OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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私のスケジュール帳は真っ黒だ。
仕事、付き合いでの会食、友人と呼べるか怪しい人たちとの食事会、まぎれもない友人とのごはんの約束、取り寄せたバッグを店に取りに行く日、ノジコがうちに寄ると言ってきた日、重要度の様々なたくさんの予定が、私らしい文字でびっしりとスケジュール帳を埋め尽くしている。
サンジ君が「空いてる?」と言った日を確認するためにスケジュール帳を開いたら、向かいから遠慮がちに覗き込んだサンジ君が「真っ黒だね」と本当に感心したように言ったのだ。
「うん。忙しいの、今月」
顔を上げることなくそう言って、彼が「空いてる?」と言った日を確かめるとそこには18時に終わる出張の予定が入っていた。
「ごめん、だめだわ」と告げると、サンジ君は途端に悲しそうな顔ですんすんと鼻を鳴らした。
「じゃ、いつならいい?」
「うーん、またサンジ君のいい日に誘ってよ」
「おれはいつでもいいよ、空けられるよ」
「そんなことないでしょ」
実際、私はプライベートの予定もたくさん詰まっているが、サンジ君も不規則なレストラン勤務で予定は開かないはずだった。
混みあうカフェで向かい合う私たちは、うっすら漂う煙草とコーヒーの香りの雑然さに会話がかき消されまいと半ば声を張り上げていた。
全然だよ、とサンジ君は言う。
「おれ、ナミさんのためならいつでもいいんだもん。仕事もなんとかする」
「そこまでしなくていいわよ、ただごはん食べに行くだけなのに」
サンジ君はまた、ぺしょんと眉を下げて、何か言葉をコーヒーで流し込んで飲みこむみたいにカップに口をつけた。
そんなこと言わないでよ、って言えばいいのに。
私もぬるくなったコーヒーに口をつけ、上目づかいにちらりと彼の表情を盗み見る。
おれたち付き合ってんだろ? もっとデートしようよ。
そうやって言えばいいのに、彼は言いたそうな雰囲気だけをじゃんじゃん洩らしながらけして口にすることなく、ただ悲しそうにつまらなさそうに言葉を飲みこむのだった。
だからって、私は代わりに言ってやったりしない。だってそういうのは私の役割じゃないと思っている。
本当は役割なんてどうでもいいんだけど、わかっているんだけど、サンジ君がいつか自信を持って私に「おれたち付き合ってんだろ?」と言うのを聞きたいのだ。
だから、私から言ってやったりしないのだ。
事実、本当に付き合ってるのかどうか怪しいもんだと思っている。
「ね、じゃナミさんこのあとは?」
「特に何もないけど」
ぱぁっと彼は顔を明るくし、
「夕飯一緒に食うだろ? どっか食いに行く? それかうちで食べる?」
「サンジ君ちがいいな」
くぅー、と彼は歓喜の声を洩らし、「ィ喜んで!」と万歳をした。周りの客が振り返って見るほどの大声で。
*
「怠慢だわ」
ビビにそう言い切られ、私は目を丸めて彼女を見つめ返した。惰性で動かしたマドラーが氷をかき混ぜ、からからと音が鳴る。
私? と思わず隣のロビンに確認し、首をすくめられる。
「サンジさんがずっとそんなふうに追っかけてくれる保証なんてどこにもないのよ。なのに、『そこまでしなくていい』なんてひどい」
ビビは形のいい眉を吊り上げて、神経質に机の木目を爪でこすった。
なんでビビが怒ってるのよ、と私は笑うが、ビビは口元を引き結んだまま「怠慢よ」とまた同じ言葉を繰り返した。
「たしかにそうかもしれないけど、だからって私から追っかけるのはおかしくない?」
「なにが? ちっともおかしくなんてないじゃない」
好きなんでしょ、と断定されて、私は「さあ」と首をかしげた。ビビはますます眉を吊り上げて、「前から思ってたけど」と声を高くした。
「ナミさんは追いかけられるのが当たり前だと思ってるみたいだけど、確かにそうだとしても、追いかける人の気持ち、考えたこともないでしょう」
「なんで私が考えないといけないのよ」
ビビの剣幕に私まで尖った声をだすと、カヤさんが困ったように「ふたりとも」と言ったがそのあとの言葉は続かなかった。
ロビンは我関せずというふうに、追加でチキンの何とかを注文している。
「サンジ君が勝手に私のこと好きで、私はそれを知ってて、それであれこれ誘ったりしてるだけなのに、なんで私が帳尻合わせてあげないといけないの。考えるのはサンジ君の方でしょ」
「追いかけられなくなったらさみしいくせに」
「そしたらそのとき考えるわ」
わざとつんとすました声をだしたら、ビビは口を閉ざして、私を真正面から見つめた。
手元の細いグラスはあっというまに空になる。「おかわり頼むけど」と言ってビビを見たが、ビビは黙ったまま小さく首を振った。
ねぇ、と頬を緩めてビビの方に肘をつき身を乗り出す。
「なんであんたがそんな怒るのよ。サンジ君がそうやって怒るならまだしも」
「だって、ナミさんが、あんまり」
みるみるうちにビビの目に涙が溜まり、私はぎょっとして「やだ」と声をあげた。
「もー、なに泣いてんの」
「ちが、ごめんなさい、だって、ナミさん」
カヤさんがおろおろと自分のおしぼりをつかみ、ビビに差し出した。だいじょうぶ、と震える声でビビが応える。
はあ、と私は腑に落ちないまま肩の力を抜き、「泣かないでよー」とビビの肩をとんとんと向かいから叩いた。
しかしキッと顔を上げたビビは、泣いて気が抜けたかと思いきや目に強い力を込めて「ナミさん」と私を見据えた。
「絶対、絶対に後悔するわ。追いかけられなくなったらそのとき考えるなんて、そのときなんて、なんにも考えられなくなっちゃうんだから。ナミさんのそういうところかっこいいけど、かっこばっかりつけてたって仕方ないんだから」
そしてビビは自分のグラスを掴み、小さな声で「おかわり」と呟いた。
ビビはそのあと何でもない風にお酒を飲んで、笑い、私にも相槌をうったけど、なんとなく晴れない気持ちがお互いの中に残っているのがわかって、いつもなら終電間際まで話し続けるところ、22時前に「今日はそろそろ」な雰囲気が漂って駅前であっさりと別れてしまった。
ビビは迎えの車に乗り、ロビンはこのあと噂の年下男と落ち合う約束で、私とカヤさんで電車のホームに向かった。
「寒いわね」
「ね、冬ね」
と意味のない会話を繰り返すのは、話すことがないからではなくあまりに寒くてそれ以外のことを考えられないからだ。
だから、電車があたたかな光をはらんでホームに滑り込んで来たとき、私たちは同時にホッと息をついてその光を見つめた。
電車は混んではいなかったが座る席はほとんどなく、私たちは入ったのと逆側のドアの近くに立ってなんとなく顔を見合わせ、笑った。
「カヤさん、今日もあいつが迎えに来てくれるの?」
「いいえ、今日は一人で帰るのよ」
「えっ、へいき? 送ろうか」
「やだナミさん」
目を伏せて、口元に手を当てて笑う仕草がこんなにも似合う人がいるだろうか。
カヤさんはちらりと私を見て「男前ね、相変わらず」と言い、
「タクシーを使うように言われているから大丈夫。最近仕事の関係でもよく乗るのよ」
と誇らしげに背筋を伸ばした。
男前ね、と苦笑する。
いつもであればそれこそ誇らしいような気持ちになるのに、今日はビビとの会話がふとよみがえり、苦く胸を浸した。
カヤさんは気づかぬふうに真っ暗な窓の外を眺めながら、「ナミさんは? 駅から」と尋ねる。
「私はいつも通り。駅からそんなに離れてないしね」
「ひとり? 帰り道、本当に気をつけてね」
「うん、あ」
コート越しに、携帯の震動がじりっと伝わる。
画面に目を落とすといつもメールボックスの一番上にある名前が目立つように光っていて、『ナミさん今日はいつ頃帰り?』とサンジくんからメールが来ていた。
「やっぱり迎え、あるかも」
「そう」
カヤさんはそう言って嬉しそうに微笑み、次の駅で降りていった。
どうしたら彼女みたいに、友達の恋やその困難を聞いてやろうなんて微塵も思わずに、ただ嬉しいことにだけ静かに微笑んでいられるのか、私にはさっぱりわからなかった。
一人になった車内で、サンジくんに「今電車。あと二駅で着くわ」と返信する。
きっと彼は仕事場から自転車に飛び乗り、同僚の怒鳴り声を背に受けながら駅まで走ってくるはずだから返信は来ない。
そうまでわかりながら、どうして私は彼の顔を見て嬉しいと笑ったり、ぎゅっと苦しくなる喉の奥あたりのことを話したりできないんだろう。
ホームを降りて改札へ向かうと、機械の外側でサンジくんはこちらを向いていて、私に気付くとぱっと顔を華やかせた。
彼が笑うと、柔らかい金色の髪がハッとするほど明るく光る。
「おけーり。よかったちょうど、時間があって」
「自転車は?」
「そのへんに停めてきた」
サンジくんは当たり前のように私の手を取り歩き出す。
彼の手は水仕事から上がったばかりのように冷たい。
ひょーナミさんの手あったけぇ、と彼は二回ほど強く手を握った。
サンジくんの自転車は駅前の暗がりに横倒しになっていた。
倒れてる、と呟いたらサンジくんは「そういやスタンド立てるの忘れてた」とケロっとした顔で言って自転車を起こすと、「さ、かばん」と言ってこちらに手を差し出す。
ハンドバッグを手渡すと、それを自転車のカゴに乗せるわけでもなく肩に下げ、「行こうか」と歩き出した。
街灯のぽつぽつと灯る歩道を歩きながら、サンジくんは器用に片手でタバコに火をつけた。
「今日は何食ったの?」
「お肉」
「あー今流行ってんね、どうだった?」
「おいしかった。赤身の、厚く切ったステーキ」
「ソースは?」
「玉ねぎのと……黒い、酸っぱいやつ」
「バルサミコ酢?」
「そうそう」
甘酸っぱいその味が口の中によみがえり、耳の下がきゅっとすぼまる。
妬けるなあ、とサンジくんは呟いて、信号に足を止めた。
「一瞬うちに寄って自転車置いてってい? そこの角入るだけだから」
「いいけど、なんで? 帰り乗って帰らなきゃじゃない」
駅からサンジくんの家はすぐだが、私の家までは少し歩く。
うちからサンジくんの家までは下り坂になるので、なおさら自転車がある方がいいのに。
「こいつ邪魔なんだもん。手ェ繋いで歩きたいし」
サンジくんの手は、片方は自転車を引き、片方は私のかばんを肩から下げて煙草を吸うのに使っていた。
「手って」
呆れた顔で「そんなことのために?」と言いかけて、 飲み込んだ。
そんなことなんかじゃないのだ。
そんなこと、じゃない。
確かに私は歩き出した時、彼がさっとためらいなく私の手を取ったことにじわりと喜んだし、彼が自転車を起こすために手を離し、そのまま両手を塞いでしまったことを心から残念に思っていた。
それなのに口からこぼれるのは正反対のあれこれで、天邪鬼なつもりなんて微塵もなく本心だと思い込んでいた。
なぜならそれが私の役割だから。
追いかけるのはサンジくんの役割で、追われて喜ぶのは私の仕事じゃないから。
こちらから塞がろうとする手を追いかけたりしてはいけないのだ。
追いかける人の気持ちがわからないなんて嘘だ。
こんなにも追いたくてたまらないのに、自分の足に足を引っ掛けて転びそうで踏み出せないだけだ。
「ナミさん、青」
顔を上げると、サンジくんが怪訝そうに私を覗き込んでいた。その向こうで歩行者信号が青く浮かび上がっている。
あぁ、ともうん、ともつかない返事をして歩き出したが、横断歩道を渡ってすぐ足を止めた。
「自転車、乗せて」
暗がりの中、サンジくんの片目がこちらを向いて丸くなった。
「わざわざ置きに行かなくても、二人乗りすればいいじゃない。それなら速いしこの時間なら人も少ないから危なくないでしょ」
「えーと、いいけど、本当に大丈夫?」
「大丈夫。ほら乗って。今日ちょうどパンツだし」
言いながら運転手のいない自転車に、先にまたがる。
サンジくんが慌てて両手でハンドルを支え、私は彼に預けていた自分のかばんを受け取った。
「行くよ」
ぐい、と踏み出したペダルは力強くゆっくりと彼の足をつかまえて、初めはぐらぐらと揺れるかと思いきや、意外にもぶれることなくしっかりと地面を捉えてすぐにスッと走り出した。
「大丈夫ー?」
叫ぶようにサンジくんが言う。
うん、と叫び返して、彼のベルトを掴む手にぎゅっと力を込めた。
頬にあたる風は切れるほど冷たく、目にしみる寒さに涙がにじんだ。
しばらくサンジくんは前を見据えて一定のリズムでぐっ、ぐっ、とペダルを漕いでいたが、スピードに乗り始めると彼の背中から力が抜けるのがわかった。
深緑のモッズコートは、冷たくもその向こうにあるサンジくんの温度を確かに湛えていて、私はそこにそっと頬をつけた。
「眠たい?」
彼が尋ねる。
「ううん」
彼の吐く息が、白く夜闇に紛れて消えていく。
「もう着くよ」
「早いわね」
「うん、だから、手ェ繋いで歩きたかったんだ」
もう到着だ、とサンジくんは明かりの灯るスーパーを通り過ぎ、最後の角を曲がった。
「明日は? 会える?」
「わからない」
そっか、とサンジくんは呟いて、腰に回された私の手をそっと撫でた。
「でも、今日は泊まってけばいい」
「え?」
サンジくんがブレーキをかけ、するするとスピードが緩まる。
「泊まってけば明日も会えるし」
「え、いいの」
きゅっと彼がブレーキを強く締め、ほほが背中に押し付けられる。
もううちの目の前だ。
よいしょ、と自転車から降りて、マンションの自転車置き場を指差すとサンジくんはそちらに自転車を引いて行った。
わざと息を吐き、白いそれを眺めながらガチャガチャと鍵をかける音に耳をすます。
戻ってきたサンジくんは、迷子みたいな顔で自転車の鍵を指先に引っ掛けて、私を見つめた。
「おれ、初めてだ。ナミさんち」
「そうね」
オートロックを解錠し、すぐの階段を上る。背後からサンジくんも静々とついてくる。
部屋は当然ながら、しんと冷えていた。
ブーツを脱いで床に足をつけるとキンと痛いくらいだ。
あ、とサンジくんが声を上げた。
「着替えの下着、ねーや」
「あぁ……買いに行く?」
ぱちんと廊下の電気をつけると、神妙な顔で彼が首を振るのが見えた。
「今出たら、もう二度と来れねェかもだから」
「そんなわけ」
ふっと吹き出すと、いきなり腕を引かれて彼の胸に強くぶつかった。
「わかんねェだろ」
ぎゅう、と彼の体に擦れたコートが音を立てた。
タイツ越しの床の温度がみるみると体温を奪うのに、懸命にペダルを漕いでいた彼の体はまだ温かかった。
力を緩めたサンジくんは、ためらうことなく顔を傾けて口づけた。
すぐに唇を離して、腰を抱き、また強く力を込める。
「サ、」
「ナミさんは、どんなに近くてもおれのものにはならねぇ気がする」
それこそキスをしても、抱きしめても、身体を繋げても。
冷えた廊下に佇んで、そうかもしれないと思った。
誰かのものになるのは怖い。
たとえそれが、私の欲しい誰かでも。
所有したものは消費されるから、もしも私たちがお互いを所有しあえば、せっかく芽生えた恋とか愛とかそういうものはきっと擦り切れてしまう。
傷つきたくなかった。
おかしーな、とサンジくんがつぶやく。
「前は、どれだけでも好きだとか付き合ってくれとか言えたのに。こんなふうに側にいること許されちまうと」
ぽたん、とゆるんだ吐水口から水が落ちた。
サンジくんはその音を皮切りに私を離すと、「でも下着はいるな」と照れたように笑った。
そうね、と私も笑う。
まだ靴も脱いでいないサンジくんが「買ってくる」と踵を返すのをぼんやりと眺め、すぐに我に返って「私も行く」と後を追った。
「寒いから」と彼はやんわり押しとどめたが、いいのと譲らなかった。
寒々と白く光るコンビニの隅で、サンジくんが下着や歯磨きを買うのを待って、手を繋いでまたうちに戻った。
お風呂に入り、気の抜けた炭酸水を飲み干し、二人で冷えた布団に潜り込む。
ぴりぴりと冷たい布地が身体に触れて、足先がもぞもぞと動く。そのたびにサンジくんの脛に触れ、さっと足を引っ込めるのだがまたもぞもぞしてしまう。
ついに彼の脚に私の脚は挟み込まれてしまった。
「ナミさん明日、休みだね」
「うん」
明日は土曜日だ。サンジくんは朝から仕事のはず。
忙しい1日になるだろう。
そっと手を伸ばして彼の顎髭に触れると、サンジくんは差し出すみたいに首を反り返らせて、好きに触らせた。
柔らかい針みたいなその手触りを無心で楽しんでいると、誤って彼の唇に触れた指先がぱくっとくわえられた。
「あ」
うまい、と呟いたサンジくんはそっと私の指を離すと、そのまま顔を寄せて来て、ふわりと唇を重ねた。
サンジくんはあろうことかそのまま、ナミさん、と私を呼んだ。
唇がくっついているので、まみあん、と聞こえた。
「おれのものには、とか言ったけど」
「ん?」
「さっき、玄関で」
唇を離したサンジくんは、冷たい鼻先をくっつけて言う。そんなこたどうだっていいんだ、ほんとは、と。
「ただ、おれはナミさんのものにしといてね」
するすると鼻と鼻をこすりあわせて猫のように、サンジくんは目を細くした。
「あんたそれでいいの」
「いいよ、最高だ。おれはナミさんの」
言いながら、彼の瞼が閉じていく。
薄いそのまつげの色を見てつぶやいた。
「擦り切れちゃうわ」
サンジくんはぱちっと目を開けて私を見つめ、「何が?」と聞いた。
なにがって、と私は言い淀む。
口ごもる私に何を思ったのか、サンジくんはだいじょーぶ、と唇だけを動かした。
そのまま再び目を閉じて、唇は半分開いたまま、彼は動かなくなる。
「寝たの?」
数秒間があいて、「いんや」と返ってきた。
しかしそのまま、また微動だにしない。
「今日、忙しかったの」と聞いてみたら、サンジくんは夢の中から帰ってくる分だけの間をあけて、「うん」と目を閉じたままうなずいた。
「金曜日だもんね」
うん、とうなずく。
「お客さんいっぱい来た?」
うなずく。
「売り上げ上々?」
うなずく。
「サンジくんのお店、美味しいもんね」
うなずく。にへらっと口角が上がった。
「また食べに行くわ」
ん、と低く短い唸り声をあげて、サンジくんは身じろぎ、ついにすうっと伸びやかな寝息が聞こえた。
長い前髪が、見えているもう片方の目も隠すように垂れている。それを指先で払って、柔らかな瞼に唇で触れた。
この人はわたしの、わたしの。
印をつけるみたいに、もういちど強く、唇を押し当てた。
fin.
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さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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一声いただければ喜んで遊びに行きます。
足りん
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