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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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だっだっだっだっと高くブーツの音が鳴る。
遠くで闇を切り裂くような明るい笑い声が響く。
この船の至る所にその光は落ちていて、いやあいつが落としているのに、あの日から、あいつが素っ頓狂な宣言を致したあの日から、オレの周りにだけ落とされなくなった。
ゆえに真っ暗である。
















「アン隊長」

「・・・ユリア、マルコなら甲板に・・・」

「違うわ。用があるのはあなたよ」

ユリアは細長い指をあたしの手首に絡ませるように、ぐっと掴んだ。
あたしは小さく息をついて、持っていた書類を近くにいた2番隊隊員に預ける。

「・・・マルコ隊長が言ってたわ。近頃あなたがよく仕事するって」

「でしょ、今日の分もさっきので終わったんだ」

きしし、と笑ってみてもユリアはいつものように微笑んではくれなかった。その眼はあたしを通してどこか違うところを見ている。サッチもそうだ。最近。イゾウも、ビスタも。
あたしを介して、『あたし』でありながらあたしじゃない部分を見ている。
あたしはそれが嫌で・・・嫌っていうか、落ち着かなくて、隠すように目を逸らした。



「どうして隊長を避けるの?」


いきなり核心を突いてきた。でもその言葉には誤謬がある。


「・・・避けてなんかないよ。さっきだって甲板で話してきたし、朝ご飯だって一緒に食べた」

「そうじゃないでしょ」


そう、そうじゃない。ユリアの言いたいことなんて分かってる。
でもまだあたしはマルコにも彼女にも自分を上手く伝える技術はないとわかっているし、実際話してみても上手く言えない。
だからまだ、笑っておくしかできないんだと思う。


「・・・マルコがさ、仕事仕事ってぶいぶい言うんだ。だから夜も自分の部屋籠もってガリガリ書いてんのにさ。そしたらそれはそれで心配してくるし」

なんなんだろねと笑うと、ユリアは諦めたように目を伏せた。



















午後8時、オレの部屋の扉が控えめに誰かの来訪を告げた。
返事を返すと扉が開く気配はしたが入ってくる様子はない。机に向かっていた身体を反転させると、案の定数枚の書類を持ったアンが薄く開いたドアの隙間から顔をのぞかせていた。
オレは再び身体を机へと戻す。

「何やってんだ。早く持ってこいよい」

「・・・う・・・ん、」


うんと言ったにもかかわらずなかなか入ってこない。
ここ数日、こういったやり取りが続いていた。


「もう終わったのかい。はえぇな」

「・・・う・・・ん、」


褒めてみても飛びついてこない。これが昼間だったら、甲板だったらまた違う。
夜で、オレの部屋というのがいけないんだ。


「書類」

椅子に座ったまま後ろ手に手を伸ばすと、アンはカサカサカサッとまるでゴキブリのような音を出して寄ってきて、素早くオレの手に書類を乗せた。
そしてそのままドアへと一目散に駆けだそうとする身体を、腕を掴んで引きとめた。


「マッ・・・マルッ・・・!」

「オレァますますお前のことがわからねぇ」


アンの手首を掴んだのとは逆の手で眼鏡をはずす。アンは気まずそうにオレのその動作を目で追った。



「オレの部屋にいたら襲われるとでも思ったか?前のがそんなに嫌だったか?それともオレに抱かれるのが嫌か、」

「っ、」

「前はオレのほうが襲われてたように思ったがねい」


少し前のことを持ち出して見ても、アンは視線を逸らしたまま何も言わない。
駄目だ、イラついてきた。
ぐいと腕を引くと一瞬強い抵抗を感じたが、さらに力を強めると簡単にオレとアンの距離が縮まった。
バランスを崩したアンは、オレの足と足の間、椅子の上の狭い面積に膝をついた。

アンは分かっていない。
逃げられたら追いかけたくなるし、避けられると近づきたくなる。
今までのオレたちの攻防戦で、それをこいつも学習したと思ったがどうやら違ったらしい。

さらに腕を引き寄せ、アンの顔にオレのそれを近づける。息をのむ音が聞こえた。


「煽るだけ煽っといてはいさようならってか。確かにオレァがっつく歳じゃねぇっつったがな、それなりの欲もある」

「っ」

「だがてめぇが自分でしたくねぇっつーなら話は別だ。オレは待てるって言ってんだい」

「違っ」

「あぁ?」


オレが怪訝な顔をして力を緩めた隙に、アンはオレの手を振りほどいた。
そしてひきつった顔を横に振って、ごめんと呟く。
しかしそれではなんの解決にもならない。


「何が違うってんだい」

「…あ、あたし…そういうの、その、雰囲気?とか、わかんない、から…あんまりマル、コに寄っちゃ駄目だって…その、流され…」


支離滅裂。
そもそも何が違うのかの答えになっていない。
するとアンは、俺が掴んでいた手首を自分で掴みながら、ぽつりと零した。


「・・・ま、待ってもらっても、出来ない・・・から、」


その答えに訝しんで目を細めると、アンはまずいものを飲み込んだような顔をした。
理由なんて聞きたいとは思わない、が。それはオレの大人としての体裁みたいなもんで、本当は知りたくてたまらない。
オレがこいつを抱いてはいけない理由なんてあってたまるか。


「何度も言うがオレァ別にやりてぇばっかじゃねぇよい。だがお前がいつもみてぇにくっついてきたり横に寝てたりしたらオレだって何思うかわかったもんじゃねぇ。・・・お前もわかってるから最近オレの部屋来なかったんだろい」

こくりと、頷きが一つ。

「だったら理由くらい聞かせろ。そしたら歯止めくらい掛けられる」


オレはずるい。
大人なふりをして馬鹿なこいつを丸めこんで、あたかも自分が正しいことを言っているように思わせる。
こんなことを聞くのは、本当はオレのエゴだ。
アンのことでオレが知らないことがあるという事実に耐えられないだけだ。
知りたい、全部。



しかしアンは、口元を震わせたまま首を横に振った。


「・・・ごめ・・・ん、」











亀裂の音が聞こえる





拍手[30回]

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ナースのねぇちゃんと、お話中だったオレ。
いや、口説いてたわけじゃなくて、仕事の話。ほんとほんと。
そこへ突如どかんというに等しい物音と、うあぁぁぁぁぁと高いのか低いのか分からないような絶叫。
どかどかという足音がこちらへ近づいてきた。



「はい、アン隊長スト―ップ」


ナースがしなやかに腕を動かし、持っていたカルテでアンの行く手をふさぐ。アンはブレーキよろしく音を立てて止まった。


「落ち着いてー、深呼吸深呼吸」

ナースはまるで子供にするように身振り手振りでアンに指図する。アンは言われた通り、すーはーと呼吸を繰り返した。それに伴い静まって行くアンの炎。お見事だ。


「どうしたアン、真っ赤な顔して」


分かっているが聞きたくなるのはオレがこういう人間だから。
アンはオレとナースを交互に見やり、あわあわと口を開くが何も言わない。


「マルコ隊長に押し倒された?」


さらりと言ってのけた隣のべっぴんさんにアンはぎょっと目をむき、一度首を縦に振ってから今度は横にひねり、それからぶんぶんと横に振った。
オレとナースは同時に吹き出す。

「どっちだよ」

「あああたし、足、怪我、まっ、マルコ、なっなめ・・・!」

「んだそりゃ」

くくっと笑いを漏らすと、いつもは笑うなとくってかかるアンがへにゃりとなんとも弱弱しい顔をした。
ナースはやっぱり、と呟く。


「まだ致してないのねぇ、隊長たち」

「あったりめぇってもんよ、ユリアちゃん。マルコの野郎がこんなぴっちぴちむっちむちの若さ溢れる生娘、『じゃあいただきます』とか言って食えるか?」

「無理ね」

「ああ無理だ」

「・・・サ、サッチとユリアの言ってること、よくわかんない・・・」


ナースはアンに向き直ると、にっこりとほほ笑んだ。美女の笑顔というのはそそる何かと恐ろしい何かが相混ぜになっている気がする。


「どうだった?」

「・・・へ?な、なにが・・・」

「隊長に、押し倒されて」

「たっ・・・!」


再び顔に熱を取り戻したアンは、そうじゃなくて、とかあたしが乗って・・・てそうじゃないけど、とかいうような大変興味深いことを呟いていたが、少しの間むぅうと考えるように唸ってから口を開いた。


「・・・よ、くわかんないよ・・・マ、マルコが何したいのか、な、に考えてるのか・・・」


ナースとオレは再び視線を絡ませて、ぱちりとまたたきをひとつ。
何って、ナニだろう。



「アン隊長、赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんじゃないのよ」


今それ!?ねぇユリアちゃん今それ言う!?
アンはさらにわけがわからなくなったようで、はてなを飛ばしまくっている。

「・・・まぁ、あれだ、アン。マルコもさぁ、いろいろやりたいわけよ。だから、サ。お前がそんな気ないのにあんまり煽ると、ますます可哀相ってこと。わかる?」

「わかんない」

ガクッと、思わず肩が落ちた。
すると突然、ナースはきゅっと口元を引き締める。


「わかんないじゃ駄目よ」

「・・・え、」

「わからなきゃダメ。もし本当にその時がきたらどうするの?わからないままことに及んで、流されて、終わってアン隊長が何もわかってないままだったら、マルコ隊長はどう思うかしら。彼はきっと、後悔する」

「・・・そ、のとき・・・?」

「セックスよ。意味くらいわかるでしょう」


ぴしり、とアンの顔がこわばった。ナースもそれに気付いたが、構わず続ける。


「アン隊長が嫌なら嫌と言うこと。それを言うにはそういう雰囲気にまず気付かなきゃ。じゃないとア」

「あたし」


真っ赤だった顔をすっと通常に戻したアンは、真っ直ぐナースを見据えたままその言葉を遮った。

「しないから」

「え?」

「そういうこと、しないから」


だから大丈夫、とそう言ったアンは、ごめんと呟くとくるりと背を向け駆けていく。
オヤジの顔がどんどん遠くなっていった。



「・・・変ね」

「そう思う?」

「えぇ、とても」

「・・・わっかんないねー」

「アン隊長が?それとも女が?」

「どっちも。でもアンはわかりやすいようでものすっげぇわかりにくい」

ナースは何も言わず、ただ少し笑っただけだった。













「マルコ」



先程オレの部屋を飛び出して行ったアンが、なぜか再び戻ってきた。
顔もいつものごとく戻っていて、慌てた風もない。
アンが持ってきた書類を整理していたオレは、思わず動きを止めて振り返った。


「ごめん、あたし」

「・・・」

「できない、から」

「は?」

「できないから、そういうこと」


そういうこと。どういうことだ。
少しの間口を開いたままという間の抜けた面をさらしていたが、ふと気付いた。あぁそういうこと。
また馬鹿に何か吹き込まれたか。


「あぁ、あのなぁ。オレァ別にがっつくような歳でもねェし、今すぐやりてぇわけでもねェ」

「違う」


いやにはっきり言い切ったアンの目は静かで、逆にざわりとオレの中が揺れた。


「できないから。・・・しない、から。ごめん」


アンはそれだけ言って、すぐにオレに背を向けて扉の向こうへ消えた。







背中のオヤジが虚しく笑う




拍手[29回]

手配書をゆっくりとオレの手から受け取ったアンは、その紙切れを日に焼けない拳でふるふると握りしめ、そして凝視していた。
 
「…前に、お前が寝言で言ったんだよい、そいつの名前を」
「…ル、フィ…」
 
 
アンの口からその名を聞くのは二度目だが、やはり心穏やかではない。
あぁ、という嘆息が薄い唇から漏れ、震える指先がその紙面に映る男の頬をなぞる。
目はかっちりと見開いて、唇は小さく開いたままだったが、そのどちらの端も微かに弧を描いていた。
 
そいつはお前のなんなんだ、と素直に聞けるほど若くなく、ずけずけと聞ける程肝の座った大人でもない。
中途半端なおっさんだと心底思った。
 
 
「…こいつ、ルフィっていうんだ…」
 
未だ写真から視線を外さないアンが、掠れる声でまたそいつの名を言った。
 
「いっつもこうやって笑ってて…あぁ、やっと海賊になったんだ…」
 
 
ということは、だ。
昔から知ってる奴。昔の男。
 
「…そっか、へへ…もう海にいるんだ…」
 
柔らかな視線が、その男を貫く。
あぁ、わかった。
この男の笑顔は、アンに似ている。
 
 
「マルコありがと」
「…何がだい」
「手配書、教えてくれて。すっごい嬉しい」
 
紙を掻き抱いてへへっと笑みを零すアンは、ここ最近で一番幸せそうな顔をした。

「こいつさぁ、悪魔の実食ってて泳げないくせにやたらと海に落ちるんだ。あたしいっつも助けててさぁ。あ、もう一人兄弟がいるんだけどさ、そいつといっつも一緒に助けてたんだー」

それにさぁ、と突然饒舌になったアンがぺらぺらと一人話し始めた。
男の話をこんなにも楽しげに告げるアンを、俺はこのかた見た事がない。
しかしそのときどこかアンの言葉に引っかかるような部分を感じたが、それが何処かわからなかった。
アンは二人並んで腰を下ろしたオレのベッドに後ろ手で手を突き、未だべらべらと喋っている。

「こいつ本当に弱虫でさ、夜とか眠れないって言ってあたしの布団に入ってくんの。最初は入れてやってたんだけど寝てるうちにくっついてくるからさー、邪魔で邪魔で」

タチの悪い野郎だ。布団にもぐりこむとは。

「蹴っ飛ばしても、一緒に寝たいって聞かないから大変でさ。それにこいつすっごい食べるの!おかずはいっつも取り合いでさあ」

どことなく上から目線と言うか、年上気取りのようなアンの口調。こいつが年下だからか。
幼さを楯にするとはふてェ野郎だ。悪かったなおっさんで。

「一緒に山登っても絶対迷子になるし、本当手のかかる弟なんだけど・・・そっか、3000ベリーの賞金首かぁ・・・」

感慨深いとでも言うように、アンはひとりうんうんとうなずいていたのだが。


「・・・ちょっと待て、今なんてった」
「え?3000ベリーの賞金・・・」
「違うその前」
「前・・・?・・・手のかかる弟だって・・・」
「弟ォ!?」




なんてこった。
穴があったら入りたい。自分を燃やし尽くしてしまいたい。
口には出してないとはいえやりきれない。



「・・・はっ、・・・くくっ・・・!」

目元を覆い自嘲の笑いを漏らすと、隣でアンが焦ったように手を動かしたのがわかった。

「ちょ、何笑ってんの!?」
「いいやなんでもねぇよい・・・くっ、ああそういうこと、弟!」



笑ったまま後ろに倒れこむと、未だわからないといった顔でアンがオレを覗き込む。

「マルコ変だ」
「気にしないでくれ」
「その話し方が既に変。ついでに口癖も」
「今更それを追求するのかお前は」


変なの、とむくれたアンの腕をくいと引っ張る。
うわ、と支えを失った体は引かれた力の方向へと倒れこんだ。


「もう発火しねぇんだな」
「っ!・・・しないよ、もう」


みんなに怒られたもん、とオレの胸板の上でしゅんとうなだれる。
そこにむくむくと起き上がってきた悪戯心と言うか、加虐心。
オレがこんだけ振り回されたんだからしょうがねぇだろとなんとも勝手な理由をつけておく。


「そういやコレ、オレのだったねい」

背中に回した手で、アンの身体に纏われた空色の布切れをつんと引っ張った。
するとアンは、げ、と顔をしかめる。

「思い出させないでよ!気持ち悪かったんだから!」

ほんと最悪最悪最悪格好悪いあたし!と毒を吐いたアンは、仕舞いにはうぇ、と舌を出す。
しかしよじよじとオレの胸板を這い登ってきて、オレの顔の高さまで来るとにぱりと笑った。

「でもほんと助かった。ありがとマルコ!」



そんな風に笑われてしまうと、自分がものすごい悪い男のように思えてしまう。そういうトコロがこいつのタチの悪いところだ。


「・・・返してもらおうかねい」

背中に手を回したまま、身体をくるりと反転させる。
ほぇ、と気の抜ける声がアンから漏れた。
突然回った視界についていけないらしい。

顔の横に片腕をついて、もう片方の手は背中に入れたまま。
押し倒されるという状況を味わうのは本日二度目だというのに、なんとも危機感のない顔をしている。




「脱ぐのと脱がされるの、どっちがいい」




な、と口を開いたが、声を発する前にそれはわなわなと震えだした。何をと聞かずとも自分で気づいたらしい。


「どっちもいいよ!返して欲しいならあとですぐに他の代わり見つけてくるから・・・!」

耳まで真っ赤になったアンはオレから逃れようと身をよじった。
が、そのせいでオレの手とアンの身体によって引っ張られた布が少しずれる。
それに気づいたアンは、慌てて動きを止め、今度は俺の体を押し返し始めた。


「ああああたし医務室いかなきゃ!マルコが行けっていったんだよ!どいて!」

あぁ、とこいつの足の傷のことを思い出し、口角を上げたままアンの耳元に顔を寄せた。



「舐めて治してやろうかい」


オレァ不死鳥だからねい、ちょっとは効くかもしれねぇよい。
そう口にすると、今度こそアンはどんっとオレを突き飛ばした。しかも発火つき。
すばやく立ち上がったアンは、震える拳から炎を吹き出し、真っ赤な顔で叫んだ。


「バカマルコ!そんな効果ないくせに!!」



己の許容範囲を超えたらしく、うあぁぁぁぁと奇声を発しながら部屋を飛び出した。









その姿、まさしく脱兎







(うぁぁぁぁあぁあぁあ!!)

(はい、アン隊長ストーップ)


 

 

拍手[17回]

橙色の焔が上がったそこは未だ燻る煙がもやもやと立ち上がり目印となっていたので、迷うことなく行けた。
ばくりと刻む心音を抑え、一つ旋回して高度を下げる。
白く曇るその中で見えたのは、ゴミの様に倒れ伏した住民たち。
おそらくもなにも、アンがやったんだろう。
しかし肝心のあいつがいない。
鼓動がさらに早くなった。
 
突如、じゃばんっと波の音とはまた違うそれが耳を打つ。
視界の悪い中目を凝らすと、ぼんやりと見えた男の背中。
穴の空いたウッドデッキから上半身を覗かせ、はあはあと呼吸を整えている。
 
アンの攻撃の、生き残りかと思った。
だがその男の脇から覗いた細い腕を見た刹那、目の奥が真っ赤に染まった気がした。
 
 
 
 
 
 
風を切り男に迫ると、その頭部を鉤爪で掴み持ち上げた。
突然のことに男から叫びが上がる。
そのまま数十メートル上昇し、翼を人の腕へと戻した。
揚力を失った男2人ぶんの身体は、当然下へと落ちて行く。
その落下速度で男を地面に叩きつけた。
 
「…っかはっ!!」
 
肺が潰れ無様な呻きを立てた男を再び鉤爪で持ち上げ、崩れた石の塊に投げつけるとそれこそゴミのように飛んで行った。
 
ぐつぐつと、血が沸騰する。
原型をとどめない顔を歪ませて喘ぐ男を見ると、笑みさえ浮かんだ。
海賊らしいとも言えるが、人を痛めつけて興奮するなどとんだ悪党だ。
だが、男の萎びた腕がアンに触れていたのだと思うと吐き気がして、気づいた。
 
興奮?
違う、オレは腹が立っているのだ。
まさしく腸が煮えくりかえるほどに。
 
 
 
突如、背後でぼちゃんと水が跳ねる音がしてハッとした。
振り返ると、アンの身体がズルズルと海水の中に落ちて行く。
慌てて走り寄り、力ないその腕を掴み引き上げた。
 
 
「おいっ!しっかりし…!!」
 
 
引き上げた身体を見て、息が止まった。
あろうことか、上半身がさらけ出されている。
ふよふよと、ちぎれた布の断片が浮かんでいるのが目の端に映った。
 
 
「くそっ…!」
 
自身のシャツを脱ぎその身体に被せ、アンの全身を引き上げる。
木の床に横たえると、朧な視線が俺を捉えた。
 
「…はぁっ…マル、コ…」
「っ、何もされてねぇだろうねい…」
 
微かに首が縦に振られ、ほっと安堵の息が漏れる。
だが、何もされていないわけではないのは一目で見て取れた。
 
片頬は赤く腫れ、口端が切れている。
何より服を引きちぎられているのだ。何もなかったわけがない。
 
「ちくしょっ…!」
 
力の入らないだろう身体を抱き起こし、上半身を腕の中に閉じ込める。
海水で冷えた身体があり得ない程頼りなく思えた。
 
 
「…マルコ…、海軍…」
「ああ、聞いたよい。どのみち海軍もこっちに向かってんだ。海上で一戦やることになんだろい」
「...ごめ、」
「…なに謝ってんだい。帰んぞ」
 
そう言ってアンの身体を引き剥がし、膝裏に手を差し込もうとしたとき、アンの足元でじゃらりと金属の重い音が。
 
「…んだこれ…海楼石かっ!?」
「…う、ん…」
「鍵は」
「…わかんない…多分、あの男…」
「くそっ」
 
再びアンを寝かせ、ぶっ飛んだ男の元へ行こうとしたが、ふと思い立ってしゅるりと腰布を引き抜く。
 
「巻いとけ」
 
何のことだと言うようにしばらくぼうっとしていたアンは、はたと自分の身なりに気づいたようで慌ててそれを受け取った。
 
 
 
元来丈夫らしく、幸い意識の飛んでいなかった男のもとへ歩み寄りその髪をひっつかむ。
 
「おいてめぇ、手錠の鍵は」
「ひっ!ふ、ふしちょ」
「ああそりゃオレのことだい。だがんなこた聞いちゃいねぇ。アンにかけた手錠の鍵よこせっつってんだ」
「わ、わかんねぇ!たぶ、地下の中っ」
「地下ぁ?」
 
震える男の指先が指し示す方へ目を遣ると、無残な瓦礫の山が。
 
「あそこに地下があるってのかい」
 
壊れた玩具のようにこくこくと首を振る男にそうかいという返事を送り、再びその後頭部をおさえ顔面を地に叩きつける。さすがに動かなくなった。
 
 
 
瓦礫ばかりかと思えば、一部にぽっかりといかにも怪しいですよと言わんばかりの穴を見つけた。
口の狭いそこに滑り込むよう身体を落とすと、中は案外広く、閑散とした一室となっていた。
薄暗く視界が悪いので自らを燃やし光を灯す。ぼんやりと、机、椅子、本棚などが現れた。
乱雑に積まれた書類、埃くさい土壁はぼろぼろと削れている。
おおかたここで住民が待機し、この上に閉じ込めていた海賊共を下から外から、と一度に捕らえようという感じだろう。
この海で、新世界という億越えのゴロツキばかりのこの海でよくもそんな単純な方法で今までやってこれたものだ。
しかし単純な作戦は美しい、そして成功率は高い。
近頃の海軍はしっかり頭の方も使うらしい。
 
 
古ぼけたひとつのデスクの引き出しを漁り、目当てのものを探すがいっこうに見つからない。
急がなければ海軍がこの島にやって来る。
どのみち海の上で会うだろうが、応援を寄越す時間をやると少しばかり面倒だ。
 
一番下の立て付けの悪い引き出しを引くと、そこにはぎっしりとファイリングされた手配書が敷き詰められており吐き気さえした。
一般人と海軍が手を組むというのはどうもやりにくくて困る。
 
 
「…ったくめんどくせぇ…」
 
 
屈めていた腰を伸ばしばきばきと伸ばすと、ふと目に入ったのは壁にかかる鍵。
あっけない、壁にかかっていたのだ。
 
「…あんじゃねぇか」
 
ひとりぼやき、先ほどから引っ掻き回しぐちゃぐちゃになった室内を縫うようにそちらへと向かう。
 
鍵に手を伸ばしたとき、その横に数枚の紙切れが貼り付けられているのが目に付いた。
まだ新しい手配書。
 
薄暗さのためよくはみえないが、真っ赤な髪に真っ赤に塗られた唇。男のくせに化粧なんてしてやがる(似たようなのはうちにもいるが)。
その隣の男はなんとも可愛らしい帽子を目深に被り、その目の下には濃い隈。
どちらもまだ若く、こちらからしたら子供だ。アンくらいだろうか。ルーキーという奴だろう。
 
そしてその隣にもう一枚。
大きくかざした手のひらに、はっきりとはしないが誰かを彷彿とさせる眩しい笑顔。
仕事の上でもあらかたの手配書には目を通すが、これほどまで楽しげに『生死問わず』と賞金首にさらされる海賊は見たことがない。
 
「つーかまだほんとのガキじゃねぇか…」
 
アンどころではない。
おそらく16、17といったところか。
しかしその首にかけられるのは3000ベリーといった、ルーキーにしてはそこそこの値。
 
 
その下に記された名前を見て、今度こそ数秒息が止まった。
 
 
モンキー・D・ルフィ
 
 
 
今までどこかに行ってはいたものの、頭の中に巣作りしたかのように居座り続けた男の名前が、いとも簡単にそこにあった。
 
 
いやにゆっくりと手を伸ばし、それを壁から剥がす。
近くで見るとますます幼い。
これがアンの、夢にまで見る男。
人違いだとは何故か思えなかった。それがまた気に障った。
 
「…マルコ?」
 
じゃらりと金属の擦れる音がしてはっとする。
振り返ると同時に手配書をポケットにねじ込んだ。
 
「もう動けるのかい」
「うん、あった?」
「ああ、」
 
散乱する書物を踏み越えてアンのもとへ行き、足の錠を外す。
一度アンがぶるりと震え、ぱちりとひとつ、炎が爆ぜた。
 
「…さっさと帰るぞ」
「あ、うん」
 
くるりと背を向けて地上へと続く梯子を登るアンの後ろで、オレは再びポケットの中のものをさらにしっかりと押し込んだのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
思ったより早く当の島へ来ていた海軍とは、島の沖で鉢合わせた。
しかしその軍船にオレたちが手を出すことはなかった。
オヤジが出たのだ。
 
「グララララ!一般人使うったァ賢くなったじゃねぇか!!
だがオレの一人娘に手ェ出させるってのぁ感心しねぇな!」
 
あの長刀一振りで軍艦三隻は大破。ものの数秒だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「マルコこれー」
「…」
 
ノックくらいと言いかけて、その言葉の効果の無さを身に染みているオレは振り返るだけで言いとどまった。
 
 
「あの島にあった。手配書と、海図と、次の島の地図と」
「ああ、結構盗ってこれたのかよい」
「ん、隊員たちが」
「そうかい」
 
受け取ったそれに目を通している間、アンは所在なさげに室内を見渡し、結局オレのベッドに辿り着きそこに倒れ込んだ。
 
 
「寝るなら自分の部屋で寝ろよい」
「寝ないもーん」
 
ふーんと鼻を鳴らして、ベッドの上で両手両足を広げばさばさと動かす。
島に着く前にメイキングしたシーツはすでに残念なことになっている。
 
わざとらしくため息をついたとき、ふとアンのふくらはぎ下部に目が行った。
 
 
「…おい、跡付いてんじゃねぇかよい」
「ん?あ、足?ほんとだ、引っ張られたからなぁ」
「さっさと医務室行ってこい」
「えー」
「行け」
「…ほーい」
 
何様のつもりか知らないが、まったくしょうがないなぁとでも言うようにアンは渋々とベッドから降りた。
しかしアンは、あ、とひとつ声をあげオレを振り返った。
 
「そういえばマルコ、あそこから何取ってきたの?なんか入れてたよね、そこ」
 
そういって指差すのは、椅子に座るオレの腰元。
無意識に手がそこに伸び、布の上から小さな膨らみをなぞるとかさりと乾いた音がした。
 
 
つとアンに視線を戻すと、アンは小さく小首をかしげる。
 
 
「…オレも、お前に聞きたいことがあったよい」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(どんとこい!)
(…いや、張り切らなくてもいいよい)

拍手[14回]

 
つい今しがた背中で聞いた音は、どうとっても施錠の音。
 
 
「あーあ、どうりで気前のいい奴らだと思ったよ」
 
「こりゃ2日どころじゃねぇかもな」
 
「くそ、女買う暇も無しかよ」
 
「食料と資料だけは取ってかねぇと」
 
「まぁとりあえず」
 
「壊そうか、ここ」
 
 
 
柄の悪い笑みを浮かべた男たちは、揃って中央に背を向けた。
すらりと取り出した刀や棍棒を一斉に振りかぶる。
あたしは鍵がかけられたと思わしき扉に脚を叩きつけた。
 
 
「うわっ…!!」
 
外からは十数人と思われる驚きの声。
ガラガラと崩れる石の音でよくは聞こえなかった。
 
 
砂埃が少しづつ引いていった先に見えたのは、あたしたちをぐるりと囲む人人人。
どうも大柄の奴が多い。
 
「さすがと言うべきか、そうやすやすとは行かないね」
 
穏やかな表情を崩さないおじいさんは人の群れの中心でにっこりと微笑んだ。
さっきと同じ笑顔のはずが、もうどう見ても悪そうにしか見えない。
まぁそれはこっちも同じか。
 
「じーさんどういうつもりだよ」
 
「知る必要はない。あんたらはもうここからは出れん」
 
「はっ、あんたたち1600人捕まえる気かよ」
 
「まさか。わしらは白ひげクルー数人捕らえればいいと言われている」
 
 
あたしの隣で刀を構えていた隊員が舌を打った。
 
「てめぇら海軍の回しモンか」
 
「…知る必要はないと言った」
 
 
 
それならそれでいい。
とりあえずこの状況をなんとか船に伝えなければ。
きっと自由行動のクルーたちは酒場にいてこのことを知らない。
きっとこの島のすべてがあたしたちの敵だ。
 
 
「ねぇ、あんたらこの資料持って、あそこ突破して船行って伝えろ」
「了解」
 
3人の隊員は自身のズボンの中(うぇ、)やポケットに海図を突っ込むと、その体を弾丸のように丸めて突進した。
突然の行動に、住民たちの陣営が少し崩れる。
所詮一般人だ。
まず鍵をかけただけであたしたちを閉じ込められると思っている時点でとろっとろに甘い。
 
 
「あんたらは街に降りて酒場にいるクルーを船に戻して」
「了解、気をつけろよアン」
「ん、」
 
 
一際大きな体の隊員が特攻し、再び陣営に大穴があく。
数人の住民を飛び越えたり薙ぎ倒しながら、6人は上手くそこをくぐり抜けた。
何人かがそれを追って行ったが、素人が追いつける様な足をあいつらは持っていない。
 
さて、とあたしは残る住民に向き直った。
多少人数は減ったが、ざっと30、いや50くらいかな?
 
 
「残ったのは一人か。長年この役を買っているがこんな失態は初めてだ」
 
「どうでもいいけど、じーさんたち、本気で白ひげ相手にするつもりなの?死ぬよ」
 
「口が減らないね、火拳のアン」
 
「…知ってんだ」
 
 
くっと笑ったじーさんは、すいと目を細めた。
海賊にも負けない悪そうな顔。
 
「知ってるとも。残ったのが火拳一人とは十分すぎるくらいだ」
 
「今にそんなこと言ってられなくしてやるよっ!」
 
 
 
ごうっと全身に焔が灯る。
さっさと片付けないと出港が遅れる。のんびりとはしてられない。
 
 
「火柱ぁ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「マルコ隊長ー!!ちょ、早く!!」
「あぁん?」
 
やけに慌てふためく隊員が、見張り台からオレを呼ぶ。
隊員がオレとある一方を交互に見やるので、その一方におれも視線を移した。
 
 
「…ありゃぁ、」
 
「アンの火じゃねぇか?」
 
ひょこっとオレの顔の隣に突き出たフランスパンもといサッチ。
 
「…なにやってんだか」
 
「てか結構激しくね?なんかあったんじゃ」
 
 
サッチの言うとおり、なにか胸騒ぎがする。
こう言う予感は、ハズレないものだ。
 
「…ちっ、あの馬鹿」
 
毒づいたとき、少し離れた波止場に続く道から三人の野郎が走ってくるのが見えたのだった。
 
 
 
 
 
 
「なにがあった」
 
ボートを出す暇も惜しみ波止場まで飛ぶと、息を切らした隊員が口々に言う。
聞こえてきた単語をつなぎ合わせると、こうだ。
 
この島は海軍の回し者。アンが住民とやりやっている。結構ヤバイ。
 
 
クセぇとは思っていた。だが寄らないわけにもいかず立ち寄った島だったが。
 
(やっぱり、ってことかい)
 
 
「てめぇらオヤジに知らせろ。出港準備だ。あと船に残ってる奴らで島の食料掻っ払ってこい」
 
 
沖から、サッチのどーしたんだー?という暢気な声が聞こえたが、それどころではない。
ぞくり、とでも言おうか。
胸騒ぎが激しくなった。
オレは迷わず空へと舞い上がった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
勝負は一瞬で着いた。
あたしが焔を出した途端じぃさんは慌ててトンズラこきやがったし、住民はやっぱりただの一般人ですぐに倒れ伏した。
所詮海軍が来るまでの時間稼ぎに、あたしたちを歓迎する振りをするだけのコマだったんだろう。
 
 
 
(…油断した、わけじゃないんだけどなぁ、)
 
 
 
ううんと唸りながら、身を捩るとじゃぶりと背筋の寒くなる音がする。
ずしりと全身にのしかかる重みは暑苦しくて気持ち悪い。
荒い息遣いから逃れるように顔をそらした。
 
 
「へへっ、本当に能力者ってのは不便な身体だよなぁ、」
 
 
見るからに脳筋っぽい男がいやらしく笑った。
 
 
 
 
 
 
 
油断したわけじゃない。それはもう絶対。
ただ、勝負がついたと思った矢先のことだった。
あたしたちが破壊した家には地下があり、そこから一人男が這い出してきた。
気づいたときには片方の足首でカシャンと嫌な音が。
 
「うぇっ!?…っくそっ!!」
 
手錠の掛かった足で男を蹴り飛ばしたが、見かけ通り丈夫そうな男はすぐさま立ち上がった。
まさかとも思い火になろうとしたが、無駄だった。
 
「へへっ、これでもう『火拳のアン』にはなれねぇ」
 
「あんた馬鹿か。それで勝てると思ってんの」
 
 
だが男は口端をにっと吊り上げ笑った。
 
「どうかな」
 
じゃらりと男が持ち上げたのは鉄の鎖。
その鎖が続く先は、紛れも無くあたしの足首。
 
「…用意周到だな」
「はっ、仕事だからな」
 
 
その刹那、ぐんっと足首を引きちぎるような勢いで鎖が引かれた。
あたしはその勢いに逆らうこと無く逆の足で男の顔目掛けて跳ぶ。
硬いブーツの底が男の顔面に当たり、うっと呻き声と共に男が後ろに倒れた。
 
(あっけない、)
 
と思ったのも束の間、倒れた男の顔面に着地したはずが、その足元がばきりと崩れた。
 
「うわっ!?」
 
 
いつのまにか戦っている内に岸に近づいていたらしく、足場は海上に作られた木の床となっていた。そこが今の衝撃で崩れたのだ。
マズイ、と思ったその瞬間、もちろん足元は海だ。
男は顔から、あたしは足から落ちて行った。
 
 
 
 
じゃばんっと全身が海水に浸かる。
岸の割にそこは深く、身体は沈む一方だ。
 
 
(やばいやばいやばいこれは本当に、)
 
 
ごぽっと口から海水が流れ込み、喉がその辛さで焼ける様に痛む。
咄嗟に口元を手で覆ったが、その手にもはや力は入らない。
 
その時、ぐっと強い力があたしを腕から引き上げた。
 
 
 
 
 
 
「っ、げほっ!…ぅ、っはぁ…!」
 
「…っは、死なせるわけにゃいかねぇからな…」
 
 
あたしを引き上げた男は、あたしの上半身を割れた木の床に乗せた。
下半身がまだ海水の中にあるせいで、あたしは呼吸を整えるので精一杯。
 
ふっと視界にあった空が消え、男の濡れた顔で一杯になった。
 
 
「…どんな荒くれモンのアマかと思やぁ、結構な上玉じゃねぇか」
 
「…くそっ…!離れろ…!」
 
「へへっ、七武海の誘い断った女が白ひげに入ったってのは聞いてたが、まさかこんないい女ったぁなぁ」
 
「っ!!」
 
 
ぶんと振り上げた右腕は自分でも子供のパンチ並のスピードだとわかるほどで、あっけなく男に掴まれ床に縫い付けられた。
 
 
「海軍に売るのも勿体無ェくらいだが…味見くらいさせてもらうぜェ」
 
「…っちくしょっ…!!」
 
急所を蹴り上げてやろうかと足に力を込めたが、非情にも脚は全く動かない。
 
男の分厚い手のひらが、へそのあたりから腹を撫で上げているのがわかり一気に鳥肌が立った。
 
「…っ触んな!!」
 
ぐっと肘に力を込めて、頭を持ち上げ男の額にぶつける。
その衝撃で思考が飛びかけたが唇を噛んで耐えた。
くらりときたのは男も同じらしく、一瞬頭に星が飛んでいたようだがすぐに持ち直し、このアマと叫んであたしの頬に拳をめり込ませた。
 
「っ!!」
 
一瞬で口内に鉄の味が広がり、痛みというより痺れが酷い。
 
(いやだいやだいやだ)
 
こんな海の中で気を失えば間違いなく良い結果など見えない。
その前にこんなブ男に襲われるなんてもってのほかだ。
 
(…くそっ)
 
ブレる視界の向こうで男を睨みつけたが、オトコはにやりと卑猥な笑みを浮かべてあたしの胸を包む布を一気に引き裂いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「っうあっ!!」
 
身体にのしかかっていた重みが一瞬で消えた。
 
その時視界一杯に広がったのは、比喩ではなく、本当に。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
…マルコ、
 
 
 

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