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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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「ムリッ!ムリムリムリムリッ!」
 
「いいや、お前さんなら適役だ」
 
「モッ、モデルとか・・・!」
 
 
そういうのはもっとキレイで大人な人がするやつだ!と全身で拒否を露わにしたアンは、逃げ惑う小動物のように狭い応接間をちょこまかと動きイゾウから距離を取った。
片やイゾウはお馴染みのソファから一歩も動くことなく、警戒心むき出しの野良猫を手なずけるような気分で、まぁ座れよとアンを視線で促した。
それでもぐるると唸り声まで聞こえてきそうなアンの様子に、イゾウは目の奥で仕事人の光をちらりと光らせてから、大仰にため息をついてみせた。
 
 
「参ったな、んじゃぁ今日のオレの仕事はおじゃんってわけだ」
 
「え」
 
「モデルがいねぇんじゃカメラも入り用じゃねぇだろ」
 
 
ああ残念だ、と頭を垂れたイゾウの姿を見つめて、アンの脳内はぐるぐると巡りだす。
 
 
 
(…イゾウ、こまってる。でもやっぱ、モデ、モデルとか…!)
 
 
 
そんなアンの葛藤を目ざとく感じ取ったイゾウは、最後の一押しとばかりに口を開き、隣でイゾウの顔と時計の文字盤の間を視線が行ったり来たりしている女性に向かって声をかけた。
 
 
「ワリィな手間取らせて。撮影は日変えるしかねぇ。差し入れの菓子は適当に何とか始末してくれ」
 
「「そんなぁ!」」
 
 
悲壮な顔つきで声を上げた二人は、きょとりと互いを見つめあった。
勿論二人が悲嘆した内容は全く異なるのだが。
より一層深刻な顔でイゾウに詰め寄ったのは、アンではないその女性のほうだった。
 
 
「それじゃ入稿間に合いませんって!」
 
「んなこと言ったってしゃぁねぇだろうが」
 
「もとはと言えばイゾウさんが余計なこと言うからあの女の子がヘソ曲げたんですよっ」
 
「はんっ、あの女も世間の風当たりがわかってよかったじゃねェか」
 
「もうっ」
 
「あ、あの、イゾッ」
 
 
 
憤る女性と飄々としたイゾウの会話に割って入ったアンは、うつむきがちのまま視線だけ上げて、恐る恐ると口を開いた。
 
 
「お菓子・・・捨てちゃうの?」
 
 
顔の真ん中に大きく「もったいない」と書いたアンは、だからどうするというわけでもなしに期待を込めたまなざしをイゾウに向けた。
放り込んだ餌にまんまと食いついた魚をすでに釣り上げた気分のイゾウは、そうさなぁと口角を上げた。
紅を引いたように赤い唇が、月のように弧を描く。
 
 
「アンが代役やってくれるってなら、差し入れの菓子も将来安泰なんだが」
 
 
 
ごくりと生唾を飲み込む音が、イゾウにも、その女性社員にもしっかりと聞こえた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
アンとイゾウと女性社員をのせたエレベーターは、すいんすいんと上昇していった。
 
 
「どこまで行くの?」
 
「16階」
 
「サッチに言わないで来ちゃったけど大丈夫かな」
 
「4階の奴に適当に言っといたから問題ねぇよ」
 
 
それよりさっきからピコピコ目にうるさいその携帯の相手のほうを心配すべきなんじゃねェのと、のど元まで出かかった言葉は丁寧に胸のうちまで押し戻す。
忘れているならそれはそれで都合がいいというもので。
 
 
そしてチン、と可愛らしい音とともに開いた扉の向こうは、アンの予想に反した世界だった。
 
 
 廊下。
長く殺風景な冷たい廊下がずっと遠くまで伸びていて、その両脇にはいくつもの扉が行儀よく整列している。
 
 
「…なんか今までのフロアと全然違う」
 
「ああ、ここぁ吹き抜けのさらに上だかんな。控室に衣装室に化粧室、一番奥がスタジオだ」
 
「・・・ここ出版社だよね?」
 
「おうよ。オレがどうせここに写真持ってくんのに別のとこで撮影すんの面倒くせぇってぼやいたら、オヤジ・・・ここの社長が、一番上のこの階ぶちぬいて作ってくれたってわけよ」
 
「・・・」
 
 
 
どんだけフリーダムだ。
 
 
 
「アンはここで言われるがままに着替えて。そったらこっち、A-6って部屋で化粧な」
 
 
そういってイゾウが開いたドアの向こうを覗いたアンは、思わずゲッと顔をしかめて後ずさった。
色とりどりの服飾品が所狭しと並んだそこは、ちょっとした森林だ。
思わず菓子につられて引き受けてしまったものの、大きな後悔がどどっと押し寄せてきた。
 
 
(…ファッション誌じゃないって言ってたけど、)
 
 
いやしかし菓子のため、違うイゾウのためだと、ふんっと大きく息をついたアンは室内に大きく一歩を踏み出した。
 
 
 
「アン」
 
 
 
背後で呼ばれたその声にほぇ?と振り返ったアンの視界は、軽快な音とともに一瞬真っ白に染まった。
そしてすぐに取り戻した景色の向こうには、カメラを構えてにぃと笑うイゾウの端正な顔。
 
 
「これはオレの個人用」
 
 
 
別嬪になってこいとアンの背中を押して、イゾウは軽やかな足取りで最奥の部屋へと歩いて行った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
歩くたびにふわんと膝辺りをくすぐる感覚はいくらたっても慣れない。
変なのと座ったまま足をパタパタさせていれば、じっとしてとメイクスタッフにたしなめられた。
だからと言ってこわばった表情でじっとしていても、力を抜けと怒られる。
 
モデルと言う仕事もカメラの前でにっこりしてるだけじゃないんだなぁと、ページの向こう側で微笑む女の子たちを思い出しながら鏡に映る自分の顔をぼんやり眺めていた。
 
 
 
 
「あなたいくつだっけ?大学生かしら?」
 
「にじゅう、いちです」
 
 
ぽふぽふと頬に当てられる柔らかな質感に戸惑いつつ答えれば、一瞬スタッフの手の動きがぴたりと止まり、それからすぐに動き出した。
 
 
「・・・やだ、まだ18、19かと」
 
 
あたしと5つも変わらないのねと呟いた女性は、ため息と共にアンの顎をくいと持ち上げた。
 
 
「お化粧はいつもしてないの?」
 
「化粧品高いし、やり方、わかんないし」
 
 
それこそ高校時代、友達にふざけてやられたことがあるくらい。
だがその時化粧を施されたアンの顔を見た友人たちに、やっぱあんたには必要ないねと口をそろえて言われたので、自分には似合わないのだと思っていた。
たとえそこで褒めちぎられていたとしても、やっぱり買えないものは買えないのだが。
 
 
 
「はいできた。次、髪の毛よ」
 
 
あっちの椅子に座ってねーと指差された方向に、アンは半ばげんなりしつつ大人しく向かったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
案内されたスタジオは、たくさんの物々しい機械類に囲まれて一瞬腰の引けるような雰囲気の場所だった。
しかしその部屋の中で一角だけ、白い板で覆われていて、その中は可愛らしい家具が配置された完全なる「部屋の中」が作られている。
 
アンがその景色を物珍しげな視線で惜しげもなく見回すたびに、アンに気づいたスタッフたちが一様にぎょっとした。
 
 
 
(おいあんな可愛いの、どっから連れてきたんだよ!)
 
(イゾウさん直々につれてきたらしいぜ)
 
(どこの事務所の子だ?)
 
(素人だとよ)
 
(…嘘だろ、)
 
 
 
あんなの野生にしといちゃいけねぇよと、スタジオ中のスタッフに囁かれる言葉たちはアンにも聞こえていてもいいはずだが、当の本人は落ち着きなくうろうろしているため幸い耳には届いていない。
 
ここに座って少し待っててと言われたアンは、忠犬よろしく大人しくそこに腰掛けて、刻々と来るその時を待っていた。
勿論、差し入れの菓子類にお目にかかれる「その時」である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
一方、4階ではここもここもと現れる空いたコマの穴埋め作業に翻弄されていたサッチが、やっと暇を見つけてコーヒー片手に応接間に戻ったところだった。
 
 
「・・・あれ」
 
 
しかし当然そこに、数十分前まで座っていたはずの女の子は見当たらない。
ついでにあの性悪カメラマンも。
 
 
「アンちゃん?」
 
 
とりあえず机の下やゴミ箱の中なんかも覗いてみるが、もちろんいない。
 
黙って帰るはずがない、それにもう少しここにいたいと本人が言っていたばかりなのだ。
 
 
 
「え、何で消えてんの?」
 
 
一応携帯を開いてみたが何の連絡もナシ。
どうしたもんかと途方に暮れていた際、応接間を横切ろうとしていた若い編集者が、サッチを見てあ、と声を上げた。
 
 
 
「サッチさん、ここにさっき座ってた女の子っすけど」
 
「おうおう、知ってんの?」
 
「その子ならさっきイゾウさんと一緒に・・・」
 
 
 
 
さぁっと、血の気とはこうやって引くのだとサッチは強く身に染みて感じた。
バイバイおれの血液。
 
 
 
「・・・まじで」
 
「臨時のモデル捕まえたとかだったんでてっきり…違うんすか?」
 
「…馬鹿野郎、ありゃマルコんとこの専属だっつーの」
 
 
 
その言葉を聞いた4階スタッフたちの血の気も、サッチ同様すうっと急下降したのだった。
 
 
 
 

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



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