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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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騒がしい話し声やイゾウのものと思われる笑い声は、3つ先の部屋の前まで聞こえていた。
ナースの姉さんたちの鬼のように長い爪がきらりとひかって、アンの腕を妖艶に絡め取って上質な酒を次々とあけていくという男らしい女子会はお開きになったのだ。
ほろ酔い気味の身体をふらつかせて、アンは思うままに廊下を歩いていた。
そして気付いたら1番隊の廊下にいた。
もはや癖になりつつあるその行為に、あららとひとりこぼす。
アンの足はマルコのほうへと磁石のように引き寄せられる。
 
寝る前に顔が見たい。
できることならマルコのベッドにもぐりこみたいが、引きずりおろされるのが目に見えているので無駄なことはしない。
どうやら数人で飲んでいるらしいかの部屋は、アンがおぼつかない足取りで歩み寄っていくにつれて、声は抑えられていった。
どうやら馬鹿馬鹿しい話は終わったらしい。
 
少し顔を出して、マルコに小言を食らう前におやすみとだけ言えばいい。
それだけならマルコだって、普通に、以前のように、少し笑っておやすみと言ってくれるだろう。
イゾウたちがいるのなら、彼らにも同時におやすみと言えるし言ってもらえる。
ちょうどいいや、と赤くほてった頬を緩めてアンは突き当りのマルコの部屋に近づいていった。
 
ノックの習慣はないので、すぐさまドアノブに手を伸ばす。
そこまでやってくると、中の話し声はよく聞こえた。
ドアに近い床に座って飲んでいるのかもしれない。
 
 
「いつまでもアンがお前しか見てねぇと思ってっと、後悔すっぞ」
 
 
指先はノブに触れたが、回る前に動きが止まった。
あたしの、話してる。
この声、サッチ?
そのあとマルコとサッチが一言二言交わすのが聞こえた。
話の話題が自分であるという情報がすぐさま頭に染みわたって、こそばゆいような感覚が走った瞬間、鮮明にマルコの声が聞こえた。
 
 
「オレがあいつに惚れるこたぁねェ」
 
 
うわ、というような声が出そうになった。
なんと、核心に近い。
 
ドアに伸ばした手を引っ込めて、アンはすぐさま背を向けて歩き出した。
まるで逃げるようだが、そんな自分の姿に構ってはいられない。
酔っ払いの足取りで歩いていたのが嘘のように、すたすたと歩いた。
階段に差し掛かる角を勢いよく曲がる。
不意に目の前に現れた壁に、アンはつんのめるようにして立ち止まった。
その壁も同じように急停止して、おっとと声を上げている。
ビスタだ。
逞しい胸筋の上にある顔を見上げると、ビスタは「おおアン」と顔を綻ばせた。
しかしすぐ、何かに気付いたように眉を寄せる。


「アン、どうした?」
 
 
なにが? と問うと、いや顔が、と心配げに覗きこまれる。
その言葉に促されるように顔に手を持って行き、自分の頬に触れた。
上気していてほのかに熱い。
それに反して気分は高揚しているとはいいがたい、むしろ妙に凪いでいた。
 

「ビスタ…あたし、」



口を開いたそのとき、階段を軽やかに昇ってくる足音が聞こえた。
小柄な姿がひょこりと顔を出す。


「ビスター!寝る前に本貸してって言っただろ…って、あれ、アン」



ハルタはアンの姿を捉えて、ビスタと同じように目を細めて笑った。
 
 
「アンも飲んでたの?」
「うん」
 
 
そ、と頷いたハルタは、ビスタに視線を移したが、二度見するようにアンにまた視線を戻した。


「アン、何かあった?」


ビスタと同じように窺い見るような視線で、アンより少し低いところにある丸い眼が見つめてくる。
別に何もと首を振った。
ビスタに何を言おうとしていたのかもう思いだせない。
ビスタがそれを忘れていてくれるのを祈った。
 

「何もって顔してないぞ」



子どもをたしなめるような大人の顔つきで、ビスタはアンの肩に触れた。
そのまま歩くよう促される。
ひとまず私の隊長室に行こうか、とビスタは優しい声を出した。


 
 



その部屋は整理が行き届いた小奇麗な部屋で、男の、それも海賊の部屋とは思い難い。
片付けてもすぐに物の居場所がわからなくなるあたしの部屋とは大違いだ。
バラの香りがするのはビスタの風呂上りの香りか、それとも部屋の香りか。
マルコの部屋も綺麗に整頓されてたなあと思いだしてふるりと身体が揺れた。



「ほら」
「ありがと」


 
差し出されたカップを両手で受け取る。
熱いぞ、ぞビスタはそっと手を離す。
紅茶から立ち上る蒸気が鼻の先を濡らした。
ビスタは自身の仕事用の机に腰掛け、アンとハルタは並んでベッドに腰掛けた。
こくりと一口紅茶を飲むと、熱さでじわりと喉がしびれる。



「この前寄港した島が旨い紅茶の産地でな。葉を多く買い過ぎてしまったんだ」



そう言いカップを傾けるビスタがにっと口端を上げるので、アンもつられるようにして笑う。
んん、オレ紅茶苦手だなあと、ハルタは茶色い液体を舐めながら呟いた。


「落ち着かないときや困ったときは、とりあえず温かいものを飲むといい。息をつくだけで何かと変わるものだ」



そうだね、とアンは笑みを浮かべた。
紅茶のカップを膝の上に置いて覗き込むと、頼りない自分の顔がぼやけて見える。
 

「…あたし、そんなに変な顔してた?」
「変っていうか、いつものアンじゃないから」



ハルタが紅茶のカップをテーブルに置き、遠ざけるように手で押しやった。
気に入らないらしい。
ビスタはかける言葉を捜しているように押し黙っていた。


 
「本当にたいしたことじゃないっていうか」
 
 
軽く、与太話をするような口調で先程のことを言えば、ビスタはうむと唸ったきり考え込むように腕を組み、ハルタはきょとんとどんぐりのような茶色い目をアンに向けた。
 
 
「でもさぁ、マルコっていつもそんなんだろ」
 
 
ビスタが咎めるようにハルタを見るが、確かにその通りなので、だよねとアンは微かに笑う。
 
そうなのだ。
ゼロ地点から突っ走り始めたこの思いは、届かないという見込みの上で始まったも同然なのだ。
そのくせ何をいまさら、と馬鹿馬鹿しさが充満する。


「アン、悲しいの?」



ハルタが窺うようにアンを見上げた。
『悲しい』か、とアンは自分の内側に問いかけた。
返事はない。
 

「わかんない」
 
 
簡潔すぎる答えに、ビスタが困ったように眉を下げた。
 
 
「あたしバカだしなぁ」
「自分のことをバカだというのは感心しないな」
 
 
怒ったような声に、少し驚きをにじませてビスタを見ると、ビスタは大きな手を揺らしてアンを手招いた。


 
「なに?」
 
 
座ったまま首をかしげても、ビスタはアンを手招くのをやめない。
なんだなんだとアンは腰を上げた。
ビスタに手招かれるままその大きな体の正面に立つと、椅子に座ったビスタの顔は少し目線より低いところにある。
 
突如、背後から衝撃がぶつかった。
 
 
「うおっ…!」
 
 
その衝撃に押されるまま、ビスタの肩にぶつかるように乗りかかる。
肩に手をかけて後ろを振り向くと、衝撃の正体はハルタだった。
ハルタはアンの腰に抱き着くように体を寄せて、俯いている。
 
 
「なに、ハル」
 
 
タ、と最後まで続く前に、ビスタの太い腕がアンとハルタを丸ごと抱え込むように抱き込んだ。
小さい子供をあやすように頭を撫でられる。
 
 
「…ビスタ?」
 
 
返事はない。
これは、きっと、慰められているんだと気付いた。
 
別に落ち込んでないのに、子ども扱いしないで、といつもならすぐさまあらわるはずの腹立たしさがすぐにせりあがってこない。
ということは、きっとそれなりに自分は傷ついていたのだと、ようやく気が付いた。
 
ぽすん、とビスタの肩に頬を預けた。
目を閉じる。
マルコの顔を思い出す。
涙も出ない。



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「そういえばお前さん、誕生日はいつなんだい?」

「…なんでだよ」

「なんでって、祝うために決まってんじゃねぇか!」





彼に世界一の愛と祝福を






サッチが何故か胸をはって偉そうにそう言い切ったが、オレは未だ訝しげな顔を隠せない。


「…なんで誕生日祝うんだよ」

「は?なんでって、そりゃあ、あれだ、生まれてきたこととか、産んでもらったこととか、感謝して……っていうのは聖者に任せといて、オレらはただ宴がしたいだけなんだけど」


同意見らしくマルコも一応頷いている。


…誕生日、なんて


「オレのは祝わなくていいよ」


顔を背けてそういうとサッチがまた口を開いたが、何も言葉は発されることなく閉じた。


マルコは思案するように顎に手をやってから、一言、

「じゃあいつなのかくらい聞いてもいいかい?」

「…明日、だけど」

「明日ぁ!?って、元旦じゃねぇか!おまっ、めでてぇ奴だな!」

ばんと背中を叩かれ顔をしかめてサッチを見ると、何故かサッチが嬉しそうな顔をしている。

「今夜は日暮れから年越の宴だぜ?一緒におめぇの誕生日も祝えばいいじゃん」

「別にいいって」

しつこく祝う祝うと言うサッチが欝陶しくて頑なにそう言うと、今度はサッチが顔をしかめた。

「なんで」

「…めでたくねぇから」


それだけ言い、オレは二人を残してその場を後にした。











その夜の宴は、やっぱりいつもより豪勢だった。
どうりで12番隊が釣りに励んでいたわけだ。
サッチは喜々として、オレらの喧騒の輪と厨房とを慌ただしく往復して次々と料理を出していく。
見るたびに顔が赤くなるところをみると、酒はきちんと飲んでいるらしい。

「エース」

マルコがでかい皿に大量の肉を積んで持ってきてくれた。
じゅるりとよだれをすするオレにマルコは小さく笑い、皿を渡してくれた。

「あと3分で日付が変わるよい」
「ん、ほうほんひゃひはんふぁ!」

「日付変わったらオヤジのとこ行けよい」

「ふぁんへ?ん、んぐ」

「新年の挨拶でもしてこい」

「マルコも行くんだろ?」

「オレは後だよい」

なんでか聞きたかったけど、次の肉を頬張ったがために聞けなかった。
少し離れた場所で、カウントダウンの叫びが聞こえる。

「あんたは数えねぇの?」
「オレはいいよい」



さーん、にーぃ、いーち、



ぱぱぱぱぱんっと軽快な炸裂音と、おめでとぉぉぉ!新年だぁぁぁ!!とあちこちから聞こえる叫び声。

「越したねい、おめでとさん」
「ああ、おめっとー」

言われたとおりオヤジの元へ行こうと、腰をあげた。
甲板の先では花火なんぞも上がっている。
そこに参加したいのを抑えて、オヤジの元へと歩き出した。
マルコはちらりとオレを見上げて、すぐに視線を海に戻した。





「…おめでとさん、エース」










オヤジは大きな椅子に腰掛け、今日ばかりは許されたのかがばがばと酒を水のように流してこんでいる。
オヤジはジョッキを口元から離したのと同時にオレを見つけた。

「あァエースか」

「…その、新年、おめでとう…ございます、って」

「グララララ、あァおめでとう」


オヤジはそう言いぽんと膝を叩いた。
…乗れということだろうか。
まだオヤジと一対一で話すことにも慣れていないのに、膝に乗るなんて。
オレが躊躇ったまま黙って俯いていると、突然ぐらりと身体が揺れ、軽い浮遊感に襲われる。

「う、わっ…」

とすんと下ろされたそこは船の床よりだいぶと高く、視界が変わる。

「な、なにっ…」

「グララララ、おい息子どもォ!!!」


オヤジの大声に全身が震える。その場にいるクルー達はぴたりと足を止め、オヤジのほうへと顔を向けた。

「今日は末っ子の誕生日らしいじゃねェか!祝ってやらねェかァ!!」

「ちょっ…!」

オレの慌てた声を掻き消すように、怒号のような叫びが船を包んだ。


おめでとーエースー!
お前正月からめでてェなぁー!
幾つになったんだァー!?



ぐっとマルコを睨むと涼しい顔で目を逸らされた。


「…っ、やめろよっ!!」

精一杯の大声を張り上げると、しんと騒がしい声が止んだ。


「オレは!誕生日なんて祝ってほしいなんざ思ってねぇ!!オレは、だから…」


尻つぼみになっていくオレの言葉を掻き消して、再び豪快な笑い声が響き渡る。


「グララララ、祝うなったァこいつらには無理な相談だぜ、エース。こいつらァただでさえテメェを可愛がりたくて仕方がねぇんだ。祝わせてやってくれよ」

「…でも、」

「…なァ、エース。…前にも言ったが…オレァオメェのオヤジを知っている」

聞き慣れない言葉にぴくりと肩が跳ねた。


「…テメェの、おふくろの話も腐るほど聞いたぜ…あいつは黙ってられなかったらしい」

「…」

「っく、見てもねぇくせに、お前の話もしてたぜ、エース」

「…オレの?」

「あァ。テメェのオヤジはどっちも親バカらしいなァ!」

「…」


オヤジはごくりと喉を鳴らし酒を飲んだ。




なあ、エース。
オレァオメェに会えて嬉しいんだ。
こいつらだってそうだ。
テメェが可愛くて仕方ねェんだ。
誕生日ってのは、そういうモンを祝うんでいいんじゃねェか…?






「オレもだぜーっ!エースー!」

遥か下からぶんぶんと、サッチが手を振っている。

「お前が弟なのは、すっげぇ嬉しい!」

へへっと鼻の下をかいたサッチは、照れるぜちくしょっと呟いてすたすたと厨房に入っていった。
小さくオヤジが笑う。




「どうだァ、エース。嬉しかァねェか」




もし、ゆらりと揺れるこの視界がそれを示しているのなら、きっとそうだ。
オレは嬉しい。

こくりと頷くと、厚く大きな掌がオレの頭を撫で回した。







「おめでとう、エース」





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酒くさい人いきれが蒸した部屋に充満する。
きっと男臭いとはこういうことだろうと思うが、慣れというのは恐ろしい。
サッチにジョズ、そしてイゾウはオレの部屋で好き放題酔っぱらっていた。
特に何があったというわけではないが、イゾウが手に入れたという良い酒を味わわせてくれると珍しく気前の良いことを言うので、部屋に入れた。
執念じみたものを感じる鼻のよさでかぎつけてきたのがサッチで、ついでに部屋の前を歩いていたジョズも呼び込んだ。
イゾウのバカ笑いがほどよく酒のまわった頭に響く。
酔ってはいない。

いつもならいるはずの姿がないのは、今日はナースたちと女子会などというものがあるようで。
そういうものにあいつが参加していると知ったときは少し驚いたが、当然といえば当然だ。あいつは女なのだから。
女というか、まだ少女的性質から抜け出せていない子供だ。
だからまたナース共から要らぬ知識を吹き込まれてオレに押し付けてくるのだろう。


「マルコほら、グラスが空んなってるぜ」



イゾウがちょいちょいと酒瓶をかざすので、悪ぃなと注いでもらう。



「なんだ、アンがいねぇからしょげてんのか」
「ちげぇ、つーかしょげてねぇ」



思わずムキになって反論すると、イゾウはそうかいそうかいと軽くあしらう。
腹が立って、そのいい酒をグイと一気に喉の奥まで流し込んだ。
ぴりぴりと咽喉がしびれる。


「あぁでも、アンも殊勝だな、こんな無機質男に惚れちまって」



イゾウはしみじみそう言いながら、猪口を傾けた。
 

「…あいつは、わかってねぇんだよい」


よくは知らないが、それなりに不遇な子供時代を送ってきただろうアンが同じ年頃の女のように誰かを思ったり思われたりなど出来ていたとは思えない。
この船に乗ってからも見ての通りいかつい野郎ばかりで、サッチなどの女好きもいるにはいるが、世間一般の恋愛常識などとは無縁な生活を送ってきたはずだ。

そんなアンが、突然オレのことが好きだとか言う。
いや、前からそんな類のことは口にしていたが、それは間違いなく今とは意味合いが違った。
あいつは家族として、オレのことが好きで。
オレのこともサッチのこともビスタもイゾウもハルタもジョズも、とみんなのことが好きで。
もちろんオヤジへの愛は際限ない。


アンは可愛い。
たとえアンが男でも、オレはそいつを可愛いと思うだろう。
だがそれでは今のアンは納得しないのだ。
何故ならあいつは女として、男のオレが好きなのだから。


「…オレ、アンに聞かれたぞ」
 

マルコには好きな女がいるのかって、だから振り向いてくれないのかって。
こういう話は基本的に聞き役のジョズが、控え目に口を開いた。

オレに、女?馬鹿かあいつは。
サッチはオレの返事を待つように視線を送っていた。



「…そんなもんいねぇのはわかってんだろい」
「ああ、だからそう言ったんだが」


 
アンはそれを聞いただけで去ってしまったのだという。
ねぇねぇマルコってさ、と手当たり次第に訪ねて回るアンの姿が容易く目に浮かぶ。
くっ、とイゾウが喉を鳴らした。
 

「もうお前から落ちちまえよ」
「…は?」
「アンにだよ、わかってんだろ?」
「なんでオレが」
「なあサッチ、オレら可愛い妹に幸せになってもらいてぇもんな」



イゾウが視線をやった先にオレも目をやると、サッチは酒瓶に口をつけたままちらとこちらを見遣る。



「…ああ」



ごくりと喉を鳴らしたサッチは酒瓶を置き、いつものように片眉を吊り上げるようにして笑う。


 
「オレなんか毎日だぜ、マルコの好きなタイプやらいろいろと」
「もとはといやあテメェが元凶じゃねぇかい」
 
 
そうだ、こいつが焚き付けたんだと、睨むように前の男を見ると、隣のイゾウがいやそりゃ違うと口を挟んだ。


「アンはだいぶと前からお前一本だったぜ」


 
本人の認識はさておきな、と。



「なんでお前がそんなのわかるんだい」
「はっ、わかってねぇお前のほうがオレにゃわかんねぇよ」


なんだと、と口を開いくと、ジョズがオレも思ってたとぼそりと呟いた。
ああオレもだとサッチもそっけない。
その反応にオレは細い目を丸くするばかり。

いつもわけのわからない形に纏められているイゾウの髪が、今日は肩の辺りでゆるりとひとつに括られている。
イゾウはその束を指先で弄びながらオレに視線を送った。


「アンの何が気に入らないんだ。あいつは良い女だ」
「…気に入る気に入らないの問題じゃねぇ。あいつは家族で、妹だ。今更そんな目で見れるかい」
「はっ、オレァアンなら抱けるぜ」



イゾウのその言葉に目を剥いた。
あけすけない口調はいつものことだが、それにしてもと思わないでもない。
イゾウはオレの視線を流すように猪口に口を付けた。



「抱かねぇがな」


 
あいつは妹だから、と。



「矛盾しすぎだろい、やっぱり妹なんじゃねぇか」



そう言うと、次は呆れたような切れ長の目がオレを睨んだ。



「だからお前さんは阿呆だっていうんだ」
「なっ」
「オレからしたらアンは妹だ。アンがオレを兄貴だと思ってっからな。だがマルコ、お前さんはどうだ、アンはお前をもう兄貴だなんて思ってねぇ」


すらすらと薄い唇から紡がれるものに、言葉が詰まる。
言い返す言葉が引っ掛かりながらでてきた。


「…なんでそうオレとアンがくっつく必要があるんだい」
「別に必要はねぇよ、オレが思ってるだけで」


もう言うことはないとでも言うように、イゾウは手の酒を飲み干した。


「マルコ」



サッチが真っ直ぐオレを見ていた。
こういう目をするコイツは得意じゃない。


「いつまでもアンがお前しか見てねぇと思ってっと、後悔すっぞ」


イゾウがちらりとサッチを見遣り、再び視線を下ろした。
ジョズは所在なげに首筋に手をやる。


「そんなこと思ってもねぇし、後悔もしねぇよい」
「あっそ」
「オレがあいつに惚れるこたぁねぇ」


ぐらんと頭が揺れる。
だめだ久しぶりに酔った。
手元にあった酒をひったくり、煽るように傾けると喉が火を噴くように熱かった。

オレは別に、 ごまかしてなんかない。



拍手[24回]


 
 
したたかで明るいアンがまるで子犬のようにちょろちょろと、足元を動き回る様子を眺めるのが好きだ。
それこそ犬のように人懐こい、と思えるのはきっといいことだ。
昔のアンはこうではなかったと、おれたちは知っているのだから。
 
強いなぁ、と感心して眺めているととんでもないことをしでかすので、慌ててその後処理に回る。
このバカが、とげんこつを落としても、「ごめんごめん」とまるで信用ならない謝罪をしてくる可愛い妹は、どうやらオレの兄弟に恋というやつをしたらしい。
まるでその単語が似合わない鳥野郎に、恋というやつをしたらしい。


「サアッチイイイイ」
「うおっ、アンっ」

どすっと重たい衝撃と背中でなるぐじゅぐじゅという水音。
またマルコに怒られたな、と予測をつけて振り向くと、銃撃戦さながらの激しさでその顛末を語ってくれる。

それから数十分マルコの愚痴。
でもいつのまにかそれはマルコのどこがかっこいいかと言う話にすり替わっていた。

まったく、オレは何が哀しくて親友のかっこ良さについて妹と語らねばならんわけよ。
そう、妹と。
話は長くなる一方で、アンはオレの部屋に行こうと言う。



「…あー、いや、オレこのあと明日の下準備しなきゃなんねェからよ、食堂で聞くよ」
「そ?」
「ああ、それにオレの部屋今汚ェんだよ」
「はは、いつもじゃん」
「んだと」


バカ話。
とりとめがなく、オレにとっては意味もない。
それでもアンが嬉しそうに話すので、オレまで嬉しい気がしてしまって始末が悪い。
 

「でね、あたし二番隊の書類も全部期限守ったんだよ、見張りだってもちろんサボらなかったし、ちょっと居眠りはしたけど、頑張ったのに!マルコ、褒めるどころかめんどくさそうな顔であっそごくろうさんって、それだけ!!そりゃあ褒めてもらいにいったあたしもどうかと思うし当然のことだろって言われたらそうなんだけど!」
「そーだなあそりゃ哀しーなー」
「でしょ?それにね」


ああ哀しーな、オレ。


「なあ、アン」
「何?」



お前、本当にマルコがお前に惚れてくれると思ってるわけ?
こんだけしつこくして、本当に嫌われたら怖いとか思わないわけ?
っていうか、お前本当にマルコが好きなのか?

言いたいことは次々と風船のように浮かんでいくのに、頭の中のオレがそれを針で刺して消し割っていく。


「お前、可愛いなあ」



代わりにそう、ほろりと口にするとアンはきょとんと目を丸くしてから、はにかんでふふと笑った。

ああ、だめだ、だめだめ、とオレはアンから目を逸らす。


「マルコもそう思ってくれてたらいいんだけどなあ」
「…そうだな」


そうだな?
そんなわけねぇだろ思うわけねぇだろいや違う思うかもしれないそうじゃないんだってそうじゃなくてオレが思って欲しくないだけでだってオレはアンが、


「さてと、」



アンは椅子から腰をあげ、んんと伸びをした。



「いっぱい話すと口疲れるってほんとだな!ごめんサッチ、仕事あるのに」
「…ああ、かまわねぇよ」


明日の朝ごはんは何かなーと歌うように背を向けたアンに、思わず口をついていた。


「もし、さ。マルコが他の女とできてたらどうすんの?」



振り向いたアンは少し目を丸くして、ほんの、ほんの少しだけ眉尻を下げた。
そんな顔させたいわけじゃないのに、



「んんー、そうだなあ、でも、やっぱり」
好きなんだろうなあ。


うつむきがちにそう答えたアンの顔は、女のそれで。
オレは思わず苦笑を漏らした。



「そうだよな、はは、じゃいっちょ下準備始めるかねぇ」


 
オレもアンがしたように上半身を伸ばし、くるりと背を向けた。
ぱたぱたとアンが食堂を後にする。背中でドアが開き、閉まる音がした。


「何聞いてんだよ」



ひとり呟いた声は拡散して消えていった。
それが思いのほか弱弱しくて、辟易とする。
ほんとに、しょうがねぇな。

同じだけそばにいるのになんでだ、なんて聞くのは野暮ってか。


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ひゅう、と冷たい風が甲板を吹き抜け、男たちの肌を掠める。

対峙するのは二人の男。
長身に細身な身体、胸の前で腕を組み、仁王立ちして見下ろすように目の前の男に目をやる。
もう一方はおなじみテンガロンハットを深く被り、吹き抜ける寒風をもろともせずに上半身をあらわにした男。
彼もまた、睨み付けるように目の前の男を見つめていた。




彼等の回りには息をのむギャラリー、つまりはこの船のクルーたち。
心配げにみつめるも、張り詰めた空気に自ら一石を投じようとするものはいない。


今にも食ってかかりそうな勢いを醸す彼等を止められるのは、飄々とした性格でこの雰囲気を壊すことができるリーゼントのコックか、この船の長か。
しかしリーゼントのコックすなわちサッチはこの場に居合わせているものの口を挟もうとはしない。
止めなくてもいいのかと言う者もいるが、そんな野暮なこたできねぇよと一蹴する。




再び冷たい風が吹き抜けた。







「引くなら今だぜ、マルコ」

「はんっ、尻込みしてんのはどっちだい。ガキが」






挑発しあうその言葉に張り詰めた空気はいっそう激しくなった。
どちらも引くような気配はみせない。





「これは男と男の戦いだぞ。一本勝負だ」

「ああ、承知してるよい」

「逃げんじゃねぇぞ」

「そっちこそ」





いくぜ!!











「「じゃんけんぽんっ!」」










(グララララ、息子どもが、何やってんだ)
(オヤジーっ!オレマルコに勝ったーっ!!)
(くそっ…!エースのくせに…!)
(グララ、やるじゃねぇかエース。で、何を賭けてたんだ)



(オヤジとの入浴権)





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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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