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OP二次創作マルコ×アン(エース女体化)とサンジ×ナミ(いまはもっぱらこっち)を中心に、その他NLやオールキャラのお話置き場です
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一度自分の部屋へ戻って、着替えの用意を持ってもう一度外に出た。
階段を下り、4番隊の部屋群の方へと角を曲がると突き当りに部屋が見える。
上の階と構造は同じなのだからわかりやすい。
4番隊の部屋群は静まり返っていた。
時刻はもう夜の3時に近いだろう。
4番隊の隊長室は鍵が閉まっていなかった。
鍵を持ったままアンが中に入り、内側から鍵をかければ誰も入ることができないというわけか。
そっと覗くように顔だけ中に突っ込み、それからそろそろと扉を開いていき中に足を踏み入れる。
向かって右側にベッド。左側に本棚。正面にデスク。
この配置は確か2番隊の隊長室も同じだった気がする。
ただこの部屋は、やっぱり人の匂いがした。
デスクの上は数枚の書類が開かれたファイルから覗いていたり、カップが置かれていたり、ペンが散乱していたりと遠目に見ても結構汚い。
鍵は──悩んだがかけなかった。
もしかしたらサッチが、仕事に関する急用でどうしても部屋に入る必要が出てくるかもしれない。
 
アンは部屋の左奥の扉に近づきながら、大きな本棚に目いっぱい詰め込まれたたくさんの本の背表紙を目で追っていった。
やっぱり隊長だからだろうか、小難しい題の本がいくつかある。
しかし本棚の下方に集中していた分厚い本はアンにでも何かわかる。レシピ本だ。
そして上方には比較的薄い本が収まっている。雑誌らしい。
思わず立ち止まって眺めていたアンは、ハッとして歩き出した。
人の部屋の風呂を借りるだけならまだしも、ついでに部屋の物色なんて趣味が悪い。
 
風呂場の扉は開いていた。
中は白い浴槽と備え付けのシャワー。
入り口前の床にはアイボリーのタオルがひいてあった。
手前でブーツを脱いでそっとタオルの上に裸足をのせるとふわりと気持ちよく乾いていた。
着替えを入り口手前の小さな机に置いて服を脱ぎ、中に足を踏み入れた。
いつも使うシャンプーや石鹸はナースの風呂場に備え付けてあったのを借りていたので、アンに手持ちはない。
言えば快く貸してくれるサッチの顔が思い浮かんだが、熱いお湯を浴びて体を流せればそれでいい。
そう思いながら壁にかけてあったシャワーを手に取ったとき、ふと足元に薄い桃色がちらついた。
男の風呂場にはそぐわない色だと、何気なく視線を落とすと桃色の形の異なるボトルと同じく桃色のソープがシャワーの真下に置いてある。
コックをひねる手を止めてそれを凝視したが、どうも女物らしい。
まさかこれがサッチの愛用品か。…いや人の私物に口をはさむのはよくないけど、なんとなくフクザツ。
しかしすぐ、バスルームの左隅に立つ灰色のボトルが目についた。
どうもこれは男物らしい。となるとこれがサッチの使っているやつか。
じゃあどうして、こっちが隅っこにあってピンクのこれが真ん中に?
 
しばらく裸のまま冷たい床の上に立ち尽くしてから、思い当った事実にああと顔を歪めた。
勢いよくコックをひねると突然頭の上に冷水が降りかかったが、すぐに冷水はお湯へと変わっていき強張った肩の筋肉が弛緩する。
 
使用済みのはずなのに乾いていたバスマット。
真ん中に位置する女物のシャンプーと隅に寄せられた男物。
アンが部屋へと着替えを取りに戻ったあの少しの間で、と思うとますますアンを困らせた。
ぬかりない。し、そこがつかめない。
女物のシャンプーは、ナースの姉さんが使うものと同じ甘い花の香りがした。
 
 
 
 

 
 
翌朝は少し寝坊した。
明るい部屋の中で起きるのは、この船に乗ってから初めてだったので少し戸惑った。
 
昨日ようやくベッドに入れたのは3時半ごろだったと思う。
アンが手早くシャワーを終えて着替え、部屋の外に出てもサッチは見当たらなかった。
シャワーを終えたこともその礼も伝えたいのに、当人が見つからないのではどうしようもない。
仕方なく、濡らしてしまったバスマットは入り口手前においてあったタオルラックにかけて、部屋の鍵をデスクに置いて出てきた。
熱い湯を浴びてしばらくは目が冴えていたが、部屋に戻ると思い出したように眠気が再発し、ベッドに横たわると落ちるようにすとんと寝た。
 
 
(…すっきりしてる…)
 
 
時間や場所の間隔が全部吹っ飛んでしまったかのようにつかめず、しばらくベッドで上体を起こしたままぼうっと壁を眺めていた。
 
 
「アンー、メシ食いっぱぐれるぞー」
 
 
ドンドンと通り際に隊員がアンの部屋を叩いてくれた音で、やっと意識が下方から引っ張り上げられた。
 
 
慌てて食堂に行くと、中はすでに食後のブレイクモードでコーヒーの香りが満ちていた。
ブランデーの匂いがいつでもするのは、海賊船なのだからまあ仕様だ。
アンは食堂に駆け込んで、いつものカウンターにセルフ形式の朝食が置いてないことに愕然として立ち尽くした。
 
 
「く…くいっぱぐれ…」
 
 
通りすがりの3番隊隊員が苦笑付きで励ましてくれたがろくに返事も返せなかった。
アンにとって三食のうち一食を逃すことは一日の3分の1のエネルギーを取り損ねたということで、つまり有事の時は3分の2の力しか出ないということだ。
生存本能の危機に等しい。
 
マルコが忠告した通りになってしまった。
心配いらないと大口をたたいたのに、そもそもあの時は大口だなんて思ってもいなかったのに。
食堂の入り口に膝をつく勢いでアンは肩を落とした。
 
 
「何やってるんだ?」
 
 
随分上の方から聞こえた声に、アンが陰の差す顔を上げると大きな体がアンの背後に立ちアンを覗き込むように背をかがめている。
どうやらアンが入り口前に立ち尽くしているので、巨体が食堂に入ることができなかったらしい。
しかしアンは「朝飯逃した」ことに頭がいっぱいでそこまで考えが回らず、へにゃりと歪んだ眉のままその巨体を見上げた。
 
 
「…朝メシ…」
「寝坊したのか?」
 
 
コクコクと頷くと、巨漢──ジョズは困ったような苦笑いで少し笑いごそごそと身に着けた鎧の腰辺りを漁った。
 
 
「オレも昔は何度かやったよ」
 
 
すっと差し出された大きな掌の上には、小さな白い布袋。
アンがそれをぽかんと見つめ、同じ顔のまま高くにある顔を見上げるとジョズは促すように手のひらを揺らす。
 
 
「腹の足しにはならないかもしれないが」
 
 
アンは顔の前のそれをそっと持ち上げて中を覗いた。
ふっと甘い香りが広がる。
 
 
「…クッキーだ…」
「もうそろそろ仕事始まるだろう。もらいものだが、よかったら食え」
「いいの?」
 
 
強面の顔は、にこりと笑いながら大きく頷いた。
 
 
「ありがと…!」
 
 
小さな袋のクッキーを宝物のように手のひらで包み、アンが顔を上げてそう言うと、ジョズは一瞬戸惑ったように視線を彷徨わせたが、すぐに笑顔を取り戻してアンの頭に大きな掌を置いた。
 
アンはすぐさまその場でクッキーを一つ取り出し口に放り込む。
 
 
「うまい!」
「そ、うか」
 
 
それはよかった、ともう一度笑ってジョズはそそくさとアンを残し食堂の奥へと歩いていく。
アンは大きなその背を見送って、ジョズの微妙な違和感に首をかしげながらもうひとつクッキーを口へ放り込んだ。
ウマイ!
 
 
 

 
 
午前中の仕事(今日は洗濯当番だった)が終わると、アンはいの一番に食堂へと駆けだした。
もらったクッキーはウマかったけどさすがに腹の足しにはならなかった。
異臭を放つ洗濯物を詰め込んだ巨大な籠をいくつも洗濯槽まで運び、全手動の洗濯機を回し、それらすべてを甲板に干すだけで半日が簡単に過ぎてしまう。
クッキーから得たエネルギーは、クルーの洗濯物を回収し始めたころにはすでに切れていた。
 
セルフ形式の朝食・夕食とちがって、昼食はワンプレートだ。
アンが食堂に着いたころには、既に食堂と厨房を隔てるカウンター前にプレートを受け取るクルーが列をなしていた。
3番隊クルーが多いところを見ると今日は非番らしい。
アンも意気込んで彼らの後ろにぴたりと並んだ。
腹の音がうるさい。
 
アンの腹の音が届いたのか、前に並んでいた数人のクルーが振り向いた。
ぱちりとアンと目があった途端、人相のいいとは言えない彼らの顔がぱあっと明るくなった。
 
 
「おうアン、やけに早ェな」
「腹減ったの」
 
 
そうかそうかと一様に頷く彼らは、また一様に自身の上着やズボンのポケットをまさぐりだす。
異様なその光景にアンがぽかんとしていると、またたく間にアンの目の前にいくつものごつい手が差し出された。
 
 
「これやるよ!」
「こないだの島で買ったヤツだけどまだ食えるぜ!」
「こっち!そんな腐りかけのよりこっちのが旨いぜ!」
「テメェのこそ明らかに色おかしいだろ!」
 
 
目の前で屈強な男たちが押し合いへし合いしながら、アンに様々な小さな包みを渡そうとアンを取り囲む。
自分の物の方がおいしい、いやこっちのほうがとどうやら食べ物らしいそれらを手に喧嘩まで始まる。
虚を突かれたアンは、やっとのことで言葉を発した。
 
 
「…もらっていいの?」
「もちろん!」
 
 
男たちの怒声のような野太い声が重なった。
アンの薄い手のひらに次々と包みが置かれていく。
片手では受け取りきれず両手を差し出したがそれでも積み重なるそれらは手の隙間からこぼれていく。
アンの背後からも、「抜け駆けすんな!」と叫びながら何人かが駆け寄ってきた。
細かい菓子がアンの腕で抱えきれないほど山積みにされていく。
ひとつもらうごとに「ありがと」「さんきゅー」と返していたアンも、その数の多さにいつしか目が回ってしまった。
気の利く一人がアンに大きな麻袋を一つ手渡してくれたのでそれに入れていったが、突如始まったプレゼント攻撃が一息ついたころにはその袋もいっぱいになっていた。
まるで泥棒のようにお菓子のつまった袋を肩に担いだアンは、なにもしていないのに得た収穫に自然と顔がほころんだ。
 
 
「すごい、おやつ何日分もある!」
 
 
アンがひひっと笑うと、先ほどまで隣り合う敵を押しのけながらアンの前まで進み出ていた男たちの頬がだらんと緩んだ。
 
しかし突如、カンカンッと鋭い金属音が食堂に鳴り響いた。
 
 
「そんなモンでアンを釣った気になってんじゃねぇぞ野郎共!」
 
 
片手に金属のお玉杓子を掲げたサッチは、カウンターの向う側で鼻息荒く仁王立ちしていた。
虚を突かれた男たちとアンはぽかんとサッチを見つめ返す。
 
 
「コックを出し抜いてアンの胃袋掴もうなんて百年早ェんだよ!」
 
 
顎を反らせながら、サッチはカウンターにどかりと大きな皿を置いた。
昼食用のワンプレートよりひとまわりもふたまわりも大きい皿に、いつもと変わらない昼食が山盛りと、大きな骨付き肉が肉汁を滴らせて二本。
皿の隅には小皿に盛られたプリンとたっぷりの生クリーム。
アンの目が一瞬で奪われ輝いたのと同時に、男たちはまずいものを飲んだかのようにゲッと顔をしかめた。
そして一斉に反駁の声が上がる。
 
 
「ズリィっ!サッチ隊長それはずりぃっすよ!」
「アンタそれでも隊長か!」
「うるせぇ、テメェ今権力使わねぇでいつ使う!」
 
 
いーっと子供のように歯を剥いたサッチは、アンに向かってにぃっと笑う。
 
 
「サッチ特製・対アン用スペシャルプレートだ!」
「あ、あたしの?」
 
 
目の前のカウンターに突き出された大きなプレートの料理たちは、アンを待ち構えてキラキラしているように見えた。
 
 
(…肉が光ってる…!)
 
 
「ありがとサッチ!!」
 
 
両腕で抱きかかえるようにプレートに手を伸ばしながらそう言ってサッチの鼻の下が伸びたのと、右側からサッチのリーゼントにさくっと細長い何かが刺さったのはほぼ同時だった。
 
 
「テメェその食費はどっから落ちてると思ってんだよい」
「おっまえ、オレのリーゼント傷つけやがって!」
 
 
ぷすりとサッチが頭から抜いたのはペン先のついた鋭利な羽ペンで、それを投げたマルコは少し離れたカウンターの先、そしらぬ顔でカップにコーヒーを注いでいる。
サッチはそのマルコにもいーっと子供のように歯を剥いて、アンに顔を寄せた。
 
 
「いいじゃんなー、アンが笑うってんだからこんくらいの食費なんて安いもんだっての」
 
 
いつもに増して口を尖らせたサッチは、アンに「はいっ」とプリン用の小さなスプーンを差し出した。
サッチの権力行使に口をはさんだマルコも、たいして本気でないようでもう何も言わない。
アンはマルコの顔をちらりと盗み見て、サッチの笑顔を見上げて、またあの何とも言えない困った感情が表れていたたまれなくなった。
それを隠すようにもう一度、今度は少しぶっきらぼうにサッチに礼を言って皿を抱え、ブーツを高く鳴らしてカウンターを離れた。
そして席に着くと、一息入れる間もなくプレートの中身をかきこんだ。
もらった菓子が詰まった袋は足元に下ろしてある。
 
 
知らなかった。
あたしが笑うとみんながよろこぶ。
あたしがよろこぶとみんながそれはうれしそうに笑う。
 
感情の共有はとても心地よかった。
 
 




 
 
 

 
 
「ロジャーの子?」
 
 
そう問うた白ひげは特にアンの返答を求めたわけではなく、ぐびりと酒の壺を傾けた。
白ひげのベッドの向かいにある手ごろな木箱に腰かけたアンは、俯いた顔を上げることができない。
神妙な顔で訪れたアンを白ひげは至極楽しげに迎え入れ、アンにとっては不吉なその言葉を聞いても顔色一つ変える様子がない。
それさえもアンにとっては恐ろしかった。
海賊王と唯一互角に渡り合ったという伝説の男は、どのようにその海賊王の子を突き放すのだろう。
 
 
「…そうか驚いたな。そうだったのか…性格は親父に似つかねェがなァ」
 
 
口では驚くと言いつつも、グラララと笑う声には少しの変化もにじまない。
アンは自分の脚の先を見つめたままぽつりと零した。
 
 
「敵だったんだろ」
 
 
白ひげは酒壺を口から離すと、じっとアンを見据えた。
 
 
「追い出さないの」
 
 
賭けのようなものだった。
それもアンにとって、限りなく負けに近い賭けだ。
アンが持つ手札はこれ以上ない程弱く、突かれたらすぐにも崩れる、もうイカサマでごまかしようもない。
負けを認めたも同然の気分でさらに深く俯いたアンの耳に届いたのは、変わりなく豪快な笑い声だった。
 
 
「大事な話ってェから何かと思えば小せェ事考えやがって」
 
 
誰から生まれようとも、人間みんな海の子だ。
 
 
アンが見開いた目を白ひげに向けると、ようやく交わった視線に白ひげがさらに口角を上げた。
笑うと白ひげは深く刻まれた皺が目元に増えた。
巨大な男の視線は初めて対峙した時と変わりなく鋭く光っている。
それでも、小さなアンの身体を柔らかく包んだ。
 
 
「オレのことはオヤジと呼べ」
 
 
オヤジ。
声には出さず呟いた。
忌々しくて仕方のなかった言葉が魔法のようにアンを包む。
 
 
「家族はいいぜ、アン」
 
 
白ひげは、ベッドのわきのサイドテーブルに酒壺をどかりと置いた。
とぷんと中身の揺れる音がやけに響いた。
 
 
 
「かぞ、くなんて」
 
 
震える下唇を押さえつけるように噛みしめた。
ギッと睨みつけると、金色の双眸が静かにアンを見つめている。
いつのまにか立ち上がっていた。
両脇で握りしめた拳がアンの意思とは別に小刻みに震える。
格好悪いと思ったが、どうしようもなかった。
 
 
「…『家族』なら…ずっとここにいていいって言って!あたしから絶対にもう何も奪わないって約束してよ!!」
 
 
白ひげはアンを見据えたまま、瞬きするような微かな動作で頷いた。
 
 
「約束しよう」
 
 
アンの頬を伝い輪郭をなぞり、鎖骨を辿る水滴が肌に染み込む。
ぼやけた視界の向こうにいるはずの男が、なによりも大切なものに思えた。
 
 
「──あたしとずっと一緒にいるって約束して…」
 
 
白ひげは、また同じ動作で頷いた。
 
 
「あァ、約束しよう、アン」
 
 
アンが白ひげの胸にしがみつくように飛び込むと、白ひげの大きな腕がそっとアンを包み込んで抱きしめた。
 
 
 
 

 
それからのことはよく覚えていない。
海に出てから、自分以外の誰かに弱さをさらしたのは初めてだった。
もしかすると自分自身に自分の弱さを突きつけたこともなかったかもしれない。
 
白ひげの膝の上で、固い腹筋に頭をのせて横になった。
膝を抱えて丸くならずに身体を伸ばして横になったのは、子供の頃もなかった気がする。
それでも温かい白ひげの膝の上にいると、10歳にも7歳にもそれより幼いころにも戻ったようだと思った。
10歳のアンも7歳のアンもこんなにも大きな温かさを知っているはずはないのに、なぜか懐かしい気分になる。
白ひげの大きな指が鼓動のように、規則的なテンポでアンの肩を叩いた。
 
…少し、ジジイに似ているかもしれない。
昨日と今日は、サッチといい白ひげといいよくガープのジジイを思い出す。
ガープに頭を撫でられた記憶はない。
ルフィとまとめて強引に抱きすくめられたことはある。
すぐそこに感じた身体は堅く大きく、頬にあたった髭が痛く、何より照れくさくて仕方なくて暴れるように抵抗した。
似ているのは、そのときの温度かもしれない。
 
 
 
じんわりと体温が上がってきた。
それと同時にうとうととまどろむ。
少し体を動かして横向きになると白ひげの膝からカクンと右足が落ちた。
しかしすぐに白ひげがひょいとつまんで戻してくれる。
目は開いているはずなのに、見える景色はどこまでもぼんやりしていてつかめない。
あたしなにしてんだろ、と何度も疑問が頭をよぎったがそれさえも考えられない。
ふぅーん、と白ひげが大きく息をついた。
 
まどろみの中で聞いた声は夢だったかもしれない。
 
 
『アン──お前にゃあ、ちぃと生きにくい世の中かもしれねェなァ…』
『特にお前みたいな我の強い奴はな』
『…だがお前にはもう父親と、兄貴が1600人もいる。みんながお前を守るだろうよ』
『アイツらァおめぇが可愛くて仕方ねェみてェだ。まさか妹ができるなんて思ってなかっただろうからなァ…』
『誰かがお前の傍にいる。一人にゃあなりたくてもなれねェだろう』
『何も奪いやしねェさ。与えたくて仕方ない奴らだ』
『家族ってのはいいぜ、アン。理由も理屈もいらねェで、無条件で愛してやれる』
 
 
 
目に映る景色はゆっくりと滲み、こめかみを温かい水が流れた。
 
 
 
 
 
 
 
The best way to make children good is to make them happy.
(良い子を育てる最良の方法はしあわせにしてやることだ)

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 麦わら一味では基本オールキャラかつサンナミ贔屓。
白ひげ一家を愛して12416中心に。
さらにはエース女体化でポートガス・D・アンとマルコの攻防物語。



我が家は同人サイト様かつ検索避け済みサイト様のみリンクフリーとなっております。
一声いただければ喜んで遊びに行きます。

足りん
URL;http;//legend.en-grey.com/
管理人:こまつな
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