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どこか遠くで聞いたその声は 
オレ達をどこまでもどこまでも 
守り導く父の声 
 
上手な家族のつくりかた
 
波に揺れるベッドの上で夜中だというのに目覚めてしまったオレは、水を飲もうとキッチンへと向かった。 
夜中の三時ごろといっても、夏島近海のこの辺りは蒸し暑い夜が続き寝苦しい。 
重い瞼を少しだけ持ち上げたまま廊下を歩いていると、甲板からごとりと音がした。 
「…?」 
こんな夜中に誰がいるというのか。 
まあさしずめ見張りが寝ぼけてなにか落としたか、エースが盗み食いでもしにきたのだろう。 
そう思い甲板へと出るドアを開けると、遠くに見えたのは意外にも大きな背中だった。 
「ナースたちに怒られるよい」 
近寄って声をかけると、オヤジは大きな酒瓶を掲げている最中で、うまそうに喉を鳴らしてから答えた。 
「アホンダラ。好きでやってんだ、やめられるかァ」 
いつもの調子でそういうオヤジに、おれはく、と笑ってそうだな、と答えた。 
「まあぼちぼちにしといてくれよい。こんな夜中にまで飲むことねぇじゃねぇか」 
「あぁー、なんだ、寝れなくてなァー…おいテメェマルコ、いつまで突っ立ってる気だ。さっさと座れェ」 
既に上機嫌といった顔のオヤジは、オレを半ば強引に座らせた。 
オヤジが注いでくれた酒はいつもとおり常人なら一発でぶっ倒れるようなキツイもので、これが寝酒なんてあんまりだとおもったが、焼け付くように喉を流れる酒はどこか爽やかな気もした。 
黒い海の少し上には下手くそな丸を描く月が浮かんでいて、水面に白い道筋を作っていた。 
横目で(かなり上目づかいになる)オヤジをのぞき見ると、オヤジは酒瓶片手にぼんやりと波間を見つめていた。 
「…テメェが…船に来たのもこんな夜だったなァ」 
「…そうだったかい」 
珍しく過去を遡るオヤジの言葉に半ば驚いて答えた。 
しかもオレが船に乗ったときときた。 
「…く、ガキがでっけぇ大人踏み潰してよ。なんて治安悪ィ町だと思ったぜ」 
「やめてくれよい」 
「だがァ、そんときのテメェの目、忘れもしねェぜ」 
遠くを見ながら口を開くオヤジにつられて、オレは遠い過去に思いを馳せてしまった。 
生きなければならない。 
人の動力源なんて、そんなものだ。 
ナイフ一つとこの身があればたいていのことはやり過ごせた。 
初めて人に屈したのは、いや、抗う気にもならなかったのは、オヤジが初めてだ。 
地に突っ伏す男の懐から財布を掠めて行く際、唐突に腕を掴まれた。 
ガキが。物騒なもん持ってんじゃねぇか。 
あからさまに人の体温を感じたのは久々で、戸惑ったのを覚えている。 
そしてすぐさまテメェオレの息子になれと言われたときも勿論戸惑った。 
だがオレは、素性もわからない男からの誘いに頷いてしまう。 
オヤジは満足げにオレの頭を撫で回した。 
オヤジの言うオレの目、とは、荒みきった渇いた色のことではなく、受け入れられる喜びを知ったあの夜のときの目だという。 
この船とオヤジの愛は、無骨に、しかしまっすぐにオレを打ち抜いた。 
それからすぐにちんちくりんなオレ同様にちんちくりんなサッチが乗船し、船は次々と家族で満たされていった。 
「…オヤジは…息子作りが上手いんだよい」 
「グララララ…そうだなァ…オレァ幸せもんだなァ…!」 
ゴトリとまた大きな音を立てて酒瓶を床に置くと、オヤジは巨体をもちあげた。 
「オレァ寝るぜ」 
「…あぁ…」 
「お前は」 
「オレはもう少しここにいる」 
「腹出して寝るんじゃねぇぞ」 
「…もうガキじゃねぇよい」 
グララララ、ハナッタレが、と笑ったオヤジは船長室へと覚束ない足取りで歩いていった。 
オレはオヤジが残していった酒を一口煽る。 
それだけで軽く目眩がした。 
 
間違うなよ、オヤジ。
あんたがいるこの船は、世界一の海賊が乗るこの船は
紛れも無くあんたが作った世界一の家族だ。
今この場所が幸せだと思ったから
おれたちはどこまでもあんたについて行くんだ。
モビーディックはおれたちを乗せて
どこまでもどこまでも導く、底なしの希望。
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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。
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