓋が固い地面にぶつかる。
男はその衝撃で今度こそ完全に気を失ったが、アンは傷ついた足を軸にしたためよろりと左にふらついた。

痛い。切り傷なんて久しぶりだ。
男が握る刃に触れると、へにょんと力が抜けた。
なんで山賊が、なんて思いながらもどんどん熱がそこに集まってくる。


「かっこわる…」


隊員には絶対見られたくない姿だ。
自分の血を見るのは久しぶりだった。
左太ももの外側から膝の側面を伝い、後ろのまわってふくらはぎの裏のふくらみを赤い筋が辿っていく。
汗よりも濃い液体が肌を伝う感覚にぞっとした。
止血ってどうやってするんだっけ? とアンはとりあえずその場に座り込んだ。



「アン!」


座った矢先、遥か上空から聞こえてきた声に、弾かれたように顔を上げた。
空の色より数段鮮やかな青が揺れている。


「…マル、コ」


ばさっと羽音をさせ降り立ったマルコは座り込むアンを見下ろし息をついた。
深い眉間のしわが影を作る。
これはげんこつがくる、そう察しぎゅっと目をつむったが、なかなかいつもの衝撃がやってこなかった。
そっと目を開けると、目の前にはマルコの顔が。


「心配したよい」


怒るのでもなく小言を言うのでもなく、心底心配していたのだと、その声を聞くだけでわかった。
哀しくはないのに、ほろりと涙が零れる。
泣くなよいと無骨な指先が頬を拭う。
アンは泣くまいと唇を噛み締めた。


「ああ、怪我してんのかい」


アンの足に目をやったマルコは、それからちらりと倒れ伏す山賊たちを流し見る。


「ごめん」
「何謝ってんだい、ほら乗れ」


マルコは背を向けた。
アンは鼻をすすって、その首にしがみついた。


 

 

ボボボッとアンの炎とは質の違うそれが二人を纏う。
ひゅんと飛び上がった空はもう真っ暗に近かった。


あ、海が見える。
呟くと、島だからと当たり前の答えが返ってきた。
あの小さな粒はモビーかな。
そうだろうねい、と律儀に答えてくれる。
水平線近くだけが淡く紫がかり、ぼんやりと港を照らす。


「探して…くれてたの?」
「ん、ああ、サッチは街ん中探してるよい。オレはお前の炎が上から見えたんでねい」



ぎゅっとマルコの首に抱き着くと、マルコは窮屈そうに身をよじったが何も言わなかった。
 
迎えに来てくれてありがとうと、言いそびれてしまった。
代わりに、ここ最近ずっと、アンをいっぱいにしている感情が喉元までせりあがる。
マルコに出会って気付かされるまで知らなかったその感情は、いいことよりも面倒なことの方が多かった。
ふわりとアンをしあわせにしたかと思えば、まっさかさまに突き落として暗闇に一人ぼっちにする。
それでも手放せないのは、とても大事なものだと自分がわかっているのだろう。
それともマルコだからかな、と温かい羽根を握る。
 

「マルコ、すき」


ほろりと零れたそれに、慌てて口をつぐむ。
しかし言ってしまったものは無かったことになんてならないのはわかっている。

言わないと決めたのに。
早くも自ら打ち砕いた決心に嫌気がさして、ため息が漏れないようギュッと唇をかみしめた。



「…知ってるよい」


帰ってきた、予想外の返事。
淡泊で、相変わらずなそれ。
でも、はじめて、ちゃんと聞いてもらえた気がした。




拍手[35回]

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ふらりとオレの部屋に立ち寄ったのは、最近できた新しい弟。
弱々しい顔付きで部屋のドアを開けたのだった。



プライバシーは守りましょう?



「ん、エースか珍しいな」

いや珍しいのはこうしてデスクワークをこなしているオレか。
だってさすがにそろそろこの紙切れださねーと、あの鳥がうるせーんだ。

くるりと椅子を回して振り返ったオレは、部屋の入口で立ち往生するエースを手招きベッドへ座らせた。

「どーした?」

俯き加減のエースの言葉を待つ。
エースは躊躇いながら、口を開いては閉じ、オレを見上げては目を逸らす。

「サッチに相談してみ」

促すと、決心したのか奴は口を開いた。

「…このまえ、さ」
「うん?」
「マルコの、部屋に行ったんだけど」
「うんうん」
「…あったんだ」
「何が」
「…何って、あれだよ、あれ」

察しろよと言わんばかりの目でオレを見上げる末っ子に、オレは頭を捻った。
あれ、とは。
マルコの部屋にあり、こいつがこうまで動揺するもの。
あ、あれか。
ぽんと手を打つ。

「わかった、あれだろ?その、いろいろ、写真が」
「そう!それ」


なるほど、大人の本な。
こいつ17だっけ?17でこうまで動揺するもんか?オレんときどうだったっけ?

「…枕の下に、入ってて、びっくりした」

ぽつりと呟くその姿にきゅううんと胸を掴まれたおっさん(そうオレ)は、エースの頭をがしがしと撫でた。

「かわぁーいいなあお前は。そんくらいみんなしてるって」
「みっ、みんな!?」

驚きに目を丸める弟。
ここはいっちょオレが大人の階段を上らせてやろうじゃないの。

「ああ、まあマルコもあんな顔して男だし。鳥だけど」
「おっ、男はみんな…してるのか」
「そりゃそうじゃね?見たり集めたりすんだろ」
「さっ…サッチも?」
「まあねー」

そうかそうなのかと真面目な顔つきのエース。
じゃあ行こうぜとオレは立ち上がった。

「え、どこに」
「マルコの部屋」
「な、なにすんだよ」
「ソレ、見に行こうぜ」

まじで、と眉間にシワを寄せるエースに苦笑しつつ立ち上がらせた。





マルコの部屋に赴く道中、お前ホントに見たことねぇのと聞いてみたら、ねぇよあるわけねぇだろ!!と全否定された。
なんなんだこの純情ボーイめ。


マルコは今偵察に出ている。
いつ帰るかは知らないがまあしばらくは大丈夫だろう。
オレたちは主のいない部屋のドアをあけた。

相変わらず殺風景だが片付いた部屋だ。
飲みかけのコーヒーカップとか、開いたままの資料とかは一切ない。
こいつペン入れとか眼鏡とかの位置決めててズレたらこまめに直すとかしてんじゃねぇのと考え、げぇってなった。

問題のベッドに近付く。

「枕の、下か」
「う、ん」

ごくりとエースの喉仏が動いた。

妙にゆっくりな動作で、枕へと手を伸ばしたその時、今1番聞きたくない声が。



「なにしてんだい」



ばっと振り返った先には、不機嫌を形にしたようなマルコ。

「おっ、おかえりマルコ」
「ああただいま、じゃなくてなんでここにいるんだい、こそこそと」

エースは固まってしまい、先程からぴくりともしない。
仕方ないここはマルコに説明して3人で楽しもう。

「いや、エースがさあ、マルコの枕の下にいーもん入ってるっつーから」

あ、エースは驚いてただけだったんだけどさと一応庇っておく。

「枕の、下?」


マルコの目がすいと細まった。
だが次の瞬間がらっと顔色が変わり、奴の顔から汗が吹き出た。

「だからよ、ちょっと見にきたわけよ」

いいだろ?と枕に手を伸ばす。
ちょ、待てよい!と焦る声。
んだよらしくねぇな、と苦笑しながら枕をベッドからひったくった。
マルコのああぁ…ょぃ、という溜息が聞こえた。



けばけばしい色のそれを想像していたオレは、ばらばらと散在するそれに目を丸める。

「なに、これ」

写真と言えば、写真だ。
だが写るのは、
オヤジ、オヤジ、オヤジオヤジオヤジオヤジ。



そこはオヤジで溢れていた。











(見られるとは不覚だよい…)
(いや、つーかエース紛らわしい言い方すんなよ!察せるかこんなの!)
(…でもサッチも持ってんだろ?)
(持ってねぇよ!)


拍手[9回]

 
うと、と船を漕ぐ。
ビスタが、そろそろ眠るといいとアンを離した。
アンの背中に頬を寄せるハルタがふわあと可愛らしい欠伸をする。
つられてアンも欠伸した。


 

 

ビスタの部屋から自分の部屋へと階段を下りて、角を二回曲がる。
アンの部屋へとつながる最後の角を曲がったとき、ビスタとぶつかったときとまったく同じ光景で人影に出くわした。
 

「っと」


 
悪い、と断って顔を見上げたアンは、その人物に仰天して目を丸めた。
マルコの細い目にも、少なからず驚きが滲んでいる。
目の前に現れた身体に、思わず反射で抱き着こうと手が伸びた。
 
 
「おい」
 
 
マルコが嫌そうな声を出す。
手が止まった。
めずらしく自制の効いたアンの行動に、マルコが訝しげに目を細めた。
ついさっきあんなにしんみりしただろうが、とアンは自分を叱咤する。
なんでこんなとこにいるの、とつとめて何でもないように声をかけた。



「お前の部屋に月末提出の書類、置いておいたよい」
「げぇ」
「つーか部屋に鍵くらいかけろ」
 
 
鍵かけたらマルコが入ってこられないだろ、と冗談じみた口調で言えば、入るか阿呆といつもの返事が返ってくる。
 

「あー、ナースたちとのは、終わったのかよい」
「あ、うん。ビスタのとこ行ってた」
「ビスタ?」
「紅茶飲んでて」
「ああ、よい」


適当な相槌を打ったマルコは、ふと首筋を摩る手を止めてアンを見下ろした。
その表情に、アンは既視感を覚えた。


「なんか、あったのかい」



細い目の隙間から、微かに優しい光が届く。
ビスタやハルタと同じ顔をする。
なんかって、あんたのことだよなんて言えるはずもなく、別に何もと首を振った。


「そうかい」



ならいい、と。マルコはふっと口元を緩めた。
笑い返してその脇を通り過ぎる。
マルコが背を向け歩き出した音を背中で聞いた。

きゅううと、その音を聞いて、言いようのない締め付け感に襲われる。
それは空腹感に似ていると、ぼんやり思った。






「アン隊長ーっ!起きろーっ!!隊長会議っすよーっ!」



どどどど、と激しくドアを叩かれる。
うるっさいなと悪態づいて布団をかぶりなおした。



「…あと2時間…」
「なげぇよ!!」


ドアを壊す勢いで隊員はドアを叩き続ける。
ああもううるさい!とアンは布団を跳ね飛ばして上体を起こした。


「たーいちょー!起きましたかコノヤロー!」
「起きた起きた!」
「よし」



満足げな足音を聞きながら時計に目をやると、まだまだいつも起きる時間にはほど遠い。



「なんだよまだ早いじゃん…あ、会議か」



ぼりぼりと腹を掻きながらベッドから下りる。
遅刻でマルコからげんこつを喰らうのはごめんだ。
枕元のテンガロンをひったくるように掴んで部屋を出た。

会議室にひょこりと顔を出すと、強面の顔がずらりと並んで圧巻の雰囲気である。
しかしみな一様に、アンを見ると表情を緩めておはようという。
挨拶を返しつつ、アンは自分の隣の席がまだ空席であるのに気付いた。


「あれ、マルコまだ?あたしセーフ?」
「ああ、マルコがこねぇんだ。あいつに限って忘れるわけねぇと思うんだが」


寝坊か?とあちこちから揶愉が飛ぶ。ケラケラと笑いが起こるが、すぐにマルコは姿を現した。


「悪い、遅れたよい」
 

マルコはぐしゃぐしゃの書類をひっつかんだまま席へ座ると、ふうと息をついた。



「マルコ寝坊?」
「…いや、よい」
「考え事でもして夜更かししたんですかマルコさん」



サッチがからかいまじりにそう言うと、ぎんと睨みながらも決まり悪そうに頭を掻いた。




始まった会議の内容は、明日の朝島に着くということ。
普通の街がある島だが、面倒なのは山賊がその街を闊歩しているということ。
いつも通り、その島での各隊の動きを割り振られたのだが、マルコが遅れてくれたせいで怒られずに済んだアンは見張りを免れ、一日目の武器の整理が終われば自由だと言い渡された。
島への上陸というのは、意味もなく胸が踊る。
いくら海が好きだとはいえ、オカも恋しい。
 
 
「じゃあ各自、仕事は隊の中で割り振ってくれよい。以上」
 
 
マルコが締めると、隊長たちはぱらぱらと席を立ち始めた。
アンは書類を手元にかき集めて揃えながら、美味しいものの多い島だといいなぁと思いを巡らす。
季節はなんだと言っていたっけ、とすっかり意識は寄港へ飛んでいる矢先、頭の上にぽんと重みが乗った。
上から声が降ってきた。



「アン明後日自由だろ?オレとマルコも仕事ねぇから一緒に飲みにいこうぜ」
「ほんと!?やった!」
 
 
目を輝かせて頭を反らせると、頭上でサッチがにっと歯を見せて笑う。
 
 
「マルコも既に了承済み」
 
 
サッチは親指を立てて、わざとらしくアンにウインクを飛ばす。
アンの親指もつられて立ちかけたが、不意に思いだした昨夜の出来事に邪魔をされて、机の上で上がった手は中途半端に空中で止まった。
あたしの心はあれきしで折れてしまったの?と自分に問いかける。
返事のない呼びかけや答えのない質問は大嫌いだ。
 
サッチがアンの顔を覗き込み、行くだろ?と返事を促す。
曖昧に頷くと、どうしたんだよと頬をつねられた。
いひゃいよとその手を掴む。
 

「行くけどさ」
「けどなんだよ」
「マルコかぁ…」


 
思わず渦中の人物の名を口に出していた。
マルコ?とサッチは尋ねるが、思い当たる節があるのか、考え込むようにアンの頬を離した手でサッチは自分の頬を掻くのが見えた。
 
振り向かないマルコの背中ばかりを追いかけて、なんになるというの、と声が聞こえた。
あたしはどうしたいの? と問いかけたアンに対してやっと帰ってきた自分の声だ。
アンの頭上で髭に手をやるサッチは、アンをけしかけた張本人である。
サッチはどうして、あたしがマルコのことをすきだと分かったの。
自分でも気づかないことをどうして分かったの。
そもそもどうしてマルコなの。


「諦めんの?」
「あき…?」


 
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
サッチの声を反芻して、反芻して、3回目でやっと意味を汲み取る。
諦めるとは、つまり、マルコがアンのことを好きになるわけないという前提のもとに、マルコを好きでいることをやめるということだ。
 
やめることなんてできるの? とまた自分に問いかける。
サッチがこの気持ちを教えてくれたのに、それを崩す選択肢もあるんだよと教えるのもまたサッチだ。


「わかんない」
 
 
口にしてから、同じことを昨日も言った気がすると思った。
 
 
「考えることも大事だぜ、アンちゃんよ」



珍しくまじめな顔つきで、サッチがアンの顔を覗き込む。
アンは頭を反らせてサッチを見上げたまま、そうだねと言った。
考えなければならない。
あたしが、あたしの、この気持ちを。


サッチは再びアンの黒髪を掻き交ぜた。
額にかかる前髪を後ろに流すように撫でる。
つやりとしたアンの額の上を、サッチの手が滑る。
跳ねた毛先が太い指に絡まるのが心地いい。
大人しく撫でられて、そうか、これが潮時か、と気づいた。


「よし」



がたんっと音を立て立ち上がると、サッチは驚いて手を引いた。


 
「考えはまとまりましたか、アンさん」
「うん。これをもって最後だ」
 
 
最後? とサッチが眉を寄せる。
わけがわからないとその目が言う。
 
 
「最後って、何」
「マルコへの突撃」



まじで、と音にならないサッチの声が紡がれる。
アンはくるりとまわってサッチに向かい合った。



「たとえばさ、アイスがあるとするだろ」
「アイス? は?」
「アイスがあるの、サッチが作ったヤツ、あたしがもらうの」
「お、おう」
 
 
サッチは呑み込みが早い。わからないながらも相槌をくれる。
アンは話を続けた。
 
 
「サッチが作った牛乳のアイス。すぐできるヤツ。でも一晩凍ってて、すごく固いの。あたしはスプーンで思いっきり突っつくんだけど、削れない」
「たまにあるな」
「でしょ。あたしはめんどくさいとフォークを刺して噛り付いたりもするけど、今回はそれはナシ。頑張って削るの」
「うん」
「溶けるのを待てば食べられるのに、あたしがガツガツつつくから、アイスは滑ってなかなか削れなかったりするじゃん」
「おう」
「今、そんな感じ」
 
 
なるほど、とは言ってくれなかった。
わかったようなわからないような、とサッチは腕を組んで考え込む。
 
 
「…えーと、つまり、マルコがその固ぇアイスで、つつく行為がアンの押しであって」
「そうそう」
 
 
わかってるじゃん、と頷くと、サッチはひらめいた顔でアンを見下ろした。
 
 
「じゃあ、マルコが溶けるのを待つってわけか」
「…一生溶けないかもね」
 
 
なんだよ、とサッチが鼻白んだ声を出す。
 

「じゃあ今の話はなんだったんだよ」
 

自分でもわからない、とアンは軽く肩をすくめた。
アイスの比喩はなかったな、と思ったとき、出ていったはずのマルコが会議室に戻ってきた。
アンとサッチの姿を捉えて、なんだお前らまだいたのかいと気だるげに言う。
サッチがちらりとアンを見下ろした。


最後なんだよ、とサッチに小さく呟いた。
 
 
「隊員に掃除させるからよい、ついでだ、その辺の椅子上にあげといてくれ」
 
 
マルコは会議室の様子を見に来ただけのようで、そう言ってすぐに背を向けた。
なんとも言えぬ顔するサッチの横で、アンは床を蹴る。
マルコの広い背中めがけて走りだす。
マルコはアンの気配に気がついて、顔をしかめて、さっと避けるに違いなかった。
からぶったアンの身体は何もない宙を抱きしめて、ああ避けられたと悔しがるはずだった。
10メートル足らずのその距離はアンの足であっという間に埋まり、気配を察して気が付いたマルコの少し驚いた顔が一瞬見えた。
 
どすんとぶつかる。


 
「…なんだよい」
 
 
あれ? と顔を上げた。
アンの腕はしっかりと、マルコの腹に回さされている。
マルコは避けなかった。


「あれ?」


 
声にも出して尋ねる。
マルコが変わらず眠たそうな目をして、アンを見下ろしていた。



「避けないの?」
「…ぼーっとしてたよい」



ああなんだ、それだけか。
ぐりっとマルコの腕に額を擦り付けると、いつものように手で押し返された。
最後だからとここぞとばかりにマルコの匂いを目一杯吸い込む。
煙草臭さにむせると、失礼なヤツだといやがる声がした。


これは理屈じゃない、と思った。
そうだ、あたしは難しいことや考えることが苦手なのに、どうして理解しようと頑張っていたんだろうと、質問が一周回って回答を持ってやってきた。
 
マルコがたまらなく好きだ。
 
この人の顔も体も髪も爪も声も口調も息遣いさえ、全部を取り込んでしまいたいくらい好きなのだ。
そうだ、好きという気持ちは欲求だ。
マルコが欲しいんだよ、と声には出さずに呟く。
 

「ねぇマルコ」


いい加減離れろ、とアンの腕に手をかけていたマルコに負けないよう、一瞬腕の力を強くした。
溶けるのを待つ気はないが、つつくのはやめだ。


「すきだよ」
 
 
なるようにしかならない。
アンを動かすのは頭ではない。
全ては、アンの心がわかっている。
 

拍手[21回]

がしゃんとあちこちでジョッキがぶつかる。約1600人に9人加わったところでたいした変わりはないのだが、まだ日も暮れきっていないというのに盛り上がりは常にピークのままだ。
エースとルフィは肩を組んだまま、多くの白ひげクルーに囲まれたまま昔話に勤しんでいた。

「でよぉ、ルフィお前オレが狩った猪一人で食っちまって」
「でもあんときゃエースが」
「「ぐぅ」」
「寝るんかいっ!!」
寝たり食ったりと忙しい兄弟を半ば呆れながらも眺める白ひげクルーたち。

そんな様子を遠くで見遣りながら、ナミとロビンは頬を緩めた。

「あれがルフィのお兄さん?そっくりね」
「でしょ」

くすくすと肩を揺らしていると、その肩を無骨な掌に包まれた。

「おじょーちゃんたち女の子同士で飲んでねぇでオレらの相手しましょー」

「…誰?」

ふふんと笑った男はリーゼントを揺らし、何故か得意げな顔をした。

「オレは4番隊隊長サッチ兄さんだよーっ。ちっこい海賊団のくせにかわいこちゃんばっかり連れちゃって、あんたのキャプテンもやるね」

「そりゃどーも」

べたべたと肩やら腰やらに触れてくるしつこさに辟易しつつ、酒のせいか振り払う気にもならないナミは軽くあしらう。横目でロビンを見ると、ロビンはなんともおかしな服装の綺麗な男に声をかけられていた。
隣に腰掛けた男はジョッキを傾けにまりと笑う。
「ナースのねぇちゃんとはまた一味違うあんたみたいなのも、いいなあ、若いし」
「ふふ、とかいって色気たっぷりのナースに毎日引っ掛かってんでしょ」
「よくおわかりで」

くっと笑いあっていたとき、だだだだだっと物凄い足音がしたかと思うと、ひゅっと風の音ともにサッチが飛んでいった。酒樽に突っ込んだサッチは蹴られた背中をさすりながら身をおこす。
「って~、テメェ、」
「ナミさんに気安く触んじゃねぇ」

料理中だったのか腕まくりもそのままのサンジは、驚きに目を丸めるナミの腰を引き寄せた。
へぇ、とサッチは目を細める。

「あんたの女か」
「そうだ」
「ちょっ…!」

慌ててサンジを見上げたが、腰を締め付ける力が強まるだけだった。

「手ェだしてんじゃねぇよ、おっさん」
「かっちーん!ちょっとかわいこちゃん手に入れたからって調子乗ってんじゃねぇぞ、ガキ」
「んだとォ、古風な髪型しやがって」
「そっちこそ器用に眉毛なんて巻いてんじゃねぇ」


ぐるると唸りあう二人は頭を付き合わせ睨みあう。めんどくさくなったナミはサンジに抱え込まれたまま酒に口をつけた。


「…あんた、コックか」
「そうだ文句あっかクソリーゼント」
「…ここァ正々堂々料理勝負で手を打とうじゃねぇか」
「…なんの勝負だよ…だがその話、乗った」
「行くぜ!」

一睨みを最後にそれぞれのキッチンへと二人は駆け込んだ。サンジのほうは、もちろんナミに断りを入れ額にキスも忘れない。
「…なんなのよ、もう…」









「あんたみたいなのもいるんだな」
いまいちこの騒がしさに馴染まない男が、ロビンの隣に腰を下ろした。
「ここは興味が尽きなくていいわ」
ふふと肩を揺らすと、イゾウは口端を上げながら猪口に口をつけた。
「あんたニコ・ロビンだろ」
突然の名指しに思わず顔を向けると、イゾウは少しだけ目を合わせた。
「別にたいして知ってるわけじゃねぇよ。ただオレも歴史好きなもんでね」
「…そう」
「騒々しいのは、好きじゃないかい?」
ロビンは少し考え、首を横に振った。
「似合わないとは言われるけど」
「はっ、オレもだ」
少しの間があって、くっと二人から笑いが漏れる。ふわりと酒が香った。

「…で、あのたぬきはペットか」
「いいえ、船医さんよ。それにたぬきじゃなくてトナカイ」
「…へぇ、世の中わかんないね」

そういうチョッパーはというと、白ひげに付いていたナースたちに触られ抱きしめられ、されたい放題で目を回している。男達に羨ましげな目を向けられたことは言うまでもない。

甲板の先ではオーケストラが始まった。白ひげ海賊団の音楽家たちとブルックの共演に、宴のボルテージは天井を知らず上がり続ける。

ウソップとフランキーは白ひげ海賊団員と飲み比べ中らしいが、ウソップのほうはすでにへたっている。その傍でエースがウソップの火薬に火を付け暴発。悲痛な叫びとともに、フランキーの髪が焦げた。

グララララ、と豪快な笑い声が波の音と喧騒を掻き混ぜた。








「あんたがこの船の二番かい」
声に引かれてゾロが視線だけを送った先には、昼間ルフィが捕まえた鳥…いや、人間。
「はっ、さあな」
どす、と腰を下ろしたマルコはゾロの空いたグラスに酒を注いだ。わりぃな、とゾロが嬉しげに片眉を上げた。
「あんたもガキのくせによく飲むねい。…まぁあのねーちゃんも相当ザルだが」
そう言いマルコが目をやったのは、先程からサッチとサンジの料理対決に付き合わされてたまらないといったふうに酒を飲み続けるナミの姿。
「はっ、違いねぇ」
思わず笑いを漏らすと、ふっとマルコの眼光も柔らかくなる。二人でグラスを傾けぶつけると、かちんと軽い音がした。








「お隣りよろしいかな?」
コック二人の意味のない小競り合いに閉口していたナミに、男が丁寧に声をかけた。
「へ?あ、どーぞ」
その男ビスタは、ワインを注がれたグラスをナミに差し出した。それに口をつけると、甘露が口内に広がり思わず目元が綻ぶ。

「…ねぇ、この船の男って、みんなこんなふうなの?」
「というと?」
「ほら、女の子に優しいっていうか、甲斐性無しっていうか」
「いや、皆が皆といいわけではない。…まあ男所帯ゆえ、飢えてはいるが」
半ば苦笑しつつそう答えると、そうみたい、とナミも笑みを返した。

ところで、とビスタが甲板の中央を指差す。
「あれは放っておいていいのか?」
目をやった先には、ハート型の煙を吹きながらナースに言い寄るサンジの姿。
「ああ、いいのよいつもだから」
そう言い目を逸らすと、隣からふっと小さな笑いが漏れた。思わず顔をしかめる。

「…なによ」
「…男の嫉妬は醜いが、女性のそれはまた違う」
「…別に、」
「男というのは妬いてほしいものだ。なあサッチ?」
「ごもっとも」

突然後ろから聞こえた声にナミが振り向くと、サッチがにまりと口角を上げ立っている。
「選手交代だな」
そう言うとビスタは腰をあげ、マルコたちのほうへと歩いていった。ビスタがいた場所にサッチが腰を下ろす。

「…で、なんの話だっけ」
「もう終わったわ」
「はっ、冷たいのねおじょーちゃん」
サッチはちろりとサンジとナースに目をやると、にやりと笑みを浮かべた。
「…何笑ってるの、おじさん」
「ちょっ…!あのね、オレってば敏感なお年頃なんだからそういうこと言っちゃダメなんです!」

へーそう、と軽くあしらうナミにサッチは口をとがらしたが、すぐに口端を上げた。

「…おっさんを怒らせると怖いんだぜ」

ぐっとサッチの顔、というよりリーゼントが迫ってきたかと思うと、鎖骨のあたりに柔らかな感触。首元に酒臭さが漂った。

「ひゃっ…!」

何すんのよとげんこつを振り上げた瞬間、再び突風とともにサッチが姿を消した。否、飛んでいった。

座るナミの視界には、細く長い黒の足。

「テンメェ…!なんだ今のナミさんのやらしい声は!ナミさん!あの変態に何されたんだ!?」
「…何って」

がくがくと肩を揺すられ、サンジの額に薄く滲んだ汗を眺めた。
吹き飛んだサッチはなんとも不敵な笑みを浮かべ立ち上がる。

「へっ、自分はナースの姉ちゃん口説いてたくせに」
「んなっ、あれは」
「あれは?」

返事を待つナミを決まり悪そうに見て、くしゃりと頭を掻いた。

「…ナミさんが、見てたから」
「はあ?」
「…いい、恰好ワリィから。ごめんなさいオレが悪いです」

その場に足を折り、サンジはぺこりと頭を下げた。

「…なによ」
そうは言うものの、サンジが言わんとすることなどナミにも分かっている。
「…馬鹿ね」


「おっさん怒らせると怖いっつっただろ?」
いつの間にか二人の前に立っていたサッチは、くしゃりと両手で二人の髪を撫でた。
「ほんとね」
「けっ、男に撫でられるなんて気色ワリィ」

「まったくいいねぇ若いコは。いいもんみたぜこりゃ」

そう言いひらひらと手を降りながらその場を後にするサッチの背中を見送っていると、つと鎖骨に違和感。細く硬い指がそこを這っていた。

「…キス、された?」
「…そんなんじゃないわよ」
「…まったくあんたは」

次の瞬間には肩を掴まれがぶりとそこを噛まれた。

「ちょ」
「黙って」

ちくりと小さな痛みを感じ、最後にぺろりとひと舐めして顔が離れる。

「馬鹿!痕付けてどうすんのよ!」
「消毒、とマーキング」

へへ、と目を垂らすサンジに呆れた顔を見せると次は口を塞がれた。
遠くからの冷やかしといいなあ若いってなどという声を聞きながら、不承不承ながらナミは目を閉じる。酒の甘さとタバコの苦さが心地よかった。













真っ黒の海に月だけが浮かび、酔い潰れた男たちのいびきの大合唱が鳴り響く。
そんな中、ルフィがぱちりと目を覚ました。

「…肉…」

隣で口を開けて眠る兄を跨いでぺたぺたと甲板をさ迷っていると、向こうに大きな背中が見えた。
足音に気付いた白ひげは顔を向けた。

「おう、エースの弟。起きてたのか」
「…にく」
「グララララ、まだ喰う気かァ」

少し抑えた笑い声を上げると、肉探しを諦めたのか眠気に負けたのか、へたりとその場に座りこみこくりこくりと舟を漕ぐ。

「…エースの弟…」
「…んぅー?」
「…ガキのワリにゃあ、いいクルーじゃねェか」
「…ああー?当たり前だろ…オレの仲間だ…」

かくっと落ちるルフィの首を横目にグララと笑い、しばらく揺れる波間を眺める。


「…エースを、頼むぜ」
「…あー?…エースはおっさんの…仲間だ…ろ」
「…あァ…オレの、息子だ…」
「…?…」

次の拍子にがくりと頭が落ちたので、とんと肩を付いてやるとルフィは背中から甲板に倒れ込みそのままいびきをかきだした。





誰もが宴の熱に酔い、頬を赤らめ夢を見る。
その姿を、月だけが見ていた。







拍手[13回]

新世界のどこかの海で、麦わら海賊団と白ひげ海賊団がお目見えです。
本誌設定どこ吹く風で、エースはモビーにいます。そしてティーチはいません。いるかもしれませんが出しません。もちろんサッチは御存命です。

そんな無茶苦茶設定が許せる方のみどうぞ↓













「んぅ!いい日だわー!」

サニー号の甲板、芝生の上で目一杯伸びをしたナミは、その勢いのまま空を仰いだ。

「天候、気圧ともに安定。怖いくらい航海日和ね!」

ロビンはそんなナミを横目に、それはよかったわと頬を緩ませた。



空を割る宴




「うぉーっ!!!ウソップーー!!なんかでっっけぇの釣れたーっ」

「ぎゃーっ!!なんだそりゃーっ!!もはや魚じゃねェー!」

「ルフィすげぇーっ!」


少し離れたところでは子供組が釣りに勤しんでいる。どうも好調らしく、アクアリウムバーの水槽は様々な魚達で溢れていた。

「でかしたルフィ!今夜はその魚で宴だぜ」

サンジはゆるりと紫煙をくゆらせながら品定めるように魚の鱗を撫でた。


「ヨホホホホホ!では景気付けに一曲!」

そうブルックがバイオリンを掲げたとき、低く通る声が船じゅうに響き渡った。それはマストに設置されたスピーカーから。


「でけェ変な鳥が飛んでるぜ」

ゾロは眠そうにあくびを噛み殺し、少し遠くを旋回するような青い鳥を見上げ、そう告げた。


「うわ、おっきい鳥!」

「綺麗ね」

「青い鳥とは縁起がいいじゃねぇか!」

「食おう!あの鳥!ゴムゴムのー…」














一方、ここは世界一の海賊とその海賊船、モビーディック号。

「じゃあオヤジ、行ってくるよい」

「あァ、任せた」


とんと床を蹴ったのは一番隊隊長マルコ。
ぶわりと炎を纏う身体は颯爽と空へと駆け登る。
午後3時のこの時間、いつもの見回りだ。


(…いつもながら、なんにもないねい。)


広くどこまでも続く海を眼下にそろそろ戻ろうかと踵を返しかけたとき、ほんの小さなかけらがマルコの視界に留まった。


(…船、か)


高度を高く保ちながら近付くと、ずんと船は大きくなる。小型ではあるが…そこそこ立派な作りだ。
しかし何より重用なのは、そのメインマストで風にはためくジョリーロジャー。


(海賊船かい…)


面倒なことにならねばいいがと内心舌打ちし、少し高度を下げた。

麦藁帽子にドクロというこの出で立ち、見たことはないがどこかひっかかる。まあルーキーにはかわりないだろうが…麦わらに、海賊…麦わら帽子に、海賊…どこかで聞いた気が…

ぐるぐると思案していると、突如物凄いスピードで伸びてきた何か。

(しまっ…!)

後悔も遅く、ぐっと羽根を掴まれたマルコはその手らしきものが引き寄せるがまま、船へと堕ちていった。












「ルフィてめぇ今日冴えすぎだぜ畜生!あんなでけぇ鳥、丸焼きもいいが…小骨を取り除き弱火でトロトロになるまで赤ワインで煮込むっつーのもこれまた…」

「しししっ!美味そうだ!」


全員が上空を見上げ、落ちてくる鳥を見上げた。



「…え?」
「あ?」
「お?」
「…ひ、ひとーー!?」



どずんっと鈍い音で落ちて来た物体は、どう見ても、男、だった。
ぱちんっとルフィの腕が戻ると同時に体制を立て直した男はゆるりと立ち上がった。


「…やってくれるねい」


マルコは首筋を摩りながら船を見渡した。

(ガキばっかじゃねぇか)



「…てめぇどっかで見たことがあるな」

フランキーが考えあぐねるよう顎に手をやった。


「…不死鳥の、マルコ」

ロビンがぽつりと呟いた言葉に、皆が一様に首を傾げた。

「以前寄った島で手配書を見たわ。この人は…」

「じゃあてめぇっ、海賊かっ!?」


きんと一瞬にして空気が尖る。見張り台から降りて来たゾロが刀を鳴らし、サンジはタバコをくわえなおした。
その男、マルコは悠々と今後のことを考えていた。

(ここでやりあってもいいが…こいつらの発する空気、ただのルーキーってわけでも…ここァ一応報告に言ったほうがいいかねい)


「パイナップルのおっさん!」

「パッ…」

「あんたなんで鳥になれるんだ!?それとも今人間なだけなのか!?」


なんとも間の抜ける質問に、全員が肩の力を抜いた。
ルフィは目を輝かせ、なおもなあなあと話し掛ける。

「あのねぇ、あんた…」



(…ん、この感じ…なんかどこかで…)


そこまで考え、マルコの脳内で散乱していた考えが一気に集結してひとつになった。

この輝かんばかりの瞳、人懐っこい笑い方、そして麦わら帽子。間違いない。


「…おめぇさん…麦わらのルフィかい?エースの弟の」

「エースを知ってんのか!?」

「…オレァ白ひげ海賊団隊長、マルコだよい」

「おぉ!オレは麦わら海賊団船長、ルフィだ!」

つられるようにして自己紹介したルフィの後ろで、ナミとウソップが絶叫した。


「しししし白ひげーーっ!?」

「そういやエースのやつ、そんなこと言ってたなあ」

ルフィはぽんと手を打ってから、再びマルコに向き直った。

「パイナップルのおっさん!」

「その呼び方やめろい」

「エースいるんだろ!?会わせてくれよ!」

「待てルフィ」

ゾロはルフィの首根っこを引っつかみ下がらせる。

「その前に、俺達ァ海賊だ。そっちに戦意はあるのか、ないのか」

「はんっ、戦意剥き出しの目でそりゃあないよい。まぁやってもいいが…あんたらの船が沈んでもいいならねい」

「…ああん?」

鋭い眼光がぶつかり、空気がぱちりと爆ぜる。チョッパーは肩をすぼめたが、ルフィは目を輝かせてマルコに向き直った。


「おっさん!オレら今日宴なんだよ!エース連れて来て、みんなでやろうぜ!」

「ちょっ…ルフィ!」

ナミが慌ててルフィの耳を極限まで伸ばす。

「あんったねぇ、勝手なことばっかり言って!うちの食費が持たないでしょ!」

その会話に、マルコはくっと笑いを漏らした。

「あー、まあ、この緑剣士以外は戦意がないのはよくわかったよい。とりあえずオレは船に戻る。今後のことは船長に相談だよい。…まああんたのことを喋っちゃ、あいつが黙ってねぇだろうがな」

あとあんた、とマルコはナミに視線をあわした。びくりとナミの肩が揺れ、慌ててルフィの背後に身を隠す。

「うちは1600人の大所帯なんでねい。しかもみんな宴好きときた。こっちのぶんはこっちで用意させるよい」

そう言い、ふっと鼻から息を抜くよう笑うと、マルコは再び身体を炎に包ませる。ルフィたちから歓声があがった。

「じゃ、船に戻るよい」


飛び上がった大きな鳥はふわりと数枚の燃える羽根を残して颯爽と、空へと舞い上った。その幻想的な様に全員がほうと息をつく。

「…いい男じゃない」
「んナミさんっ!?」

ナミがぽつりと零した言葉にサンジが涙を散らす。そんなやりとりを掻き消すように、ルフィが叫んだ。


「エースに、会えるーっ!!!!」












船に帰って一番に会ったのは、あろうことか渦中の人物、エースだった。また盗み食いでもして怒られたのか、頬は真っ赤に腫れ上がりエースの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。おそらくサッチの覇気入り愛の拳が炸裂したんだろう。

「あ、マルコおかえり」

「あ~あぁ、よい」

「?なんかあったか?」


おめぇの弟に会ったんだよい、なんて言ったらこいつは騒いで行くと言って聞かないはず。まずはオヤジへの報告が先だ。
そう結論付け、なんでもねぇとだけ言って船長室へと足を向けた。


オヤジに報告中、オヤジは至極楽しげに話を聞いていたが、『麦わらのルフィ』とそう口にした途端、ばたんと荒々しく戸が開いた。

「げっ」

「…ルフィが、いるのか」

エースは真摯な顔付きでマルコを見つめる。ああと頷くと、次の瞬間にはエースの瞳に輝きが増した。

(この顔、さっき見たよい…)

エースはぴょいっとオヤジの膝に乗り、その身体にしがみついた。

「オヤジ!お願いだ!ルフィに会わせてくれぇぇぇ」

「グララララ、おめぇの頼みと言われちゃあ、黙ってらんねぇなァ」

「じゃあオヤジ、船を寄せるのかよい」

「…そうだな、マルコ、準備頼む」

「…了解」

内心やっぱりと思いつつ、オレは各隊長を召集するために踵を返した。後ろではエースの叫びとオヤジの笑い事が重なり、船を揺らした。

「ルフィに、会えるーっ!!!!」










ずんずんと近付く船の頭には、白い鯨があしらわれたモチーフ。

「…うぉ、やっぱ、でけぇな…」

ついに、サニー号に寄り添うように止められた船を見上げ、ウソップは感嘆の声をあげた。
ゾウとアリ、とまでは言わないが、相当の大きさのモビーディックは圧巻だ。
そのモビーディックから、ひょっこりとオレンジのテンガロンハットが覗いた。

「ルフィッ!」
「!エースッ!エースエースッ!!」

迷う事なくモビーディックに手を伸ばしゴムの反動で自らを飛ばす。ごぃんと音を立て、ルフィとエースの頭がぶつかった。しかし当人たちはそんなこと気にも留めず、再会の抱擁にあけくれていた。

「エーースーー!!」
「ルフィーーー!!」

頬を寄せ合い喜びを噛み締める兄弟の姿に、白ひげ海賊団の男たちは呆気にくれる。

(…これが、エースの、弟…)


「元気だったか、ルフィ!」
「あったりまえだろ!エースはなんで頬っぺた腫れてんだ?」
「…ああ、これは名誉の負傷だ」
「なんか知らねぇけどカッコイイな!エースは!」


弟の手間見栄を張ったエースに突っ込むのは酷な気がしてクルー達が黙っていると、ずんと大きな足音とともに船が揺れた。

「オヤジ!」

「グララララ、てめぇがエースの弟か…話は聞いてるぜェ」

「うほー、おっさんなんでそんなにでっけぇんだ?」

「すげぇだろ!オヤジはでかいんだ、なにもかも!」

「グララララ、テメェの船はオレにゃ小さすぎる。テメェの仲間とやらもこっちに連れてこねぇか」

いいのか!?と意気込むルフィにオヤジが頷くと、ルフィは呼んでくる!とサニー号へと戻っていった。
白ひげは今だ頬を緩めたままのエースを見下ろしその髪をぐしゃりと撫でると、クルーたちに向き直り、声を張り上げた。

「息子どもォ!!」


宴だ!!!




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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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足りん
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