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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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カッ、カッ、カッ、と細いヒールがわざとコンクリートの床を痛めつけようとするかのように高い音を鳴らす。
かかとの高いパンプスの少し暗めの茶色は、彼女のオレンジの髪を余計明るく際立たせた。
 
 
「んなぁ~、ナミさーん」
 
 
カッ、カッ、カッ、と淀みない足取りでナミは歩き後ろを振り返りもしない。
薄い灰色の、かぎ編みのマフラーからはみ出た彼女の短い髪の毛が歩調に合わせてぴょこぴょこ跳ねる。
その動きが、まるで怒っているみたいだ。
いや、怒っていることは確かなんだけど。
彼女は足取りを緩めることも、サンジの声に振り向くこともせず歩き続ける。
ああ、とポケットに手を突っ込んだまま寒空を見上げた。
そろそろ夕暮れ時だ。
今日はあまり天気が良くなかったが、夕日だけはかろうじて見えた。
西の空がほんのり赤く染まっている。
 
喧嘩なんて些細なことをきっかけに、たやすく沸騰する。
理由はわからない。
ナミに言わせると、わからないことが既にダメ、らしい。
 
女の子の気持ちには敏感なつもりだった。
喜ばせようと計らったことはたいてい思い通りに事が運び、見たいと思った笑顔をちゃんと手に入れられる。
 
それがどうだ。
 
ナミのことになると途端に手に負えない。
あっちこっちする彼女の心についていくので精いっぱいで、強い人だと思って感心していればちょっとしたことでぽきりと折れてしまうこともある。
守ろうと体を張れば彼女はしたたかに立ち上がる。
そして振り向いて笑うのだ。
 
──バカね、サンジくん。
 
 
そんな顔をされてしまえば何も言えない。
そうやって振り回されることが少し楽しいんじゃねぇの、と言われたら否定できない。
 
それはともかくとして。
いま彼女は怒っている。
きっと、いや、絶対、オレに。
 
サンジは左手にぶら下げた紙袋をちらりと見下ろして、またため息をついた。
するとナミがぴたりと立ち止まった。
俯いていたサンジはそれに気付かず、ナミにぶつかる寸でのところで立ち止まった。
目の前でふわんと揺れた髪の毛から微かな甘い香りが鼻腔をくすぐった。
 
もしかして許してくれんの、と顔がほころびかけたそのとき、ナミが勢いよく振り向いた。
だめだ、怒ってる。
 
 
「なんでアンタがため息つくのよっ!バカ!」
 
 
ナミは見上げざまに言葉をぶつけるように放つと、またくるりと踵を返して歩き出した。
虚を突かれて、しばらくその場に立ち尽くした。
ナミの背中はどんどん離れていく。
 
ああ、とまた空を仰いでしまった。
だって、わからないものはわからないんだ。
彼女の気持ちなんて。
わかりたくても教えてくれないんだから。
左手にかかる微かな重さがむなしい。
 
 
 
今日はバレンタインだ。
街の中は腕を組むカップルか、小さな紙袋を片手に提げ頬を染めて歩くレディたちであふれている。
例にもれずサンジとナミも今日はデートと銘打ってふたりで街に出かけた。
 
サンジは今年も、バラティエの厨房ではなく自宅のキッチンを使ってチョコレートを作った。
毎年ルフィが、サンジが持ってきた大半をあっという間に平らげてしまうが、ナミのだけはきちんと別に用意してある。
オレンジピールを混ぜ込んだプラリネショコラ。
チョコはビターとミルクをブレンドした。
素材は店でも使う一級品。
 
毎年と言っても、やはり今年は去年とは違う。
今年は彼女が隣にいる。
断りなく手をつなぐことができる。
なんならキスだってできるはずだ。
それなのに。
 
 
『んナミさぁん!はいっ、オレから愛のカタマリをプレゼント!』
『…バレンタインだから?手作り?』
『そだよ、今年も頑張っちまった』
 
 
デートの途中、お茶をしに入ったカフェでチョコレートを渡した。
ナミは渡された箱をテーブルに置き、じっと見つめている。
開けて開けてと促すと、ナミはしゅるりとリボンを紐解いた。
我ながらよくできたと思っていた。
いつもなら、キャアと可愛い悲鳴を上げて笑顔を見せてくれる彼女がそのときは黙ったままだった。
一瞬、アレ、とよぎった不安も、もしかして感動でうち震えちゃってんの?と調子のいい憶測を思いついて再び口を開く。
 
 
『これな、プラリネショコラなんだけど中にオレンジピールとナッツを混ぜ込んであってナミさん用にしてあんの。ちょっぴしリキュールも入っててな、コアントローっつってみかんの皮の…ぶっ』
 
 
冷たい紙袋がサンジの顔面に張り付くようにぶつかった。
紙袋が顔から膝にずり落ちるまで、何が起こったのかわからなかった。
視界が開けると、歪んだナミの横顔が見えた。
え、なんで。
 
 
『バカ!知らない!』
『え、ちょ、ナミさん?』
『帰る!!』
 
 
ナミは渡されたチョコレートの箱をテーブルの上に置いたまま、自分のカバンをひっつかみ本当にカフェを出ていく。
サンジはその後ろ姿をぽかんと見送り、自分がいかにまぬけ面をさらしていたかに気付いて慌ててナミを追いかけた。
渡したチョコレートを再び紙袋に収めるのを忘れない。
バレンタインなのに…という周囲の視線が痛かった。
もどかしさに歯を噛みしめがら急いで会計を済まし、慌てて店を飛び出した。
 
 
 
 
 
立ち止まって上を向いていた顔をナミへと戻すと、どんどん遠ざかっていく小さな背中が20メートルほど先の橋の上でぴたりと止まった。
それに気付いて、サンジは外国の映画で見るようなしぐさで額に手を当てた。
「オゥ…」と声が出てしまった。
小さな背中はますます小さくなり、オレンジの頭は俯いている。
きっと形のいい唇をかみしめて、自分のつま先を睨んでいるに違いない。
背中に「なんで追いかけてこないのよ」と書いてある。
こういうことをするからオレはいつまでたっても離してもらえないのだ。
離れる気なんてさらさらないが。
 
サンジは足早にナミの背中に近づいた。
 
 
「ナミさん、ごめんって」
「…理由もわかんないくせに、簡単に謝るんじゃないわよ…」
「そうだけど」
 
 
それ以外にどう言えって言うんだ。
 
 
「な、ごめん。こればっかりは本当オレわかんないよ。オレ何がダメだった?」
 
 
チョコは嫌いじゃないはずだ。
プラリネショコラが嫌だったんだろうか。
いや、彼女はそんな小さなことでいちいち腹を立てたりしない。
…いや、小さなことでよく怒りはするがすぐに収まる。
こんなに長引かせたりしたことはなかった。
 
俯いたナミの肩からマフラーの先が流れ落ちた。
それと同時にナミの顔を覗き込み、ぎょっとした。
 
 
「な、泣くほど!?ぅえ、ちょ、待ってナミさ、」
 
 
ナミは唇をかみしめて、口げんかに負けた小さい女の子のように震えながらぽろぽろ涙をこぼしていた。
 
 
「…ま、待って!ここじゃなくて……オレんち!オレんち行こう、ナミさんちより近い」
 
 
なっ?と問いかけてもナミは顔を上げず立ち尽くしている。
日はもう半分は沈み、あたりは薄暗く人の顔が見にくくなってくる時間帯だ。
もういいやと強引に腕を掴みサンジが歩くと、ナミもおぼつかない足取りで付いてきた。
ああもう今日は、なんなんだ。
 
 
 

 
 
「落ち着いた?」
 
 
顔を覗き込むように尋ねると、未だ目を潤ませたままこくんと頷いた。
赤い目に赤い鼻のままだがとりあえず泣き止んでくれた。
しかし泣き止んだら泣き止んだで、まだ怒りは収まっていないらしい。
ナミの目はサンジを見ようとしない。
 
ナミをベッドに腰掛けさせて、自分は小さな丸椅子に腰かけた。
ぽりぽり頬を掻いて、ああと声には出さず呻いた。
 
今日のナミさんはまるで子供だ。
意地を張ってしまったのか口を開こうとしない。
少し頬が膨れているのが、「あたし怒ってるんだから」と強調しているようだ。
 
少し考えてから、そっとナミの手を取った。
振り払われるかな、と少し思ったが、ナミはどうすることもしない。
 
 
「な、ナミさん。オレマジでわかんない。教えて?なんで怒ってんの?」
 
 
なるべく下から、下から、と意識して、懐柔するよう柔らかい声を出したつもりだった。
ナミはつながった二人の手から反らしていた視線を、そっと戻した。
 
 
「チョコを…」
「うんうん」
「なんであんたが作るのよ」
「え?」
 
 
きょとんと、思わずではあるが目を丸めると、ナミはまた浮かんできた涙をそのままにサンジを睨むように見据えた。
 
 
「なんでバレンタインなのにあんたが作っちゃうのよ」
「え…だってオレ、毎年作ってるよ?」
「…あんたが作ったやつになんか、勝てるわけないじゃない…」
 
 
ぽろっと珠になった涙がナミの肌に染み込むことなく転がるようにひとつ落ちた。
それを目で追ってから、やっと気づいた。
 
オレが先に手作り渡しちまったから、いけなかったのか。
 
 
「さ、サンジくんの、お店で売ってるやつみたいなんだもん…あんなの見たら、あたしが渡せなくなるじゃない…」
 
 
もうひとつ涙が転がり落ちる前に親指で拭ってから、ナミの顔を覗き込んだ。
期待で頬が緩みそうになるのを慌てて引き締める。
 
 
「じゃあナミさん、オレにチョコ作ってくれたの?」
 
 
ナミは頷くことも、うんと言うこともしなかったがたぶん当たっている。
もう駄目だ。
ベッドに腰掛けるナミの腕を引いて腕の中に閉じ込めた。
 
 
「オレナミさんのチョコ超欲しい」
「…いやよ、もう渡さない」
「えぇー…あ、ナミさん、カニってなんで高いかわかる?」
 
 
唐突な質問に、ナミがは?と問い返す。
 
 
「じゃあキャビアは?なんで高いかわかる?」
「…値段の話?」
「そう」
「…あんまり採れないからじゃないの」
「そう、希少価値ってやつだな。で、それを基に考えてみるわけよ。その気になれば売れそうなモンをいくらでも作れるオレのチョコ。かたやいつもバレンタインは箱のチョコを買ってばらして済ますナミさんがオレのために作ってくれた初めてのチョコ。どっちが値段は高くつくでしょうかっ」
「……」
「あんたのに決まってんだろーっ!まぁこの価値はオレにしかわかんねぇっつーか、オレにしかわかんなくていいけどもだな。オレだけがナミさんのチョコにとんでもない価値を見いだせるの」
 
 
オワカリ?と耳元で問うと、くぅ、と返事ではないが何か声が漏れた。
背中のシャツがナミの手に握りこまれる。
サンジがナミの手を引いて抱きしめていたので、ナミの腰はベッドから浮いている。
これじゃ辛いだろうと気付いて、ナミを再びベッドに深く座らせて自分は床に膝をついた。
 
 
「バレンタイン、してくれる?」
 
 
ナミはサンジを見下ろして、少し逡巡する顔をしてからおずおずとかばんを漁りだした。
取り出した小さな箱を、サンジに差し出す。
 
 
「…見た目も味も、サンジくんのには」
「だからんなの関係ねぇっつってんだろ、いい加減にしなさい」
 
 
怒られたナミはう、と口をつぐんだ。
嬉々として箱の包みを開いていくサンジの手の上を、嫌そうに目を眇めて眺めている。
 
 
「…ガトーショコラだ」
 
 
長方形に切り取られたケーキは、片隅に生クリームとみかん一粒をのせていた。
 
 
「…焦げた端っこ切ってったら小さくなっちゃった」
「言わなきゃわかんねぇのに」
 
 
くくっと笑うと、上の方にあるナミの顔も少し笑った気がした。
 
 
「あとでフォーク持ってくるよ。一緒に食おう」
 
 
箱のふたをきちんと元に戻すと、ナミは意外そうな顔をした。
 
 
「なんであとでなの?」
 
 
それには返事はせず、元通りにしたケーキの箱をそばにある小さなテーブルに置く。
ナミはそれをきょとんと見下ろしていた。
膝をついたままナミの手を取った。
少し長い爪の先に唇を寄せる。
ぱくっと口に含んだ。
 
 
「ちょっ!」
「──可愛いオレのナミさん。本当可愛い。どうにかなっちまいそうだ。つーかどうにかしちまいてぇ」
 
 
頭から食っちまいてぇよ、と呟くと、小さくばか、と聞こえた。
指の先を少し舐めて、ちゅっと音を立てて指を離す。
 
 
「可愛い。本当、もうオレだめだ」
 
 
今日振り回されて、ああもう、となんどため息をついたかわからない。
それでも募るのはいとしさばかりだ。
オレはもう相当のところまで来ている。
末期も末期。
病院に行けばご自宅で最期の時をご家族と過ごしてくださいと言われるだろう。
 
 
まるで懇願するように、ナミの膝に額をつけた。
ひんやりしている。
 
 
「すきだよ。ナミさん、すきだ、すげぇすきだ」
 
 
すきだすきだ。
いつもは自分でも驚くくらい流暢に甘い言葉があふれ出るのに、今日はダメだ。
ナミもそれに気付いたのか、くすくす笑い出した。
さっきまでぼろぼろ泣いてたくせに、もう笑ってる。
 
 
「いっつもペラペラ口説き文句言うのに、今日はそれしかないの?」
「…十分甘いだろ?」
 
 
俯いて額をナミの膝に付けているのでその顔は見えないが、ナミがふわりと微笑んだ気配がした。
 
 
「いつも甘すぎるのよ」
「…甘いのは嫌いかいレディ」
 
 
少し額を浮かせてちらりとナミを仰ぎ見ると、そうねとナミは考え込むふりをした。
 
 
「甘すぎるのは好きじゃないけど、嫌いじゃないわ」
 
 
それはよかったと呟くと、ナミはサンジの顎に手をかけて顔を持ち上げる。
そのまま腰をかがめてキスをした。
 
 
「でもたまにはベッタベタに甘いのも欲しくなるわ」
「オーケー、オレはエキスパートだ」
 
 
 
どうぞお望みのままに。




 
 
 
中毒にならない程度でよろしく


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